BLACK LUNG『DARK WAVES』(2022)
2022年5月27日にリリースされたBLACK LUNGの4thアルバム。日本盤未発売。
BLACK LUNGは2013年に結成された、米・メリーランド州ボルチモア出身のベースレス・トリオバンド。サイケデリック要素の強いストーナーロック/ドゥームメタルサウンドが特徴で、今作ではデビュー以来在籍してきたNois-O-Lutionから新たにKARMA TO BURNやMONDO GENERATORなどが在籍するHeavy Psych Sounds Recordsへと移籍しています。
前作『ANCIENTS』(2019年)リリース後に創設メンバーのアダム・ブファノ(G)が友好的にバンドから離脱。同年11月には新メンバーとしてデイヴ・フラートン(G)が加入し、新編成でツアーに臨もうとしたところでコロナ禍に突入してしまう。そういった失望や恐怖、怒りは今回のアルバム制作に反映されているように関します。
レコーディングをJ.ロビンス(ex. GOVERMENT ISSUES、ex. JAWBOXなど)、ミックスをCONVERGEのカート・バルー(G)が手がけた本作。レコーディングにはチャールズ・ブレイズ(B)が加わったほか、「Death Grip」にには同郷のパンクバンドWAR ON WOMENからショーナ・ポッター(Vo)が、「The Cog」「The Path」にはTIGER PARTYやDAMN RIGHTなどで活躍したソングライター/プロデューサーのブレイク・モブリー(Key)がゲスト参加しています。
ストーナーロックやドゥームメタルというよりは、1960年代末から70年代にかけて多数存在したサイケデリック風味のブルースロックといった印象が強いかな。曲によっては6分を超える長尺なものも複数存在しますが、基本的にはインストゥルメンタルパート多めな4〜5分台の楽曲ばかり。ワウペダルを多用したギターソロや、クリーントーンを効果的に用いたアルペジオなどのフレージング、随所に取り入れたメロトロンの音色など、完全に2022年という時代を無視したスタイルは「我が道をゆく」と言わんばかりのもの。逆に、時代の流行りに左右されないからこその説得力も強く、いつどの時代に聴いても安心できる内容ではないでしょうか。
ストーナーといっても異常にスローな楽曲は皆無で、そのへんは良心的かな。メロディラインやハーモニーなど親しみやすい要素も豊富で、全体を通して聴きやすい作り。ただ、テンポ的にはミディアム/スロー中心で、そこに関して変化は期待できないので、聴き手を選ぶ1枚とも言えるでしょう。多少なりともストーナーやドゥームメタルに対して免疫がある方なら、「ああ、こういうサイケブルースも良いよね」と楽しめる1枚だと思います。
あと、ベースレスで活動してきた彼らが、本作では印象に残るベースラインを豊富に生み出しているのも印象的。最新アー写にはメンバー4人の姿があるので、もしかしたらこれを機にベーシストを含む4人編成で活動していくのでしょうか。前作までのベースレスなサウンドも個性的で良かったですが、これはこれで普通のバンドになってしまった気も……そのへん、リスナーによって良し悪しがわかれるかもしれませんね。
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