ERIC MARTIN BAND『SUCKER FOR A PRETTY FACE』(1983)
1983年にリリースされたERIC MARTIN BAND唯一のオリジナルアルバム。
ERIC MARTIN BANDはその名のとおり、のちにMR. BIGのフロントマンを務めることになるエリック・マーティン(Vo)を中心に結成されたUSロックバンド。もともとは415という名前で活動していましたが、同名アーティストがすでにデビューしていたため、メジャーデビュータイミングにこの名前に変更されました。
EMBことERIC MARTIN BANDのメンバーはエリックのほか、マーク・ロス(G)、ジョン・ナイマン(G, Key)、トム・デューク(B)、トロイ・ルケッタ(Dr)、デヴィッド・ジャコブソン(Key)という編成。アルバムのアートワーク表面にはエリックのみ、裏面には残りのメンバー5人が掲載されています。なお、メンバーのうちトロイはのちにTESLAを結成。ジョン・ナイマンも現在Y&Tに在籍し、音楽活動を継続しています。
JOURNEYのマネジメントに所属、かつプロデュースをそのJOURNEYを手がけたケヴィン・エルソン(彼はのちにMR. BIGの諸作品もプロデュースすることに)とロドニー・ミルズ(JOURNEYのほか38 SPECIALなど)が担当するなど、鳴物入りでのデビューだったことがうかがえる本作。内容的にもJOURNEYを筆頭とする、開放的な西海岸サウンドをベースにしたハードロック/ハードポップを堪能することができる、良質な1枚に仕上がっています。
ツインギター編成ですが、シンセが前面に打ち出されていることもあり、時代的にはSURVIVOR、NIGHT RANGERあたりとの共通点も見つけられますが、そのポップなメロディとエリックの親しみやすい歌声も相まって、やはりJOURNEYとの比較は避けられないかな。演奏面でも、実はよくよく聴くとテクニカルなことに挑戦していたり、凝ったアレンジが施されていたりと、単なるポップロック/AORでは終わらない魅力も秘めています。
40年前の作品とあって、アレンジ面や音作りに関しては古さは否めませんが、それでも楽曲自体の素晴らしさとエリックの若々しい歌声はエヴァーグリーンな輝きを放っている。また、MR. BIGのポップサイドとも重なる部分も多々あるので、ポール・ギルバート(G)&ビリー・シーン(B)のテクニカルなプレイさえ期待しなければMR. BIGファンも十分に楽しめる内容です。
が、それ以上にやはり80年代前半のUSハードロックを語る上で外せない1枚というのが大きいかな。VAN HALENやサミー・ヘイガーほどアクが強くなく、NIGHT RANGERほど洗練されていない。このA級とB級の間に位置する感じが、個人的にはたまらないんです。
アルバム自体は当時、50万枚以上のヒット作となりましたが、バンドは1985年に解散。エリックはアルバム『ERIC MARTIN』(1985年)にてソロキャリアをスタートさせることになります。
▼ERIC MARTIN BAND『SUCKER FOR A PRETTY FACE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)