Y&T『MEAN STREAK』(1983)
1983年9月にリリースされたY&Tの5thアルバム(YESTERDAY AND TODAY名義の2枚を含む)。
3作目『EARTHSHAKER』(1981年)でひとつのスタイルを完成に近づけ、続く『BLACK TIGER』(1982年)では名曲「Forever」を含む内容でここ日本でも高く評価されたY&T。この『MEAN STREAK』は過去2作で築き上げたスタイルの完成形ともいえる内容で、プロデューサーをクリス・タンガリーディス(ゲイリー・ムーア、JUDAS PRIEST、THIN LIZZYなど)に交代したことも功を奏した力作。初めて全米チャート(Billboard 200)でTOP200入り(最高103位)を記録するなど、成績面でも結果を残した1枚です。
当時のメンバーはデイヴ・メニケッティ(Vo, G)、ジョーイ・アルヴィス(G)、フィル・ケネモア(B)、レオナード・ヘイズ(Dr)という黄金期の4人。ボーカルはもちろんのこと、コーラスワークに至るまでかなり力を入れて作り込んだ印象が伝わり、いわゆる捨て曲と呼べるようなものは皆無。どれも耳に残るキャッチーさがしっかり備わっています。と同時に、演奏面でも名手であるレオナード・ヘイズのパワフルで安定感の強いドラミングを筆頭に、泣きメロが随所に散りばめられたメニケッティのギターソロ、日本人の琴線に触れるドラマチックなアレンジなど聴きどころも豊富です。
楽曲に関しても「Mean Streak」や「Lonely Side Of Town」「Break Away」「Sentimental Fool」といった湿り気の強いメロディを持つ良質な楽曲が豊富。その合間をアメリカのバンドらしいグルーヴィーなミドルヘヴィナンバー「Straight Thru The Heart」や「Take You To The Limit」、疾走感の強さが気持ち良い「Hang 'Em High」、開放感満載のアメリカンハードロック「Down And Dirty」といった王道感の強い楽曲が埋めることで、最後まで飽きずに楽しむことができます。
そんな中、我々に日本人にとっては印象深い名曲がアルバム中盤に用意されています。それが、1982年夏の初来日時のエピソードを題材にした「Midnight In Tokyo」です。日本盤CDのライナーノーツによると、この来日公演中に東京を台風が直撃したこと、そんな状況下でも熱狂的に迎え入れてくれた日本のオーディエンスに感銘を受けたことに触発されて完成した1曲なんだとか。そういったエモーショナルなトピックもさることながら、楽曲自体も「Forever」の流れを汲む泣きの様式美ナンバーで、オールドスクールなHR/HMを愛好する者なら誰もが一度は通るであろうスタンダードではないでしょうか。
「Midnight In Tokyo」と双璧をなすタイトルトラック「Mean Streak」から始まり、最後は「Down And Dirty」の意味深な笑い声で終わる本作。現在流通&配信されているリマスターバージョンにはボーナストラックとして「I'm Not Sorry」が追加収録されています。ヘヴィ&グルーヴィーなミドルナンバーはアルバムに含まれていたらフックになりそうな印象もありますが、楽曲自体の完成度は本編収録の9曲よりちょっと劣るので、外したのは正解だったのかもしれません。
本作は個人的にも前作『BLACK TIGER』と双璧をなす、このバンドの代表作だと思っています。このアルバム以降、バンドはよりヘアメタル的なライト方向へとシフトし始めるので、そういった意味でもY&Tの入り口に相応しい傑作だと言わせてください。
▼Y&T『MEAN STREAK』
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