STICK TO YOUR GUNS『SPECTRE』(2022)
2022年7月29日にリリースされたSTICK TO YOUR GUNSの7thアルバム。日本盤未発売。
Pure Noise Records移籍第1弾アルバムとなった前作『TRUE VIEW』(2017年)から約5年ぶりのフルアルバム。新作音源としてはA-HA「Take On Me」のカバーなどを収録した、昨年2月のアコースティックEP『THE MEANING REMAINS』(2021年)から1年半ぶりとなります。
昨年9月に本作からのリードトラック「More Of Us Than Them」がデジタルリリースされましたが、そこから考えるとアルバムが届けられるまでに随分時間がかかったなと。かなり待たされた感が強かったですが、その分内容は非常に充実度の高い、従来のファンならば納得の1枚ではないでしょうか。
40秒程度のイントロダクション「(My Heart Is A...)」からリードトラック「Weapon」へと続くドラマチックな構成、その「Weapon」の破壊力が強い疾走メタルコアサウンドと、一緒にシンガロングしたくなるアンセム感の強さたるや。この時点で掴みはOKといったところでしょうか。
その後も2〜3分台と、コンパクトでパワフルなナンバーが目白押し。ヘヴィなビートが気持ち良い「Who Dares Wins」や「Hush」、冒頭のキャッチーなメロディ含め王道感の強いハードコアチューン「A World To Win」、アコギを効果的に用いた“ヘヴィだけどユルめ”な「Open Up My Head」と、前半6曲はあっという間に過ぎ去っていきます。
後半はヘヴィ&グルーヴィーな「Liberate」を筆頭に、同じテンポ感で空気を引き継ぎつつ徐々に熱量を高めていく「The Shine」、メタリックさとパンキッシュさのバランスが絶妙な「Instruments Of The End」、深めのリバーブをかけることでシリアスさの強まった「Father」、前曲からのエモーショナルな流れを汲む先行シングル「More Of Us Than Them」(この流れでここに置くのか!と最初にアルバムを聴いたときは驚きました)、そして穏やかさを漂わせたアコースティックナンバー「No Way To Live」で締めくくり。
全12曲/34分とかなりコンパクトな内容なのですが、その中身は非常に濃厚で聴き応えは非常に強烈です。短くて濃厚だからこそ、何度も繰り返し聴くことで、その情報をしっかり理解していく必要もありますが、その一方で何も考えずに音と向き合うこともできる。聴き手によって受け取り方が大きく変わりそうな、そんな1枚でもあるのかなと思いました。
こんな季節だからこそ、今は無心で暴れられる音が欲しい。けど、ちょっと落ち着いたときにそのメッセージや詰め込まれた情報を紐解いてほしい。本作は、そんな「一粒で二度美味しい」アルバムかもしれません。
▼STICK TO YOUR GUNS『SPECTRE』
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