bigLOVE『CRUSADERS OF JOY』(2022)
2022年5月27日にリリースされたbigLOVEの1stアルバム。日本盤未発売。
このbigLOVEは、イギリスのメタルコアバンドEMPLOYED TO SERVEのメンバーでもあるジャスティン・ジョーンズ(Vo)&サミー・アーウィン(G, Vo)夫妻をフィーチャーしている“と言われる”匿名プロジェクト。“と言われる”と表現しているのは、あくまでこのバンド/プロジェクトが匿名性の強いものであり、公然の事実ではありながらも敢えてボカしていることから。とはいえ、ジャスティン&サミーが運営するChurch Road Recordsからのリリースとかいろいろネタバラシも散りばめられていて、知らないふりをするのも困りものです。
本作は2019〜2020年頃に制作されたそうで、聴いていただけばおわかりのようにEMPLOYED TO SERVEとは異なるドゥーミーなスラッジメタルを軸にした方向性。全4曲という曲数はEPと受け取ることもできますが、トータル33分(笑)にもおよぶ尺はさすがドゥーム/スラッジメタルといったところか。先行リリースされたリード曲(M-4)「Forever Intimate」こそ5分50秒程度と聴きやすい尺ですが、それ以外の楽曲、特に頭2曲は「Harnessing The Nectar From The Queen Bee」が9分11秒、「A Grand Declaration Of The Gods」が10分24秒という長尺さ。残りのM-3「At One With」も7分43秒とそこそこの長さなので、こういう結果になるわけですね。
ドラムがマシンビート(打ち込み)なのもあって、ところどころでインダストリアルっぽいテイストもにじませていますが、一定のスローテンポでひたすら引きずるようなヘヴィサウンドを展開。ですが、ところどころでドラマチックなアレンジ(強弱の付け方やメロディアスな味付け方)も用意されているので、通常のスラッジメタルよりも聴きやすい印象を受けます。そのへん、さすがEMPLOYED TO SERVEのフロントメンバーといったところでしょうか(あくまで“その可能性が大きい”だけですが)。
ボーカルも低音グロウルのみならずハイトーンでのスクリームも多用されており、平坦なビートに彩りを与えています。まあ、このボーカルを聴いてしまえば「なんだ、EMPLOYED TO SERVEのジャスティンじゃん」と気づかれてしまうのは仕方ないかな。それだけのインパクトがありますからね。あと、強めのリバーブがかかったボーカルワークもせいもあって、先のインダストリアルっぽさに拍車がかかっている印象も。なんにせよ、単なるドゥーム/スラッジメタルとは一線を画する、クセの強いアルバムではないでしょうか。
この手のアルバムにありがちな、「聴いている途中でどの曲かわからなくなる」「全部似てるように感じる」という錯覚に陥ることもなく、最後まで気持ちよく楽しめる1枚。ドゥームメタルやスラッジメタルに敷居の高さを感じているリスナーは、まずオープニングの「Harnessing The Nectar From The Queen Bee」だけでも聴いてみてください。その意外なドラマチックさに驚くはずですから。
▼bigLOVE『CRUSADERS OF JOY』
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