WILKO JOHNSON / ROGER DALTREY『GOING BACK HOME』(2014)
2014年3月25日にリリースされた、ウィルコ・ジョンソン(G/ex. DR. FEELGOOD)とロジャー・ダルトリー(Vo/THE WHO)のコラボアルバム。日本盤は同年4月2日発売。
2013年に末期のすい臓がんと診断され、本人の意向で延命治療は行わないことをアナウンスしたウィルコ。その後、残された時間を有効に使うため、なんとTHE WHOのロジャー・ダルトリーをフロントマンに迎えたスタジオアルバムを制作することを発表し、我々を驚かせたのでした。
アルバムのレコーディングは、ウィルコと活動を共にしてきた永遠の相棒ノーマン・ワット・ロイ(B)、YESのスティーヴ・ハウ(G)の実子であるディラン・ハウ(Dr)の鉄壁トリオに、THE STYLE COUNCILなどで知られるミック・タルボット(Key, Piano)を迎えた編成で実施。プロデューサーにはMANIC STREET PREACHERSの諸作を手がけることで知られるデイヴ・エリンガという(彼らからしたら)若手を迎えて、たった1週間で録音を済ませたそうです。
収録された全11曲(デラックス盤ボーナスディスク収録曲除く)のうち、10曲はウィルコがこれまでに制作・発表してきた楽曲のセルフカバーで、残り1曲はボブ・ディランの「Can You Please Crawl Out Your Window?」カバーとなります。アルバムタイトルにも用いられた「Going Back Home」からもわかるように、DR. FEELGOOD時代の楽曲も複数含まれており、リリースから40年近くを経たいぶし銀のプレイ&演奏に、より深みが増したロジャーのボーカルが乗ることで、原曲とはまた違った魅力を感じ取ることができるはずです。
そりゃあ原曲で聴ける「若き日のパブロック/パンクロック/ガレージロック直系のストレートさ」も間違いなくカッコいいですが、今の年齢だからこそ生み出せるこの空気感と説得力も誰にも真似できないもの。自分の人生の終わりが数ヶ月後に近づいたウィルコのギタープレイは、かつての鬼気迫るものとは若干異なるものの、最後の最後に文字通り「音を楽しむ」こと=音楽と向き合った結果がこの音/演奏であり、そこに真摯に応えるロジャーの(まったく年齢を感じさせない)パワフルな歌声と、そこから伝わる生命力の強さにはただただ圧倒されます。
個人的にはオルガンやピアノの入ったロックンロールが大好きなので、ここで聴けるミック・タルボットのプレイは最高の一言。原曲を知るリスナーにもぜひ味わってもらいたい魅力のひとつです。こういうアルバムはしのごの言わず、無心で楽しむのが一番。ひたすら大音量で再生しまくってください。
ちなみに、本作は全英3位という好記録を樹立。2014年11月には先にも触れたボーナスディスク付き2枚組デラックス・エディションも発表されています(日本盤は2015年2月リリース)。こちらには本編未収録の「Muskrat」に加え、「Some Kind Of Hero」「Keep On Loving You」「Turned 21」のウィルコ歌唱バージョン、2014年2月のWILKO JOHNSON BANDのライブ音源やロジャーとのコラボライブ音源など全18トラックが収められているので、アルバム本編がご自身の感性にフィットした方はぜひチェックしてみることをオススメします
なお、その後のウィルコですが、2014年3月に本作を提げた来日公演を行うも、4月下旬にはすべてのスケジュールをキャンセル。5月には腫瘍摘出手術を行い、見事回復したことを宣言します。余命数ヶ月と言われたものの、その後8年間もサバイブ。2022年11月21日にこの世を去りました。
▼WILKO JOHNSON / ROGER DALTREY『GOING BACK HOME』
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