CATHEDRAL『FOREST OF EQUILIBRIUM』(1991)
1991年12月6日にリリースされたCATHEDRALの1stアルバム。日本盤は『この森の静寂の中で』の邦題で1992年2月21日発売。
1989年、NAPALM DEATHを脱退したリー・ドリアン(Vo)が、CARCASSのローディーだったマーク・グリフィス(B)、元ACID REIGNのギャリー・ジェニングス(G)ともに結成。彼らの敬愛するBLACK SABBATHやCANDLEMASS、PENTAGRAM、TROUBLE、WITCHFINDER GENERALの影響下にあるドゥームメタル、ストーナーロック、スラッジメタルを表現するべく、“世界最速”なNAPALM DEATHとは対局にある“世界最遅”なサウンドがこの1stアルバムでは展開されています(そういえば、1990年のデビューEP『IN MEMORIUM』ではPENTAGRAMの「All Your Sins」がカバーされていましたものね)。
レコーディングメンバーはリー、ギャリー、マーク、アダム・レハン(G)、マイク・スマイル(Dr)。曲によってはキーボーディストやフルート奏者がフィーチャーされており、陰鬱な中にも耽美なテイストを見つけることができます。
全7曲で54分という尺はかなり長く感じられますが、実際収録曲の大半が8分前後以上ある超大作ばかり。オープニングトラック「Picture Of Beauty & Innocence (Intro) / Commiserating The Celebration」からして11分超えですからね(笑)。その後も「Ebony Tears」(7:46)、「Serpent Eve」(7:40)と長尺かつスロー、ヘヴィ&ダークな楽曲が続いていきます。ギターのチューニング/ピッチが微妙にズレているようにも感じられることもあり、ツインリードなどのフレーズからは不穏な空気が伝わり、このへんはALICE IN CHAINSなどグランジ勢のそれとはまた異なる不気味さと言える。気持ち悪さ、邪悪さという点では本作のほうが数歩上のような気がします(まあ比べるべきではないとは思いますが、発売タイミング的に念のためね)。
リーのボーカルは当時主流になりつつあったデスメタル派生のデスボイスに頼ることなく、オジー・オズボーン直系のヘタウマボーカル(笑)で陰惨とした世界観を見事に表現。ダウンチューニングで構築されたドロドロしたギターリフと、ズルズル引きずるような重苦しいリズム隊が生み出す地獄のアンサンブルは、先人たちからの影響を感じさせつつもオリジナリティが早くも確立されている。1991年という時代の転換期にとてつもなく恐ろしい、唯一無二の個性的アルバムを完成させたわけです。
ぶっちゃけ、リリース当時はあまりにスローで抑揚が感じられず退屈にすら思えた本作。しかし、何度も聴き返しているうちにクセになり、気づけばどハマりしていた。ところが、リリースから30年経った2021年にじっくり聴いてみると……思っていたほどスローに感じられず、むしろ随所にメロディアスさが感じられる。自分の感性がおかしくなったのでしょうか(苦笑)。ドゥームメタルだのストーナーロックだのいろんなジャンル分けがあるとは思いますが、個人的には「これ……プログレじゃん」と。BLACK SABBATHにあったプログレッシヴな部分をしっかり踏襲した、新世紀のプログメタルだったんだな……と今さらながらに実感しています。
彼らが真の意味で“化ける”のは、続く2作目『THE ETHEREAL MIRROR』(1993年)から。このデビューアルバムは処女作としては十分すぎる内容、完成度ではないでしょうか。
▼CATHEDRAL『FOREST OF EQUILIBRIUM』
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