BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』(2022)
2022年7月8日にリリースされたBLIND CHANNELの4thアルバム。日本では本作がデビュー作にあたり、同年12月21日に『シック・アンド・デンジャラス』の邦題で発売。
BLIND CHANNELはフィンランド北部にあるオウルという街出身のニューメタルバンド。ラッパーだったニコ・モイラネン(Vo)とメタルバンドに憧れを抱いていたヨエル・ホッカ(Vo)という10代の少年2人がLINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)を通じて出会い、2013年のバンドをスタートさせます。翌年、にフィンランドで開催された『Wacken Metal Battle』を勝ち抜き、レーベル契約を獲得。数枚のシングルリリースを重ね、2016年9月に1stアルバム『REVOLUTION』を発表し、本国チャートで26位という好成績を残します。
その後も『BLOOD BROTHERS』(2018年)、『VIOLENT POP』(2020年)とアルバムを連発する中、2020年夏にはかつて「Timebom」(2019年)にゲスト参加したアレクシ・コーニスベシ(DJ)が正式メンバーとして加入。新たに6人組編成になったバンドは、ヨーロッパ最大の音楽の祭典『Eurovision Song Contest 2021』にフィンランド代表として参加し、今作にも収録された「Dark Side」で6位入賞を果たした。ちなみに、このコンテストで優勝したのがイタリア代表のMÅNESKIN。彼ら同様、BLIND CHANNELもこの『Eurovision Song Contest』入賞で世界各国から注目を集めることとなります。
このコンテスト出場と前後して、彼らは新たなレーベルとしてCentury Media Recordsと契約。翌2022年夏に満を持して発表された本作は、本国チャートで初の1位を獲得しています。そして、海外から遅れること約半年、アートワークを変更して日本盤が発売されたわけです。
年末の慌ただしい時期のリリースだったこともあり、スルーされてしまいがちですが、特に日本のメタル/ラウド系リスナーがそのまま見過ごしてしまうには勿体ない1枚。結成のきっかけとなったLINKIN PARK直系の2000'sニューメタルの香りがプンプンする、ヘヴィでグルーヴィー、そしてポップでキャッチーな楽曲がズラリとならぶ良作なのです。
先にも触れた「Dark Side」は本国1位、イギリスでも最高66位という成績を残した王道感の強い1曲。メロディアスな主メロとパーカッシヴなラップパート、そしてサビではシンガロングしたくなるようなキャッチーなメロディが用意されており、演奏も歌を盛り立てるための無駄のないアレンジが施されている。「Bad Idea」(フィンランド5位)や「Balboa」(同12位)、「We Are No Saints」(同18位)などのヒットシングルはどれもが高性能のポップ/ロックソングとして機能するものばかりで、ラウド系以外のリスナーにもしっかり響く個性を持っている。かつ、大半の楽曲が3分前後と非常にコンパクトで、歌に主軸を置いていることから終始飽きさせないアレンジでかっちり作り込まれている。そりゃ売れるわけだ。
個人的には「Alive Or Only Burning」が大のお気に入り。日本盤にはWE CAME AS ROMANSなどのと共演経験を持つラッパーのZero 9:36をフィーチャーした別バージョンも、ボーナストラックとして用意されています。こっちの新バージョンもなかなか良いのではないでしょうか。
目新しさはないものの、完成度だけは無駄に高い。本国ではすでに7000人規模のアリーナ会場を満員にするほどの人気ぶりで、日本でもフェス出演などがあればより知名度が広まるはず。ここでの成功経験を糧に、さらに進化する可能性の高い将来有望株の1組です。
▼BLIND CHANNEL『LIFESTYLES OF THE SICK & DANGEROUS』
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