カテゴリー「John Frusciante」の9件の記事

2022年6月26日 (日)

THE MARS VOLTA『AMPUTECHTURE』(2006)

2006年9月12日にリリースされたTHE MARS VOLTAの3rdアルバム。日本盤は同年8月30日先行発売。

全米4位という高記録を残した前作『FRANCES THE MUTE』(2005年)から1年半という短期間で届けられた今作は、全8曲/約76分という非常にボリューミーな内容。往年のKING CRIMSONにも通ずるプログレッシヴロック的アレンジとサイケデリックロック的な空間系の味付けが見事にフィットした、混沌としながらも実に聴きやすい1枚ではないでしょうか。

プロデュースをオマー・ロドリゲス・ロペス(G, Synth)、ミックスをリッチ・コスティ(MUSE、SIGUR ROS、BIFFY CLYROなど)、さらにゲストメンバーとしてバンドと親交の深いジョン・フルシアンテ(G/RED HOT CHILI PEPPERS)が全面参加という豪華な布陣が参加した本作は、2005年のSYSTEM OF A DOWNとのツアー中に制作を進行。7分を超える楽曲が全8曲中6曲、うち3曲は10分超えという大作揃いながらも、前作のように組曲という形をとっておらず、ある意味では前作以上にカオティックな内容と言えるかもしれません。

アルバム冒頭を飾る7分超えの「Vicarious Atonement」こそ調和が伝わるミディアム/スローナンバーですが、続く「Tetragrammaton」は約17分にもおよぶ超大作で、複雑な展開が繰り広げられるアレンジは変態そのもの。ですが、セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(Vo)による艶やかな歌声とキャッチーなメロディの効果か、非常に聴きやすい仕上がりなんですよね。実はこのへん、先のKING CRIMSONにも通ずるものがあるなと。もちろん、オマーとセドリックのルーツでもあるラテンの要素も随所に散りばめられていることから、KING CRIMSONとも異なる独自性がかなり強まっているのですが。

3曲目「Vermicide」(4分強と本作で最短)まで聴いて気付くのですが、過去2作や前身のAT THE DRIVE-INにあったカオティックハードコアやカオティックなエモの要素が減退しており、激しさや派手さよりも“ムード”を重視しているように映ります。実験性はもちろん強いのですが、その実験色に唐突さや異端さはまったく感じられず、すべてが必要な要素・ピースで組み立てられていることにも気付かされる。これを“成熟”という表現でまとめるのは違うのかもしれませんが、バンドとしてひとつのピーク(到達点)にたどり着いたのではないか……そう感じる1枚ではないでしょうか。それがアバンギャルドさとキャッチーさの共存につながっているのではないか、と。

その結果、本作の完成とともにバンドの地盤を固めてきたジョン・セオドア(Dr)が脱退。第1期THE MARS VOLTAは否が応でも完結せざるを得ない状況に追い込まれるのでした。そういう意味も含め、個人的にはTHE MARS VOLTAというバンドにおける(現時点までの)最高傑作だと思っています。

 


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2022年4月 3日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『UNLIMITED LOVE』(2022)

2022年4月1日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの12thアルバム。

2019年12月にジョン・フルシアンテ(G)が10年ぶり/二度目の復帰を果たし、黄金期の布陣……アンソニー・キーディス(Vo)、フリー(B)、チャド・スミス(Dr)、ジョンの4人が三度揃ったレッチリ。2020年2月には絵画展の最中だったチャドにかわりステファン・パーキンス(JANE'S ADDICTIONなど)が参加した編成でジョン再復帰初パフォーマンスを実施するも、その直後にコロナ禍に伴うロックダウンに突入。その後の動向が心配されましたが、2021年に入るとバンドはアルバムの制作に突入し、同年9月には翌2022年6月からワールドツアーをスタートさせることをYouTubeを通じて発表します。このタイミングから、新作は2022年初夏発売かと予想されましたが、2022年2月に新曲「Black Summer」のデジタル配信が始まり、これと同時にアルバムが4月1日にリリースされることもアナウンスされたのでした。

前作『THE GETAWAY』(2016年)から約5年10ヶ月と過去最長のリリース間隔を経て届けられた本作。前作で初プロデュースを担当したデンジャー・マウスから、『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)から『I'M WITH YOU』(2011年)まで20年にわたりタッグを組んだリック・ルービンを再び迎えて制作されました。全17曲/約74分というCD1枚もの作品としては過去最長となり、日本盤はそこにもう1曲「Never Flip」を加えた全18曲/約77分というボリューミーな内容に。もはや『STADIUM ARCADIUM』(2006年)に次ぐダブルアルバムと呼んでしまっても差し支えないほどの充実感ではないでしょうか。

『I'M WITH YOU』や『THE GETAWAY』といった“ジョン不在”の2作では、ジョシュ・クリングホッファー(G)を迎えたバンドの第3章を強くアピールしようとするあまり、ジョン時代のカラーと新たな側面のバランス加減に苦悩した様子が伺えました。特に『THE GETAWAY』ではリック・ルービンからデンジャー・マウスにプロデューサーを変更し、新しい道を模索しながら何とか活路を見出し始めていたことも伺えます。しかし、新編成での3作目に取り掛かる中でアンソニー、フリー、チャドは「やはりジョンが必要」という結論に達し、第3章は志半ばで道を閉ざすことになります。

ジョシュには悪いですが、「Black Summer」からスタートするこの新作を聴いたときの安定感は過去2作の比ではありませんでした。この新作も『CALIFORNICATION』(1999年)以降のアルバム同様、地味な方向性です。しかし、説得力の強さや深みに関しては過去2作以上であり、『STADIUM ARCADIUM』の正当的後継アルバムであることが理解できるはず。いや、『STADIUM ARCADIUM』の“続き”というよりは不思議と『CALIFORNICATION』の頃に戻ったかのような。「また新しく始めようぜ!」という意識の現れなのか、リスタートへ向けた強い思いが楽曲や演奏にしっかり表れているように感じられたのです。

ジョンのギターフレーズから始まる「Black Summer」でアルバムが幕開けするというのも印象的ですし、比較的地味ながらもアンソニーの歌やジョンのギターがエモみを強めていることも特徴的。そこから続く「Here Ever After」や「Aquatic Mouth Dance」のファンキーさは、派手さこそ皆無ながらも躍動感は一級品。楽曲至上主義な90年代末からの方向性と、各プレイヤーの技量の高さをバランスよくフィーチャーしたアレンジが絶妙な割合でミックスされている。このへんが無意識のうちに共有できているこの4人ならではの楽曲群と言えるでしょう。

「Not The One」のAOR寄りテイストのバラードもさすがの一言ですし、クールなファンクチューン「Poster Child」、ジョンのギタープレイが異彩を放つ「The Great Apes」や「She's A Lover」を経て、中盤から後半にかけてアルバムは徐々に熱量を高めていく……この流れ自体は『STADIUM ARCADIUM』に通ずるものがありますが、その爆発力は同アルバム以上のものがあり、そういった点においても『CALIFORNICATION』との共通点が見受けられる。もしかしたら本当に、バンドの中で“『CALIFORNICATION』よ再び”的な意識が少なからずあったのかもしれませんね。もちろん、同じものをもう1枚作ろうという意味ではなく、向き合う姿勢という点においてね。

珍しく最初に聴いたときに何度かリピートしてしまったレッチリの作品。好きな曲もこれまでより多く見つけられ、上に挙げたような楽曲に加え「These Are The Ways」や「Whatchu Thinkin'」、「One Way Traffic」から「Tangelo」までの流れなど、やはり中盤以降にお気に入りが並ぶのは過去と同様のようです。

アルバムとしては「Tangelo」で綺麗に締めくくられますが、日本盤ボーナストラックの「Never Flip」もなかなかの1曲。ヘヴィさでは本作随一ですが、やはりアルバムの最後に置くにはちょっと場違いかな。と同時に、アルバムの中に置くにもちょっと収まりが悪い気もする。本編から外された理由もわからくないですが、とはいえ悪い曲ではない。こういう曲がほかにもっとありそうな気がするので、半年〜1年後にはボーナスディスクにアウトテイクをまとめた2枚組デラックスエディションとか発売(もしくは配信)されそうな予感です(苦笑。それはそれで楽しみですが)。

どうやら今年の夏フェスタイミングは北米ツアーと重なり、苗場や幕張方面でのヘッドライナーは2023年以降に持ち越しかな。どうせなら、久しぶりの単独公演に期待したいところですね。

 


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2022年2月21日 (月)

RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』(2006)

2006年5月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの9thアルバム。日本盤は同年5月10日発売。

全米2位、全英1位という好記録を残した前作『BY THE WAY』(2002年)のあと、Warner移籍後の楽曲を中心とした初の本格的なベストアルバム『GREATEST HITS』(2003年)、バンド初のライブアルバム『LIVE IN HYDE PARK』(2004年)を立て続けに発表したレッチリ。長期にわたるワールドツアーを経て、バンドは2004年秋から1年以上かけて新作制作に臨みます。

ジョン・フルシアンテ(G)を中心に楽曲制作が進められ、最終的に38曲もの新曲をレコーディング。当初はCD3枚組アルバムも計画していたそうですが、そこからさらに厳選された28曲を2枚のCDにまとめ、DISC 1を“JUPITER(木星)”、DISC 2を“MARS(火星)”とそれぞれ命名した大作アルバムが完成しました。

通常、ロックバンドが2枚組アルバムを制作すると、その内容はカラフルでバラエティ豊かなものになることが多いと思います。THE BEATLESなら『ホワイト・アルバム』(1968年)LED ZEPPELINなら『PHYSICAL GRAFFITI』(1975年)GUNS N' ROSESなら『USE YOUR ILLUSION I』および『同II』(1991年)SMASHING PUMPKINSなら『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)あたりがその代表的な例でしょう。ところが、レッチリの本作の場合は必ずしも上記のような過去の名盤とリンクするわけではありません。

本作は前々作『CALIFORNICATION』(1999年)、そして前作『BY THE WAY』の流れを汲む、同路線の決定版的内容。要するに、地味なのです。オープニングを飾る「Dani California」からして地味。派手なギミックで惹きつけるようなタイプではなく、じっくり聴かせる“作り込まれた”楽曲からスタートし、そのトーンを一定に保ちながらグラデーションを付けていく、そういう作風なのです。なもんですから、全28曲/約2時間を通して大きな波もなく、ユラユラと流れていくような印象を受ける。それに対して「退屈」や「オッサン趣味」と片付けることは簡単です。でもね、聴けば聴くほど奥が深い作品集なのです。

僕も正直、最初に聴いたときは「これは長く愛聴できるような内容ではないな」と若干肩をすくめた記憶があります。実際、本作を携えたライブ(同年夏のフジロック)の寒々しさといったら……野外、しかも苗場の夜に聴くにはちょっと地味だったのは否めません。それ以降、本作を聴く頻度はレッチリの全カタログ中、もっとも低かったのもまた事実です。

ところが、フルシアンテ再復帰&ニューアルバム『UNLIMITE LOVE』(2022年)を前に過去のアルバムを聴き返してみたところ……この2枚組アルバムはバンドのキャリアにおいて、もっとも濃厚で奥が深い作品であることに気付かされたのです。

1曲1曲の完成度は非常に高い。それは間違いない事実です。かつ、派手なアレンジで惹きつけるような細工は皆無で、むしろ職人による玄人好みのプレイが随所に散りばめられており、それらが過不足なく絶妙なバランス感でまとめ上げられている。特にフリー(B)&チャド・スミス(Dr)のリズム隊にフルシアンテが加わった鉄壁のアンサンブルに関しては、過去2作でのトライがひとつの頂点に達したが本作だと断言できます。

アンソニー・キーディス(Vo)のボーカルもエモーショナルなメロディを歌い上げるに十分な表現力が加わり、各楽曲の完成度をさらに高めている。また、フルシアンテもすべての楽曲でしっかりギターソロをフィーチャーし、地味な中にもロックバンドのシンプルなカッコよさを最良の形で体現している。ぶっちゃけ、ここまですべてがカチッと噛み合っているロックアルバム、そうはないと思いますよ。

個人的にはDISC 1の後半、「Torture Me」以降から高まる熱量と、同じくDISC 2の後半、「Make You Feel Better」以降の流れがロックバンドの理想形だと思うのですが、如何でしょう?(それと比べると、各DISCの前半はちょっと地味すぎかな?という印象も) 曲順次第ではさらに聴きやすいような気がして、そこだけが残念でなりません。

なんにせよ、『CALIFORNICATION』から始まった第2期フルシアンテ政権(苦笑)の究極の形が本作なのは、間違いなく、事実本国アメリカではついに初の1位を獲得するのですから。このほか、イギリスなど世界24ヶ国でアルバムチャート1位を記録。ここ日本でもオリコン総合チャート1位という快挙を成し遂げ、『FUJI ROCK FESTIVAL '06』でのヘッドライナーと、2007年6月の東京ドーム&京セラドーム大阪公演と二度の来日が実現し、「Dani California」と「Snow ((Hey Oh))」は映画『デスノート』および『デスノート the Last name』の主題歌にそれぞれ採用されるなど、ここ日本でも人気がピークに達しましたしね。しかし、ここですべてを出し切ったフルシアンテは2009年に再びバンドを脱退することになります。そういった意味でも、本作は究極であり臨界点でもあったわけですね。罪作りな大作アルバムです。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』
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2022年2月20日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002)

2002年7月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの8thアルバム。日本盤は同年7月10日発売。

ジョン・フルシアンテ(G)が復帰して制作された前作『CALIFORNICATION』(1999年)が全米3位まで上昇し、アメリカのみの売り上げ700万枚超えと5thアルバム『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)に並ぶメガヒット作となったレッチリ。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)、「Around The World」などのヒットシングルも多数生まれ、第二の黄金期突入をさらに後押しする今作が3年のスパンを経て届けられました。

引き続きリック・ルービン(SLAYERSYSTEM OF A DOWNMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えた本作は、メンバーが“Very John”と例えるように、前作以上にジョン・フルシアンテ色濃厚な仕上がり。ファンク色は徐々に抑え気味になり、ポップな色彩やサイケデリック感が強調された、前作以上に聴きやすい/親しみやすい内容に仕上げられています。その結果、チャート的も前作を上回る全米2位まで到達し、イギリスでは初の1位も獲得。「By The Way」(全米34位/全英2位)、「The Zephyr Song」(全米49位/全英11位)、「Can't Stop」(全英57位/22位)、「Universally Speaking」(全英27位)といったスマッシュヒットシングルも多数生まれました。アルバム自体セールス的には前作には及ばず、アメリカでは200万枚止まりでしたが、全世界では1000万枚近い売り上げに到達。『CALIFORNICATION』同様レッチリ入門に適した1枚とも言えるでしょう。

オープニングを飾るタイトルトラック「By The Way」はドライブ感がたまらない1曲で、特にフリー(B)とチャド・スミス(Dr)の織りなすグルーヴィーなリズムと、その上に小気味良いカッティングを響かせるジョンのギター、パーカッシヴさとメロウさが適度に織り交ぜられたアンソニー・キーディス(Vo)が乗ることで絶妙なハーモニーを作り上げています。もうこの1曲で勝ったも同然です。

かと思えば、続く「Universally Speaking」はかつてないほどにポップさが強調された1曲で、レッチリの新たな扉を開いたと言える仕上がり。ダークなサイケロック「This Is The Place」や「Don't Forget Me」、哀愁味の強い「Dosed」は前作までの流れを汲むもので、『CALIFORNICATION』で得た手応えがさらにブラッシュアップされた形で踏襲されています。ヒットシングル「The Zephyr Song」も同様ですね。

ギター初心者がフルシアンテのフレーズをコピーするのに最適なサイケデリックファンクロック「Can't Stop」、穏やかなバラード「I Could Die For You」や「Midnight」、リズム隊の生み出すグルーヴ感がたまらない「Throw Away Your Television」などが並ぶアルバム中盤の流れも非常に味わい深いものがあります。なにせこのアルバム、全16曲/約69分という超大作。前作も全15曲と比較的曲数が多かったものの、トータルランニングは56分と10数分短い。そういった意味では『CALIFORNICATION』以上にプレイヤー/表現者としての側面がより濃厚に遭われたのが『BY THE WAY』という作品かもしれません。メンバーの言う“Very John”という表現には、そういった強い拘りも含まれているんでしょうね。

アコースティック色の強いポップな「Cabron」、ミディアムスローの「Tear」、ラテン色が散りばめられた新境地のアップチューン「On Mercury」、うねるようなグルーウが気持ち良い「Minor Thing」、不思議な浮遊感が味わえる「Warm Tape」と後半も構成的な楽曲が続き、最後は当時のレッチリらしさが凝縮されたドラマチックなマイナーチューン「Venice Queen」で締め括り。ここから2〜3曲間引いたらより聴きやすかったのかな?なんて思いつつも、じゃあどれを削るかと言われると答えが難しい。結局、ジョン・フルシアンテの才能が沸点に達したという点を考慮するとこのセットリスト、構成で正解なのかもしれません。

この才能はさらに爆発をし続け、ここから4年後に届けられる9thアルバム『STADIUM ARCADIUM』(2006年)はCD2枚組/全28曲入りと臨界点に突破。いろいろな意味でピークを迎えることになります。

 


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2021年1月31日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991)

1991年9月にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの5thアルバム。

前作『MOTHER'S MILK』(1989年)で初の全米トップ100入り(最高52位)を果たしたレッチリ。「次が勝負!」とばかりに、それまで所属したEMI RecordsからWarner Bros. Recordsへと移籍し、プロデューサーも“時の人”リック・ルービン(SLAYERTHE BLACK CROWESBEASTIE BOYSなど)を起用。ミキシングエンジニアにはTHE BLACK CROWES『SHAKER YOUR MONEY MAKER』(1990年)でリックとともに作業したブレンダン・オブライエン(AC/DCPEARL JAMRAGE AGAINST THE MACHINEなど)を迎え、最強の布陣にて最強のロックアルバムを完成させます。

オープニングを飾る「The Power Of Equality」こそ前作での破天荒でおバカなスタイルを引き継いでいるものの、今作におけるメインどころはそこではなく、ジョン・フルシアンテ(G)の個性が強く発揮されたフォーキーで穏やかなサイケデリック感。確かに「Give It Away」や「Suck My Kiss」などファンキーな楽曲も存在こそすれど、それ以上に大ヒットシングル「Under The Bridge」や「Breaking The Girl」といったナンバーの印象が強いのではないでしょうか。

ぶっちゃけ、初めて本作に触れたときはその地味なテイストの多さに少しだけ違和感を覚えたものです。「あれ、求めていたものと違う」って。ファンキーはファンキーでも、「If You Have To Ask」や「Funky Monks」、「Sir Psycho Sexy」での落ち着いたトーンの楽曲群に対する「それじゃない」感。今聴けばそこに散りばめられた狂気性にも気づくのですが、ガキンチョの自分にはそこまでたどり着くことができず。しかも全17曲/70分超という大作ですから……30年近く前にリアルタイムで聴いたときの最初の印象、忘れられません。

正直なところ、最初のうちはそこまでのめり込むことはできませんでした。それよりは、同時期にリリースされたGUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』、輸入盤ではすでに出回っていたNIRVANA『NEVERMIND』やPEARL JAMの『TEN』といった作品のほうにばかり手が伸びた記憶があります。

でもね、時間をかけてじっくり聴き込むと非常に味わい深い1枚なんですよね。今でも「長すぎ!」とは思いますが、あのタイミングにバンド(というかジョン)の創作意欲が爆発する感覚、しっかり伝わりますもの。と同時に、ジョンが脱退〜復帰を経てたどり着いた7作目『CALIFORNICATION』(1999年)という傑作を通過したあとに本作を聴き返すと、よりその魅力に気づかされる。そんな1枚でもあるのかなと思います。

当時ハタチそこそこの小僧には派手な曲にしか耳が行きませんでしたが、大人になればなるほどその魅力に引き込まれていく。30年前だったら「I Could Have Lied」みたいな曲にそこまで夢中にはなれなかったもんなあ。そういった意味では、ジョンが抜けたあとにデイヴ・ナヴァロ(JANE'S ADDICTION)と制作した6作目『ONE HOT MINUTE』(1995年)の派手さと地味さのさじ加減が一番ツボというのも、我ながら納得といいますか。

「Under The Bridge」の全米2位という大ヒットを受けて、アルバムも最高3位まで上昇。アメリカのみで700万枚超、全世界で1400万枚以上を売り上げるメガヒット作。その後のレッチリらしさはここからスタートしたんだなと、久しぶりに聴き返して再認識しました。今作と『CALIFORNICATION』から聴けば、まずレッチリは間違いないんじゃないでしょうか(『ONE HOT MINUTE』は無理に薦めません。笑)。

 


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2019年2月14日 (木)

RED HOT CHILI PEPPERS『MOTHER'S MILK』(1989)

1989年8月にリリースされた、RED HOT CHILI PEPPERS通算4作目のオリジナルアルバム。前作『THE UPLIFT MOFO PARTY PLAN』(1987年)から引き続きマイケル・ベインホーン(SOUNDGARDENHOLEMARILYN MANSONなど)がプロデュースを手がけており、「Highter Ground」(スティーヴィー・ワンダーのカバー)や「Knock Me Down」などがオルタナチャートでヒットしたこともあってか、アルバム自体も初めて全米TOP100入り(52位)を果たし、100万枚を売り上げる出世作となりました。

前作発表後の1988年6月、オリジナルメンバーのヒレル・スロヴァク(G)がオーヴァードーズで急逝。また、彼の死にショックを受けたジャック・アイアンズ(Dr)もバンドを脱退。残されたアンソニー・キーディス(Vo)とフリー(B)はバンドを立て直すため、ヒレルに憧れていたジョン・フルシアンテ(G)、デトロイトのローカルバンドで活動していたチャド・スミス(Dr)を向かい入れ、いわゆる黄金期メンバーが揃うことになります。

その新編成で最初に制作された本作『MOTHER'S MILK』は、メガヒットを記録する次作『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)と比較すると非常にアグレッシヴで、なおかつメタリックな要素も多数含まれています。マイケル・ベインホーンによるサウンドプロダクションも影響してか、オープニングの「Good Time Boys」にしろカバー曲「Higher Ground」にしろツーバス連打の「Nobody Weird Like Me」にしろ、かなり硬質なサウンドで固められている印象が強く、『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』以降のイメージで触れると面食らうかもしれません。

しかし、「Magic Johnson」や「Knock Me Down」「Stone Cold Bush」といったファンキーな楽曲はテンポ感こそかなりアゲアゲなものの、それ以降の彼らにも通ずる要素が感じられる。そういった意味では、初期のテイストを新たな布陣で整理し、次に向けてスタイルを模索していると受け取ることもできるでしょう。バンドの歴史的には過渡期の1枚だったのかなと、今ならそう言えるかもしれませんね(過渡期にしては強烈すぎるんですけど)。

ジミ・ヘンドリクスのカバー「Fire」や次作への布石と言えるムーディーなインスト「Pretty Little Dirty」、パンキッシュな(というかまんまな)「Punk Rock Classic」、グルーヴィーなミドルチューン「Sexy Mexican Maid」、ファンキーでダンサブルな「Johnny, Kick A Hole In The Sky」など、バラエティに富んだ作風は次作以上ですし、このはっちゃけっぷりはデイヴ・ナヴァロ(G/当時ex. JANE'S ADDICTION)が参加した唯一のアルバム『ONE HOT MINUTE』(1995年)にも似ている気がします。僕自身、初めてリアルタムで触れたレッチリがこの『MOTHER'S MILK』だったこともあって、なぜ自分が『ONE HOT MINUTE』に思い入れがあるのか、本作を聴き返して理解できた気がします。

ジョン・フルシアンテのギタープレイは若さからくる激しさが強く表現されており、今となっては懐かしい限り。その天才的なプレイに加え、ソングライティング面でも本領発揮となるのが、続く『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』になるとは、本作を聴いていた頃には想像もできませんでした。



▼RED HOT CHILI PEPPERS『MOTHER'S MILK』
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2019年1月17日 (木)

RED HOT CHILI PEPPERS『CALIFORNICATION』(1999)

1999年6月にリリースされた、RED HOT CHILI PEPPERSの7thアルバム。前作『ONE HOT MINUTE』(1995年)に単発で参加したデイヴ・ナヴァロ(G/JANE'S ADDICTION)に代わり、『MOTHER'S MILK』(1989年)や『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)の立役者のひとりジョン・フルシアンテ(G)がバンドに復帰。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)といったシングルヒットも手伝い、アルバムも全米3位まで上昇し、アメリカのみで600万枚以上、世界トータルで1600万枚を超える最大のヒット作となりました。

『ONE HOT MINUTE』ではデイヴの色もあり、非常にハードロック的要素が強い内容でしたが、今作では再びジョンのカラーが強まっています。それは『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』からのヒット曲「Under The Bridge」(全米2位)や「Breaking The Girl」、あるいはジョン不在ながらも映画に提供した「Soul To Squeeze」(全米22位)で提示した“枯れ”の要素が至るところから感じられることで理解できるはずです。

オープニングの「Around The World」こそ、イントロで派手なプレイを堪能できますが、いざ歌が入ると一気に落ち着く。かと思うと、続く「Parallel Univers」ではどストレートなハードロックを聴かせ、「Scar Tissue」では緩やかなポップサウンドを響かせる。「Otherside」や「Californication」ではまさに“枯れ”や哀愁味がど直球で表現されているんですから……。

「Get On Top」や「Right On Time」といった楽曲では、当時のレッチリファンがイメージする“らしさ”……ハードなファンクロックが展開されるものの、そういったカラーは本作では味付け程度。結局「Easily」みたいなロックチューンや「Road Trippin’」のようなメロウなミディアム/スローナンバーが軸になっており、これこそが当時ジョンがやりたかったことなんでしょうね。

もちろん、その要素が世の中的に受け入れられることで、バンドは大成功を手に入れるわけですが、それと同時にあの“おバカ”さは影を潜めていく。そんなもどかしさを、このアルバムが発売された20年前に味わったことを、今でも昨日のことのように覚えています。

けど、今となってはこのアルバムも問答無用の傑作の仲間入り。もはやそんなわだかまりもなくなり、素直に楽しめるようになりました。だって、良い曲は良い曲以外の何者でもないし、それはアルバムもしかり。間違いなく90年代のレッチリが残した傑作のひとつであり(って3枚しか出してないけど)、それ以降のレッチリの指針となった記念碑的1枚です。



▼RED HOT CHILI PEPPERS『CALIFORNICATION』
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2005年6月14日 (火)

THE MARS VOLTA『FRANCES THE MUTE』(2005)

 2005年前半は本当に面白い、且つ素晴らしい作品に恵まれた年だったと思います。特にこの4〜5月辺りのリリースラッシュはもの凄いものがあったし、そこで連発された作品の数々がホントに素晴らしかったもんだから、こちらとしても毎週リリースされる作品達と自分の財布の中身とのにらめっこの連続でしたよ。

 そんな名作ラッシュ、今年はこのアルバムのリリース辺りからスタートしたんじゃないでしょうか。少なくとも俺にとっては「今年最初の名盤決定」だったように思います、このアルバムとの出会いは。いや‥‥アルバム聴く前にライヴ観ちゃったから、余計にそう感じたのかもしれません。

 今や『元AT THE DRIVE-IN』なんて形容詞はいらないだろう、THE MARS VOLTAの2ndアルバム「FRANCES THE MUTE」。日本では本国アメリカより約1ヶ月も早くリリースされました。これは2月上旬に来日し「SONIC MANIA」に出演するため、こういう措置を取ったんでしょうね。ま、結果としてはそれが吉と出たように思いますが‥‥ネット上ではソニマニでの彼等の勇姿、及び単独公演を観た数少ない人達からの絶賛の嵐に、みんな心動かされたんじゃないでしょうか。かくいう俺も、アルバムを買ったその日に彼等のライヴをソニマニで初めて観て、噂以上に凄いことになってたもんで、本気で身震いしましたよ。1st「DE-LOUSED IN THE COMATORIUM」は俺的にも2003年を代表するアルバムの1枚と認識していたし、そのサウンドを聴けばライヴが如何に凄いかが想像に難しくなかったわけですが、まさかここまでとは‥‥もうね、ライヴ中ノるとかそういう身動きが全く取れず、約50分の間、微動だにできず、ただただステージ上のバンドを凝視するのみでしたもん。それくらい衝撃的だったんですよ、生のTHE MARS VOLTAは。

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2003年12月22日 (月)

THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003)

我々の前に衝撃的な登場をしたAT THE DRIVE-IN。しかしアルバム「RELATIONSHIP OF COMMAND」をリリースした翌'01年。まさかの分裂/解散。予定されていたフジロックへの出演も果たせぬまま、彼等はバンドとしてずるい幕引き‥‥勝ち逃げの状態で我々の前から姿を消したのでした。

そして'02年。彼等はふたつのバンドで我々の前に戻ってきます。SPARTAと、そして今回紹介するTHE MARS VOLTA。正直に言っていいですか?‥‥俺、SPARTAには全然興味が湧かなかったのね。何故なら、俺にとってのATDIってのは、セドリックのボーカルそのものなんですよ。勿論バンド全体としての雰囲気や生み出されるサウンド・楽曲、全てにおいて好きでしたが、やはりあの「声」があってこそ、俺は好きになったんですね。

だからこそ、その「声」を有するTHE MARS VOLTAの方に興味が行くのは、当たり前の話なんですね。けどさ‥‥やっぱり怖かったわけですよ。ATDIが最高だっただけに、その後に出てくるものが‥‥しかも分裂してしまった後ですから。あの5人だからこそ成し得たサウンドだというのは重々承知してるんです。だからこそ、聴くのが怖かった‥‥結果、昨年リリースされていたEPは聴かなかったんですよ。

で、このデビューアルバムですが‥‥実はこれもリリース後すぐには手を出しませんでした。同様にずっと引きずってたんですね、そういった思いを‥‥けど、ある切っ掛けで踏ん切りがついた。それは彼等のPVをたまたま観てしまったから。もうね、一発でノックアウトですよ。そうそう、俺がずっと待ってたのはこういうものだったんだ!って。それを一瞬にして思い出させてくれたのが、THE MARS VOLTAだったんです。やっぱりセドリックの「声」だったわけですよ。

ゲストとしてベースにRED HOT CHILI PEPPERSのフリーを迎えているとか、更にジョン・フルシアンテもゲスト参加してるとか、かのリック・ルービンがプロデュースしてるとか、いろいろ話題となるポイントはあると思うんですが、そんなことがどうでもよくなる程に、アルバム全体を覆う雰囲気やヴァイブ感が抜群に良い、良すぎるんです。ATDIに見られたパンク的要素は若干後退し、ラテン要素はそのままに、更にジャズやプログレ、ジャムバンド的フリースタイルなインプロビゼーション、そしてエレクトロニカ等‥‥とにかく他ジャンル/多ジャンルを包括した独自の感覚で構築されたロックがここには詰め込まれています。ATDIを気に入っていた人なら間違いなく受け入れられるだろう1枚。

とにかくね‥‥言葉にならない、いや、出来ない凄みを感じるんですね。感情の塊をそのまま素手でぶつけられたかのような、胸に大きな穴がポッカリ空いてしまったかのような衝撃。第一印象はとにか「衝撃」。ATDIのアルバムを初めて聴いた時にも似たような感覚を受けましたが、あれ以上でしたね。まさかこんなご時世に、こんなアルバムを聴こうとは‥‥嬉しいのと、焦って冷や汗かいたのと‥‥何だかよく判らない感情と、いろんな思いが入り交じる音。「アート」とか「ラウドロックの新星」とか‥‥そんなのどうでもいい。とにかく熱いロックンロール。感情を揺さぶるロックンロール。それだけが真実なんです、このアルバムの中では。

何でもっと早く聴かなかったんだろう‥‥と後悔したし、結局来日公演にも間に合わなかったし(来年1月にも再来日公演が予定されていますが、日程的に無理なんですよね)‥‥そしてアルバムリリースを待たずに、このアルバムでも大きな役割を果たしているサウンド・エフェクト担当のジェレミーがツアー先で亡くなってしまったこと。結局間に合わなかった‥‥って残念な気持ちもあるんですが、まだまだバンドは健在。ATDIのように短命に終わることなく、このままセカンドアルバムまで突っ走って欲しいです。



▼THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』
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