PALACE『RETROSPECTION - THE COVER EP』(2022)
2022年11月11日にデジタルリリースされたPALACEの最新EP。
PALACEはスウェーデン出身のマルチプレイヤー、マイケル・パレスによるソロプロジェクト。80年代を彷彿とさせる古き良きメロディアスハードロック/産業ロックをベースに、時代を超越した良曲を次々と制作し、これまでの4枚のアルバムを発表しており、今年7月に発売された最新アルバム『ONE 4 THE ROAD』も非常に良質な仕上がりです(こちらも改めて紹介したいと思います)。
本作にはその名のとおり、彼のお気に入りの楽曲/ルーツを感じさせる名曲4曲のカバーを収録。収録されたのはMR. MISTER「Kyrie」、EASY ACTION「Code To Your Heart」、AVIATOR「Can't Stop」、NIGHT RANGER「Sister Christian」とアメリカで爆発的ヒットを飛ばした2組(MR. MISTER、NIGHT RANGER)と、元EUROPEのキー・マルセロ(G)在籍で知られる同郷の大先輩EASY ACTION、そしてアルバム1枚のみを残して解散した知る人ぞ知る存在AVIATOR(同名UKプログバンドもいるようですが、こちらはUSハードロックバンドです)と、そのセレクトもマイケル・パレスのルーツが伝わってくるものとなっています。
基本的にどの曲も大きくアレンジが加えられておらず(とはいえ、音作りは若干モダンな形)、非常に原曲に忠実で愛情が感じられる仕上がり。かつ、1曲目「Kyrie」のオープニングにはカセットテープの再生ボタンを押す効果音も挿入されており、彼がどういう意図で本作を制作したかが伝わってきます。で、その「Kyrie」ですが、全米1位を記録したシングルバージョンに倣ったアレンジ(エンディングがフェードアウトではなくアカペラカットアウトのバージョン)。今聴いてもいい曲ですし、なによりマイケル・パレスのボーカルが御本家リチャード・ペイジ(Vo, B)とイメージが重なるのも好印象。あそこまでハスキーではないですが。
「Code To Your Heart」は開放感の強いメジャーキーのポップチューン。シンセのリフが非常に時代を感じさせるものですが、産業ロック/AOR好きにはたまらない1曲ではないでしょうか。このへんはPALACEのオリジナル曲と言われてもまったく違和感ないかもですね。さらに「Can't Stop」。こちらは本作中もっともメロハー的側面の強い1曲で、原曲を知らなかった筆者には「教えてくれてありがとう!」と言いたくなるくらいの大収穫でした。この曲が収録された唯一のアルバム『AVIATOR』(1986年)、数年前にRock Candy Recordsから復刻リリースされており、現在はサブスクでも手軽に聴くことができるのでぜひご一聴を(アルバム全編素晴らしいので!)。
ラストは言わずと知れたNIGHT RANGERの代表的バラード。イントロのみ現代的な味付けが施されておりますが、サビ以降は基本的にオリジナルに忠実(エンディングも新たなアレンジが加えられていますが)。原曲の良さを余すところなく伝える、良質なコピー カバーとなっています。
お遊び/箸休めとしては十分な仕上がりだし、特に新しいバンド/音楽から離れてしまっている往年のHR/HMファンに初めて触れてもらうにはよいきっかけ作りになるのではないでしょうか。本作で興味を持った人が、彼の最新作『ONE 4 THE ROAD』へとたどり着くことを願ってやみません。
▼PALACE『RETROSPECTION - THE COVER EP』
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