JAMES LABRIE『BEAUTIFUL SHADE OF GREY』(2022)
2022年5月20日にリリースされたジェイムズ・ラブリエの4thアルバム。日本盤は同年5月25日発売予定。
昨年秋にDRAEM THEATERとしてオリジナルアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2022年)を発表したばかりですが、そこから約7ヶ月という短いスパンで届けられた、同バンドのフロントマンによるソロ新作。ソロアルバムは前作『IMPERMANENT RESONANCE』(2013年)から実に9年ぶりになるとのことで、意外にも期間が空いていることにびっくりしました。
DTのオリジナルアルバムはパンデミックの影響でライブ活動ができなくなった結果の副産物でしたが、このソロアルバムも同様の理由で制作が実現したもの。まず、本作制作のキーパーソンとなるのが、スコットランド出身のポール・ローグというアーティスト。彼はもともとEDEN'S CURSEというバンドのベーシストで、ラブリエとは以前から互いにコラボレーションを切望していたんだとか。それが、2020年以降のパンデミック下で時間に余裕が生じたことにより、物事が前向きに進んでいったんだそうです。
メロディアスなHR/HM色の強かった前作から時間を空けたこと、タッグを組むパートナーが変わったことも影響し、本作は良い意味で前作の延長線にある作品にはなりませんでした。ここで展開されるのは、アコースティックギターを効果的に多用したムーディーなソフトロック。随所にエレクトリックギター(過去3作にも参加したマルコ・スフォーリが担当)も散りばめられていますが、楽曲/アレンジの主軸になるようなことはなく、あくまで味付けとして適度な歪みのエレキサウンドが用いられる程度で収められています。
そういうアレンジ/作風もあってか、本作はDTのソフトサイド(例えば「Surrounded」や「Hollow Years」など)に特化したような内容に。もちろんDTではなく、あくまでラブリエのソロプロジェクトということで、プログメタル度は非常に低く、かつ今回はメタリックなテイストも封印されている。と同時に、変拍子などのないストレートな作風ということで、プログロック色もかなり希薄です。が、そこはラブリエのこと。彼が若い頃に聴いてきたであろうYES(というか、ジョン・アンダーソン)やKANSAS、JOURNEYといった先人たちからの影響も伺え、無理にDTと切り離すこともないかなという内容。そりゃあラブリエが歌っていれば、それっぽく聞こえますしね。
とにかく、楽曲が良い。かつ、今のラブリエの声域を非常に理解したメロディ作りがなされており、一定の落ち着いたトーンで進行していく楽曲群がいろんな形で差別化が図られている。これは完全にポール・ローグというパートナーの手腕によるものが大きく、かつDT最新作との対比という点においても良い相乗効果を生み出している(だからこそ、こんな短期間でのリリースが実現できたんでしょうしね)。先日59歳の誕生日を迎えたラブリエ、まだまだいけます!という前向きさが伝わる、良質なソフトロックアルバムだと断言しておきます。
なお、本作のラスト(日本盤ボーナストラックを除く)にはLED ZEPPELINのカバー「Rumble On」を収録。原曲のイメージをそのままに、アルバムのテイストにも沿ったアレンジも付け加えられており、アルバムを通して聴いても違和感なく楽しめる1曲です。
本当にいいアルバム。刺激や毒は一切ないけど、安心して楽しめる。疲れているときに聴くと、本当に沁みてくる良盤です。
▼JAMES LABRIE『BEAUTIFUL SHADE OF GREY』
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