ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』(2006)
2006年11月21日にリリースされたROCK STAR SUPERNOVA唯一のオリジナルアルバム。日本盤未発売。
ROCK STAR SUPERNOVAは米・CBSのリアリティーショー番組『Rock Star』2ndシーズンを通じて結成されたスーパーバンドで、メンバーはトミー・リー(Dr/MOTLEY CRUE)、ジェイソン・ニューステッド(B/NEWSTED、ex. METALLICA、ex. VOIVODなど)、ギルビー・クラーク(G/ex. GUNS N' ROSES、ex. CANDYなど)と、同オーディションを勝ち抜いたルーカス・ロッシ(Vo, G)の4人。2006年初夏から始まったオーディションをルーカスが同年9月に勝ち抜き、その2ヶ月後にはアルバムリリースとなりました。
アルバムのプロデュースを担当したのは元MARVELOUS 3のフロントマンで、ソロアーティストとしてのみならずP!NKやアヴリル・ラヴィーン、PUFFYなどとのコラボでも知られるブッチ・ウォーカー。楽曲制作にはブッチのほか、トミーと彼の仲間でもあるスコット・ハンフリー(MOTLEY CRUE、ロブ・ゾンビ、METHODS OF MEYHEMなど)、ギルビー、そしてルーカスなどが名を連ねています。
MOTLEY CRUE、METALLICA、GUNS N' ROSESの現役/元メンバーが名を連ねていることもあり、サウンド的にはこの3バンドをミックスしたようなものを安易に想像しがちですが、そもそもブッチのプロデュース&ソングライティングが軸にあることから別モノになることは間違いなく、実際ここで展開されているサウンド/楽曲の大半は適度なハードさを備えたメロディアス&キャッチーなロックが中心。オーディションを勝ち抜いたルーカスのボーカルは適度なハスキーさを備えた、非常に心地よくて聴きやすいもので、ハードロック的アレンジが施されたブッチ流パワーポップ/ハードポップナンバーとの相性も抜群です。
リズム隊は非常にらしいヘヴィさを醸し出しているものの、楽曲の邪魔をすることなくオーソドックスなプレイに徹している印象。とはいえ、トミーは彼らしい派手なプレイやフレージングを随所に散りばめており、その一方でジェイソンは特に彼らしいさが前面に出ているとは言い切れない、縁の下の力持ち的プレイを心がけている。ギターに関しては、そもそもギルビー自身がGN'Rの前に元CANDYの一員をいう事実を思い出させてくれる、曲の魅力を見事に盛り上げるプレイ&アレンジを披露しており、本作の中でもっとも結果を残しているのではないでしょうか。
オープニングの「It's On」や「Make No Mistake... This Is The Take」のようなストレートでメロディアスなハードロックも存在するものの、むしろこのバンドは「Leave The Lights On」や「Be Yourself (And 5 Other Cliches)」みたいなパワーポップ然とした楽曲群を、トミーの派手なドラムとギルビーによる色彩豊かなギタープレイをバックに、ルーカスが耳障りのよい声質で歌うというポイントがミソかなと。適度な打ち込みを取り入れたミディアムナンバー「It's All Love」やモダンなテイストを散りばめたスローバラード「Can't Bring Myself To Light This Fuse」などは往年のハードロック/ヘアメタル的でもあるし、ポップパンクを通過したパワーポップと受け取ることもでき、意外と幅広くロックファンにアピールする内容ではないかと思いました。
ですが、このメンツならではといいますか、ROCK STAR SUPERNOVAというバンドならではの個性や「これ!」といえるキメの1曲は、本作からは見つけることができません。なので、スーパーバンド奇跡のデビュー作と受け取るよりも「鳴物入りでデビューしたルーカス・ロッシというシンガーを名うての名プレイヤーたちがバックアップしました」と解釈するのが正解かもしれません。各メンバーが在籍するバンドのファンがマストで聴くべき1枚とは言いませんが、トミー・リーが本作直前に発表したソロアルバム『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)を気に入っていたリスナーやブッチ・ウォーカーworksファンなら問答無用で楽しめる内容だと思います。
なお、2007年にはジェイソンが脱退。代わりに元THE BLACK CROWESのジョニー・コルトが加わるものの、2008年には自然消滅してしまいます。アルバムも全米101位とそこまで大きな結果を残せなかったのも、自然消滅の一因かもしれません。
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