a-ha『TRUE NORTH』(2022)
2022年10月21日にリリースされたa-haの11thアルバム。日本盤は同年10月26日発売。
2014年に再々結成を果たしたa-haの、前作『CAST IN STEEL』(2015年)から7年ぶりの新作。新たにソニー系列のRCA Recordsと契約しての1作目にあたり、本国ノルウェーで最高3位、イギリスでは12位とそれなりの成功を収めています。
ここ日本では昨年5月にドキュメンタリー映画『a-ha THE MOVIE』が公開され、再注目を集めるきっかけを作ることに成功。コロナさえなければ1stアルバム『HUNTING HIGH AND LOW』(1985年)を再現する来日公演も実現していたはずなのですが、そこだけはどうにもなりませんでした。
ただ、そうしたコロナの喧騒下において、ノルウェーのオーケストラ・Arctic Philharmonicとの全面的コラボレーションによるレコーディングが実現。a-haというバンドが持つ繊細でおおらかなサウンド/メロディがオーケストラとの共演により、さらに端的に表れた良質なポップアルバムを完成させるに至りました。
80年代に青春時代を過ごし、「Take On Me」のイメージを強く持つ浅いリスナーにとっては「a-ha=エレポップ」の印象しかないのかもしれません。しかし、彼らの本質は「Hunting High And Low」や「Manhattan Skyline」「Stay On These Roads」に代表される、壮大で美しくメロディアスな楽曲にあると個人的には思っており、近年の作品はその側面を強く打ち出した極上のポップソングを増産している印象がありました。それこそ、『MTV UNPLUGGED: SUMMER SOLSTICE』(2017年)はそのテイストが抜群の形で発揮された良作だと捉えています。
そんなわけですから、オーケストラとのコラボレーションで生み出された本作。悪いわけがありません。オープニングを飾る「I'm In」からして派手さは皆無ですが、その穏やかな空気の中にも起伏に富んだメロディがしっかり存在し、独特のうねりを生み出している。また、随所にエレクトロの味付けも散りばめられており、タイトルトラック「True North」のように生音とエレクトロが抜群のバランスで混在している良曲も存在する。テンポ感的には終始穏やかさが保たれているものの、その中で機微な波もしっかり感じられる。特に、アルバム後半に進むにつれて「Bumblebee」や「Forest For The Trees」などのドラマチックな楽曲、「Make Me Understand」をはじめとする往年のエレポップテイストが若干感じられる曲も用意されており、最後まで飽きさせない構成となっています。
全体的に地味めで派手な要素は皆無。もはや彼らにそういった要素を求めることはありませんが、ポップ職人らしい徹底的に作り込まれた良質なアルバムは文句なしの1枚ではないでしょうか。
▼a-ha『TRUE NORTH』
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