CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』(1989)
聖飢魔IIのギタリストとして活躍していたジェイル大橋こと大橋隆志が1987年にバンドを脱退し、旧友・畑江康弘(B)とともに渡米。ロサンゼルスでジョエル・エリス(Vo)、ランディ・メアース(Dr)ともに結成した4人組バンドCATS IN BOOTSの、最初で最後のフルアルバム。メジャーのEMIと契約し、日本で1989年9月、海外で同年10月にリリースされています。
AC/DCやROSE TATTOO、INXS、STEELHEARTなどに携わってきたマーク・オピッツをプロデューサーに迎えた本作。ジェイル大橋と聞くと聖飢魔IIでの「FIRE AFTER FIRE」や「アダムの林檎」といった正統派メタルチューンのイメージが強いのですが、ここでは大橋が本気でやりたかった、あの時代ならではのスタイルによる「当時のLAの空気感をそのまま表したかのようなルーズでスリージーなハードロック」が展開されています。
オープニングの「Shot Gun Sally」を筆頭に、とにかくスリリングでひたすらカッコいいハードロックばかり。日本人臭はまったく感じられず、言われなければ絶対に「80年代にヒットし損ねたLA出身のB級バンド」と信じてしまうはずです(まあそれも間違いではないのですが)。
今聴いても、どの曲にもキャッチーさが感じられ、いろんなところからフックが感じられる。ちょっとDEVOを思わせるリフの「Long, Long Way From Home」とか、VAN HALEN的なハードブギー「Nine Lives (Save Me)」、どことなくサイケデリックなロッカバラード「Every Sunrise」、AEROSMITHをLAメタル風にしたような「Judas Kiss」など、印象に残る曲も多数だし、とにかくアルバムとしてのテンポ感が良いんですね。
もしあの時代のUSハードロックバンドが好きならば、絶対に気に入る1枚だと思います。騙されたと思って、ぜひチェックしてみてください。
ちなみに彼ら、いきなりアルバム8枚契約と鳴り物入りでデビューを果たし、ラジオやMTVでのオンエアも好調だったにも関わらず、翌1990年には解散。国籍が違えばそれだけ価値観も異なるわけですからね。難しいものです。
当時は今と異なり日本人臭さがにじみ出てしまえば、間違いなく海外で受け入れられなかったし、メジャー契約もできていなかったでしょう。LOUDNESSだって、『THUNDER IN THE EAST』(1985年)や『LIGHTNING STRIKES』(1986年)だったからこそ、アメリカで受け入れられたわけですから。これはこれで大正解だと思います。
▼CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』
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