MÖTLEY CRÜE『DOGS OF WAR』(2024)
2024年4月26日にデジタルリリースされたMÖTLEY CRÜEの新曲。同年6月14日にはアナログ盤でのフィジカルリリースも予定されています(海外のみ)。
2019年3月、Netflixにて自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』を公開したのに合わせて、新曲4曲(うち1曲はカバー)を含むサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』をリリース。同年秋には2015年末の活動停止から4年を経てライブ活動を再開させることを発表し、コロナ禍での苦しい時期を乗り越えて2022年にはDEF LEPPARDとのダブルヘッドラインスタジアムツアーを実現させたMÖTLEY CRÜE。2023年にも同じ組み合わせによるワールドツアーを実施(同年11月には日本公演も実現しました)するも、このツアーにはミック・マーズ(G)は参加せずツアー引退(事実上の解雇)。後釜としてMARILYN MANSONなどとの共演で知られるジョン・5を迎えて活動を続けています。
2023年春に、SNS上でこの新ラインナップによるボブ・ロックとのレコーディング風景が公開され、「いよいよ新曲リリースか?」とざわついたことも記憶に新しく、その際の制作した1曲のタイトルが「Dogs Of War」だ、などと噂されたことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。同年初夏にロンドン・The Underworldにて実施したシークレットクラブギグではこの“DÖGS OF WAR”という名前でライブも実施され、年内にはリリースされるのかと期待されましたが、結局お披露目までには約1年もの歳月を要してしまいます。
ということで、「The Dirt (est. 1981)」から5年ぶりに届けられた新曲「Dogs Of War」。新たにBig Machine Recordsと契約して発表される、最初の楽曲となります。Big Machine Records自体は10年前、カントリー系アーティストによるMÖTLEY CRÜEのトリビュートアルバム『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』(2014年)を発表しており、近年はかのHYBE America傘下で運営されているとのこと。いろんな縁があってとはいえ、なかなかに興味深い組み合わせです。
楽曲自体は90年代後半以降のヘヴィ路線をベースに、適度にモダンな要素(リフの組み立て方やデジタルサウンドでの味付けなど)を取り入れたミドルヘヴィナンバー。「Shout At The Devil」あたりのズッシリ感を現代的解釈で表現した、といったところでしょうか。また、「The Dirt (est. 1981)」が(映画の舞台にちなんで)80年代の彼らをリフレッシュさせたものだとすると、こちらは『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)の延長線上にある“現在進行形”と呼べるのかな。個人的には好みのテンポ感&音像で、第一印象も悪くありません。
ヴィンス・ニール(Vo)もAメロで低音〜中音域中心、サビで中音域に高音を織り交ぜたメロディを難なく歌いこなしており、安定感が伝わります。これをライブで維持できたら文句なし(笑)。ジョン・5のギターワークはミック・マーズのそれとは違った変態的味わいがあり、そのアレンジ含め彼の演奏面での参入がバンドの若返りに大きな影響を及ぼしているようです(とはいえ、ジョン自身もすでに50オーバー。ほかのメンバーよりはひと回り若いのですが)。
楽曲クレジットを見ると、ニッキー・シックス(B)とトミー・リー(Dr)、そしてジョン・5の名前を見つけることができます。実はジョン、すでに『THE DIRT SOUNDTRACK』に収録された新曲(「The Dirt (est. 1981)」「Ride With The Devil」「Crash And Burn」)でもコライトで参加済み。あの時点でジョンの功績に対してニッキーが手応えを感じていたことで、彼をバンドに引き込んだのでしょうかね(当初はソングライティングやレコーディングサポートで参加する予定だったところを、ミックと揉めた……とかね)。何にせよ、個人的にはジョンに対して悪い感情もないので、こういういい仕事を続けてくれるなら大歓迎です。
ちなみに、恒例の“Gang Vocal”(いわゆるコーラスですね)のクレジットにTHE OFFSPRINGのデクスター・ホランド(Vo)と、近頃当サイトでのアクセスにおいて常に上位にランクインしているCLASSLESS ACTのデレク・デイ(Vo)の名前を見つけることができます。両バンドともボブ・ロックがプロデュースを手掛けていることもあって、このゲスト参加が実現したようです。
おそらく、ミックとの裁判云々でMÖTLEY CRÜE名義の新曲を思うように発表できなかった&新レーベルとの契約締結までに時間がかかってしまったことが影響し、レコーディングからリリースまでにここまで時間を要してしまったのでしょう。昨年のレコーディングでは3曲制作したとトミーは昨年末のインタビューでコメントしていますし、ヴィンスはそのうちの1曲をライブでも披露済みのBEASTIE BOYS「Fight For Your Right」であることも明かしています。昨年11月のライブでこのカバーを聴いたとき、
「Fight For Your Right」は(手垢がつきまくっているものの)音源化すべきカバーではないかな。アルバム制作は望めなさそうだから、3〜4曲程度のEPくらいは作ってもらいたいものです
と感じていたので、早くリリースしてもらいたいものですね(笑)。
アルバム発売の見込みは限りなくゼロに等しいですが、せっかく再始動したのですから、こうして定期的に新曲を届けて現役感を存分にアピールしていただきたいものです。
P.S.
この新曲リリースに際し、トミー・リーへのインタビューが実現しました。ぜひ併せてお楽しみください。
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