DRUG CHURCH『HYGIENE』(2022)
2022年3月11日にリリースされたDRUG CHURCHの4thアルバム。日本盤は同年3月21日発売。
DRUG CHURCHは米英混合バンドSELF DEFENSE FAMILYのフロントマン、パトリック・キンドロン(Vo)を中心を中心とする、2011年結成の5人組バンド。2013年に1stアルバム『PUAL WALKER』をNo Sleep Recordsからリリースしたのに、2018年には現在のPure Noise Recordsと契約し、マイペースな活動を続けています。
前作『CHEER』(2018年)から約3年半ぶりとなるPure Noise移籍第2弾アルバムでは、プロデュース&ミックスを前作から引き続きSUCH GOLDでベース&ボーカルを務めるジョン・マークソン(TAKING MEDS、HUSBANDRY、SOUL BLINDなど)が担当。「Premium Offer」にはブルックリンのポストハードコアバンドHUSBANDRYのカリーナ・ザッカリー(Vo)がゲスト参加し、華を添えています。その内容もポストハードコアとポストパンク、そしてグランジやオルタナティヴロックを通過した、ノイジーだけどキャッチーさがしっかり備わったギターロックを展開。全10曲で約26分という、ギュッと濃縮されたヘヴィな世界観を堪能することができます。
PIXIESなど1990年前後のオルタナティヴロック/グランジをベースに(「World Impact」のMVでは、メンバーがPIXIESのTシャツを着ていることにもニヤリ)、HELMETなどからの影響も感じさせつつ、2000年代以降のポストハードコアやポストパンクを通過するとこういうギターロックが生まれるという、非常にわかりやすい形の進化形がこの音……と言われると、90年代初頭以降をリアルタムで通過したリスナーには伝わりやすいものがあるはずです。
どの曲にもノイジーで浮遊感の強いギターアンサンブルが施されており、そこには“計算”といったものが一切存在しない。だけど、メロディに関してはしっかり“計算”され尽くし、1曲の中に必ずひとつは聴き手の心に引っかかるラインが存在する。それって実はすごいことなんじゃないでしょうか。
無秩序なようで計画的、粗暴なようで丹精、アンバランスなようで程よくバランスが取れている……かつて大きな成功を収めたオルタナ/グランジバンドたちのような、さじ加減が実に見事な、ラウドなギターロックを2022年という次世代に楽しむことができる。10年選手ならではの安定感もありつつ終始振り切れっぱなし、だけど常軌を逸することなく正常を保っている。この「どこか冷めている」感こそ、“あの頃”に僕らがリアルタイムで夢中になったバンドたちが持っていた魅力であり、このアルバムからは“あの頃”の片鱗がしっかり残されていることが伝わるからこそ、僕らのような老害(苦笑)にもしっかり響くものがあるんでしょうね。
世が世なら、日本のオルタナ層からも高い支持を獲得したのではないかと思わせる本作。このタイミングに日本盤がリリースされるのは、きっと僕と同じように感じた人間がこの業界にも存在したということなんでしょう。しっかりアピール/プロモーションすれば届くべき場所に届くという当たり前のことをしっかりやっていただいて、このチャンスを無駄にしないでいただきたい。せっかく今年の夏は海外勢を交えた野外フェスも行われるわけですし……ね。
▼DRUG CHURCH『HYGIENE』
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