2005/06/13

CATHEDRAL『THE ETHEREAL MIRROR』(1993)

 イギリスを代表する(?)ドゥーム・メタルバンド、CATHEDRALの1993年にリリースした2ndアルバム「THE ETHEREAL MIRROR」。恐らく多くのファンにとっても、そして俺からしても『CATHEDRALの代表作』と呼べる1枚なんじゃないでしょうか。

 個人的には『元NAPALM DEATHのボーカルが作った、新しいバンド』というイメージで接して1st EPで非常に痛い目に遭ったバンドなんですよ‥‥だって、『世界最速!(曲の短さが)』が謳い文句だったあのバンドのボーカルが作るバンドですからね、そりゃ更に速いやつを期待してたわけ。ところが出てきたのは『世界最低速!』みたいな、地を這うか如く超スローな曲が延々と続くんですよ。

 リー・ドリアン(元NAPALM DEATH〜CATHEDRALのVo)がやってるバンドだから‥‥って理由だけで聴き始めたんだけど、まぁとにかく初期の音源は取っ付き難くて、その手のサウンド‥‥所謂『ドゥーム・メタル』と呼ばれるジャンルに慣れてない身としてはね。

 ところがさ。この2ndアルバムでこのバンド、いきなり化けるんですよ。

 理由は幾つかあると思うんですよ。メンバーチェンジだったり、ツアーを経験したことによる自信だったり。けど最大の理由は、メジャーから配給されるようになったことでしょう。このアルバム、本国イギリスや日本ではその筋では老舗と呼べる『Earache』からのリリース(当然インディー)なんですが、何故かアメリカではかの『Epic』からのリリース/配給だったんですよ。実はこの時期('93〜94年頃)の『Epic US』って結構他所の国のバンドに目を向けてた時期だったんですよ。多分アメリカ国内ではNIRVANAやPEARL JAMといったグランジ系、METALLICAやPANTERAのようなメタル寄りのバンドがそれぞれチャート上で大成功を収めていた時期。そろそろ新しい波を‥‥と考え、積極的に海外のバンドに目を向けていたんでしょうね。例えばこのCATHEDRALの他にも同じ『Earache』出身の爆走デスメタル・バンド、ENTOMBED(スウェーデン出身)が、『Roadrunner』所属の新世代デスメタル・バンド、SEPALTURA(ブラジル出身)が、それぞれワンスポット(アルバム1枚契約)でこの時期、アルバムをアメリカ国内でリリースしてるんですよ。CATHEDRALもその流れで見初められたんでしょうけど‥‥多分『Epic』のA&Rは「これからは‥‥デスメタルが来る!」と本気で思ってたんでしょうね。ま、結局どのバンドもチャート的な大成功を収めることはなかったんですが(かろうじてSEPALTURAがトップ50に入った程度かな)。

 話をCATHEDRALに戻しましょう。そういったメジャー配給が影響して、制作費を多く貰えたのか、とにかくサウンドプロダクションが数段上にレベルアップしてるんですよ。それ以前とも、そして再びインディー配給に戻ったそれ以後と比べても、このアルバムだけ異質なんですよ。良くも悪くも『アメリカン』というか‥‥いや、俺はそこがまた好きだったりするんですが。プロデュースやエンジニアを務めたのが、デイヴ・ジャーデンやリック・ルービンの下で仕事していたことがあるデヴィッド・ビアンコという人。この人のサウンドにはやはり癖があって、とにかくドラムサウンドが分厚いんですよ。例えばALICE IN CHAINSの初期作品辺りを思い浮かべてもらうと判りやすいかな‥‥そこに加えて、ギターのザクザク感も歯切れ良く録音されてて、如何にもメタルの人といった感じで、個人的にはこの組み合わせはベストマッチングだと思ってます。

 曲も、確かにスローな曲もあるにはあるんだけど、無駄に長くなくてコンパクトにまとまってるのが殆ど。長くてもせいぜい6分くらいまで。さすがに以前みたいに10分超えるようなのはなし。しかもアレンジにメリハリが利いてて、良い意味で洗練されてるのね。この辺はアメリカ人プロデューサーを迎えたことによる影響が大きいのかな。コンパクトな曲の中にもしっかりと展開が盛り込まれていて、その辺はブリティッシュ・メタル的かな、と。

 やはりハイライトとなるのは前半‥‥頭の "Ride" から始まる怒濤の流れでしょう。明らかにBLACK SABBATHの影響下にあるサウンドで、前作ではただ「引き摺る」だけだったアレンジが、このアルバムでは更に「聴かせる」方向に意識がいってるんじゃないかと。同じスラッジ系でも前作の曲と今作の "Enter The Worms" とでは雲泥の差じゃないかな。ま、真性マニアはこっちよりも1st時の路線の方が好きなんでしょうけど。そしてその後にくる "Midnight Mountain" の名曲振りといったら‥‥これこそヘヴィメタル・ディスコですよ。そしてメロウなバラード調と言えなくもない "Fountain Of Innocence" のような曲まである。この前半だけでも彼等がこの1年ちょっとで如何に成長したかが手に取るように判るんじゃないでしょうか。

 このアルバム時期に初来日、当時はまだツインギター編成だったんですよね。その後、BLACK SABBATHと同じシングルギター編成(4人組)になり、アルバムの制作を重ねていくわけですが、やはりこの2ndが雛形となってその延長線上にある作品を量産してるように映ります。そういう意味でも、このアルバムが彼等にとってその後の路線を決定づける布石になったのは間違いないようです。所謂アメリカの『ドゥームメタル』とはまた違った、独特な個性を持ったアルバムなので、是非一度聴いてみてください。



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投稿: 2005 06 13 01:25 午前 [1993年の作品, Cathedral] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック