CHARLIE SEXTON『CHARLIE SEXTON』(1989)
1989年初頭にリリースされたチャーリー・セクストンの2ndアルバム。日本盤はリード曲から用いられた『ドント・ルック・バック』という邦題で、同年1月25日発売。
1985年前半にシングル「Beat's So Lonely」およびアルバム『PICTURES FOR PLEASURE』でメジャーデビューした、当時弱冠16歳だったチャーリー。そのルックスで本国のみならずここ日本でもアイドル的な人気を博し、1作目から全米TOP20入りするなど成功を収めました。しかし、そのギタリストとしての実力やソングライターとしての才能が霞むほどにアイドル視されることから少し距離を起くことに。結果、続く2ndアルバムが届けられるまでに4年もの歳月を要することになります。
前作はビリー・アイドルでおなじみのキース・フォーシーがプロデューサーを担当しましたが、今作では名手ボブ・クリアマウンテンと、ピーター・ガブリエルやSQUEEZEなどを手がけたトニー・バーグが参加。ティーンポップ的な色合いも含まれていたデビュー作から、さらに大人になった楽曲/サウンドが詰め込まれた1枚に仕上がりました。
当時20歳になろうとしていたチャーリーですが、前作にあった背伸び感は今作には皆無。リラックスしつつも締めるところは締めるという、等身大の都会的ロックを中心とした楽曲が並びます。オープニングを飾る「Don't Look Back」などは前作の延長線上にあるものの、若干落ち着いた印象を受けるのではないでしょうか。この曲、ボブ・クリアマウンテン絡みでブライアン・アダムスがコーラスで参加。よく聴けばそれとわかるしゃがれ声のハモリを見つけることができます。
かと思えば、「I Can't Cry」や「While You Sleep」のような大人びた楽曲も用意。後者のようにスペーシーなサウンドメイキングを施した楽曲は前作にも含まれていたものの、今作では人口甘味料を排除したビターな仕上がりに。個人的には「I Can't Cry」での歌やギターに、のちの彼の片鱗が見つけられたことが久しぶりに聴いた収穫かな。
全体的に落ち着いたトーン、おおらかなノリで統一されているのは、なんとなく前年にリリースされた氷室京介の1stソロアルバム『FLOWERS for ALGERNON』(1988年)と通ずるものがあるような気もします。というのも、チャーリーは同作のレコーディングやライブにゲスト参加しており、異国のトップアーティストから受けた影響も少なからずあったのではないかと。「Question This」みたいなミディアムチューンを聴くと、そんな想像をしたくなってしまうんですよね(笑)。
80年代半ば、チャーリーに夢中になったお嬢様方は現在の彼の活躍をどこまで知っているのでしょうか。往年のソロ公演は一度も観たことがなかった僕ですが、2000年代に入ってからボブ・ディランのライブで何度も彼のプレイを目に耳にすることができるなんて、中高生の頃は想像できなかったなあ……。
▼CHARLIE SEXTON『CHARLIE SEXTON』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)