JOHN COUGAR MELLENCAMP『SCARECROW』(1985)
1985年8月5日にリリースされたジョン・メレンキャンプ(当時はジョン・クーガー・メレンキャンプ名義)の8thアルバム。日本盤は同年9月21日発売。
全米9位を記録した前作『UH-HUH』(1983年)から約2年ぶりの新作。「Lonely Ol' Night」や「Small Town」(ともに全米6位)、「R.O.C.K. In The U.S.A. (A Salute To '60s Rock)」(同2位)などのTOP10ヒットを複数生み出し、アルバム自体も全米2位/500万枚というメガヒット作となっています。このアルバムで初めて彼の曲に増えたアラフィフ世代も少なくないのではないでしょうか。
ドン・ゲーマン(ニール・ヤング、R.E.M.、HOOTIE & THE BLOWFISHなど)をプロデューサーに迎え、ラリー・クレイン(G)、マイク・ワンチック(G)、トビー・マイヤーズ(B)、ケニー・アロノフ(Dr)という気心知れたバンドメンバーとともに制作。リッキー・リー・ジョーンズ(Vo)やライ・クーダー(Slide G)といったゲストアーティストに加え、ジョン自身の祖母ローラ・メレンキャンプも歌唱で参加しています。
世代的にはちょうど中学生の頃にヒットした本作。その後手に取って再生する機会はあまりなかったのですが、今年11月4日に最新ミックスが施されたアルバム本編にアルバム未収録曲やデモ音源、別ミックスなどをまとめたボーナスディスクを同梱したデラックス盤が発売されたので、数10年ぶりに聴いてみた次第です。
最新ミックスは2022年の耳で聴いてもまったく古臭く感じられず(そもそも、元々の音源/楽曲がタイムレスな内容だったことも大きいですが)、ケニー・アロノフによるハイの効いたドラミングと適度な歪み具合のギター、そして(ヘッドフォンなどで聴くと)生々しいまでに耳元で歌い上げるメレンキャンプのボーカルのバランス感が非常に良好。ガキの頃にアナログ盤からカセットテープにダビングして何度も再生した楽曲たちが、40年近くの歳月を経てもクリアに鳴り続けている事実に、ただ驚くばかりです。
時代的にちょうどブルース・スプリングスティーンの名盤『BORN IN THE U.S.A.』(1984年)と重なることもあり、当時は身の回りで「スプリングスティーン派か、メレンキャンプ派か?」で意見が分かれたりもしましたが、僕自身は完全にメレンキャンプ派だったんですよね。たぶん、自分が育った環境が彼の曲から透けて見える景色と重なったことが大きかったのかな。「Small Town」や「Lonely Ol' Night」あたりを聴くと、一瞬にして中2〜3の鬱屈した日常生活がフラッシュバックしてくるような(笑)。で、そんな鬱屈を「Rain On The Scarecrow」や「R.O.C.K. In The U.S.A. (A Salute To '60s Rock)」を大音量で聴いて吹っ飛ばすという。そうそう、こんな感じだったなあと懐かしくなります。そんな、自身の少年時代とも不思議とリンクする1枚。色褪せない名盤です。
なお、2022年版デラックスエディションにはTHE DRIFTERS「Under The Boardwalk」を筆頭としたカバー曲、アルバム未収録のオリジナル曲「Carolina Shag」「Smart Guys」など全11曲を収録。また、アルバム本編の最後にはボーナストラックとして「Small Town」のアコースティックバージョンも追加されており、アコギとフィドルのみで構成されるミニマルな演奏がまたいい味出しているんですよ。個人的には本編は「R.O.C.K. In The U.S.A. (A Salute To '60s Rock)」で終わる形がベストですが(当時からCDのみに収録されていた「The Kind Of Fella I Am」もできればないほうがいい)、余韻を残して終わるこのアコースティックバージョンを含む形も悪くありませんね。
▼JOHN COUGAR MELLENCAMP『SCARECROW』
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