BEYONCE『COWBOY CARTER』 DUA LIPA『RADICAL OPTIMISM』 FRIKO『WHERE WE'VE BEEN, WHERE WE GO FROM HERE』 THE JESUS & MARY CHAIN『GLASGOW EYES』 KNOCKED LOOSE『YOU WON'T GO BEFORE YOU'RE SUPPOSED TO』 THE LAST DINNER PARTY『PRELUDE TO ECSTASY』 MANNEQUIN PUSSY『I GOT HEAVEN』 MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』 RIDE『INTERPLAY』 THE SMILE『WALL OF EYES』
国内勢に関しては下記の7作品(楽曲単位含む)が次点となります。
イヤホンズ『手紙』 サバシスター『覚悟を決めろ!』 トゲナシトゲアリ『雑踏、僕らの街』(楽曲) 日向坂46『君はハニーデュー』(EP) 雪国『pothos』 THE BAWDIES『POPCORN』 Ken Yokoyama『Indian Burn』
基本的にはCD3枚組デラックスエディション(サブスクではこちらを配信)と、さらにそこから厳選されたスタンダードエディション(CD1枚)の2種類。さらに日本盤は独自仕様として、CD1枚モノに内容の異なるライブディスク3種(『LIVE BEST 1977-2016 Vol.1』および『同 Vol.2』、『ROCK FOR THE RISING SUN (LIVE IN JAPAN 2011)』)を同梱した3つの限定エディション、そしてデラックスエデションにこの3種のライブディスクを付属した6枚組の完全版……と国内においては多種多様な仕様が用意されています。
具体的には、70年代の「Same Old Song And Dance」や「Kings And Queens」が過去のベスト盤でも使用されたシングルバージョン、80年代以降のヒット曲の多く(「Angel」や「What It Takes」など長尺のバラード曲中心)がラジオ向けの“Single Version”や“CHR Edit(CHR=Contemporary Hit Radioの略)”と題した短縮エディットで収録されているのです。「Angel」なんてドラマチックな頭のギターソロやアウトロがバッサリと短くされてるし、まったく心に響かない(笑)。また、「Rag Doll」に至ってはライブバージョンですからね。これだけ妙に浮いてしまているし。
『LIVE BEST 1977-2016 Vol.1』および『同 Vol.2』はそのタイトル通り、キャリア50年のうち約40年にわたるライブ活動からて今日まで未発表だったライブテイクをコンパイルしたもの。ただ、40年から満遍なくピックアップというわけではなく、1997年ヒューストン、1989年ランドーバー、1993年ピッツバーグ、2003年デトロイト、2016年メキシコシティの限定された5公演からの音源となります。両ディスクとも10曲入りなのですが、音質的にはブートに毛が生えた程度といいますか。特に1977年の音源はミックスバランスも悪いですしね。資料価値としては高いのかもしれませんが、“ライブアルバム”として接するとC級クラスの代物かと。要はボーナストラックの寄せ集めみたいな仕上がりというわけです。
その一方で、『ROCK FOR THE RISING SUN (LIVE IN JAPAN 2011)』は映像化もされた2011年秋のジャパンツアーでの音源をそのまま使用しているので、音質/ミックスに関しては平均的なライブアルバムに近いものがある(ややハイが強調された感もありますが)。歓声を必要以上に被せた感は否めませんが(苦笑)、それでも東京ドームや大阪ドームのみならず、いしかわ総合スポーツセンターや広島グリーンアリーナ、マリンメッセ福岡、愛知県体育館、札幌ドームと幅広くセレクトされているので、震災後の満を持して行われたツアーに参加した方には思い出深い1枚になるのではないでしょうか。事実、2011年のこのツアーはAEROSMITHにとって最後の本格的なジャパンツアーになってしまったので、そういった意味でも貴重な資料と言えますしね。
コロナ禍のロックダウン時に突如発表された新曲「Living In A Ghost Town」(2020年/日本盤のみボーナストラックとして収録)の時点ではまだアルバムモードではなかったようですが、本腰を入れて臨んだタイミングにアンドリュー・ワット(イギー・ポップ、オジー・オズボーン、PEARL JAMなど)を新たなプロデューサーに起用。チャーリーが残したドラムトラックは2曲にとどめ、それ以外をチャーリー急逝後のツアーでもプレイしていたスティーヴ・ジョーダン(Dr)が叩き、ベースはアンドリューとキース、ロニー・ウッド(G)が手分けをして担当したほか、チャーリーが参加した「Live By The Sword」にはかつてのオリジナルメンバー、ビル・ワイマン(B)がゲスト参加しています。
本作はそのほかにも豪華ゲストが盛りだくさんで、ポール・マッカートニーは「Bite My Head Off」でベースをプレイしたほか、エルトン・ジョンは「Get Close」「Live By The Sword」でピアノ、スティーヴィー・ワンダーは「Sweet Sounds Of Heaven」でピアノやローズ・ピアノなど、レディ・ガガは「Sweet Sounds Of Heaven」でボーカルで客演。このほかにもベンモント・テンチやマット・クリフォードといった気心知れた面々も名を連ね、ストーンズ18年ぶりのオリジナル新作に華を添えています。
全体的にポップでキャッチーという『TATTOO YOU』期の彼らをイメージさせつつ、「Bite My Head Off」では年齢を感じさせないほど前のめりなパンクロックに挑戦し、「Mess It Up」ではチャーリーの跳ねたビートが気持ちいいダンスチューンを体現。チャーリー&ビルのリズム隊の上で肩の力が抜けた歌とギターを奏でる「Live By The Sword」、キースらしさ全開のいぶし銀ナンバー「Tell Me Straight」でらしさを見せつけたあとに、終盤でのミックとレディ・ガガのボーカルバトルがたまらない7分超の「Sweet Sounds Of Heaven」でクライマックスに到達し、最後はバンド名の由来となったマディ・ウォーターズの「Rolling Stone Blues」をミック&キースがシンプルにカバーして締めくくり。1曲1曲の完成度もさることながら、アルバムとしての流れも完璧で、全12曲/約48分というトータルランニングもちょうどいいから何度もリピートしてしまう。個人的にはストーンズのオリジナルアルバムの中でも上位に入る傑作ではないでしょうか。
ボックスセットにはリマスタリングされたアルバム本編(CD&アナログ)のほか、2003年11月に発売されたバンド初のライブアルバム『LIVE IN TEXAS』(CD版未収録曲含む)と未発表ライブ音源集『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』(ともにアナログ)、過去にファンクラブ経由で発表された『METEORA』期のデモ音源をまとめた『LPU RARITIES 2.0』(CD)、『METEORA』期の貴重なライブ音源をコンパイルした『LIVE RARITIES 2003-2004』(CD)、「Lost」「Fighting Myself」といった未発表曲や本邦初公開となるデモ音源をまとめた『LOST DEMOS』(CD)、そしてアルバム制作ドキュメンタリー映像『THE MAKING OF METEORA』(DVD)やソウルやマイアミなど2003〜4年のライブ映像(DVD)をひとまとめに。
「Fighting Myself」は『METEORA』で描かれている世界観の延長線上にある、ヒップホップマナーの1曲。「Lost」がチェスター・ベニントンのクリーンボーカル中心だとしたら、こっちはマイク・シノダのラップを軸にしたグルーヴィーな仕上がりです。「Resolution」あたりもこの流れにあるのかな。一方、「More The Victim」「Massive」「Healing Foot」はテイスト的に『HYBRID THEORY』寄りで、『METEORA』への通過点的な内容。アルバム本編から漏れるのも仕方ないかな。もちろん、もっとブラッシュアップできたらアルバム本編に含まれていても不思議じゃないんですが、当時はそこまでの魅力が見出せなかったのかもしれませんね。
そのほか、「Faint」や「Lying From You」のデモバージョンも含まれており、ブラッシュアップされる前の原石ぶりを確認することができます。『LPU RARITIES 2.0』に収録されたバージョンとはそれぞれ異なるので、完成版含めた聴き比べもできそうです。
『LIVE RARITIES 2003-2004』
ライブをまるまる1本収めた『LIVE IN TEXAS』や『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』とは異なり、こちらは『METEORA』期の象徴的なツアー/フェスのハイライト的内容で、全10曲と非常にコンパクト。自身のツアーのほか、『Reading Festival 2003』や『Rock Am Ring 2004』での記念碑的音源も含まれています。
この中で特筆すべきはラスト3トラックかなと。初期の「Step Up」から「Nobody's Listening」へのメドレー、そこにE-ECUTIONERSの「It's Goin' Down」をミックスしたスペシャルバージョンは、ライブならではの特別感があります。また、NINE INCH NAILS「Wish」のカバーや、KORNのジョナサン・デイヴィスをゲストに迎えた「One Step Closer」もスペシャル感が強く、当時のバンドの勢いがダイレクトに伝わります。どれもシングルやファンクラブ経由では既発音源ですが、こうして手軽に聴けるようになったのはありがたい限りです。
その一方で「72 Seasons」や「Lux Æterna」「Too Far Gone?」などは、彼らにとって重要なルーツであるNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)時代のバンド群がフラッシュバックしそうな、オールドスクールな作風。そこに80年代後半の彼らと印象が重なる「Shadows Follow」、『LOAD』(1996年)&『RELOAD』(1997年)の空気をはらんだ「Sleepwalk My Life Away」や「Inamorata」、ブラックアルバム路線をモダン化させた「You Must Burn!」や「Chasing Light」と、活動前期=デビューからの18年間を強くイメージさせる楽曲が並ぶことも興味深い。
そういった楽曲群を自身が強く影響を受けた「10代の頃に夢中になったルーツミュージック」のテイストでまとめ上げるのですが、そこには先のNWOBHMのみならずTHIN LIZZYやBLACK SABBATH、あるいはUFO(およびマイケル・シェンカー)など70年代から活躍するバンドたちの色も見え隠れして、どこか10代の少年たちがスタジオに入ってセッションを楽しんでいるようにも映ります。カーク・ハメット(G)のギターワーク(主にメロウなソロ)も、どこか往年のハードロックを彷彿とさせるものがありますしね。あと、バラード調楽曲を排除した姿勢もそうした傾向とつながるかもしれない。そういった意味では、今作って「“Garage Days”の続き」もしくは「Back To “Garage Days”」と受け取ることもできないでしょうか。
メタルを捨てた問題作とか過去の焼き直しとか、否定的に解釈することは簡単です。とはいえMETALLICAは『MASTER OF PUPPETS』以降、常に問題作を提供し続けてきたバンド。作品を重ねるごとにファンベースの広がりやリスナー数の増大などの違いはありますが、この姿勢自体は平常運転なはずなんですよね。ロック低迷と言われるアメリカにおいて、ブラックアルバムからの6作連続1位記録は途絶えてしまいましたが(最高2位。イギリスやドイツなどでは1位獲得)、メジャー感のあるヘヴィなロックにおける基準は本作で更新されたことは間違いないはずです。
全9曲(日本盤ボーナストラック除く)ですべて“歌モノ”。前作が全10曲で内1曲が短尺インスト(オープニングSE)だったので、ボリューム的にはほぼ一緒なのですが、前作はトータルで約50分あったの対して今作は約40分と非常にコンパクト。そういえば、前作は8〜9分の長尺曲が2曲もあったんでした。それと比べたら、今作は4分台の楽曲が中心で、長尺曲もラストの「Wash Away Your Sins」の約6分半のみ。
そういった意味では、個人的ハイライトはラスト2曲の「Pledge Your Souls」「Wash Away Your Sins」かな(とはいえ、「Wash Away Your Sins」はエンディングをフェードアウトで終わらせず、もうちょっとやり方あったんじゃなかろうか)。ティム、もうちょっと緩急を付けた歌い方をしたらシンガーとしてパーフェクトなのに、この怒り一辺倒な歌い方がワンパターンすぎて本当に勿体ない。K.K.の指示もあるのかもしれないけど(この人が一番怒りに満ちているでしょうから)、これじゃあいつまで経っても“本家”には勝てないし、“ある時期”の二番煎じに甘んじたままではないでしょうか。
冒頭に2分前後のイントロダクション「Premonition」で緊張感を高めたかと思うと、そのまま矢継ぎ早に「The Cleansing」へと突入する流れは非常にドラマチック。かつ、その「The Cleansing」が約8分にもおよぶエピカルな作風で、従来の彼ららしさを残しつつも劇的なアレンジで聴き手を惹きつけます。さらにそこから、ジェシー・リーチ(Vo/KILLSWITCH ENGAGE、TIMES OF GRACE)をフィーチャーした「Ancestry」へと切れ目なしでなだれ込む。なにこれ、カッコいいったらありゃしない。
このバンドらしいヘヴィさや疾走感をしっかり保ちつつ、適度なドラマチックさで緩急を作り上げる構成は、どこかコンセプトアルバムのようにも感じられる。特にアルバム前半の畳みかけは圧巻で、ジェイソン・リチャードソン(G/ex. BORN OF OSIRIS、ex. CHELSEA GRIN)のテクニカルなプレイをフィーチャーした「Tightrope」からカオティックな「Fool's Gold In The Bear Trap」への流れは絶品の一言。後者は序盤のムーディーさから後半一気に捲し立てる攻撃的なアレンジに、鳥肌が立ちまくりです。