THE KOOKS『10 TRACKS TO ECHO IN THE DARK』(2022)
2022年7月22日にリリースされたTHE KOOKSの6thアルバム。
前作『LET'S GO SUNSHINE』(2018年)から約4年ぶりのスタジオアルバム。この間に2008年から参加していたピーター・デントン(B)がバンドを脱退し、以降ルーク・プリチャード(Vo, G)、ヒュー・ハリス(G)、アレクシス・ヌニェス(Dr)の3人にサポートメンバーを加えた形で活動を続けています。
今作は今年に入ってからデジタルリリースされた2枚のEP(『CONNECTION - ECHO IN THE DARK, PT.I』『BEAUTIFUL WORLD - ECHO IN THE DARK, PT.II』)に続く、三部作の完結編的立ち位置のアルバム。前述のEPに収められた計6曲(「Connection」「Jesse James」「Modern Days」と「Closer」「Beautiful World」「25」)に新曲4曲(「Cold Heart」「Sailing On A Dream」「Oasis」「Without A Doubt」)を加えて再構築した、文字通り10トラックで構成された1枚に仕上がっています。
僕自身はこのバンドに対して、初期2枚(2006年の1stアルバム『INSIDE IN / INSIDE OUT』と、2008年の2ndアルバム『KONK』)の印象しかなかったのですが、10数年ぶりに彼らの新作に触れてみるとまずその質感の変化に驚きを隠せませんでした。こんなにデジタル/エレクトロビートを積極的に取り入れたバンドだったけ?
どうやらこのアルバム・プロジェクトから取り入れた新機軸とのことで、軸にあるメロディやギタープレイ/フレージングは彼ららしい本来の個性が発揮されているよう。テイストこそモダンですが、やっていること自体はマッドチェスター以降のUKロックらしい“ダンサブルなギターロック”を下地にしたもので、そこに10年選手らしい落ち着いた空気感を纏わせて安定感を示すという頼もしさも見せています。
レコーディングをベルリンとウィーン、ロンドンで実施したことあってか、どことなくデヴィッド・ボウイの“ベルリン三部作”を彷彿とさせるものもありますよね。そもそもバンド名自体がボウイの「Kooks」からヒントを得たものですし。ボウイ“ベルリン三部作”からの影響、マッドチェスター以降のアシッドテイストとダンサブルな要素、そしてブリットポップ以降のUKロックなど先人たちの偉業を独自に解釈し、コロナ禍を通過する形で自分たちならではの形へとまとめ上げた。初期の作品にあったロックバンドならではの初期衝動性は皆無ながらも、大人になった彼らの余裕と意欲/向上心が絶妙なバランスで散りばめられた、“2022年ならではのUKロック”らしい1枚に仕上がったのではないでしょうか。
彼ら然りARCTIC MONKEYS然り、2000年代半ばに登場したUKギターロックが10数年の活動を経て、どんどん独自の道を開拓していく様は、どこか歴史の繰り返しを見せられているようにも感じますが、そういった点も含めて非常にUKらしいなと実感できる、そんな1枚です。
▼THE KOOKS『10 TRACKS TO ECHO IN THE DARK』
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