カテゴリー「2023年の作品」の33件の記事

2024年3月 5日 (火)

KK'S PRIEST『THE SINNER RIDES AGAIN』(2023)

2023年9月29日にリリースされたKK'S PRIESTの2ndアルバム。

デビュー作『SERMONS OF THE SINNER』(2021年)からちょうど2年ぶりの新作。前作はEX1 Recordsからのリリースでしたが、今作ではNapalm Recordsへと移籍。その結果、日本盤も今作からビクター配給となりました。

参加メンバーは前作から変わらずK.K.ダウニング(G/ex. JUDAS PRIEST)、ティム・“リッパー”・オーウェンズ(Vo/SPIRITS OF FIRE、A NEW REVENGE、ex. JUDAS PRIEST、ex. ICED EARTH、ex. YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEなど)、A.J.ミルズ(G)、トニー・ニュートン(B)、ショーン・エルグ(Dr)の5人。プロデュースは引き続きK.K.が担当し、ミックスおよびマスタリングを“現代メタルシーン最高峰のデンマーク人エンジニア”ことヤコブ・ハンセン(ARCH ENEMYDIZZY MIZZ LIZZYVOLBEATなど)が手掛けています。

全9曲(日本盤ボーナストラック除く)ですべて“歌モノ”。前作が全10曲で内1曲が短尺インスト(オープニングSE)だったので、ボリューム的にはほぼ一緒なのですが、前作はトータルで約50分あったの対して今作は約40分と非常にコンパクト。そういえば、前作は8〜9分の長尺曲が2曲もあったんでした。それと比べたら、今作は4分台の楽曲が中心で、長尺曲もラストの「Wash Away Your Sins」の約6分半のみ。

ティムの暑苦しいハイトーン&スクリームとK.K.の「弾きすぎ!」ってくらい詰め込みすぎなギタープレイのせいもあって、前作は50分という尺が長く感じられたのですが、今作はどうでしょう。基本的なスタイルはまったく変わっておらず、序盤3曲でやはり聴き疲れを感じずにはいられません。そういったところに好き嫌い分かれるところもありますが、ただタイトルトラック「The Sinner Rides Again」以降の後半で多少変化が付けられており、なんとか途中離脱することなく最後まで楽しめました。

そういった意味では、個人的ハイライトはラスト2曲の「Pledge Your Souls」「Wash Away Your Sins」かな(とはいえ、「Wash Away Your Sins」はエンディングをフェードアウトで終わらせず、もうちょっとやり方あったんじゃなかろうか)。ティム、もうちょっと緩急を付けた歌い方をしたらシンガーとしてパーフェクトなのに、この怒り一辺倒な歌い方がワンパターンすぎて本当に勿体ない。K.K.の指示もあるのかもしれないけど(この人が一番怒りに満ちているでしょうから)、これじゃあいつまで経っても“本家”には勝てないし、“ある時期”の二番煎じに甘んじたままではないでしょうか。

そろそろ“らしさ+α”でオリジナリティを確立させないと、短命に終わってしまう気もするんだけどなあ。けど、オールドスクールなメタルファンの皆さんはそういう変化を求めてないんですかね。メタル作品としてはクオリティは高いんだろうけど、今の自分の趣味嗜好からはちょっとだけズレる1枚かもしれません。

 


▼KK'S PRIEST『THE SINNER RIDES AGAIN』
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2023年12月31日 (日)

2023年総括

大晦日ということで、2023年のまとめ記事をアップしておきます。

2022年同様、「ジャンル/アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、30作品に縛る」という形にさせていただきました。特に順位付けをせずアルファベット→50音順で30作品、掲載していきます。

 

BARONESS『STONE』(アルバム)

 

BLUR『THE BALLAD OF DARREN』(アルバム)

 

BRING ME THE HORIZON「LosT」(楽曲)

 

BUCK-TICK『異空 -IZORA-』(アルバム)

 

CAROLINE POLACHEK『DESIRE, I WANT TO TURN INTO YOU』(アルバム)

 

CODE ORANGE『THE ABOVE』(アルバム)

 

††† (CROSSES)『GOODNIGHT, GOD BLESS, I LOVE U, DELETE.』(アルバム)

 

DEPECHE MODE『MEMENTO MORI』(アルバム)

 

DURAN DURAN『DANSE MACABRE』(アルバム)

 

HEY-SMITH『Rest In Punk』(アルバム)

 

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2023年8月11日 (金)

2023年上半期総括

約4ヶ月ぶりの更新となります。皆様お元気でしたでしょうか? 2023年上半期が異常なほどに激務状態が続いたこと、生活習慣が変わったこと、新たな趣味ができたことなどがあり、しばらく放置気味でしたこのブログ。なんとか様子を見て書こう、書こうと思っていたのですが、どうにもモチベーションが上がらずに今日まで至りました。これが復活宣言というわけではないのですが、ここからまた不定期ながらも気になることを記していけたらと思っております。

さて、本来なら毎年7月くらいには公開していたこの記事。やっぱり記録として残しておきたいと思います。

今年は一昨年まで同様に「洋楽5枚/作品、邦楽5枚/作品」という形で、アルバムにこだわらずシングル/EP/単曲含む10作品を紹介していきます。

 

DEPECHE MODE『MEMENTO MORI』(amazon

 

LITURGY『93696』(amazon

 

METALLICA『72 SEASONS』(amazon

 

QUEENS OF THE STONE AGE『IN TIME NEW ROMAN...』(amazon

 

SLEEP TOKEN『TAKE ME BACK TO EDEN』(amazon

 

YOASOBI「アイドル」(amazon

 

櫻坂46「Start over!」(amazon

 

花冷え。「お先に失礼します。」(amazon

 

暴動クラブ『初期作品集』

 

揺らぎ『Here I Stand』(amazon

 

なお、以下5作品が次点となります。

 

BLONDSHELL『BLONDSHELL』
FOO FIGHTERS『BUT HERE WE ARE』
SIGUR RÓS『ÁTTA』
TENDRE『BEGINNING』
凛として時雨『last aurorally』

2023年4月 7日 (金)

AUGUST BURNS RED『DEATH BELOW』(2023)

2023年3月24日にリリースされたAUGUST BURNS REDの10thアルバム。日本盤未発売。

前作『GUARDIANS』(2020年)から3年ぶりに発表された本作は、10枚目のスタジオアルバムというだけではなく、結成20周年のタイミングに届けられる節目の1枚。メタルコア/ポストハードコア専門レーベルのSharpTone Records移籍第1弾作品でもあり、お馴染みのプロデューサー陣(カーソン・スロヴァク&グラント・マクファーランド)とともに制作されました。

冒頭に2分前後のイントロダクション「Premonition」で緊張感を高めたかと思うと、そのまま矢継ぎ早に「The Cleansing」へと突入する流れは非常にドラマチック。かつ、その「The Cleansing」が約8分にもおよぶエピカルな作風で、従来の彼ららしさを残しつつも劇的なアレンジで聴き手を惹きつけます。さらにそこから、ジェシー・リーチ(Vo/KILLSWITCH ENGAGETIMES OF GRACE)をフィーチャーした「Ancestry」へと切れ目なしでなだれ込む。なにこれ、カッコいいったらありゃしない。

このバンドらしいヘヴィさや疾走感をしっかり保ちつつ、適度なドラマチックさで緩急を作り上げる構成は、どこかコンセプトアルバムのようにも感じられる。特にアルバム前半の畳みかけは圧巻で、ジェイソン・リチャードソン(G/ex. BORN OF OSIRIS、ex. CHELSEA GRIN)のテクニカルなプレイをフィーチャーした「Tightrope」からカオティックな「Fool's Gold In The Bear Trap」への流れは絶品の一言。後者は序盤のムーディーさから後半一気に捲し立てる攻撃的なアレンジに、鳥肌が立ちまくりです。

その後も曲間ほぼゼロで「Backfire」へとつなげ、緊張感を緩めることなくアルバムは進行。グルーヴィーな「Revival」を終えるとようやく静寂が訪れ、1分半程度のSE「Sevink」を境にアルバムはクライマックスへと突入します。パワフルな「Dark Divide」や「Deadbolt」で独立した世界を構築しつつ、終盤はダーク&ヘヴィな「The Abyss」、そして再び8分前後の長尺曲「Reckoning」で劇的なエンディングを迎えます。なお、前者にはERRAのJT・ケイヴィー(Vo)、後者にはUNDERØATHのスペンサー・チェンバーレイン(Vo)がゲストとして華を添えています。

M-1「Premonition」からM-7「Revival」までがほぼ組曲のような構成で圧倒されるも、「Sevink」を挟んで展開される終盤4曲はそれぞれ独立した小世界といった印象で、前半〜中盤ほどの緊張感は得られないかもしれません。そこのみがマイナスポイントですが、トータルではかなり力の入った作品集と受け取ることができます。ゲスト陣もここ20年のUSメタルコア界隈のスター選手が揃った感がありますし、そういった点でもひとつの大きな節目の作品であることが伝わります。初〜中期とはまた頃なる、円熟期にふさわしい充実の1枚ではないでしょうか。

 


▼AUGUST BURNS RED『DEATH BELOW』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2023年4月 5日 (水)

BURY TOMORROW『THE SEVENTH SUN』(2023)

2023年3月31日にリリースされたBURY TOMORROWの7thアルバム。

初の全英TOP10入り(最高10位)を記録した前作『CANNIBAL』(2020年)から約2年半ぶりの新作。コロナによるロックダウンの影響でリリースが予定より遅れたものの、アルバムはセールス的に好記録を残すことができました。が、その後のツアーはすべて中止・延期に。こういった影響もあってか、2021年夏にはオリジナルメンバーのジェイソン・キャメロン(G, Clean Vo)が脱退してしまいます。しかし、バンドは新たにエド・ハートウェdル(G)とトム・プレンダーガスト(Key, Clean Vo)を迎え、6人編成で活動再開。少しずつライブを開催する中で、2022年3月には「Death (Ever Colder)」、6月には「Life (Paradise Denied)」を立て続けに配信リリースし、健在ぶりをアピールします。

そして、ついに完成したニューアルバム『THE SEVENTH SUN』。過去2作から引き続き、アルバムのプロデュースを手がけたのはダン・ウェラー(SikThのギタリスト)。先の配信ナンバー2曲はアルバム本編に含まれていないものの(日本盤にはボーナストラックとして追加収録)、それを補って余るほど良曲揃いの力作に仕上がっています。

クリーンボーカルが交代したことで、どれだけ前作から自然な流れで本作と向き合うことができるのか心配もありましたが、先の配信楽曲で徐々に慣れてきたこともあってか、アルバムは強烈なオープニング曲「The Seventh Sun」から安心して(かつ、興奮したまま)最後まで楽しむことができるはずです。

前作の洗練された作風は本作にも引き継がれていますが、今回はそれ以前に作品に存在していた暴力的なアグレッションが復調しており、そこも含めて全体のバランス感に優れている。ダニエル・ウィンター・ベイツ(Unclean Vo)もより迫力を増し、トムのクリーンボーカルとの対比も良好。互いが双方の良さ・魅力を見事に引き出すことに成功しており、非常に充実したボーカルワークを楽しめるはずです。かつ、「Heretic」には盟友WHILE SHE SLEEPSのロズ・テイラー(Vo)、「The Carcass King」にはタトゥーアーティスト/ミュージシャンのコディ・フロストがそれぞれゲスト参加し、多彩さを加えています。

多彩さといえば、楽曲の幅の広がりも本作の大きな特徴。ドラマチックさとブルータルさが混在するタイトルトラックのほか、キャッチーな王道メタルコア「Abandon Us」や「Recovery?」、殺傷力抜群の「Force Divide」や「Wrath」、ゴシックテイストの強いメロウなミディアムチューン「Majesty」、コディ・フロスト含む3人のシンガーの特性が見事に発揮された「The Carcass King」など捨て曲ゼロなうえに、キラーチューンも満載。バンドとして確実なステップアップを遂げたと同時に、メンバーチェンジが功を奏した起死回生の1枚ではないでしょうか。

現時点ではまだ英国チャートの結果は出ていませんが、できることなら前作を超える数字を残してほしいですし、それを受けて来日にも期待したい……そう心の底から強く思えるほどの力作です。

 


▼BURY TOMORROW『THE SEVENTH SUN』
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2023年4月 1日 (土)

EMPIRE STATE BASTARD『HARVEST』(2023)

2023年3月24日に配信リリースされたEMPIRE STATE BASTARDの1stシングル。

EMPIRE STATE BASTARDはBIFFY CLYROのサイモン・ニール(Vo, G)と、同バンドのツアーサポートメンバーにしてOCEANSIZEのフロントマンでもあるマイク・ヴェナート(G, Vo)によるサイドプロジェクト。この2人を中心に稼働するものの、レコーディングやツアーにはSLAYERを筆頭に数々のバンドで活躍するデイヴ・ロンバード(Dr)、そしてBITCH FALCONのナオミ・マクラウド(B)が参加することが事前にアナウンスされ、音源がひとつも公開される前に発表された3本のライブが即日完売するなど、早くから注目を集めてきました。

3月26日の1stステージを目前に公開された、記念すべきデビュー曲はサイモンがBIFFY CLYROで表現してきたいくつかの側面のうち、メタル/ハードコア的方向に特化した仕上がり。サイモンも歌うというよりは叫ぶことでこのエクストリームな楽曲を完璧な形に昇華させようとしており、そこにマイクの攻撃性の強いギターと、どこからどう聴いてもデイヴ・ロンバードという派手なドラミングが随所にフィーチャーされている。一旦スタートしたら3分にも満たないこの曲、秒に感じられるほどカオスな時間を堪能できます。特に終盤10数秒で体感できる怒涛のプレイは圧巻の一言です。

また、〈We can build a different world(俺たちは新しい世界を築くことができるんだ)〉〈My patience is wearing thin(俺の忍耐力は薄れている)〉といった繰り返されるフレーズ、どこか神話性や神秘性が強い歌詞なども印象的で、いずれリリースされるアルバムを通してどんなことを伝えたいのか、表現したいのかも気になるところです。

YouTube上にアップされているライブのファンカム映像を観ると、ダーク&ムーディな楽曲も存在しているようですが、今後どういった楽曲がドロップされているのか、とにかく今年もっとも楽しみなプロジェクトです。

 


▼EMPIRE STATE BASTARD『HARVEST』
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2023年3月31日 (金)

METALLICA『72 SEASONS [Single]』(2023)

2023年3月30日に配信リリースされたMETALLICAの新曲。

この曲は4月14日発売予定の6年半ぶりのオリジナルアルバム『72 SEASONS』からの、リードシングル第4弾。昨年11月末に突如配信された「Lux Æterna」、今年1月中旬に発表された「Screaming Suicide」、同3月初頭に発表された「If Darkness Had A Son」に続く楽曲で、その曲名からもわかるようにアルバムの冒頭を飾るタイトルトラックです。

全12曲が収録され77分超の大作となっているニューアルバムの、トラックリストは下記の通り。

01. 72 Seasons
02. Shadows Follow
03. Screaming Suicide
04. Sleepwalk My Life Away
05. You Must Burn!
06. Lux Æterna
07. Crown Of Barbed Wire
08. Chasing Light
09. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

「Lux Æterna」が3分半程度のショート&ファストナンバー、「Screaming Suicide」が比較的従来の彼ららしい5分半のアップチューン、「If Darkness Had A Son」は『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)期をブラッシュアップさせた6分半のミディアムナンバーと、ここまで比較的バラエティに富んでいて、かつ原点回帰とキャリア総括的な方向性になるのかと予想させてきましたが、このタイトルトラックもその延長線上にある1曲と言えるでしょう。

約7分40秒という長尺なこの曲は、アップとミディアムを交互に繰り返す、プログレッシヴな展開を持つアレンジ。とにかくリフに次ぐリフというHR/HMファンが喜びそうな作風は、どことなく4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)の頃を彷彿とさせます。スラッシュメタルの枠からはみ出し、独自のスタイルを確立させようとした80年代後半のテイストと、曲中何度も出てくる〈Feeding on the wrath of man.../人の怒りを糧に〉というフレーズからもおわかりのように怒りをテーマにした歌詞など、キャリア40年を超える今もそこを軸に創作活動と向き合っているという事実に改めて驚かされます。

もちろん、80年代後半に試みた施策とまったく同じわけではありません。その間の経験が見事に反映された、非常に洗練されたアレンジ/サウンドを楽しむことができますし、歌詞の質感やその怒りの矛先も20〜30代の彼らとは異なるものが伝わる。「俺たちのアニキ」だったジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)が親世代、あるいはそのひとつ上の世代になったことで表現する怒りとは一体なんなのか……この曲のみならず、アルバムの全編からそういったジェイムズの「今」が伝わるのがこの新作なのかもしれませんね。

ファンならず間違いなく一発で気に入るであろうこのテイスト、方向性。時代に逆行したそのスタイル含め、今度のMETALLICAはオーバーグラウンドでどこまで支持されるのか、非常に楽しみになってきました。リリースまであと2週間、期待に胸躍らせながらその瞬間を待つことにしましょう。

 


▼METALLICA『72 SEASONS [Single]』
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2023年3月19日 (日)

HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』(2023)

2023年3月17日にリリースされた、HANOI ROCKSの2ndアルバム『ORIENTAL BEAT』(1982年)の40周年記念リミックスアルバム。

もともとは1982年1月に本国フィンランドで発売され、日本でも追って1983年1月に初来日記念盤として発表された代表作のひとつ。本作制作時のメンバーはマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G, Vo)、ナスティ・スーサイド(G)、サミ・ヤッファ(B)、ジップ・カジノ(Dr)で、のちの黄金期を支えるラズル(Dr)加入前最後のオリジナル作品となります。

本リミックス盤に付属のマイケル・モンローによる解説によると、当初の『ORIENTAL BEAT』のミックスにまったく納得していなかったとのことで、90年代にGUNS N' ROSES経由でUzi Suicide Recordsから再発される際にリミックスを希望したんだとか。しかし、当時はオリジナルのマルチトラックが行方不明になったと聞かされ、泣く泣く断念。しかし、数年前にUniversal Musicの倉庫で本作のマルチトラックが発見され、マイケルを中心に新たな形で本作が生まれ変わることになったのでした。

今回のリミックスに際し、曲順も一部変更。例えばオリジナル盤では8曲目に収録のタイトルトラックが、このリミックス盤では1曲目に配置されていたり、本来は2曲目の「Don't Follow Me」が新たに8曲目に変更されていたりと、聴き慣れたものから若干違和感も残る形に。ただ、これも2、3回と通して聴き返すと慣れてくるので、特に問題はないかな。

で、気になるのがリミックス効果。確かにギターのバランスが良くなったり、リズム体のチープさが少々払拭されたかな。全体的によりモダンなバランス感に調整されていて、80年代に初めて聴いたときとはまた違った心地よさが伝わる内容に生まれ変わっています。80年代にはあのB級感のあるチープなミックスが合っていたし、そこに惹かれたところもあったんだけど、これからHANOI ROCKSに触れるリスナーには確かに少々厳しいと言わざるを得ないかな。そういった点では、今回の改訂はマイケル・モンローが当初イメージしていた音というよりも、今の耳で聴いても耐え得るミックスに調整し直したというのが正しいのかもしれませんね。

また、「Oriental Beat」に顕著だけど、オリジナルバージョンを何百回と聴いてきた耳にも「……あれ?」と感じるボーカルが数ヶ所存在します。これは、マルチトラックに残っていた未使用のボーカルトラックを新たに採用したとのことで、「Oriental Beat」以外にも数曲で新規採用されているようなので、もうちょっと聴き込んで違いを見極めてみたいと思います。

もはやニューアルバムは期待できないと思っていたHANOI ROCKSですが、昨年の1日限りの再結成ライブに続きこのリミックスアルバムの発売など、メンバーが元気でいる限りはこうしたサプライズもまだまだあるのかもそれませんね。

 


▼HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2023年3月17日 (金)

PERIPHERY『PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE』(2023)

2023年3月10日にリリースされたPERIPHERYの7thアルバム。日本盤未発売。

前作『PERIPHERY IV: HAIL STAN』(2019年)から約4年ぶりの新作。前作で新たな可能性を秘めていることを匂わせた彼らですが、その方向性は本作で完全に開花したといっても過言ではありません。いやはや、本当にすごいアルバムを完成させてしまいましたね。

『DJENT IS NOT A GENRE』というサブタイトルからも伝わるように、PERIPHERYは本作でそういった狭く流行り廃りのある“枠”から完全に飛び出し、“Djent(ジェント)”というものを精神性として昇華させようとしています。事実、オープニングを飾る「Wildfire」なんて序盤〜中盤は多くのメタルファンがイメージする“Djent”スタイルのアレンジで楽曲が進行しますが、途中からサックスソロをフィーチャーしたジャジーな演奏が飛び込んでくる。プログメタルとしては特段不思議じゃないアレンジかもしれませんが、改めてこのバンドは狭い世界に留まっておくことなんてできないことを証明してみせます。

「Wax Wings」のようなポップスの領域に踏み込んだプログメタルもあれば、エレクトロポップ/ニューウェイヴの色合いを全面に打ち出した「Silhouette」のような楽曲も存在し、曲によってはメタルの枠すら超越している。そんな中、変拍子を巧みに取り入れつつもキャッチーなメロディで歌い上げる「Dying Star」のような5分に満たないナンバー、デスメタル的なスタイルも積極的に取り入れたブルータルな「Eerything Is Fine!」「Zagreus」も含まれており、曲の長尺や激しさ/優しさにも一切縛られない自由度の高さは過去イチではないかと言いたくなるほど。

そんな意欲作のクライマックスには、12分半におよぶ「Dracul Gras」、11分強の「Thanks Nobuo」の大作2曲が並ぶ。これまでも日本に関連したタイトルの楽曲を多数生み出してきた彼らですが、このラストナンバー「Thanks Nobuo」の“Nobuo”とはかの植松伸夫氏(『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽制作者)のことでしょうか。PERIPHERYのことだからありえそう。そう考えると、この曲で表現されたスケール感の大きさやコード運び、サウンドエフェクトは『FF』楽曲とリンクする……ところもあるかな? なんにせよ、この曲でアルバムを締めくくるあたりにもバンドの変質/進化が伺えます。

これが到達点とは言わないものの、ひとつの通過点としてはかなり大きな意味を持つ1枚に仕上がったのではないでしょうか。メッセージ性の強いサブタイトル然り、本作を起点にこのバンドはこの先もさらに進化を続けていくんでしょうね。

 


▼PERIPHERY『PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE』
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2023年3月 3日 (金)

METALLICA『IF DARKNESS HAD A SON』(2023)

2023年3月2日に配信リリースされたMETALLICAの新曲。

この曲は今年4月14日に発売予定の6年半ぶりのオリジナルアルバム『72 SEASONS』からの、リードシングル第3弾。昨年11月末に突如配信された「Lux Æterna」、今年1月中旬に発表された「Screaming Suicide」に続く楽曲で、アルバムの9曲目として収録予定の1曲です。念のため、以下アルバムのトラックリストとなります。

01. 72 Seasons
02. Shadows Follow
03. Screaming Suicide
04. Sleepwalk My Life Away
05. You Must Burn!
06. Lux Æterna
07. Crown Of Barbed Wire
08. Chasing Light
09. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

今回のアルバムは全12曲で、トータル77分超の大作。「Lux Æterna」が3分半程度のショート&ファストナンバー、「Screaming Suicide」が比較的従来の彼ららしい5分半のアップチューン。以前のレビューでも3、4曲は8分超えのプログレッシヴな楽曲が用意されているのかな?と予想しましたが、今回はその予想とは反するものの、6分半超えの長尺ミディアムヘヴィナンバーです。

過去2曲がジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)がコメントしたように、METALLICAのルーツでもあるNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)を再解釈したような、ある意味原点回帰的な意味合いを持つ楽曲だったのに対し、今回の「If Darkness Had A Son」は90年代のブラックアルバム以降の流れを汲む作風。プログレッシヴな要素こそ皆無ですが、中期METALLICAらしさに満ち溢れた聴き応えのある良曲ではないでしょうか。

この手のスタイルは前作『HARDWIRED...TO SELF-DESTRUCT』(2016年)にも収録されていましたが、前作収録曲と比較しても(ブラックアルバム付近に)先祖返りした印象を受けます。かつ、作風的にジャムセッションの流れから生まれた曲でもあるのかなと。ただ、そのジャムセッションがやや退屈気味だった『LOAD』(1996年)『RELOAD』(1997年)期と比べてかなり洗練されたような気も。単に録音したものをエディットしてこうなったのか、あるいは過去数作での経験が良い形に昇華されたのか。その答えはアルバムを通して聴いたときに明確になりそうです。

楽曲配信に先駆け、彼らの公式TikTokではイントロパートのラーズ・ウルリッヒ(Dr)のドラムパート(と彼がプレイする映像)が公開され、その後そこにロバート・トゥルヒーヨ(B)がベースを被せた映像、さらにジェイムズがギターを重ねた映像を経て、最後はカーク・ハメット(G)が演奏に加わった動画がアップされ、この曲の配信リリースへとつなげていきました。毎回プロモーションを駆使してきたMETALLICAですが、このイマドキな手法はゴリゴリのヘヴィメタルバンドとはかけ離れたもので、個人的にはかなり楽しませてもらいました。これ、絶対にプロモーションスタッフを都度都度入れ替えて、若手をどんどん採用してますよね。

こうなってくると、アルバムは単なるNWOBHM焼き直しや“『KILL 'EM ALL』(1983年)のアップデート”だけでは済まされない内容が期待できそうですね。良い意味でMETALLICAの原点を振り返りつつこれまでを総括する、そんな傑作の誕生に期待したいところです。

 


▼METALLICA『IF DARKNESS HAD A SON』
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