bdrmm『BEDROOM』(2020)
2020年7月3日にリリースされたbdrmmの1stアルバム。日本盤は同年7月8日発売。
bdrmm(“bedroom”と読む)は2016年にライアン・スミス(Vo, G)が宅録で制作したデモ音源がラジオで紹介されたことを機に、実弟のジョーダン・スミス(B)らとともに結成された英・ハル出身の5人組バンド。メンバーはスミス兄弟のほか、ジョー・ヴィッカーズ(G)、ダニー・ハル(Synth, Cho)、ルーク・アーヴィン(Dr)で、いくつかのシングルを経て2019年に現在のSonic Cathedral Recordingsと契約して以降、いくつかのEPを経てこのフルアルバムに到達。この春にはRIDEのUKツアーにサポートアクトとして帯同することも決定しています。
アルバムのレコーディングおよびミックスは、バンドと長く活動を共にしてきたFOREVER CULTのアレックス・グリーヴスが担当。シューゲイザーやドリームポップの範疇に含まれるその毒則的なサウンドは、同ジャンルのオリジネーターほどの強い個性は感じられないものの、デビュー作としては十分すぎるほどの完成度を誇る1枚に仕上がっています。
オープニングを飾る「Momo」はほぼインストゥルメンタルと呼んでも差し支えない構成で、いかにもアルバムの1曲目にふさわしい仕上がり。荒々しさや破綻といった要素こそ皆無ながらも、適度な美しさを放ちながら聴き手も自分たちならではの音世界へと導こうとします。だからこそ、続く「Push / Pull」「A Reason To Celebrate」といった楽曲がより個性的に、より力強く響くのではないでしょうか。
SCHOOL OF SEVEN BELLSやM83といったドリーミーなサウンドを武器としたバンドを多数輩出したSonic Cathedral Recordingsらしく、bdrmmの楽曲の多くもその傾向が強く、轟音ギターでかき乱すよりも空間系エフェクトを多用したアルペジオやフレージングでひんやりとした独創的世界を構築していく。「Push / Pull」や「If That What You Wanted To Hear?」などはまさにそういったスタイルの代表例と言えるでしょう。だからこそ、轟音ギターを多用した「If...」のようなスタイルの楽曲が逆に映える結果につながる。
また、「A Reason To Celebrate」にはMY BLOODY VALENTINEがアルバム『LOVELESS』(1991年)で試みたスタイルとの共通点も見受けられ、思わずニヤリとさせられるし、アルバムのおへそ部分に当たる「Happy」「(The Silence)」「(Un)Happy」の流れは起伏こそ大きくないものの、どこかドラマチックさが伝わってくる構成で往年のシューゲイザー作品とリンクしていることにも気づく。全体を通して、過去のオリジネーターたちへのリスペクトも伝わる良心的な内容と言えるかもしれません。
だからこそ、このバンドらしいオリジナリティをいち早く確立させて、ジャンルの壁を超えた存在に成長してほしい。そう願わずにはいられない、今後の飛躍が大いに期待できるデビュー作品です。
なお、日本盤にはボーナストラックとしてアンディ・ベル(RIDE)がGLOK名義でリミックスした「A Reason To Celebrate (GLOK Remix)」を追加収録。こちらも“いかにも”な仕上がりなので、ツアー帯同の件も含めぜひRIDEおよびアンディのファンに届いてほしい1曲(そして1枚)です。
▼bdrmm『BEDROOM』
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