DREAM WIDOW『DREAM WIDOW』(2022)
2022年3月25日にリリースされたDREAM WIDOWの1stアルバム。デジタルリリース&ストリーミングサービスでの配信のみで、現時点ではフィジカル未発売。
DREAM WIDOWはかつて活動していた伝説のヘヴィメタルバンド。彼ら唯一残したこのセルフタイトルのアルバムは、FOO FIGHTERSが10thアルバム『MEDICINE AT MIDNIGHT』(2021年)のレコーディングしたことでも知られるロスの邸宅で制作されており、その魔力じみた破壊力は『MEDICINE AT MIDNIGHT』にも多少なりとも影響を与えた……とか与えなかったとか。
以上は、架空のお話。というのも、これは海外で先日公開されたFOO FIGHTERS制作/出演のホラーコメディ映画『STUDIO 666』の設定で、DREAM WIDOW自体もこの物語に登場する架空のバンド。物語にリアリティを求めるあまり、デイヴ・グロール(Vo, G)のメタル熱が久しぶりに高まり、なんとほぼすべてのパートをひとりで担当して完成させたのがこの『DREAM WIDOW』というアルバムなのです(これはマジの話)。
ご存じのとおり(いや、最近のファンは知らないか)、デイヴはかつて一大メタルプロジェクトPROBOTを始動させ、レミー(MOTÖRHEAD)、クロノス(VENOM)、マックス・カヴァレラ(SOULFLY、ex. SEPULTURA)、リー・ドリアン(ex. CATHEDRAL)、スネイク(VOIVOD)、キング・ダイアモンド(KING DIAMOND、MERCYFUL FATE)などメタル界のそうそうたるフロントマンを多数迎えて『PROBOT』(2004年)というアルバムを制作。同作でもデイヴはボーカルやギター以外にドラム、ベースをプレイしています。
今回のDREAM WIDOWではリードギターのみジム・ロタ(FIREBALL MINISTRY)が参加。それ以外の楽曲ではデイヴのメタル魂が炸裂した、遊びにしては本気出しすぎな両メタルアルバムに仕上がっています。
オープニングを飾る「Encino」こそグロウルで叫びまくる疾走デスメタルチューンですが、以降はダークメタルを軸にストーナーやブラックメタルなど比較的オールドスクールなヘヴィメタルを展開。ギターがピロピロと速弾きしているのも非常に“らしさ”を醸し出していますが、全体を通して聴いているとFOO FIGHTERSらしさも随所に見つけることができ、それこそ「Angel WIth Severed Wings」や「Come All Ye Unfaithful」なんて味付けを変えたらそのままFOO FIGHTERSとしても通用するのではないかと思えるほど。やっぱり血には抗えませんね(笑)。
圧巻なのが、ラスト2曲の「Becoming」と「Lacrimus dei Ebrius」。スロー&ヘヴィでダークな質感の「Becoming」はブラックメタル的な長尺曲(約7分半)。途中でBLACK SABBATH的な展開も織り込まれており、ストーナーロックの側面も含まれているのかな。ただ、ボーカルに関しては宗教色濃いめのブラックメタルテイストですけどね。また、「Lacrimus dei Ebrius」は10分半にもおよぶインスト大作で、こちらも同テイストですが若干ドゥーミーさが強いかな。テンポチェンジも随所に織り込まれており、ただスローで10分保たせるわけではないところにデイヴのこだわりが透けて見えます。また、この曲のみならず収録曲の至るところにツインリードがフィーチャされており、このあたりの味付けもデイヴのヘヴィメタル感が垣間見えて興味深いです。
昨年のBEE GEESお遊びカバーバンド・DEE GEESといい、『MEDICINE AT MIDNIGHT』リリース以降も精力的に新録作品を発表し続けるデイヴ・グロール。テイラー・ホーキンスの急逝もあり、しばらくバンドとしての動きは期待できなさそうですが、今はこういったアイテムを楽しみつつ次のアクションをゆっくり待ちたいと思います。
その前に……‥テイラー生前最後の勇姿を拝むことができる映画『STUDIO 666』を、ぜひ日本でも視聴できるようにしていただきたい……各方面の皆様、よろしくお願いします……。
▼DREAM WIDOW『DREAM WIDOW』
(amazon:MP3)