GAUPA『FEBERDRÖM』(2020)
2020年4月3日にリリースされたGAUPAの1stフルアルバム。日本盤未発売。
GAUPAは2017年に結成された、スウェーデン・ファールン出身の男女5人組バンド。スウェーデン語で「山猫(=lynx)」を意味するバンド名の彼らは、ドゥーミーでサイケデリックなプログロックサウンドと紅一点のエマ・ネスランド(Vo)の妖艶かつ呪術的なボーカルスタイルを武器に活動を展開。2018年にセルフタイトルの1st EP『GAUPA』を発表したのを機に、北欧のメタルフェスで知名度を上げていきます。
この1stフルアルバムは先のEPの延長線上にある作風で、ズルズルと引きずるようなストーナーロックサウンドを軸に、随所にサイケでフォーキーなテイストを散りばめることで怪しげな世界観を構築。かつ、ビョークを彷彿とさせるエマのメタル離れしたボーカルスタイルと相まって、時代錯誤のサイケデリック・ワールドが目の前で繰り広げられていくことになります。
強弱のメリハリがしっかりしたアレンジが非常に効果的に響き、囁くようであり念仏を唱えるようにも聞こえる歌唱スタイルとの相性も抜群。タイトルの多くはスウェーデン語ですが、歌詞自体は英語で表現されているので耳馴染みも良い。BLACK SABBATHよりも情念の強さを感じさせる音作りと、ヒステリックになることなく浮遊感の強さを提示し続ける女性ボーカルが織りなす独特の空気感は、一度体験してしまうとクセになることでしょう。
大半の楽曲が3〜5分台と、聴きやすい尺なのもありがたい。ストーナー/ドゥームロックやプログロックと聞くと、どうしてもスローで長尺な楽曲を思い浮かべてしまいますが、そういった点でも本作に収録された楽曲群は非常に敷居が低く、メタルやヘヴィ系があまり得意ではないリスナーにもとっつきやすい印象。「Mjölksyra」の冒頭などはかなりノイジーですが、歌が入るとまた空気が一変するから不思議です。
奏でる音に関してはは2020年代からかなりかけ離れた方向性ですが、ボーカルの存在感によってまた違った印象を与えてくれるGAUPAというバンド。スリリングなバンドアンサンブルと浮遊感の強いボーカルという水と油のような組み合わせが生み出す独創性を、ぜひお楽しみください。
なお、彼らは新たにNuclear Blast Recordsと契約し、今年11月18日には2ndアルバム『MYRIAD』のリリースも決定しています。先行配信が始まったリード曲「RA」もMVともども最高の仕上がりなので、こちらの到着も今から楽しみです(日本リリース元が若干心配ですが……)。
▼GAUPA『FEBERDRÖM』
(amazon:MP3)