NEX_FEST 2023@幕張メッセ(2023年11月3日)
アーティストがキュレーターを務めるフェスは国内外多々存在しますが、特にここ日本で海外アーティストがそういったフェスをしようとすると(例:SLIPKNOTにおける『KNOTFEST』や、オジー・オズボーン関連の『OZZFEST』など)、プロモーターの力が強く発揮され、キュレーションを担当するアーティストのファンが「?」と感じてしまう国内アーティストが多数起用されることが多い。しかし、BRING ME THE HORIZONによるこの『NEX_FEST』に関してはごった煮感が強いもののそういった不信感が一切存在しない、稀有な存在だったのではないでしょうか。
なもんですから、開催が決まってすぐにチケット確保。直前まで激務だったこともあり、当日は二度寝により出遅れたものの、なんとか途中からトップバッターのYOASOBIを観ることができました。
ライブは初見。鉄壁なサポートメンバーの演奏のあって、非常にライブ映えするパフォーマンスを楽しめました。ジャンル的にはメタルやラウドとは異なり(メンバーのAyaseはメタルコア出身ですが)本フェス中もっともアウェイが予想されたものの、楽曲自体は誰もが知っているヒット曲を多数持っているわけで、楽しくないわけがない。むしろ、こういうタイミングだからこそ普段ちゃんと接して来なかった人たちにもアピールできるチャンスであり、オープニングの「夜に駆ける」(間に合いませんでしたが)やエンディングの「アイドル」のみならず、一度は耳にしたことがある楽曲の連発でそういう層の皆さんも十分に楽しめたはず。クライマックスはやはり「アイドル」。こういう環境ならではといいますか、多数のモッシュピットが発生していて思わずニヤリとしてしまいました。そうそう、こういうのを待っていたんだよ。
セットリスト
01. 夜に駆ける
02. 祝福
03. セブンティーン
04. ミスター
05. 勇者
06. もしも命か描けたら
07. たぶん
08. 怪物
09. 群青
10. Interlude "Worship"
11. アイドル
■花冷え。
NEX_STAGE後方で移動に向けて待機していたので、YOASOBI終了と同時に隣のCHURCH_STAGEへ移動。PA後方あたりに待機し、かなり久しぶりの花冷え。生体験。夏の海外ツアーで鍛え上げられたことが一目でわかるパフォーマンス/演奏ぶりで、オープニングですでにノックアウト状態。今のノリにノったムーブに加え、ドラマーが交代したことがかなり良い方向に作用しており(とにかくリズムがタイトで気持ちよかった)、気づいたらフロア後方までパンパンの状態。終盤の「TOUSOU」「お先に失礼します。」はクライマックスに相応しい盛り上がりを見せ、いい意味で“見つかった”んじゃないかと思います。
セットリスト
01. 超次元ギャラクシー
02. NEET GAME
03. 今年こそギャル~初夏ver.~
04. Warning!!
05. 我甘党
06. TOUSOU
07. お先に失礼します。
08. Want to TIE-UP
友人たちと合流し、アルコール摂取しながら横目で堪能。ザクザクしたギターと轟音が(この規模の会場のわりには)気持ちよく、さほど詳しくない自分も最後まで飽きることなく楽しめました。ただ、個人的には途中でLIMP BIZKIT「Break Stuff」やSLAYER「Raining Blood」を遊びで演奏したところがピークだったかな。
セットリスト
01. Bow Down
02. Body Bag
03. Self-Destruction
04. Bad Thing
05. Come And Get It
06. Hurricane
07. There's Fest In Letting Go
08. Judgement Day
09. Choke
10. Gasoline
昼食と摂りながらまったり観覧。良くも悪くも安定した内容。直近リリースの「恋のアメリカ」がこういう大会場だと気持ち良いなと思いつつ、終盤の「絶望ビリー」あたりから重い腰を上げて、エンディングまで体を動かし続けました。
セットリスト
01. maximum the hormone
02. シミ
03. maximum the hormone II ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~
04. 恋のアメリカ
05. 「F」
06. What's up, people?!
07. 絶望ビリー
08. アバラ・ボブ -アバラ・カプセル・マーケッボブ-
09. 恋のスペルマ
前年のサマソニでの初来日を拝むことができなかったので、個人的にはこの日のメインアクトのひとつでした。シンプルなバンドアレンジで繰り出される楽曲の数々は、改めて90年代半ば以降のポップパンクやヒップホップを通過したオルタナロックの影響が強いんだなと再認識。なのに、ステージ上を縦横無尽に動き回るYUNGBLUD氏は往年のオジー・オズボーンのように落ち着きなく煽りまくる。ビールの入ったコップを何度も何度もフロアに放り投げる仕草に、「そうそう、こういう馬鹿馬鹿しいまでのロックアイコンって久しく観ていなかったな」と、こちらも自然と笑顔に。終盤に披露された「Happier」ではBMTHのオリヴァーも客演で加わり、最高の盛り上がりを見せました。この日のベストアクトではないでしょうか。
セットリスト
01. 21st Century Liability
02. superdeadfriends
03. King Charles
04. Strawberry lipstick
05. The Funeral
06. fleabag
07. I Think I'm OKAY
08. Happier [feat. Oliver Sykes]
09. Lowlife
10. Loner
8月のサマソニ以来のベビメタ。セトリ的には大きな変化はなく、「Brand New Day」を久しぶりに聴けたことが大きな収穫だったかなと。会場には彼女たち目当てのメイツも多数いらっしゃいましたが、それ以外のお客さんは彼女たちに対してきっと初期のイメージで止まっていたんじゃないかな。だからか、「BxMxC」のような今のベビメタの真骨頂といえる楽曲に対して棒立ちで観ているという方も見受けられました。けど、終盤に向けて、特に「メタり!!」以降は上り調子で熱が高まっていき、「Road of Resistance」ではフロアが阿鼻叫喚の盛り上がり。ちょうどいい熱量でヘッドライナーへとつなげました。
セットリスト
01. BABYMETAL DEATH
02. ギミチョコ!!
03. PA PA YA!!
04. Distortion
05. BxMxC
06. MAYA
07. Brand New Day
08. Monochrome
09. メタり!!
10. メギツネ
11. Road of Resistance
9月に配信が予定されていたニューアルバム『POST HUMAN: NeX GEn』がリリース延期となった直後の来日とあり、本来なら新作モードで展開される予定だったライブ演出もどこか中途半端な形に。これ、アルバムの世界観ありきで観たらまた印象も違ったんだろうな……というオープニング映像(中盤にも何度か挟まれる)を経て、数作前のオープニングトラック「Can You Feel My Heart」からスタート。ステージに視線を送ると、メンバーがひとり足りない……あ、ジョーダン・フィッシュ(Key)がいない? 当日は何のアナウンスもなかったことに不穏さを感じましたが(後日、脱退を発表)、それを除けば……ニューアルバムに向けて定期的にドロップされ続けた、バラエティに富んだ新曲群も豊富に用意しつつ、2ndアルバム『SUICIDE SEASON』(2009年)のリリース15周年を祝して「Chelsea Smile」を披露したり(さすがに1stアルバムからの披露はなし)と、サービス精神満載のライブだったように思います。
改めて思ったんですけど、BMTHって日本でこんなに人気あったっけ?と。程よくシンガロングも聞こえたし、ほかのアクト目当てであろうお客さんもノリまくっていたし。大きなリリースが久しくなく、近年はサブスクで単曲発表が続いていたアーティストとは思えないこの環境に、正直面食らいました。彼らのような存在がもっと広く認知されることで、“村”社会をぶっ壊してくれるんじゃないか……なんて淡い期待もしたくなるくらいに、ね。
当然のように「Obey」ではYUNGBLUDが飛び入りし、アンコールで披露された「Kingslayer」では満を辞してBABYMETALも登場。そこからの「Drown」「Throne」で10時間近くにおよぶ祝祭は、大成功のうちに幕を下ろしたのでした。
セットリスト
01. Can You Feel My Heart
02. AmEN!
03. Teardrops
04. Happy Song
05. The House Of Wolves
06. MANTRA
07. Dear Diary,
08. Parasite Eve
09. Shadow Moses
10. Obey [feat. YUNGBLUD]
11. DiE4u
12. DArkSide
13. Follow You [Acoustic Version]
14. Sleepwalking
15. Chelsea Smile
16. LosT
Encore
17. Itch For The Cure (When Will We Be Free?)
18. Kingslayer [feat. BABYMETAL]
19. Drown
20. Throne
■総括(2024年追記あり)
大成功を収めたと言って間違いない『NEX_FEST』。この日はソールドアウトを記録したものの、開催直前に発表された翌日の追加公演は初日にも負けないラインナップだったものの(BMTHやBABYMETALに加え、HYDE、Crossfaith、coldrainという“らしい”メンツが参加)、開催1ヶ月前発表だったこともあり、すでに予定を入れていた方々は泣く泣くスルーしたようですね(かくいう自分も、翌日に別ライブを入れていたので断念。何もなければ確実に行ってました)。
『NEX_FEST』の成功は、比較的辺境なメタル(やその周辺の同系統ジャンル)という枠に固執することなく、主催アーティストがこれまでに公言してきた、あるいはサウンドからにじませてきた多様性をわかりやすい形で提示したことが大きな要因だったと思っています。僕自身はメタルは好きだけど、そこにこだわりを持っているわけではなく、「面白ければオールオッケー」というスタンスなので、ここ最近足を運んだフェスの中でも一番楽しました。不満なんてひとつもない(あるならトイレで並んだことくらいか。グッズ列もハンパなかったけど、最近そっち方面に興味が薄れているので今回は除外)。全部こうすればいいのに……とは言わないものの、この成功を今後何かしらに反映させていってほしいなと思わずにはいられません。
とはいえ、昨今の円安も影響し、このようなフェスを潤沢に運営するのも、国内では難しくなっているのかな。事実、こうした海外バンド中心のフェスでは近年、来日するバンドの数も減っていますし(今回もBMTH、YUNGBLUD、I PREVAIL、Alice Longyu Gaoくらいか)、フジロックやサマソニも年々減少傾向にありますし。かつ、円安の影響でチケット代もどんどん値上げされ、昔のように気軽に参加することも難しくなり始めている。なんとも難しい時代になってしまったものです……。
今後、定期的にこのフェスが開催されるのかはわかりませんし、別に定期的にやるべきとは思いませんが、来たるニューアルバムが無事完成し、ワールドツアーで大成功を収めたあとに改めて第2回を開催していただけたら、と。その頃には日本の景気がもうちょっと上向きになっていたらいいな、と淡い期待を寄せて本文を締めくくりたいと思います。