安全地帯 40th ANNIVERSARY CONCERT "Just Keep Going!" Tokyo Garden Theater -4 Days-@東京ガーデンシアター(2022年11月29日)
すごいものを観た。これ以上でもこれ以下でもない、本当に圧倒的な100分間でした。
安全地帯は僕ら世代だと、小学生の頃からお茶の間の音楽番組で活躍してきたこともあり、もはやサザンとかと同等にロックだとか歌謡曲だとかそういう概念を超えた存在。そらで歌えるヒット曲なんて片手で数えられないほどたくさんあるし、意識的にライブに足を運ぼうなんて考えたこともなかった。それこそ、ここ10年くらいは玉置浩二さんのワイドショー方面での消費も手伝い、個人的にはそこまで積極的に追っていなかったし、音楽番組の特番に登場すれば「声量オバケ」扱いで(リスペクトはしつつも)若干嘲笑気味に傍観していた、というのが正直なところです。
ここ数年、仲間内で「レジェンドたちを(自分たち、もしくはアーティストサイドが)死ぬ前に確認しておく」機会が増えており、そのひとつとして安全地帯および玉置浩二も観ておかねばという話になり、スケジュールを調整して東京ガーデンシアター4 DAYS公演のセミファイナルに足を運ぶことができました。
まず、会場に入って驚いたのが、通常は開演前に場内に流れているであろうBGMが皆無だったこと。つまり、無音でライブのスタートを待つわけです。この感覚、クラシックコンサートに近いなあと思いつつ、「余計な音はいらない」というバンド側のこだわりなのかなと考えたり。
で、ライブがスタート。ステージ上にはドラマー2人、パーカッション1人、ギタリスト3人(サポート1人含む)、ベーシスト1人、キーボーディスト2人(Tomi Yoさん含む)、ブラス4人(だったかな? 権藤知彦さんも参加されていました)という大所帯。途中から女性コーラス3名(AMAZONSの皆さん)も加わり、歌やダンスで華を添えます。
玉置さんがゆっくりとステージに登場すると、そこからはただひたすら圧倒的な世界が展開されるわけですが……まず、曲中の過剰な煽りなど皆無。原曲に比較的近い(だけど確実にアップデートされている)アレンジのもと、自身の歌とストイックに向き合い続けるその姿は、孤高の存在なんて言葉で片付けるには勿体ないほどでした。なんじゃこりゃ。
曲が終わっても特に挨拶することもなく、またMCもライブ後半にバンドメンバー紹介があった程度で、トークで場を和ませるなんて余計なことは一切しない。要は、歌の邪魔をするような要素をすべて排除した、無駄のないライブなのです。なもんだから、緊張と緩和の「緩和」が皆無。だけど、不思議と気持ちよく楽しめたのは、目立ちすぎず、だけど地味すぎないバンドアンサンブルと、その上で変幻自在にうねりまくる玉置さんのボーカルのおかげ。なんだろう、素材を楽しむ料理というのとも違うんだろうけど、音楽や歌の根源にあるシンプルなものを再確認させられたような感覚なのかな。
紙吹雪や銀テープなどの特攻も極力抑えめ。オープニングの「あの頃」のときも自然な形で紙吹雪が降っていて、歌を一切邪魔しない。あの匙加減も絶妙でしたね。個人的には「熱視線」でのブレイク。ジャン♪とバンドが音を鳴らすたびに、派手なアクションをする玉置さんの姿はロックスターそのもの。その容姿からは実年齢を感じるものの、あの瞬間は80年代半ば、僕たちがテレビで観ていた彼そのものでした。カッコいいったらありゃしない。
今回のライブにはドラマーの田中裕二さんが不参加で、「情熱」では彼がプレイする映像をスクリーンに映しつつ、エンディングには彼のドラムソロもフィーチャー。節目のタイミングに参加できなかったのは残念ですが、こういう点からも彼らならではのこだわりか伝わります。
にしても、まあセトリの贅沢さよ。周年ライブというのもあるけど、序盤の名曲三昧に続いて、中盤に差し掛かる前に「ワインレッドの心」「恋の予感」といったメガヒットを早々に披露してしまう。大衆的にはこういった楽曲で盛り上がるところでしょうが、そこにピークを設定しないセットリスト作りもさすがベテランといったところかな。だからこそ、「情熱」や「ひとりぼっちのエール」といった楽曲でクライマックスを迎える点が非常に興味深かったです。
あと、中盤に玉置さんが一度ステージに引っ込んで披露されたインスト「夕暮れ」も良かったなあ。歌が軸なんだけど、「彼らがいるからライブが成立しているんだよ」とバンドメンバーにスポットを当てるような、そんな優しさを感じる1曲でした。
よくライブを見終えたあとって、公演中にメンバーが口にした言葉やメッセージが印象に残ることが多いんですが、ここまで歌の印象だけしかないライブというのもある意味特殊。ですが、本来ライブってこうであるべきなんじゃないかなとも思うわけで。こんな境地ににまで到達した安全地帯および玉置浩二というアーティストの特異感は、ワイドショーや音楽番組だけでは伝わらないのかもしれない。そう思うと、このタイミングに生で観ることができて本当によかった。今度は玉置さんソロも観てみたいと素直に思えましたしね。
セットリスト
01. あの頃
02. 萠黄色のスナップ
03. 碧い瞳のエリス
04. プルシアンブルーの肖像
05. 好きさ
06. 蒼いバラ
07. 熱視線
08. ワインレッドの心
09. 恋の予感
10. Friend
11. 夕暮れ
12. あなたに
13. 悲しみにさよなら
14. 情熱
15. 真夜中すぎの恋
16. じれったい
17. ひとりぼっちのエール
<アンコール>
18. I LOVE YOUからはじめよう