COMPLEX『日本一心』@東京ドーム(2024年5月15日)
2011年7月に同会場で行われた同会場でのライブと同タイトル、前回は東日本大震災チャリティという名目でしたが、今回は今年1月の令和6年能登半島地震の復興支援を目的に13年ぶりに復活。前回のライブは仕事でもプライベートでも行くことができず、あとから発売された映像作品でその模様を確認。ということで、COMPLEXのライブを会場を観るのは1990年11月に東京ドームで実施されたラストライブ以来、34年ぶり(笑)。
その間も吉川晃司、布袋寅泰ともにソロ公演は観ていますし、それぞれのライブでCOMPLEXの楽曲を披露してきたものの、やっぱりこの2人が揃ってステージに立つとまったく異なる緊張感が生まれ、“バンドマンとしての吉川晃司”と“フロントマンの横に立ってギタリストに徹する布袋寅泰”というここでしか見られない2人の姿を目撃できる。実は、この要素を楽しみたくて今回足を運んだところもありました。
だって新曲皆無なわけだから、今回のライブだって「1990年の再々放送」になることは想像に難しくないわけで。それでも1万数千円を払ってスタンド席から豆粒大の2人を目撃しようと思えたのは、上記のような理由が大きく。実際、セットリストは最初のアンコールまで1990年、2011年とまったく一緒でした。が、大人になって渋みを増した2人のステージングと、ギタリストとして布袋を凌駕するまでの実力を身に付け、1990年の公演よりもプレイヤーとしての側面がどんどん強まっている吉川の存在感、これらを体感できただけでも今回のチケット代は安いもんだと思っています。
序盤こそ本当に再放送的要素が強かったものの、「BLUE」から始まる中盤のメロウ&ミディアムパートで空気が一変。特にこの曲で見せる吉川の表現の深みが過去の比にならないほどで、グッと引き込まれました。ただ、そういったタイプの曲を数曲続けたおかげで、若干中弛みした感も。正直、「CRY FOR LOVE」あたりで眠気が襲ってきたのも事実。もともとのセトリがこうだったというのもあるし、年齢的にも体力温存パートとして大事なブロックではあるものの、個人的には「BLUE」をピークに少しだけテンションが落ちてしまったかもしれません。
が、奥野真哉(Key)の独壇場とも言えるインスト「ROMANTICA」のアップデートバージョンに続いて「PROPAGANDA」から始まる終盤戦で、バンド側の熱量も、そして観る側のテンションも急上昇。布袋との初コラボとなる湊雅史(Dr)のパワフルなドラミングが楽曲の持つヘヴィさ、プログロック感をさらに強め、「GOOD SAVAGE」では布袋&吉川の豪華なギターバトルが楽しめた。そこから「恋をとめないで」でこの日一番の大合唱が沸き起こり、多幸感に満ちた「MAJESTIC BABY」で本編締めくくり。アンコールは名曲「1990」やライブ感の強い「RAMBLING MAN」と、ここまでは前回、前々回のドーム公演とまったく同じ流れ。でも、ダブルアンコールに過去2回では未披露の「CLOCKWORK RUNNERS」が追加され、それまでの予定調和を一気に崩してくれたんです。1stアルバム『COMPLEX』(1989年)収録曲で唯一ドームで演奏されなかったこの曲が、ついに日の目を見たわけですね。そうか、今年で『COMPLEX』リリース35周年だもんね。大きな節目に同作収録曲をすべて披露したのも、なるほどと頷けるものがありました。
アンコールのMCで布袋の口から「吉川さん、そろそろ新曲作りませんか?」という問いかけがありましたが、これは間に受けずにリップサービスとして受け取っておきます。だって、2024年のCOMPLEXサウンドなんてまったく想像できないですし。COMPLEXって、布袋が『GUITARYTHM』(1988年)というソロ作品で体現した「1980年代半ばから脈々と続くチープなデジロック」サウンドに、同時代のニューウェイヴやニューロマンティックにかぶれていた吉川のセンスが合体することで生まれた奇跡だったわけで、それを今の2人が(テクノロジーが発達した)現代のサウンドで表現しようとしても、うまく作用しないんじゃないかと思うんです。昨今の『GUITARYTHM』シリーズの流れでCOMPLEXをやるのも違うし、だからといって過去2作のアルバムの延長線上にあるサウンドメイクで新曲を作ったとしても、中途半端に古臭いものになってしまいそうで怖いし。だったら、布袋が吉川に楽曲提供して、ギタリストとしてもレコーディングに参加するくらいがちょうどいいんじゃないかと。変に色気を出して過去を上書きするよりも、思い出は思い出のままが一番。そういう意味では、再結成ライブは今回が最後でもいいくらい(そこには、今後彼らが立ちあがろうとしなくてもいいような、安心できる日常が続いてほしいという意味も込められているのですが)。
なお、帰り際「BOØWY(布袋)とルースターズ(井上富雄)とニューエストモデル(奥野真哉)とDEAD END(湊雅史)のメンバーが同じバンドにいるなんて、80年代だったら絶対に想像できなかったよな」と思ったのは、ここだけの話。改めて、長生きはするものですね。
<セットリスト>
01. BE MY BABY
02. PRETTY DOLL
03. CRASH COMPLEXION
04. NO MORE LIES
05. 路地裏のVENUS
06. LOVE CHARADE
07. 2人のAnother Twilight
08. MODERN VISION
09. そんな君はほしくない
10. BLUE
11. Can't Stop The Silence
12. CRY FOR LOVE
13. DRAGON CRIME
14. HALF MOON
15. ROMANTICA (2024 Version)
16. PROPAGANDA
17. IMAGINE HEROES
18. GOOD SAVAGE
19. 恋をとめないで
20. MAJESTIC BABY
アンコール
21. 1990
22. RAMBLING MAN
ダブルアンコール
23. CLOCKWORK RUNNERS
24. AFTER THE RAIN (朱いChina)