ROLO TOMASSI『WHERE MYTH BECOMES MEMORY』(2022)
2022年2月4日にリリースされたROLO TOMASSIの6thアルバム。日本盤未発売。
ROLO TOMASSIは紅一点のエヴァ・コーマン(Vo)をフロントに配した、英・シェフィールド出身の5人組ポストハードコア/マスコアバンド。2005年に結成されると、1stアルバム『HYSTERICS』(2008年)を筆頭に実験性が強く叙情性をはらんだメタルコアサウンド、ささやくような歌声と激しいスクリームを併用したエヴァのボーカルを武器に高い評価を獲得してきました。
新たにMNRK Heavyと契約し、前作『TIME WILL DIE AND LOVE WILL BURY IT』(2018年)から約4年ぶりに届けられた今作。プロデューサーにルイス・ジョーンズ(FUNERAL FOR A FRIEND、EMPLOYED TO SERVE、GRAND COLLAPSEなど)を迎えた、緩急/強弱のダイナミズムが際立つ1枚に仕上がっています。
複雑なリズムを含んだバンドアンサンブルとアンビエント色の強い音響系テクスチャーが程よいバランスで混在したサウンドは、モダンメタルリスナーのみならず実験性の強いオルタナティヴロックを好む層にも十分にアピールするものがあり、かつエヴァの透き通るような歌声も高い比率でフィーチャーされている。オープニングを飾る「Almost Always」のアンバランスさ(と同時に、ある意味では絶妙にバランスの均等がとれた歌とサウンド)は、一度聴いたらヤミツキになるのではないでしょうか。
かと思えばスクリームを多用した「Cloaked」、インダストリアルタッチのバンドアンサンブルやクリーントーン&スクリームが交互に訪れるボーカルアレンジが印象的な「Drip」など起伏に富んだ楽曲、「Closer」や「Stumbling」のようにムーディーな空気感を醸し出すミディアム/スローナンバーなどもあり、全体的な統一感は保ちつつも一筋縄でいかない作風で最後まで緊張感が保たれている。随所にフィーチャーされた、ドラマチックながらも不穏さを残すメロディアレンジもリスナーに引っかかりを残し、集中力を持続させてくれます。
また、「Cloaked」から「Mutual Ruin」、「Drip」から「Prescience」へのシームレスながらも唐突な曲間の“つなぎ”にもハッとさせられ、決して聴き流すことなんてできない。まるでミステリー作品を読み進めながら真相に近づいていくような、あのドキドキ感を10曲/約48分を通して疑似体験させてくれる良質なアルバムではないでしょうか。
表現の手法といい存在感といい、すべてにおいて非常に2022年的な1枚だと断言したい本作。間違いなく今年を代表する傑作のひとつとして、この先長きにわたり愛聴されることになるでしょう。いろんなアルバムに手を出しつつ、気付けば最後にはここにたどり着いている、そんな“今の自分の生活に欠かせない1枚”です。
▼ROLO TOMASSI『WHERE MYTH BECOMES MEMORY』
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