SANTA CRUZ『THE RETURN OF THE KINGS』(2022)
2022年8月26日にリリースされたSANTA CRUZの5thアルバム。日本盤未発売。
アーチー・クルーズ(Vo,G)率いるフィンランド・ヘルシンキ出身のグラムメタル/スリージー・ハードロックバンドの、『KATHARSIS』(2019年)から約3年ぶりの新作。前作ではアーチーを除くメンバー3人が刷新され、彼のワンマンプロジェクトとして仕切り直されましたが、その新メンバーたちもコロナ禍に突入して以降相次ぎ脱退してしまいます。
これを受け、今作には新たにロサンゼルス出身のジェリー・ジェイド(G/BAD GVY)、トミー・ブラッドリー(B/REVELRY GANG)、ランディ・マクデミアン(Dr/ABRAHADABRA CLOTHING)が参加。アーチーとオットー・ハロネン(APOCALYPTICA、HEVISAURUS、WHEELなど)の共同プロデュースにて制作されました。しかし、アルバムが完成し、8月にはアメリカで2本のライブを行うも、9月に入るとトミーがバンドを脱退してしまいます。
そんなこんなで不運続きのSANTA CRUZですが、今作も相変わらずご機嫌な豪快でキャッチーなグラムメタルを展開しています。オープニングの「Here Comes The Revolution」と続く「Take Me To America」のヘヴィロック路線には若干の驚きを隠せませんが、リード曲「Under The Gun」でようやく“古き良きグラムメタル”路線へと回帰。さらに、キャッチーなミディアムバラード「Disarm Me」で本領発揮とばかりの王道感を叩きつけます。
適度なヘヴィさでモダンな色合いを醸し出しつつも、軸にあるのはフィンランドから遠く思いを馳せたアメリカのメジャーなグラムロックやヘヴィメタル。楽曲の完成度は比較的高いものの、有名バンドからの直接的な影響(パクリではなくオマージュと言っておきます)を一切隠すことなく、要所要所に散りばめるそのスタイルを微笑ましいと受け取るか、プロ意識の欠如と切り捨てるかでその評価も大きく分かれるかもしれません。
個人的には嫌いになれない内容/完成度なので、笑って済ませてあげたいですけどね(笑)。
それにしても、どの曲も“どこかで耳にしたことがあるような節回し”や“ほかのバンドで耳にしたことがあるギターフレーズ”目白押しですね(笑)。「Take Me To America」の歌い出しなんてまんまMARILYN MANSONのアレですし、「Under The Gun」のサビメロなんてDOKKENのコレを彷彿とさせますし。挙げ句の果てね、スピードチューン「10 Shots」のギターソロはMEGADETHのあの曲の名フレーズまんまですもんね。さすがにアルバムも5枚目、そろそろ完全オリジナルに目覚めてもらいたいところですが、彼らの場合はこのB級感を維持し続けることに意味を見出しているのかもしれませんね(苦笑)。
デジタル/ストリーミング版は全11曲入りですが、フィジカル(CD)は「Moonchild」「Crossfire」の2曲を加えた全13曲入り。「Moonchild」は2020年末に亡くなった盟友アレキシ・ライホ(ex. CHILDREN OF BODOM。アーチーとはTHE LOCAL BANDで活動を共にしました)へ捧げる1曲として制作されたもの、「Crossfire」ともども2021年初頭にデジタルリリースされたものです。あくまでアルバム本編から外れるボーナストラックですが、どちらも完成度は高いのでご安心を。
個人的には11曲で37分という適度なボリューム感が非常に聴きやすいもので、かつメジャー感の強いアンセミックな「Stay」で終わる構成が気持ちいいので、配信バージョンのほうがお気に入りです。
▼SANTA CRUZ『THE RETURN OF THE KINGS』
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