さてさて、今回はさんざん盛り上げておいて「お前の感想はまだかよ!?」ってなツッコミをもらう前に、僕なりの感想をきっちり形にしとこうと思いまして‥‥BUCKCHERRYっすよ、BUCKCHERRY!!(爆)‥‥完全に失語症以下の表現だな、これじゃ。
まず、何故ここまで彼等が話題になっているのか? そりゃBUCKCHERRYがアメリカはロス出身のバンドだからでしょう♪ 考えてみて下さい。僕ら日本人は幸運にも日本にいて、アメリカやイギリスのみならず、ヨーロッパ諸国からブラジル、東南アジアにロシア……とにかく、世界中の音楽を日本にいながらして聴く事が、手に入れる事ができるのです。その幸せさを忘れてしまって……よ~く思い浮かべて下さい。僕らが普段耳にする、BUCKCHERRYのようなワイルドなロックンロールバンドはどこの国出身ですか? WiLDHEARTS? イギリス。BACKYARD BABIES? スウェーデン。HELLACOPTERS? スウェーデン……みんなアメリカ以外の国の出身。まぁこれらのバンドはBUCKCHERRYとも色が違うし、これらのバンド自体にも「ワイルドなロックンロールバンド」っていう共通項しかなく、音楽性は皆それぞれに違うし。そしてこれが決定的‥‥皆、インディーバンドだということ。確かにWiLDHEARTSは過去、メジャーレーベルに所属していたけど。日本にいるとあまり感じない事かもしれないが、現在アメリカにこの手のバンドがどれくらいメジャーに残っているだろう? AEROSMITH? まぁいい。これは特例。GUNS N'ROSES? つうか、本当に存続してるの? さて、他に誰がいる? 確かにグランジあがりのシアトルバンドなどはいるが、80年代を席巻したようなバンドは今、見当たらない。いても弱小インディーズ・レーベルに所属して、日本ではメジャーでリリースされてるごく一部のバンドのみ。そう、大袈裟かもしれないが、GUNS N'ROSES以来の10年間、この手のメジャーバンドの不在。インディーロックの席巻、シアトル勢、ヘヴィロック、メジャーバンドのレーベルからのドロップ‥‥10年は長すぎた。そして、僕らは待った。何時の日か、再びメジャーレーベルから、何かを変えてくれるバンドが現れるのを。
BUCKCHERRYが所属するレコード会社は、新興レーベルの「DREAMWORKS RECORDS」。ディズニーとスピルバーグとゲフィン(アメリカの大手レコード会社。音楽活動復帰後のジョン・レノン、復活後のAEROSMITH、GUNS N'ROSESやNIRVANAが所属)の共同出資会社。この会社が送る、今世紀最後の大物新人として鳴り物入りで登場したのが、彼等BUCKCHERRYなのです。このライヴハウス上がりのバンドがまず手始めにしたことといえば、大物バンドのオープニングアクト。KISSとKORNという、ある意味対極にいるバンドの。けど、この2つのバンドにもちゃんとした共通点がある。それは「エンターテイメント性を重視した、アリーナショウ」を繰り広げるアーティストだということ。かたや全盛期のメークを施し、昨年リリースした復活オリジナルアルバムは全米第3位を記録した、「アリーナロックの親玉」KISS。かたや「90年代のアメリカ」そのものともいえる、全米ナンバー1バンド、KORN。両方ともアリーナを満員にし、あくまで(その方法論は全く違うものであっても)お客を楽しませる事に徹底してるという意味では、この2つのバンドは共通したことをやってるのです。
新人にしていきなりアメリカの頂点にいるバンドのオープニングアクト。しかもKISSとはヨーロッパ諸国、KORNとはアメリカを回るわけなのです。こんなに恵まれた状況。そして最も驚いた事のひとつに、今年の6月第1週のビルボード誌で約10年振りに「HR/HM特集」を組む事が決定したという事があります。何故これがBUCKCHERRYと関係あるのかというと、理由その1;10年前もビッグだったMETALLICAやMOTLEY CRUEが未だに現役で、しかも音楽的に飽くなき挑戦をしている事、理由その2;KORN, MARILYN MANSONなどといった新勢力(新しい形態のHR/HMを体現している)の活躍、そして理由その3;BUCKCHERRYという10年にひとつの逸材のデビュー。いや、本気で。既にここまで影響を与えてしまっているわけですよ、アメリカでも。こんなこと、本当に10年振りなのですよ。
アメリカはもとより、ここ日本でも既に盛り上がりが過熱していて、デビュー前から「BURRN!」誌や伊藤政則氏のラジオなどで取り上げられ、国内盤発売当初は品切れが続出する地方もあった程だそうです。デビュー後には「rockin'on」誌などの総合音楽誌にもインタビューが取り上げられています。アルバムレビューも好意的でしたし。
もうひとつ、デビューアルバムの扱い。プロデューサーがテリー・デイトとスティーヴ・ジョーンズ。スティーヴはかの有名なSEX PISTOLSのギタリスト。テリーはPANTERAやSOUNDGARDENのプロデューサーとして有名ですね? スティーヴはまだしも、テリーは意外な人選のような気がします。どちらかというとヘヴィロック系を多く手掛ける人物だけに、こういうストレートな音楽はどうなのかなぁ‥‥って、よくよく考えてみたらこの人、昔にWiLDHEARTSの『DON'T BE HAPPY...JUST WORRY』のリミックスを手掛けているのですよね? そうか、ロックンロール系、初めてじゃないんだ。しかし、こんな有名どころをいきなり使うか? いかにレコード会社が金かけてるかがよ~く判るわ。
さて、事前の情報はこんなもんで如何でしょうか? これで何故彼等がここまで話題になっているかが判ってもらえたでしょうか? それを踏まえた上で、以下の僕の感想を読んで下さい。それだけこのバンドに入れ込んでいる。いえ、賭けているのですから。
まず最初に言ってしまえば……BUCKCHERRYのやっている音楽は決して新しいタイプの音楽ではないです。80年代末期にこういうバンドはロスに腐る程いましたから。ブレイクこそしなかったものの、ゲフィン・レコードは「第2のGUNS N'ROSES」と称して88年にLITTLE CITY ANGELSを、90年にはLITTLE CEASERをデビューさせました。共にGN'Rというよりは……BUCKCHERRYに近いタイプのバンドでした。つまり、ゲフィンでさえも判っていたのです。「第2のGN'R」と唱いながら、同じではダメだと。だからこそ、GN'Rに足りなかった部分(ブラックテイスト、ブルーズフィーリング、マッチョ的な男臭さ)を持ったバンドを求めたのでしょう。が、結局このふたつのバンドは成功を収める事なく消えていったのでした‥‥ちなみにLITTLE CEASERはプロデュースにあのボブ・ロックを迎え、デビュー曲はかのアレサ・フランクリンの名曲「Chain Of Fool」でした。同じ頃、BLACK CROWESがデビューし、オーティス・レディングの「Hard To Handle」でブレイクしたのは、今となっては皮肉でしかありません。
BUCKCHERRYとGN'Rとをその登場の仕方で比較してしまいましたが、音楽性に関しては全く別、と思ってもらっていいと思います。何故なら、彼等は先の2つの消えていったバンドの音楽性に近いからです。けどそれだけで終わってないのは、GN'R同様、パンクの洗礼を受けているという点でしょうか? そしてあくまでタテノリ‥‥イギリスのバンドと違うのはこの点なのかも。このタテノリにリフ中心‥‥思わずAC/DCを思い浮かべますね? 実際、ボーカルのジョシュア・トッドは最も影響を受けたバンドとしてAC/DCの名前を挙げていますが。
以上の事から、僕は最初にこのバンドを紹介した時、GUNS N'ROSES + BLACK CROWES + AC/DCのような書き方をしたと記憶してます。そして、ルックスの面(全身に入ったタトゥー)からMOTLEY CRUEの名前も挙げたような記憶があります。あの時、僕が言いたかった事、理解していただけたでしょうか?
楽曲に関してですが、最初に「WiLDHEARTS的」と言っていたような‥‥これは完全に僕の勘違いです。ラジオで "Dead Again" 1曲を聴いた感想でこのように言ってしまいました。けど、アルバムをちゃんと聴くと、おもいっきりアメリカのバンドですよね? 正直、最初に挙げたヨーロッパ勢にはこれは出来ないでしょう。こんなアメリカンロック、何年振りに聴いたかなぁ? 試しにこのアルバム聴いた後にBLACK CROWESの『BY YOUR SIDE』を聴いてみたのですが‥‥決定的に違う「何か」を持ってますよね、BUCKCHERRYは。(言っとくけど、『BY YOUR SIDE』はお気に入りのアルバムだよ!)決して否定的な意味ではないのでBLACK CROWESファンに怒って欲しくないのだけど、いい意味でBLACK CROWESは「止まって」るバンドですよね? それに対し、BUCKCHERRYの方は古いながらも「同時代性」を持ったバンドだと思うのです。例えばBUCKCHERRYの「For The Movies」という曲。ブルージーなバラードですが、BLACK CROWESがやったらもっと泥臭くなると思うのです。が、BUCKCHERRYの方はというと、ちょっと都会的……MICHAEL MONROEあたりがやりそうなアレンジ、しかもギターソロはツインリード……そして同じ疾走系の楽曲でも、かたや「Go Faster」のようなROLLING STONES, FACESあたりがやりそうなタイプ、かたや「Dead Again」のようなただのパンクソング。この辺の違いも大きいですよね? 両者のボーカリストは共に渋い声をしてますが、唄い上げるクリス・ロビンソンに対し、吐き捨てるジョシュア・トッド。何だか、比べるだけ無駄のような気がしてきた。結局、両者は全く別のバンドだ、と。ただ、「rockin'on」誌がインタビューで「BLACK CROWESの事をどう思うか?」なんて聞いてたもんだから、つい‥‥きっとこの先も、この手の質問はされ続けるんだろうなぁ、REEFと一緒で。
と、ここまで書いてみて改めて思った事。この手のロックって、結局は肌に合うか、合わないか、なんですよね? 意味ないじゃん! これじゃ「お薦め文」というよりは「釈明文(みんなの誤解を解く為の解説)」だな、これ。まぁそれもいいか。とにかく、僕は好きで好きで仕方ないのだから。(これを「開き直り」ともいう;爆)ただね、巷でここまで騒がれていると必ず出てくると思うんですよ。「売れてるバンドは聴かん!」とか「話題だけのバンドは好かん!」っていう『自称:ロックファン』が。この文は、そういう人達が心を改める切っ掛けになってくれればなぁ、誤解を解いてくれればなぁ‥‥そういう起爆剤になってくれれば、こちらとしては万々歳です。千の言葉よりも、たったひとつの音‥‥この方が説得力があるのだから、ちょっとでも気にかかったら買ってみて下さい。いえ、持ってる友人に借りてでも聴いて下さい! そうなってくれれば、こっちの作戦、大成功なのですから。
最後に。このバンドの魅力のひとつはライヴだと確信してます。実際に生でまだ見た事はないのですが、TVにてそのライヴ映像(KISSのオープニング時のもの)を見ました‥‥ちょっとキますよ、これは! アクセル・ローズやペリー・ファレル以来かもしれない、あんな変なボーカリストは。だって常に動きっぱなし、踊りっぱなし、飛び跳ねっぱなし! 1曲中ピョンピョン飛び跳ねながら「Lit Up」を唄うジョシュア。これは衝撃でした。彼等は小さいハコでなく、是非アリーナクラス、それも野外で見たいです。東京だったら日比谷野音とか。フジロックで呼んじゃえばいいのに。
ヨーロッパでは4月上旬、日本では下旬にデビューしたBUCKCHERRY。いよいよアメリカでは今月末にそのデビューアルバムがリリースされるようです。そしてKORNと一緒にアメリカ中をサーキットする……売れるか、否か。結局、彼等には「売れて当たり前」みたいな義務感が大前提としてあるのです。さて、一体どうなることやら……今のアメリカの音楽シーンを変える事ができるか、非常に楽しみでなりません。
▼BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD)