カテゴリー「Randy Rhoads」の8件の記事

2022年11月 5日 (土)

V.A.『RANDY RHOADS TRIBUTE』(2000)

2000年2月23日にリリースされたランディ・ローズ(ex. OZZY OSBOURNE、ex. QUIET RIOT)のトリビュートアルバム。日本限定で制作されたものですが、海外では韓国でも発売されていたようです。

プロデュースや制作の総指揮を担当したのは、SKID ROWACCEPTMETALLICAなどのプロデュースやエンジニアリングで知られるマイケル・ワグナー。それもあってか、参加ミュージシャンは過去に彼と仕事をしたことがあるHR/HM系アーティストが多数名を連ねています。

そのメンツもセバスチャン・バック(Vo/ex. SKID ROW)、ロブ・ロック(Vo/IMPELLITTERI)、ジョー・リン・ターナー(Vo/ex. RAINBOWなど)、マーク・スローター(Vo/SLAUGHTER)、ウルフ・ホフマン(G/ACCEPT)、ジェイク・E・リー(G/RED DRAGON CARTEL、ex. OZZY OSBOURNE、ex. BADLANDS)、ケイン・ロバーツ(G/ex. ALICE COOPER)、ロイ・Z(G/WEST BOUND、TRIBE OF GYPSIES、HALFORDなど)、ジョージ・リンチ(G/ex. DOKKENなど)、山本恭司(G/BOW WOW)、クリス・インペリテリ(G/IMPELLITTERI)、アル・ピトレリ(G/SAVATAGE、ex. MEGADETHなど)、ダイムバッグ・ダレル(G/ex. PANTERA)、チェット・トンプソン(G/ex. HELLION)と、ピュアHR/HM界隈には非常に豪華なもので、曲ごとに異なる組み合わせで華を添えています。なお、リズム隊はマイク・ブリグナーデロ(B/GIANT)&マイケル・カーテロン(Dr/ex. DAMN YANKEES)が固定で担当しています。

日本のレーベル主導ということもあり、その人選こそ日本のメタルファンが好みそうなものですが、内容的には可もなく不可もなくといった印象。そもそも取り上げられている楽曲がオジー・オズボーンの初期2作からなので、選曲も限定されますし、そりゃあこうなるわなといったところでしょうか。だって、前半5曲が『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)、後半5曲が『DIARY OF A MADMAN』(1981年)からで、冒頭4曲に関しては『BLIZZARD OF OZZ』とまったく同じ流れですし、耳馴染み良すぎるというか聴き飽きたものがありますから。

ワールドワイドリリースが実現した『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』(2015年)と比べると、聴きやすさや安定感は今作のほうが勝るものの、繰り返し聴きたくなるかと言われるとそれはまた別の話。初期QUIET RIOT時代の楽曲を含むこと、サージ・タンキアンSYSTEM OF A DOWN)やトム・モレロRAGE AGAINST THE MACHINE)みたいにアクの強いアーティストを含むという点で、個人的には『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』のほうが好みかな。あくまで僕個人の視点ですが。

ただ、多くのHR/HMリスナーにとってはこの『RANDY RHOADS TRIBUTE』のほうが正義なんでしょうね。その理由も理解できますが。

過去にオジーバンドに在籍したジェイクが大切な「Crazy Train」のソロを崩しまくっていたり、ジョージ・リンチはジョージ・リンチのままだったり、クリス・インペリテリもクリス・インペリテリのままだったりと、まあ面白いっちゃあ面白いんですが、そんな中でランディに対する敬意がしっかりプレイに表れた山本恭司やダイムバッグ・ダレルのソロは、すべてを超越した正義感が伝わります。

シンガーに関しても、もうひとりふたり意外性の強い方が参加していたら、もうちょっと印象が変わったのかも。そもそも、オジーが歌う楽曲ですから、そこまで歌唱力/表現力の高いシンガーを必要するわけではないですから、アクの強さで勝負する人がいてもよかったんだけどな……というのも、ごく個人的な感想です。まあ、この4人(バズ、ロブ・ロック、ジョー・リン・ターナー、マーク・スローター)だと不思議と統一感も伝わったので、全然アリっちゃあアリなんですけどね。

先の『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』と違って日本限定作品ということもあり、現在は廃盤状態であり、サブスクでも聴くことができない代物。中古盤ショップを回れば意外と簡単に、かつ安価で入手できますので、気が向いたらチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼V.A.『RANDY RHOADS TRIBUTE』
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2022年11月 1日 (火)

V.A.『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』(2015)

2015年3月3日にリリースされた、ランディ・ローズ(G/ex. OZZY OSBOURNE、ex. QUIET RIOT)のトリビュートアルバム。日本盤は同年3月25日発売。

ランディのトリビュートアルバムは、過去にオジーの楽曲のみを集めた『RANDY RHOADS TRIBUTE』(2000年)が発表されていますが、今作は1970年代のQUIET RIOT時代の楽曲も含む選曲。また、前作がピュアなHR/HM系アーティストによるものなら、今作はランディと同時代に登場したミュージシャンや活動を共にしたアーティスト、90年代以降のモダンなメタルを奏でるミュージシャンなど、より幅広さを感じさせる人選となっています。

まあとにかく、オープニングの「Crazy Train」を聴いて多くのリスナーがひっくり返るのではないでしょうか。だって、ボーカルがサージ・タンキアンSYSTEM OF A DOWN)、ギターがトム・モレロRAGE AGAINST THE MACHINE)ですからね。正統派メタルリスナーやランディを妄信的に愛する方からは非難の嵐じゃないかな(苦笑)。ただ、個人的にはサージのボーカルにはオジー愛を感じたし、トムのギターもただコピーするんじゃなくて自分らしさを貫きながらランディのスタイルを表現しようとする強い意志も伝わりましたが、いかがでしょうか。

その後も、シンガーはオジーやケヴィン・ダブロウをコピーしつつ(ほとんどティム・リッパー・オーウェンズですが。笑)、ギタリストたちはランディの印象的なフレーズを随所に残しつつ、各々の個性を発揮させる。原曲レイプだ、けしからん!と怒る気持ちもわかりますが、だったらそもそもトリビュートアルバムだのカバーアルバムだの聴かないほうがいいし、これくらい遊んでくれるから聴きがいもあるわけで。個人的にはどれくらい原曲を“壊す”かが楽しみなわけで、そういう意味では本作は……ギターに関しては及第点だけど、それ以外のパートや楽曲アレンジに関しては普通すぎるかな。

そんな中、己を突き通しまくるチャック・ビリー(TESTAMENT)による「Mr. Crowley」が、サージ歌唱の「Crazy Train」並みによかったな。この曲では、今は亡きアレクシ・ライホ(G/BODOM AFTER MIDNIGHT、ex. CHILDREN OF BODOM)の泣きまくりギターも楽しめるので、なお良し。あと、ジョエル・ホーケストラ(G/WHITESNAKE)が頑張りまくりの「Killer Girls」も悪くなかったな。

逆に、実際にオジーバンドに在籍した経験を持つガス・G.(FIREWIND)による「Goodbye To Romance」や、ブラッド・ギルス(NIGHT RANGER)による「Suicide Solution」が、ランディ云々よりも自分らしさ全開なのが笑えます。特にガス・G.、君はやりすぎだ(笑)。

まあ、あれです。こういったカバーアルバムやトリビュートアルバムはマジになりすぎないのが一番。笑いながら「お、意外と良いじゃん」「いやいや、それはないでしょ」とかツッコミ入れつつ楽しむのが、精神衛生上もっとも好ましいと思います。

なお、本作はサブスクでも配信されていますが、2015年のCD/アナログ盤と曲順が若干異なっているのでご注意を(オリジナルの曲順はこのあたりでご確認いただけます)。

 


▼V.A.『IMMORTAL RANDY RHOADS - THE ULTIMATE TRIBUTE』
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2022年10月31日 (月)

QUIET RIOT『THE RANDY ROHADS YEARS』(1993)

1993年11月12日にリリースされたQUIET RIOTのコンピレーションアルバム。日本盤は同年12月21日発売。

本作はランディ・ローズ(G/1982年没)在籍時の海外未発売音源や本邦初公開となる未発表曲を含む、レアトラック集。多くの楽曲にはリミックスが施されているほか、未発表曲「Force Of Habit」以外のボーカルトラックはケヴィン・ダブロウ(Vo)によって再レコーディングされています。なので、日本限定発売の1stアルバム『QUIET ROIT』(1978年)および2ndアルバム『QUIET RIOT II』(1978年)のオリジナル音源とも異なるテイクを楽しむことができます。

全10曲中、『QUIET ROIT』から3曲(うち1曲はバージョン違い)、『QUIET ROIT II』からは3曲(うち1曲がバージョン違い)、それ以外の4曲は未発表曲となっています。『QUIET ROIT』収録曲「Mama's Little Angels」の別バージョンとなる「Last Call For Rock 'N' Roll」は新たに歌詞が書き直されており、『QUIET ROIT II』からの「Afterglow (Of Your Love)」(SMALL FACESカバー)はリズム隊を排除したアコースティックバージョンで収録(終盤にちょっとだけリズム隊が加わります)。「Mama's Little Angels」はドラムトラックもリメイクされており、完全に80年代以降のQUIET RIOTの音そのものに進化。また、後者はアコギの音色がオジー・オズボーン『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)でのランディの音色に近づけられており、そのあたりからもバンド側のランディに対する敬意や愛情が伝わります。

実際、本作収録の多くの楽曲におけるギターサウンドは、新たにカルロス・カヴァーゾ(G)所有のマーシャルアンプを介して再生されるなどして、チープだったオリジナル音源にふくよかさを加えることに成功しています。また、1977年のライブ音源「Laughing Gas」にフィーチャーされた長尺のギターソロは、別々で演奏された複数のギターソロを繋ぎ合わせたもので、その中にはのちの「Dee」や「Goodbye To Romance」などで耳馴染みのあるプレイ/フレーズも登場します。

アルバムを通して聴くと、どうしてもB級臭が否めなかった『QUIET ROIT』や『QUIET RIOT II』ですが、現代的に手が施された本作でのバージョン/トラックを聴くと、実は70年代に彼らが実践してきたことはその後のQUIET RIOTとさほど大きく違っていないことにも気づかされるし、当時にオジーとタッグを組む前からランディ・ローズは素晴らしかったのだという事実も再確認できる。その評価のわりに残された音源が少ないだけに、本作はランディのファンやすべてのHR/HMファンにとって非常に貴重な音源集と言えます。

ところが、本作は2022年10月時点で廃盤状態。サブスクでも未配信のままです。この11月11日からはランディの自伝映画『ランディ・ローズ』も国内公開されるだけに、聴きたい人が手軽に楽しめる状態にしてほしいものです。

 


▼QUIET RIOT『THE RANDY ROHADS YEARS』
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QUIET RIOT『QUIET RIOT II』(1978)

1978年12月2日に日本限定でリリースされたQUIET RIOTの2ndアルバム。海外では2022年7月8日、No Remorse Recordsを通じて初めて発売されました。

『静かなる暴動』と邦題の付けられた日本限定発表のデビューアルバムに続いて早くも届けられた本作。1978年夏から秋にかけてレコーディングが行われたものの、アルバム完成直後にケリー・ガルニ(B)がバンドを脱退。入れ替わるようにルディ・サーゾが加入し、アートワークに加わっています(レコーディング未参加ながらも、クレジットにも彼の名前が記載されています)。

軽やかなグラムポップ色濃厚だった前作と比べると、本作収録曲の多くはずっしりとしたミディアムチューンが中心。相変わらずバブルガムポップ的なキャッチーさは強いものの、演奏やアレンジ面でハードさが強まり始めています。それでも、のちのヘアメタル期と比べるとだいぶ“軽い”ですが。

やりたいことを詰め込み始めた結果、1曲の尺が4〜5分と長くなり始めていることからも、バンドとして、そしてミュージシャンとしての技術や才能が開花し始めていることが、ソングライティング面での創意工夫から伝わります。ここではとにかく、ランディ・ローズ(G)のギタリストとしての華が一気に開花していることが一番でしょう。「Eye For An Eye」や「Trouble」「Killer Girls」「Face To Face」あたりの派手なプレイを耳にすると、のちのオジー・オズボーンとのコラボレーション……『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)で聴くことができるプレイとの共通点も豊富に見つけられます。

また、バンドとしてもその後の『METAL HEALTH』(1983年)への架け橋が用意されており、オープニングを飾る「Slick Black Cadillac」はその後『METAL HEALTH』でもリメイクされることに。『METAL HEALTH』バージョンにはないアレンジなど含め、耳慣れたバージョンとの違いは新鮮に響くのではないでしょうか。

さらに、前作でも取り上げたSMALL FACESのカバーがここにも登場。今回は「Afterglow (Of Your Love)」をピックアップしており、若干大人びたアレンジ含めアルバム全体のトーンにもマッチしております。QUIET ROITはその後も「Itchycoo Park」を『TERRIFIED』(1993年)でも取り上げているので、SMALL FACES好きはケヴィン・ダブロウ(Vo)の趣味なのかもしれませんね。

1stアルバム同様にB級と言ってしまえばそれまでですが、だからといって切り捨てられない魅力が随所に用意されている。QUIET RIOT云々ではなく、70年代後半のUSハードロックやグラムポップ、パワーポップなどに多少なりとも興味がある方、そしてランディ・ローズというギタリストに興味があるリスナーなら手を伸ばしておいて間違いのない1枚です。

なお、2022年に再発された音源は一応「公式リリース」という形になっていますが、音源自体はマスターテープを元にしたものではなく(マスターが復旧不可能なほどに劣化していたとのこと)、日本盤アナログレコードからの盤起こしがベースになっている、ちょっとグレーな代物。1stアルバム同様、こちらもサブスク未解禁ですのでご注意を。

 


▼QUIET RIOT『QUIET RIOT II』
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2022年10月30日 (日)

QUIET RIOT『QUIET RIOT』(1978)

1978年3月2日に日本限定でリリースされたQUIET RIOTの1stアルバム。海外では2022年7月8日、No Remorse Recordsを通じて初めて発売されました。

Wikipediaなどによると、QUIET RIOTは1973年にランディ・ローズ(G)を中心に結成されたとのこと。当初はMARCH 1 〜 LITTLE WOMENなどという名義で活動していたとのことで、メンバーはランディのほかケヴィン・ダブロウ(Vo)、ケリー・ガルニ(B)、ドリュー・フォーサイス(Dr)という布陣。1975年に『SUICIDAL SHOW』と題した3曲入りEPを発表するも、鳴かず飛ばず。本国でのディールをなかなか得られない中、なぜか日本のCBSソニー(現・Sony Music)と契約し、日本限定でアルバムを2枚リリースすることとなります。

『静かなる暴動』と邦題の付けられた本作は、全12曲を収録。EP『SUICIDAL SHOW』に収録された「Just How You Want It」や「Back To The Coast」(『SUICIDAL SHOW』収録の「West Coast Tryouts」をリメイクしたもの)に加え、SMALL FACES「Tin Soldier」やDAVE CLARK FIVE「Glad All Over」といったカバー曲も収められています。カバーを取り上げるのは、すでにこの頃からのことだったんですね。

ランディ脱退後、新たな編成でメジャーデビューし大ブレイクした『METAL HEALTH』(1983年)の片鱗を見つけようとすると、ちょっと「?」と感じるかもしれない本作。ハードロックというよりはグラムポップやバブルガムポップ的要素の強いテイストで、それこそのちにカバーするSLADEやSWEETといったUKパワーポップのオリジネーターなどとの共通点も見つけられるサウンドではないでしょうか。

と同時に、ランディのギタリストとしての非凡さはここではまだ発揮されておらず、ケヴィンのボーカルを軸にノリノリのロックンロールを聴かせていく方向に主軸を置いているような印象も受けます。リズム隊の演奏も随所に危うさが感じ取れるし、そりゃあ本国のメジャー契約も難しいかなと。

確かに『METAL HEALTH』以降の彼らのイメージで接すると、少々退屈に感じられるかもしれない。それでも、いい曲もあるんですよ? 先に紹介した「Just How You Want It」や「Back To The Coast」、アルバムのクライマックスを飾る「Demolition Derby」などはグラムポップとして捉えると全然アリ。個人的には好物の類なので、B級感こそ強いけど存分に楽しめる1枚です。

なお、2022年に再発された音源は一応「公式リリース」という形になっていますが、音源自体はマスターテープを元にしたものではなく(マスターが復旧不可能なほどに劣化していたとのこと)、日本盤アナログレコードからの盤起こしがベースになっている、ちょっとグレーな代物。最初に際し、オリジナルの12曲に加え『SUICIDAL SHOW』からの3曲も追加収録されています。

ケヴィンもこの世を去った今、オリジナルマスターからの最初は絶望的かもしれません(僕自身、それを理解した上でここで紹介しています)。サブスク未解禁ですが、それでも興味があるという方はぜひチェックしてみてください。

 


▼QUIET RIOT『QUIET RIOT』
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2019年3月19日 (火)

OZZY OSBOURNE『DIARY OF A MADMAN』(1981)

オジー・オズボーンが1981年11月に発表した、通算2作目のソロアルバム。BLACK SABBATH脱退を経て起死回生の一撃となったソロデビューアルバム『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)が全英7位、全米21位というヒットにつながり、バンドはそこから間髪入れずにレコーディングに突入。ランディ・ローズ(G)、ボブ・ディズリー(B)、リー・カースレイク(Dr)という同じ布陣で制作されました。

聴いてもらえばわかるように、疾走感のあるオープニングトラック、ポップでキャッチーなシングル曲、メロディアスなスロー/ミディアムナンバー、ヘヴィなミドルナンバーという序盤の構成は前作『BLIZZARD OF OZZ』をなぞったもの。もちろんまったく同じというわけではないですが、作品の方向性としては何がやりたいかは一聴してすぐに理解できると思います。

ですが、このアルバムを聴き進めていくうちに、『BLIZZARD OF OZZ』を軸にした世界観がより広がりを見せていることにも気づかされます。パーカッシヴなドラミングから始まる「Little Dolls」は前曲「Believer」にも引けを取らないヘヴィでキャッチーな楽曲だし、オジーのビートルズ愛好家ぶりが反映されたメロディアスなバラード、ダイナミックなアレンジがひたすらカッコいいシャッフルナンバー「S.A.T.O.」、そしてクラシカルかつドラマチックな展開を見せる大名曲「Diary Of A Madman」。オジーの才能はもちろんですが、それを見事な形で具体化し、クオリティの高い作品へと昇華させたランディの才能も前作以上の形で開花しています。

もちろん、前作の延長線上と表現したアルバム前半の4曲も、1曲1曲のクオリティは前作以上。ランディのギタープレイも圧巻の一言で、個人的には「Over The Mountain」や「Flying High Again」のギターソロはいつ聴いても心踊るものがあります。「You Can't Kill Rock And Roll」のバラード調に始まりながらもサビで勢いをつけるアレンジも冴えまくっているし、サバス時代とは異なるヘヴィさがにじみ出た「Believer」のギターワークも最高。要するに文句の付けどころがない1枚なのです。

ランディ・ローズは本作発表後数ヶ月後の1982年3月19日に飛行機事故で此の世を去るわけですが、ランディ在籍時の本作収録曲の公式ライブ音源って「Flying High Again」「Believer」くらいしかなかったじゃないですか。そのせいもあってか、10代の頃はこのアルバムに対する印象が薄かったんです。ライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)にも上記2曲しか収められていませんでしたしね。

ところが、年をとってからオジーのカタログをひととおり聴いて、何度もリピートしていくうちに『DIARY OF A MADMAN』の完成度の高さに改めて気づかされる。そんな機会が年々増えていったわけです。ぶっちゃけ、『BLIZZARD OF OZZ』と比較するのが愚問かと思えるぐらい、初期2作はそれぞれに素晴らしいアルバムであって、僕の中では甲乙付け難いんです。そう思うリスナー、絶対に多いと思うんですよね。

今年も3月19日がやってきてしまいました。残念ながら2日後に控えた『DOWNLOAD JAPAN 2019』でのオジー来日はキャンセルになってしまいましたが、だからこそ今日はこのアルバムを爆音で楽しめたらと……。

 


▼OZZY OSBOURNE『DIARY OF A MADMAN』
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2018年3月19日 (月)

OZZY OSBOURNE『BLIZZARD OF OZZ』(1980)

先ごろツアーからの引退を発表し、次が最後のワールドツアーになるとアナウンスしているオジー・オズボーン。40代以上のメタルファンなら、オジーのこういった発言はこれが初めてじゃないことぐらいご存知でしょう。1991年、これが最後のツアーだと言われて無理して観に行った日本武道館公演。『NO MORE TEARS』(1991年)発売直後、確かワールドツアーのスタートがここ日本だったと記憶しています。2階席の一番後ろで観たザック・ワイルドは、やっぱり最高でした(そっちかよ)。

で、ご承知のとおり、オジーはその後何度もワールドツアーを行っておりますし、ここ日本にも何度も訪れております。しかも(ごく個人的な話になりますが)、その一環でオジー本人にインタビューする機会まで得ることになるとは……1991年の武道館を半泣き状態で観ていた自分に伝えてやりたいくらいです。

とはいえ、すでにオジーも69歳。長期にわたり世界中を旅して、毎日90分以上ものショーを行うには厳しい年齢です。フェアウェルツアーといいながら、おそらく2年は続くでしょうから、終わる頃には70歳を超えているわけですし、ここが引き際なのは間違いないでしょう。

そんなオジーのソロ活動における原点となるのが、今回紹介する『BLIZZARD OF OZZ』。今さら説明は不要でしょう。名盤中の名盤にして、伝説のギタリストであるランディ・ローズがオーバーグラウンドに羽ばたいた記念すべき1枚なのですから。

実は僕、これらのアルバムに収録されている楽曲を最初に聴いたのは、1987年発売のライブアルバム『TRIBUTE』から。なので、ライブバージョンでのラフな演奏のイメージが強くて。そのすぐあとに本作や、続く『DIARY OF A MADMAN』(1981年)のスタジオテイクを聴いたら、やたらと軽くてポップに聴こえちゃって。しばらくは受け入れがたかったんですよ。

けど、曲の良さはまったく変わらないわけで。もちろん、今は大好きですよ、このスタジオアルバムのほうも。

にしても、70年代にリアルタイムでBLACK SABBATHと接していたリスナーからしたら、このアルバムって当時どう映ったんでしょうね。確かにオジー時代の後期サバスには本作にもあるようなポップさも混在しているんですが、どちらかというと野暮ったさが強い。けど、この『BLIZZARD OF OZZ』は全体的に洗練されている。ギターリフの構成もソロの組み立て方も、メロディラインもすべて。そこが聴きやすさ=ポップさに直結しているんでしょうね。これをライブではワイルドに表現するわけですから、完璧ですよ。

「Crazy Train」も「Mr. Crowley」もよくコピーしたなあ。いまだにこの2曲はソロ含めてがっつり弾きたくなります。奥が深いんですよね、ギターソロが。

2000年代に入るとリマスターされたり、権利関係でリズム隊がロバート・トゥルージロ(B)&マイク・ボーディン(Dr)のプレイに差し替えられたりといろいろありましたが、現在はボーナストラック3曲を追加した形で、オリジナルテイクに戻されています。そんな曰く付きなのもあって、結局はシンプルな『TRIBUTE』に戻ってしまったり(笑)。なんつって。

 


▼OZZY OSBOURNE『BLIZZARD OF OZZ』
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2017年3月19日 (日)

OZZY OSBOURNE『TRIBUTE』(1987)

このアルバム『TRIBUTE』の主人公、ランディ・ローズというギタリストは今から35年前の今日、突然この世から去ってしまいました。僕がHR/HMを聴き始めるちょっと前の出来事で、僕がオジー・オズボーンというHMアーティストを知ったときにはすでにその隣にはジェイク・E・リーという日系ギタリストが立っていました。

『TRIBUTE』は1987年3月19日、まさにランディが亡くなってから5年経ったその日にリリースされた2枚組(アナログのみ。CDは1枚)ライブアルバムです。実は僕自身オジーの作品に関して、当時はまだリアルタイムで発表されたアルバムしか聴いておらず、この『TRIBUTE』を通じて初めて『BLIZZARD OF OZZ』や『DIARY OF A MADMAN』の楽曲に触れました。いや、もしかしたら一部のBLACK SABBATHナンバーもここで初めて聴いたのかな。ちょっと記憶があやふやですが。あと、オジーのライブではおなじみ、オープニングSEに使われているあのクラシッックナンバーが、カルミナ・ブラーナの「おお、運命の女神よ(合唱)」だと知ったのは、もうちょっと時間が経ってからのことでした。

ボーカルに関してはオジーがあとからダブルで録り直していますが、そのほかの演奏に関しては(特にギターパートは)無修正。ところどころにミスも見られますが、それがライブならではの緊張感を生み出しており、他のオジーのライブ作品とは異なる空気感を作り上げています。

楽曲に関しては、今さらここで書くまでもないでしょう。名曲しか入っていません。そんな中でも特に「Mr. Crowley」は、オリジナルのスタジオバージョンを超える仕上がりだと思います。僕が『TRIBUTE』を先に聴いてしまったからというのもありますが、『BLIZZARD OF OZZ』でのスタジオバージョンはちょっと物足りないような……って贅沢言ってますね。

圧巻なのは、「Revelation (Mother Earth)」〜「Steal Away (The Night)」の組曲的構成と、それに続くトミー・アルドリッジのドラムソロ、そこからランディの長尺ギターソロを含む「Suicide Solution」でしょうか。この山場があるから、そのからサバス3連発(「Iron Man」「Children Of The Grave」「Paranoid」)でライブ本編を大盛り上がりで締めくくれるわけです。

そうそう、本作には唯一のスタジオトラックにしてレア音源の「Dee (Randy Rhoads Studio Out-takes)」が、アルバムの最後に収録されています。『BLIZZARD OF OZZ』に収録されているクラシックギターのインスト「Dee」のアウトテイクなわけですが、ギターを爪弾きながらところどころで飛び出すランディの生声になぜか涙腺が……本来なら世に出すべき音源ではないのかもしれませんが、このテイクがラストに置かれることで温かい気持ちでこのアルバムを聴き終えることができる、絶対になくてはならない音源なのです。

このアルバム、最初はレンタルで借りたんだよね。しかもレコードだったなぁ……いつ聴いたんだっけ。中学卒業したあとの春休み? それとも高校に入学してから? それは記憶が定かじゃないんだけど、間違いなくこの年よく聴いたアルバム(というかカセット)のひとつでした。そして今でもパソコンやスマホの中に必ず入っているアルバムのひとつでもあります。

今日は『TRIBUTE』だけじゃなくて、『BLIZZARD OF OZZ』も『DIARY OF A MADMAN』も聴き返してみようかな。



▼OZZY OSBOURNE『TRIBUTE』
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