RINA SAWAYAMA『SAWAYAMA』(2020)
2020年4月17日にリリースされたリナ・サワヤマの1stフルアルバム。日本盤未発売(デジタルのみ、ボーナストラック含む仕様で配信)。
リナ・サワヤマは新潟県出身のアーティスト。4歳でロンドンに渡ったのを機に現地での生活を続け、大学在籍中に音楽活動を開始。2017年にTHE 1975やPALE WAVESなどが所属するDirty HitからEP『RINA』でデビューを果たし、近年はエルトン・ジョンやチャーリー・XCXなどのとコラボレーションで知名度を高め、2023年公開予定の映画『ジョン・ウィック:チャプター4』にメインキャストとして出演することも決定しています。
先日の『Coachella Valley Music and Arts Festival』でそのパフォーマンスを目にし圧倒されたという音楽ファンも少なくなかったはずです。事実、僕自身もそのひとりで、音源自体も素晴らしかったもののライブではその魅力がさらに濃く発揮されることに気付かされました。あれはもう、ヘヴィミュージックを愛聴するリスナーにこそ届いてほしいステージですよ。
さて。メタルファンの中には昨年秋発売のMETALLICA『ブラックアルバム』(1991年)トリビュートアルバム『THE METALLICA BLACKLIST』(2021年)での「Enter Sandman」カバーでその名を知ったという方も少なくないはず。そんな彼女のフルアルバムは、同カバーでも堪能できた“エッジーなギター”を大胆にフィーチャーした楽曲も少なくなく、さらにオルタナロックを通過したモダンなダンスポップ、R&Bに通ずるムーディなミディアム/スローナンバーなどバラエティに富んだ楽曲群を楽しうことができます。
アルバム冒頭を飾る「Dynasty」や「Stfu!」、「Who's Gonna Save U Now?」あたりは、先の「Enter Sandman」カバーにも通ずるテイストが保たれており、そこに「Paradisin'」のようなポップ色の強い楽曲(この曲あたりはPOPPYのファンにも響くものがあるのでは)、往年のR&Bダンスチューンを思わせる「Love Me 4 Me」やイマドキの味付けが施されたミディアムナンバー「Bad Friend」などが加わることで、幅広い層にアピールする作品にまとめ上げられています。昨今のK-POPに偏見なく接することができる層やアメリカのヒットチャートに敏感なリスナーはもちろんのこと、ダンスミュージックを通過したヘヴィロックを好むリスナーなど、ファンベースを限定することなくいろいろな人たちに届いてほしい1枚です。
また、本作は2020年秋にアルバム未収録曲やエルトン・ジョンとのコラボ曲「Chosen Family」、THE 1975のカバー「Love It If We Made It」など11曲を収録したボーナスディスク付きデラックス・エディションも発売。アルバム本編収録曲のリミックスやアコースティックバージョンなども含まれており、アルバム『SAWAYAMA』のの魅力をさらに多方面へと引き出した副読本的作品と言えるのではないでしょうか。アルバム本編とあわせて全25曲/約87分とボリューミーな内容にはなってしまいますが、まずは本編をじっくり味わってから、ボーナスディスクでより深く彼女の魅力に浸ってみることをオススメします。
▼RINA SAWAYAMA『SAWAYAMA』
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