THREE DAYS GRACE『EXPLOSIONS』(2022)
2022年5月6日にリリースされたTHREE DAYS GRACEの7thアルバム。
前作『OUTSIDER』(2018年)から4年2ヶ月ぶりの新作。ブラッド・ウォルスト(B)の実弟である元MY DARKEST DAYSのマット・ウォルスト(Vo)を迎えた編成では3作目のアルバムとなり、リードトラック「So Called Life」はすでにBillboard Mainstream Rockチャート1位を獲得し、自身通算16曲目の1位獲得であると同時に同チャートの1位最多獲得というVAN HALENを超える記録を樹立したばかりです。
過去作で何度も共演しているハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCE、DAUGHTRY、HOOBASTANKなど)を共同プロデューサーに迎え、ミキサーにはダン・ランカスター(BRING ME THE HORIZON、MUSE、ONE OK ROCKなど)を初起用。フィーチャリングゲストとして「Neurotic」にルーカス・ロッシ、「Someone To Talk To」にAPOCALYPTICAが参加し華を添えています。
ロックダウン下の2020年よりZoomでミーティングを重ね、状況が少しずつ緩和されたのを見計らってニール・サンダーソン(Dr)の自宅スタジオなどでレコーディングを開始。アルバムラストを飾るタイトルトラック「Explosions」を中心に、この困難な状況下を乗り越えていくポジティブな爆発力や、内なる苦しみを解放させるための衝動が表現されたヘヴィ&キャッチーな楽曲群がズラリと並ぶ、非常に聴き応えのある1枚に仕上がっています。
ポスト・グランジ出身のバンドたちにとって、このような状況を(ポジティブさをはらみつつ)いかにダーク&ヘヴィなサウンドで表現していくのかはひとつの挑戦だと思います。もちろん、これまでのアルバムでもそういった前向きさは常に封じ込めていたももの、実際に人々がここまで負の感情にとらわれてしまっている環境下でそれを効果的に表現するのは至難の業。ですが、すでに20年選手の彼らは時代に即したタフなバンドアンサンブルと、どこかネガティブさを漂わせながらも最終的にはポジティブな方向へと導くメッセージで聴き手に活力を与えてくれる。それが、何かアクションを起こす際の起爆剤につながれば……そんな思いが全面から伝わる、非常に心地よく楽しめる良作ではないでしょうか。
アルバムで表現されているサウンドは決して2022年的とは言い難いものですが(もちろん、味付けは多少現代的ではあるものの、総じて全時代的な表現方法なのは否めません)、視点を変えれば「一周回って新しくもあるのでは?」と思えなくもない。そのへんは聴き手の感じ方次第ではあるものの、僕自身はこういったポスト・グランジの流れを汲む王道バンドサウンドと新鮮な気持ちで向き合うことができました。実際、どの曲も非常に練り込まれているし、オルタナロックファンやハードロックリスナーにもアピールする要素は豊富に含まれている。かつ、すべての楽曲が2〜3分とコンパクトなのもあってスルスル聴き進めることができ、全12曲で約38分というトータルランニングもちょうどいい塩梅。日本盤ボーナストラックの「Somebody That I Used To Know」(2020年に配信された、ゴティエの2011年大ヒット曲カバー)を含めても約41分ですからね。
奇を衒うことなく、自分たちに求められていること、自分たちがやるべきことが100点満点の形で具現化。愚直なまでに真っ直ぐな本作は、こんな時代だからこそしっかり届いてほしい1枚です。
▼THREE DAYS GRACE『EXPLOSIONS』
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