TURMION KÄTILÖT『OMEN X』(2023)
2023年1月13日にリリースされたTURMION KÄTILÖTの10thアルバム。日本盤未発売。
TURMION KÄTILÖTは2003年にフィンランドのクオピオで結成されたインダストリアルメタルバンド。そのヴィジュアルはブラックメタルを彷彿とさせるコープスペイントが特徴的ですが(元メンバーがそっち側の人だったようで、その名残なのか)、ベースにあるのはニューメタル以降のサウンドで、ディスコビートやシーケンスされるシンセサウンド、時にはピコリーモ的な要素も見せるコミカルさ、思わずシンガロングしたくなるようなコーラスパートのキャッチーさなどが親しみやすさにつながっています。
Nuclear Blast Records移籍2作目、前作『GLOBAL WARNING』(2020年)から約3年ぶりとなる今作。コロナの影響によるロックダウンを受け思うようにプロモーションできなかった前作での葛藤を払拭するような、爆発力の強いダンスメタルの数々が用意されており、その楽曲群はどれも完成度が高い。サビにはポップ&キャッチーなシンガロングパートが必ず用意されているので、歌詞が聞き取れなくてもついつい口ずさんでしまいたくなるものばかりです。
ボーカルに関しても英語以外の母国語で歌われているのですが、不思議と耳馴染みがよく、パーカッシヴな歌唱が跳ねるようなビッグビートとの相性も抜群。ツインボーカル体制のようですが、ユニゾンで歌ったときの破壊力は非常に効力を発揮していますね。
系統的にはRAMMSTEINの系譜にあるのかもしれませんが、彼らほどの変態性はそこまで感じられず(MVにはその色は見つけられるものの、こちらのほうがもっとコミカルかな)。かつ、FIVE FINGER DEATH PUNCH的テイストを加えることでメジャー感が強まっている印象もあります。曲タイトルから歌詞の雰囲気を掴もうと思ったのですが……(以下、翻訳です)。
01. Totuus:真実
02. Gabriel:ガブリエル
03. Vie Se Pois:では(演奏を)始めてください
04. Pyhä Kolminaisuus:聖三位一体
05. Puoli Valtakuntaa:王国の半分
06. Verestä Sokea:血の盲目
07. Isä Meidän:我々の父
08. Sormenjälki:指紋
09. Käy Tanssiin:ダンスに行く
10. Kun Kesä Kuoli:夏が死んだとき
11. Kuolettavia Vammoja:致命傷
歌詞を海外サイトで確認したところ、意外と詩的なことを歌っていることに気付かされました(まあ全体的にダークですが)。うん、カッコいいじゃないですか。「Totuus」MVの雰囲気に騙された(笑)。
平均点を軽く超える完成度の、ただただ気持ちいいアルバム。こういう作品はライブで体験してこそ、より魅力に気付かされるはず。きっと野外フェスでは、観る者を問答無用で楽しませるんでしょうね。一度ナマで拝見したいところです。
▼TURMION KÄTILÖT『OMEN X』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)