ANIMALS AS LEADERS『PARRHESIA』(2022)
2022年3月25日にリリースされたANIMALS AS LEADERSの5thアルバム。日本盤未発売。
ライブアルバム『ANIMALS AS LEADERS - LIVE 2017』を挟みつつも、前作『THE MADNESS OF MANY』(2016年)から実に5年4ヶ月ぶりの新作。セルフプロデュース作だった前作から一転、今回は前々作『THE JOY OF MOTION』(2014年)やデビュー作『ANIMALS AS LEADERS』(2009年)に携わってきたPERIPHERYのミーシャ・マンソー(G)がプロデュースを担当しています。
Djent(ジェント)やプログメタルの範疇に含まれるトリオバンド(しかも、8弦ギター×2+ドラマーという変則的)、かつバカテクで変拍子多用のインストバンドという歌モノを愛聴するリスナーには若干ハードルの高さを感じずにはいられません。実際、僕も彼らに対してそういった苦手意識を少なからず持っていたのも事実。しかし、初めてといっていいくらいガッツリと、本気で向き合ったANIMALS AS LEADERS。臆することは何もありませんでした。素直にカッコいいし、気持ちよく楽しめるインストゥルメンタルアルバムなんです。
今や新世代ギターヒーローの名を欲しいままにするトーシン・アバシ(G)や、彼の強烈な個性に隠れつつもその超絶テクニックでリスナーを惹きつけるハヴィエル・レイス(G)、そんなバカテクギタリスト2人に負けないくらい手数の多いフレーズ&絶妙なタイム感で複雑なリズムを繰り出すマット・ガーストカ(Dr)。この奇人/鬼神たちが織りなすサウンドスケープはもはやメタルやプログロックの域を飛び越え、聴きようによってはポストロックだったり、あるいはフュージョンやジャズのようにも映り、なんだかんだでそういった類のジャンルが好きな筆者も終始楽しく向き合うことができました。
手数の多さやテクニカルさは時にサーカスのようにも感じられ(そう、1980年代の速弾きブームを重なります)、呆気に取られる場面も多数あるものの、ここまでくると逆にそれが気持ちよさにもつながる。随所にフィーチャーされたシンセのプログラミンがまた良い味を出しており、ベースレスながらも8弦ギターから産み落とされるエッジーな低音と不協和音を含む高音域の旋律の相性も抜群。「Micro-Aggressions」あたりはもはやクラシックの名演を聴いているような錯覚に陥るほどの高揚感を得ることができます。
あと、今作の聴きやすさに大きく作用しているのは、全9曲/約37分というコンパクトなトータルランニング。これまでの作品は40分台後半から50分台前半と、この手のアルバムにしては若干長めだったので、本当に好きな人しか最後まで到達できないんじゃないかというハードルの高さも備わっていました(実際はそんなことないんだけど)。しかし、今作の楽曲は最長でも「Thoughts And Prayers」の約6分で、その他は3〜4分台中心。筆者のようなビギナーには最適な尺ではないでしょうか。正直、これくらいだと飽きずに楽しめるし、各曲の違いもじっくり聴き分けることができる。入門編としても最適な1枚だと断言できる仕上がりです。
今作を起点に、苦手意識が強かった過去作にもゆっくり、じっくり触れてみようと思わせてくれたという点において、この新作が果たした役割はかなり大きなものがあるのではないでしょうか。
▼ANIMALS AS LEADERS『PARRHESIA』
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