DERAPS『DERAPS』(2022)
2022年6月17日にリリースされたDERAPSの1stアルバム。
ジェイコブ・デラプス(Vo, G)、ウィリアム・ラチャンス(B)、ジョシュ・ギャラガー(Dr)からなる、カナダを拠点とする3人組ハードロックバンド。プレスリリースによると、リーダーのジェイコブは2016年に“ドゥイージル・アンド・フランク・ザッパ・フェローシップ・アワード”を勝ち取ったほどの猛者なんだとか。その頃のジェイコブのギター動画もいくつかYouTube上で確認することができますが、若き日のエディ・ヴァン・ヘイレン直系の派手なプレイは現在にもそのまま引き継がれており、とことん“これ”がやりたかったんだなと実感させられます。
今から2年前に「Sex, Drugs & Rock N' Roll」がYouTubeやストリーミングサービスで公開されており、ちょうど2020年春くらいから自分内でのVAN HALEN再評価が高まっていたこともあり、僕もその当時「これは良い!」と唸ったことをよく覚えています。ボーカルのアクの弱さは気になったものの、初期VAN HALENをベースにしたわかりやすい楽曲など「すべてにおいて80年代的だなあ。いいじゃないですか」と早くもアルバムを心待ちにしていたのですが、その後特に注目することなく(苦笑)、気づけば2年も経ってしまっていました。
その間には、当のエディが亡くなるという悲しい出来事もありましたが、あれから2年近く経ちようやく届けられたフルアルバムは、アルバム全体を通して70年代末から80年代初頭のVAN HALENやUSハードロックを彷彿とさせる、軽やかでご機嫌なパーティソングで構成されています。2022年にもかかわらず(笑)。
ジェイコブの豪快なギタープレイを10数秒にわたりフィーチャーしたオープニングSE「Invasion」から始まる本作は、まさにVAN HALENのデビュー作『VAN HALEN』(1978年)をオマージュしたものと言えるでしょう。そこから時代錯誤なタイトルの「Sex, Drugs & Rock N' Roll」へと突入する流れ、「Live Fast Die Slow」なんていういかにもなタイトルで、往年のVAN HALENを思わせるコーラスをフィーチャーしたミドルテンポのロックンロール、「Veins Of My Heart」で聴かせるドラマチックな構成のギターソロ、アコギをフィーチャーしたインストトラック「Èlizabeth」など、とにかくどの楽曲も粒揃い。「Sex, Drugs & Rock N' Roll」で初めて耳にしたときはアクの弱さが足を引っ張っていたジェイコブのボーカルも、この2年を経て貫禄が増し始めていて、アルバムとして聴いたときはそこまで弱いと感じませんでした。そりゃ本家には敵いませんが、これはこれで全然アリ。むしろ、2作目以降でどう“化ける”のかも気掛かり。いつまでもVAN HALENをなぞってばかりではいられないと思うのですが、そこでひとつ鍵となるのが7曲目「Make Ya Groove」でトライしたスタイルなんじゃないかな?と、個人的には感じています。
意外とバラエティ豊かなんだけど統一感の強さが伝わる作風は、好きな人にはたまらないでしょう。もちろん、「いやいや、エディのほうが……」と苦言を呈すオーバー40、オーバー50世代もいるでしょうが、そういう人はずっとVAN HALENだけ聴いていればいい。僕は好き、ってだけの話。心を広く、視野を広くしてリアルバムの音を楽しみたいだけなんですから。
むしろロック不毛だと言われる今の時代、若い世代がこれを聴いてどう感じるかのほうがずっと大切じゃないかな。こういうバンドを普通の感覚で「え、カッコいいじゃん、これ」と捉えてもらえて、そこからルーツのVAN HALENや、アルバムラストでカバーされた「Ballroom Blitz」の原曲者・SWEETに触れてみたりと、そういう“掘り起こし”作業につながっていったら、最高じゃないですか。
▼DERAPS『DERAPS』
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