・BLEACHERS『BLEACHERS』 ・CATEGORY 7『CATEGORY 7』 ・Crossfaith『AЯK』 ・FONTAINES D.C.『ROMANCE』 ・FRIKO『WHERE WE'VE BEEN, WHERE WE GO FROM HERE』 ・HEAD PHONES PRESIDENT『In the Abyss』 ・MANNEQUIN PUSSY『I GO HEAVEN』 ・THE SMASHING PUMPKINS『AGHORI MHORI MEI』 ・キタニタツヤ『ROUNDABOUT』 ・米津玄師『LOST CORNER』
加えて、2024年において特に印象的だったライブも5本ほど挙げておきます。
2024年2月13日:QUEEN + ADAM LAMBERT@東京ドーム 2024年7月30日:TURNSTILE@Zepp DiverCity 2024年8月18日:BRING ME THE HORIZON@ZOZOマリンスタジアム(SUMMER SONIC 2024) 2024年9月29日:IRON MAIDEN@ぴあアリーナMM 2024年11月24日:櫻坂46@ZOZOマリンスタジアム
純粋なソロアルバムとしては、前作『FRIENDS AND LOVERS』(1999年)から約25年ぶり。2000年代以降はプロデューサーとしての活躍が目立ったバーニーですが、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年/制作自体は2014年。同時期にバーニーはTRANSという短命プロジェクトも始動)を発表したのを機に、徐々に創作意欲が高まっていきます。2022年には女優ジェシー・バックリーとのコラボアルバム『FOR ALL OUR DAYS THAT TEAR THE HEART』をリリースし、こちらは全英23位という好記録を残しています。さらにこれと前後して、ソロデビュー作『PEOPLE MOVE ON』(1998年)のリイシューを計画し、オリジナル盤に自身が新たに歌い直したテイク、当時のシングルカップリング曲などをまとめたCD4枚組デラックス盤も発表するなど、自身がフロントマンとして活動する機会が徐々に増えていきました。
基本的な路線は『FRIENDS AND LOVERS』などでにじませていたディープな歌モノスタイルの延長線上にあります。と同時に、90年代のアレンジとは異なるシンプルさ、生々しさが強まっており、そこが良い意味で現代的と受け取ることもできる。そこに、ギタリストとして大人の表現を手に入れたバーニーが、1音1音の存在感が強いプレイで自分以外の何ものでもない表現を提示しており、派手さは皆無ながらも聴き手をグイグイと音世界へと引き込んでいく。その説得力の強さはさすがの一言です。
稀代のギタリストの新作というよりは、名ソングライター/プロデューサーが久しぶりに自身と向き合って、自分のためだけの楽曲集を完成させた。本作はそんな1枚ではないかと解釈しております。「Pretty D」や「London Snow」といった楽曲たちは、間違いなく「Stay」や「Not Alone」、あるいは「You Must Go On」などといったヒットシングルに匹敵する完成度を誇る名曲ですしね。
プロデューサーに名手ジョシュ・ウィルバー(GOJIRA、LAMB OF GOD、MEGADETH、TRIVIUMなど)を迎えた本作(ケリーにとっては初タッグになるのかな?)。首尾一貫して王道かつ正統的なオールドスクール・スラッシュメタルが展開されており、全13曲/約46分まったく息つく間を与えないほどの緊張感と殺傷力を持った、いかにもケリー・キングらしい刺々しいサウンドを楽しむことができます。
期待感を十分に高めてくれるオープニングSE「Diablo」からストロングスタイルの疾走スラッシュナンバー「Where I Reign」へと続く“お約束”的な流れや、緩急に富んだドラマチックなアレンジの「Crucifixation」、ケリーらしい不穏なリフワークを楽しめる「Tension」からメドレーのように続くショートチューン「Everything I Hate About You」など、切れ味鋭いアップチューンと重々しいミドルナンバーがバランスよく配置された構成は、SLAYERファン、いや黄金期のUSスラッシュメタルを愛重してきたリスナーにはたまらないものがあるのではないでしょうか。楽曲の1つひとつの完成度も非常に高く、目新しさこそないものの、ケリー・キングというアーティストに我々が求める要素はすべてここに詰め込まれているだけに、満足度は非常に高いはずです。
近年はGUNS N' ROSESとしてのツアーと並行して、自身のバンド・SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS名義でのソロ活動を充実させていたスラッシュ。純粋なソロ名義でのアルバムはセルフタイトルの初ソロアルバム『SLASH』(2010年)以来14年ぶり、THE CONSPIRATORSとしてのアルバム『4』(2022年)からは約2年ぶりのスタジオ音源となります。
参加アーティストはクリス・ロビンソン(Vo, Harp/THE BLACK CROWES)、ゲイリー・クラーク・Jr.(Vo, G)、ビリー・F・ギボンズ(Vo, G/ZZ TOP)、クリス・ステイプルトン(Vo)、ドロシー(Vo/DOROTHY)、イギー・ポップ(Vo)、ポール・ロジャース(Vo/ex. FREE、ex. BAD COMPANYなど)、デミ・ロヴァート(Vo)、ブライアン・ジョンソン(Vo/AC/DC)、スティーヴン・タイラー(Harp/AEROSMITH)、タッシュ・ニール(Vo, G)、ベス・ハート(Vo)、ジョニー・グリパリック(B)、マイケル・ジェローム(Dr)、テディ・アンドレアディス(Key)などと、ジャンルの枠を超えた豪華な面々。ポップフィールドにまで幅を利かせているのは、初ソロアルバム『SLASH』同様ですね。その『SLASH』にも重複しての参加はイギー・ポップのみかしら。
選曲はCREAMの名演でお馴染み「Crossroads」をはじめ、「Hoochie Coochie Man」や「Key To The Highway」「Born Under A Bad Sign」「Papa Was A Rolling Stone」など誰もが一度は耳にしたことがある名曲から、FLEETWOOD MACの初期曲「Oh Well」やLED ZEPPELINがパクったことで知られる「Killing Floor」まで、クラシックロックのルーツナンバーが満載。これらの楽曲を原曲の空気感を大切にしつつ、スラッシュがエモーショナルで豪快なギタープレイを思う存分奏でている。また、曲ごとに色の異なるシンガーたちが、地味かつシンプルな原曲の世界に見事に華を添えており、全12曲/約70分と長尺ながらも比較的スルスルと聴き進めることができるはずです。
オープニングを飾るクリス・ロビンソン節炸裂の「The Pusher」を筆頭に、とにかくどの曲もボーカリストのカラーとスラッシュの(時に手癖に頼りつつ、時にはそこから逸脱した)エネルギッシュなギタープレイが印象的。中でも、イギー・ポップをフィーチャーした「Awful Dream」と、こういうオムニバス作品にソロで参加するのは比較的珍しいブライアン・ジョンソン参加の「Killing Floor」(しかもハープはスティーヴン・タイラー)、デミ・ロバートの色香漂うボーカルとスラッシュのマウスワウがスリリングさを醸し出す「Papa Was A Rolling Stone」は個人的にもお気に入りです。
M-4. Top 10 staTues tHat CriEd bloOd 「YOUtopia」の流れを汲む、“2010年代のBMTH meets ポップパンク/イージーコア”な新曲。ポストハードコア的側面も残しつつも、非常に軽やかに、跳ねるように進行するスタイルからはかつてのFACTとの共通点も見受けられます。『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』での経験もしっかり昇華させつつ、ラウドなバンドサウンドとモダンなデジタルサウンドをバランスよくミックスしていて、とにかく気持ちよく響く。間違いなくライブにおける新たなキラーチューンになるはず。
M-5. liMOusIne (feat. AURORA) BMTH同様、今年の『SUMMER SONIC 2024』での来日も決定しているノルウェー出身のシンガーソングライター、オーロラをフィーチャーした新曲。ダウンチューニングを施したゴリゴリのギターを軸に、引きずるようなスローテンポで展開されるバンドアンサンブルは一時期のDEFTONESと通ずるものもあり、ポストロック経由のニューメタルの進化形と呼べなくもないかな。これまでも随所に散りばめられていた堪能的なテイストが、ここで爆発的に発揮されているのも高ポイント。とにかく好き。これで年内にDEFTONESが新作発表したら、いい流れができそうな気がする。
M-6. DArkSide 2023年10月に配信された、本作から5曲目となるリードトラック。方向性的には『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)以降の流れを汲むもので、メロディの質感やアレンジの面で相当ブラッシュアップされた印象。シンガロングできそうなサビなど含め、アンセミックな1曲ではあるものの、この手の楽曲が彼らに複数存在することから披露するタイミングを選びそう。
M-7. a bulleT w- my namE On (feat. UNDERØATH) アメリカの老舗ポストハードコア/メタルコアバンドUNDERØATHをフィーチャーした新曲。エモーショナルなメロディラインやギターフレーズ、ブレイクダウンパートを取り入れつつもエレクトロニカ的デジタルエフェクトも散りばめたアレンジなど、古き良き時代の開放的メタルコアと密室系デジタルをバランスよくミックスしたそのスタイルは非常に興味深いなと。アルバム中盤におけるひとつの山がこれに当たるのかしら。
M-8. [ost] (spi)ritual どことなく宗教チックな色合いの、2分弱のインタールードはNINE INCH NAILSからの影響も感じられるんじゃないかな。
M-10. LosT 2023年5月に配信された、本作から3曲目のリードトラック。当時は「BMTHがポップパンクに挑戦!?」「エモ/ポップパンク復権か!?」なんて一部で騒がれたけど、今思うとここからすべてが始まっていたんだね。アルバム発売前のライブではこの曲だけ浮きがちだったけど、今作を軸にしたツアーだったら自然な形で馴染むはず。アルバムの流れ的にも前曲からいい形でつながっているし、本当に気持ちいい構成だよね。
M-11. sTraNgeRs 2022年7月に配信された、本作から2曲目のリードトラック。2022年時点では次のアルバムが『THAT'S THE SPIRIT』〜『amo』の流れを汲む方向性からいかに抜け出すか、模索の途中だったのかな。このアルバムに収録された新曲群を目の当たりにしたら、そう感じずにはいられません。けど、こうした曲をしっかり残しているという点では『THAT'S THE SPIRIT』以降ファンになったリスナーに対して誠実でもあるのかな。そういった点では、アルバム全体のバランス取りにも難航したのかもしれませんね。
M-13. AmEN! (feat. Lil Uzi Vert and Daryl Palumbo of GLASSJAW) 2023年6月に配信された、本作から4曲目のリードトラック。エモ/ポップパンクな「LosT」から日を置かずに配信されたこちらは、ラッパーのリル・ウージー・ヴァートやUSポストハードコアバンドGLASSJAWのダリル・パルンボ(Vo)をフィーチャーした、本作中もっともヘヴィな1曲。歌メロこそ完全に昨今のBMTHですが、演奏やアレンジ面からは2ndアルバム『SUICIDE SEASON』(2008年)期の味わいも。こういう曲がひとつ含まれると、長尺のアルバムにおける最良のアクセントとして作用している気がします。
M-16. DIg It アルバムの締めくくりに用意されたのは、本作中最長となる7分超の新曲(実質5分で、その後仕掛けあり)。アルバムの終末感の強い作風/曲調はまさにクライマックスに相応しい。アレンジ的にはヒップホップ寄りで、曲が進むにつれてカオティックな装いに。バンドがひとつの場所にとどまることなく、進化や成長を続けていく。その姿の(現時点における)終着点がここなのかなという気がしました。オールドスクールなHR/HMの枠から抜けきれないリスナーにはここまでかなり厳しい内容かもしれません(それはそれで否定しません)が、筆者にとってはここで鳴っている音は現在進行形でリアルに感じられるものばかり。だからこそ、これを数年後に聴いたときにどう響くのかも気になるところです。
2023年春に、SNS上でこの新ラインナップによるボブ・ロックとのレコーディング風景が公開され、「いよいよ新曲リリースか?」とざわついたことも記憶に新しく、その際の制作した1曲のタイトルが「Dogs Of War」だ、などと噂されたことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。同年初夏にロンドン・The Underworldにて実施したシークレットクラブギグではこの“DÖGS OF WAR”という名前でライブも実施され、年内にはリリースされるのかと期待されましたが、結局お披露目までには約1年もの歳月を要してしまいます。
ということで、「The Dirt (est. 1981)」から5年ぶりに届けられた新曲「Dogs Of War」。新たにBig Machine Recordsと契約して発表される、最初の楽曲となります。Big Machine Records自体は10年前、カントリー系アーティストによるMÖTLEY CRÜEのトリビュートアルバム『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』(2014年)を発表しており、近年はかのHYBE America傘下で運営されているとのこと。いろんな縁があってとはいえ、なかなかに興味深い組み合わせです。
楽曲自体は90年代後半以降のヘヴィ路線をベースに、適度にモダンな要素(リフの組み立て方やデジタルサウンドでの味付けなど)を取り入れたミドルヘヴィナンバー。「Shout At The Devil」あたりのズッシリ感を現代的解釈で表現した、といったところでしょうか。また、「The Dirt (est. 1981)」が(映画の舞台にちなんで)80年代の彼らをリフレッシュさせたものだとすると、こちらは『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)の延長線上にある“現在進行形”と呼べるのかな。個人的には好みのテンポ感&音像で、第一印象も悪くありません。
楽曲クレジットを見ると、ニッキー・シックス(B)とトミー・リー(Dr)、そしてジョン・5の名前を見つけることができます。実はジョン、すでに『THE DIRT SOUNDTRACK』に収録された新曲(「The Dirt (est. 1981)」「Ride With The Devil」「Crash And Burn」)でもコライトで参加済み。あの時点でジョンの功績に対してニッキーが手応えを感じていたことで、彼をバンドに引き込んだのでしょうかね(当初はソングライティングやレコーディングサポートで参加する予定だったところを、ミックと揉めた……とかね)。何にせよ、個人的にはジョンに対して悪い感情もないので、こういういい仕事を続けてくれるなら大歓迎です。
おそらく、ミックとの裁判云々でMÖTLEY CRÜE名義の新曲を思うように発表できなかった&新レーベルとの契約締結までに時間がかかってしまったことが影響し、レコーディングからリリースまでにここまで時間を要してしまったのでしょう。昨年のレコーディングでは3曲制作したとトミーは昨年末のインタビューでコメントしていますし、ヴィンスはそのうちの1曲をライブでも披露済みのBEASTIE BOYS「Fight For Your Right」であることも明かしています。昨年11月のライブでこのカバーを聴いたとき、
「Fight For Your Right」は(手垢がつきまくっているものの)音源化すべきカバーではないかな。アルバム制作は望めなさそうだから、3〜4曲程度のEPくらいは作ってもらいたいものです
前作『GIGATON』(2020年)から4年ぶりの新作。同作リリース後には北米ツアーを予定していたものの、ちょうどコロナ禍に突入してしまったこともあり、思うような動きが取れなくなってしまいます。2021年9月には約3年ぶりのライブを実施し、ここからサポートメンバーとして元RED HOT CHILI PEPPERSのジョシュ・クリングホッファー(G, Key)が参加するようになります。また、エディ・ヴェダー(Vo)は2021年8月にキャット・パワーやアイルランドの詩人グレン・ハンサードとのコラボレーションによる映画『FLAG DAY』のオリジナル・サウンドトラックを、2022年2月には約10年ぶりのソロアルバム『EARTHLING』(2022年)も発表しています。
ジョシュ・エヴァンスと初タッグを組んだ前作から一転、今作ではエディの『EARTHLING』にも携わっていたアンドリュー・ワット(イギー・ポップ、オジー・オズボーン、THE ROLLING STONESなど)がプロデューサーとして初参加。意外な組み合わせではあるものの、かつてのリック・ルービンのように「クラシックロック再生工場」として重宝されている現在のアンドリューの立ち位置を考えると納得できるところもあります。
わかりやすいストレートなアップチューン「Scared Of Fear」「React, Respond」の2連発で完全に心を鷲掴みにされ、穏やかさと大らかさに伝わるミディアムチューン「Wreckage」、ニューウェイヴ meets ハードロック的な「Dark Matter」、メロウでじっくり聴かせる「Won't Tell」と、前半の流れは完璧。変に小難しいことをしようとしていないし、メロディアスさも初期の彼らに通ずるシンプルさが復調している。このへんがもしかしたらアンドリューの手腕によるものなのかもしれませんね(事実、アンドリューはすべての楽曲のソングライターとしてバンドとともにクレジットされています)。
ムーディーなイントロダクションから始まる後半は、1stアルバムの頃の彼らを彷彿とさせるミディアムナンバー「Upper Hand」を筆頭に、同じく初期の彼らを思わせるダイナミックな「Waiting For Stevie」、パンキッシュなファストチューン「Running」、軽やかなリズムが心地よい「Something Special」、キャッチーさの際立つ「Got To Give」、ここまでのポジティブな空気を引き継く爽やかな「Setting Sun」で締めくくり。先ほど初期3作を例に挙げたものの、内容的にはその頃とも異なりダークさがほとんど感じられない。むしろ、この混迷の時代をひたすら“陽”のエネルギーで突き進もうとする覚悟が全編から伝わり、バンドとして新たな絶頂期を迎えつつあることも想像に難しくありません。
サントラ、コンピ盤など 『TRANSFORMERS: REVENGE OF THE FALLEN - THE ALBUM』(2009年):1曲(New Divide) 『METEORA20』(2023年):1曲(Lost)
となり、ここに『ONE MORE LIGHT』制作時のアウトテイク(未発表曲)「Friendly Fire」が追加されています。いわゆる代表曲はほぼ網羅されている印象があり、特に3rd『MINUTES TO MIDNIGHT』あたりまでのヒットシングル(「New Devide」含む)まではほぼ楽しむことができます。意外だったのは4th『A THOUSAND SUNS』からのヒット曲「The Catalyst」(全米27位)が外されていたこと、6th『THE HUNTING PARTY』からは1曲も選出されていないこと、最終作『ONE MORE LIGHT』からは唯一のヒット曲「Heavy」(全米45位)ではなくタイトル曲が選ばれていることなどでしょうか。20曲収録しても67分程度と、CDでもまだ2〜3曲追加するだけの余白があったものの、あえて20曲と区切りのいいところでまとめているは潔いのかもしれませんね。
本作における注目ポイントは、先に触れた未発表曲「Friendly Fire」、そしてファンクラブ限定で聴くことができた「QWERTY」の存在でしょうか。「QWERTY」は日本でもCDリリースされているので耳にしたことのあるファンは多いことでしょう。こうして久しぶりにサブスクを通じて楽しめるようになったのはありがたい限り。かつ、『ONE MORE LIGHT』の世界線の“続き”である「Friendly Fire」では、あのアルバムの物語はまだ完結していないことを思い出させてくれる(だって、予定されていた日本公演が中止になってしまったわけで、我々日本人は『ONE MORE LIGHT』収録曲をナマで体験していないわけですから)。この曲をアルバムラストに置くことで、不完全な終わり方をしたこのバンドの“If”の世界線を描いているようにも受け取ることができ、なんとも言えない余韻を残してアルバムは終了します。
LINKIN PARKの真の魅力はこの1枚だけでは伝わりきらないと思います。これはまだ彼らに出会えていなかった人たちへの新たな入り口であり、かつて彼らと同じ道を歩んでいた同胞たちと数年ぶりに思い出を共有するため(そして、未発表曲を通して新たな思い出を生み出すため)のアイテムでしかないわけですから。ここを起点に、各オリジナルアルバムに初めて触れたり、あるいは久しぶりに引っ張り出してみたりして、ここにはない名曲にも触れてみる、そのきっかけ作りにほかならない。けど、その「ほかならないきっかけ作り」が実は大切なんですよね。
2021年に入るとバンドは「Here Comes The Shock」「Pollyanna」「Holy Toledo!」といった新曲、ライブアルバム『BBC SESSIONS』などを発表し、夏にはパンデミックの影響で延期されていたFALL OUT BOY、WEEZERとのツアー『Hella Mega Tour』を実現させます。そして、同年末にいよいよ次作に向けてスタジオ入り。三部作アルバム(9th『¡UNO!』、10th『¡DOS!』、11th『¡TRÉ!』 )以来となるロブ・キャヴァロとの共同プロデュースにより2023年まで作業が続けられ、完成したのが本作となります。
原点回帰を狙った前々作『REVOLUTION RADIO』(2016年)、そこにソウルやモータウン、グラムなどのさらなる原点要素を加えつつ無駄を削ぎ落とした前作『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』と、セルフプロデュースによる2作を経て気心知れたロブとのタッグ復活。しかも、バンドにとってターニングポイントとなった3作目『DOOKIE』(1994年)、7作目『AMERICAN IDIOT』(2004年)からそれぞれ30年、20年という大きな節目に両作に携わったロブが制作に参加するということは、この新作がバンドにとってそれだけ大きな意味をもたらす作品になるであろうことは想像に難しくありません。
事実、ここで聴ける楽曲の数々は『REVOLUTION RADIO』ほど尖りすぎておらず、かといって『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』より実験色も強くない。『DOOKIE』や『AMERICAN IDIOT』といった名作(と、その間に発表してきたほかの諸作品)の延長線上にある「成熟したパンクロック」のあるべき形が提示されている、と受け取るのが正解でしょう。
アルバム冒頭の「The American Dream Is Killing Me」でみせるドリーミーでキラキラしたテイストを筆頭に、「Look Ma, No Brains!」や「1981」などのアンセミックなポップパンクチューン、「Bobby Sox」や「One Eyed Bastard」を筆頭とするルーツミュージックの香りを漂わせるパワーポップナンバーの数々、「Goodnight Adeline」あたりから感じられるパワーバラード的テイストなど、これまで彼らが培ってきたスタイルの総決算と呼べる楽曲がずらりと並ぶ。しかも、それらが単なる過去の焼き直しで終わっておらず、アーティストとしての成長や成熟ぶりもしっかり感じ取ることができる。GREEN DAYという名の下にすべきことを、最適なバランスで実現させたのが“救世主”という意味を持つタイトルを冠した本作なのです。