KISS『END OF THE ROAD WORLD TOUR』@東京ドーム(2022年11月30日)
KISS、3年ぶりの日本公演にして、いよいよ本当に(本当に?)最後の来日公演。本来なら2019年12月の来日がラストになるはずでしたが、その後2020年に終了予定だったワールドツアーがコロナの影響で延期/中止となり、仕切り直しでスケジュールをいろいろ組んでいたところに再度日本を訪れることになったようです。ただ、スケジュール的な問題なのか、今回は東京ドーム1回のみ。2003年の来日時は関東のみ(武道館3DAYSと横浜アリーナ1公演)というのもありましたが、こういうケースは初めて。元が取れるのでしょうか(そのぶんチケ代高騰&グッズで回収か)。
そんなこんなで、1977年の初来日から数えて26回目の東京公演(MCでポール・スタンレーもおっしゃっていました)。自分はこれまで1995年1月の武道館2DAYS、1997年1月の東京ドーム、2001年3月の東京ドーム(本サイトで唯一レポを残した公演)、2013年10月の武道館(1日のみ)、2015年3月の東京ドーム(ももクロちゃんのお仕事でバックヤードにいたので本編数曲とアンコールのみ)の計6回観覧しており、今回の7回目がおそらく最後のKISSになりそう。いや、本当にそうなるんだよな……?
さすがに辞める辞める詐欺が続いたからか 集客的にはそこまでパンパンというわけではなく、スタンド席のサイドからステージ寄りはすべて空けた状態。ちゃんと埋まっていれば3万5000〜4万人程度は入っていたのかな。自分は“地獄のスタンド席”と名付けられた正面ちょい下手寄りのスタンド3列目。なかなか観やすかったですよ。入場すると、場内ではPANTERAやMOTÖRHEAD、QUEENSRYCHE、ACCEPTなどメタルクラシックが流れ続けている。昨日とは真逆ですわ(笑)。
開演定刻前後でAEROSMITH「Walk This Way」、VAN HALEN「Panama」と音量が一段と大きくなり、お約束となったLED ZEPPELIN「Rock And Roll」でお客さん総立ち。この曲が始まればライブはもうすぐスタート、とみんな知っているわけです。
で、暗転して恒例の前口上「You wanted the best, you,got the best. The hardest band in the world, KISS!」でさらにボルテージが上がると、落ち着いたテンポ感の「Detroit Rock City」イントロとともにポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、トミー・セイヤー(G, Vo)が天井から吊るされたミニステージみたいなのに乗って登場。もはやお約束ですね。その後ろではエリック・シンガー(Dr, Vo)がもっさりと軽やかの間にあるビート感で存在感を示すのですが……音悪いな(糞)。東京ドームで久しぶりにここまで音の悪いライブ観たかも。ここまでシンプルなバンド編成で、しかも音数もそこまで多くないし、ギターも歪みまくっているわけではないし、むしろベースはゴリゴリしていて輪郭がはっきりしているのに、すべてがグシャっとしてしまっている。これ、後半まで安定しませんでしたね。勿体ない。
通常の半音下げ(音源版)からさらに半音下げた状態なのは、ここ最近の傾向なのでもう慣れました。「Detroit Rock City」はもったりしているものの、同じテンポ感で聴く「Shout It Out Loud」は逆に歯切れ良く聞こえるから不思議。基本はポール&ジーンが交互に歌う曲ですが、サビのリフレイン終盤にはトミーも加わり、ご本家エース・フレーリー(G, Vo)ばりの存在感を発揮してくれます。さらにそこから「Deuce」「War Machine」と、ジーンVo曲が立て続けに2曲。後者エンディングではお馴染みの火吹きもフィーチャー。73歳のおじいちゃん、今日も頑張ります。
そういえば、この日のライブ。開演前の注意事項アナウンスがNIGHT RANGERのときにあった「声援、歌唱はお控えください」から「声援、歌唱は周りの迷惑にならないようにお願いします」に変わっており、バンド側の煽りを受けて歌ったりコール&レスポンスしたりすることに対して黙認するような形になっていました。これでもまだ解禁じゃないのか。グレーすぎだろホント。
なもんだから、僕もこの日は気心知れた楽曲群をマスク越しで歌いまくりました(ボリュームはかなり小さめですが)。「I Love It Loud」ももちろん、シンガロングしてきましたよ。そんな感じでテンション上がっていたら、ポールがあるサビの一部を一緒に歌うことを促すのですが……えっ、「Say Yeah」やるの? KISS史上唯一日本発売されなかったオリジナルアルバム『SONIC BOOM』(2009年)の最後を飾るこの曲、実は2013年の来日記念で発売された『MONSTER』ジャパン・ツアー・エディション付属のスペシャル・ベスト・アルバムで本邦初リリースされているんですよね。とはいえ、サブスクで未解禁のアルバム収録曲とあって、反応はいまひとつ、いや、いまふたつくらいだったかな。この曲と「Psycho Circus」のときは近くにいた諸先輩方も座って観ていましたし。
「Cold Gin」のエンディングから突入するトミーのギターソロパート、そして「Calling Dr. Love」終盤にフィーチャーされたポール&トミーのギターバトル(バトルというほどでもないけど)など、ミュージシャンとしてのこだわりを感じさせるパートも随所に用意されていました。「Psycho Circus」ではギターソロ後にエリックのドラムソロもあり、その流れで「100,000 Years」に入る構成も安定感あります。そして、ジーンの不穏なベースソロ&血糊タイムを経て「God Of Thunder」へ。ジーン、再び天井付近にまで上昇していきます。これも既視感ある風景ですね。そこから、ポールがアリーナ中央にあるサブステージへターザンの如く移動。かなり近くまでやってきてくれましたが、表情までは目視できません。いや、白塗りが照明で白飛びしてるのか。高校時代にバンドでコピーもしたし、何百回、何千回とリピートしてきた「Love Gun」や「I Was Made For Lovin' You」をそらで歌い、最後はX JAPAN「紅」 エリックが歌う「Black Diamond」で本編締めくくり。この流れも伝統芸能ですね。もはや何も言うことはない。いいんです、お約束ですから。
アンコールでは、再びエリックが「Beth」をソロ歌唱。オケを流しながら椅子に座って歌う……のかと思ったら、白いピアノの前に座ってる! エリック、ピアノを弾いている風ですが、この距離からだと実際に弾いているのかわからない。スクリーンにも胸から下は絶対に映さないし。手元映したらアウトなんですかそうですか。いや、エリックの歌も板についてきましたね。
そして、4人がステージに揃い、なぜか手を繋いで高く掲げる……完全にエンディングの様相を見せますが、ポールが「まだ帰りたくないって? しょうがねえなあ」と言いながら(いやそこまで言ってないが)「Do You Love Me」をプレゼント。この曲、以前もライブで聴いたときに「もったりしすぎていて気持ち悪い」と思ったのですが、それは今回も変わらず、会場の音響の悪さが影響しているのか、そもそも現編成でのアレンジが悪いのか。最後の最後まで残念です。この曲のときには巨大なバルーンが複数アリーナ客の頭上を飛び跳ねていました。
いよいよ正真正銘のラストナンバー。ポールが「Rock and roll all nite, and party everyday!」と叫ぶのかと思ったら、普通に曲名をコールしただけ。ちょっと拍子抜け。そこから紙吹雪も舞い、ポールもギターを壊し、2時間強にわたる至れり尽くせりのエンタメショーは幕を下ろしました。
曲間にポールが喋りまくって観客とコミュニケーションを図りまくろうとするのは相変わらずなのですが、前日にノーMCを徹底した安全地帯を観たあとだけに、この対極さにじんわりきました。落差が激しすぎて、耳がキーンとする感じもあったような、なかったような。
けど、これがKISSなんだよね。70を軽く超えた今もあんな厚底ブーツを履いて、鎧みたいな衣装を見にまとい、肌も荒れ放題な中も白塗りメイクを続ける。このおもてなし精神が妙に日本人の感性にフィットしていたからこそ、50年近くも愛され続けているわけですから。
さすがにもう日本に戻ってくることはないと思います(次来たら本気で「また集金かよ!」と揶揄してやります)が、最後の最後は海外で観たいな……と思っている自分がいます。もう一度、彼らとステージで再会できる日を願って(ただし日本以外で)。
セットリスト
01. Detroit Rock City
02. Shout It Out Loud
03. Deuce
04. War Machine
05. Heaven's On Fire
06. I Love It Loud
07. Say Yeah
08. Cold Gin
09. Guitar Solo
10. Lick It Up
11. Calling Dr. Love
12. Psycho Circus
13. Drum Solo
14. 100,000 Years
15. Bass Solo
16. God Of Thunder
17. Love Gun
18. I Was Made For Lovin' You
19. Black Diamond
<アンコール>
20. Beth
21. Do You Love Me
22. Rock And Roll All Nite
〜Ending SE: God Gave Rock 'N' Roll To You II