カテゴリー「Cheap Trick」の15件の記事

2019年2月10日 (日)

CHEAP TRICK『DREAM POLICE』(1979)

1979年9月発売の、CHEAP TRICK通算4作目のオリジナルアルバム。当初は同年前半にリリースされる予定でしたが、日本から遅れて発売されたライブアルバム『AT BUDOKAN』(1978年)の大ヒットにより発売延期となっていました。しかし、『AT BUDOKAN』から良い流れを受けて、本作も全米6位という好成績を残すことができたので、結果オーライと言えるでしょう。

初期3作(1st『CHEAP TRICK』、2nd『IN COLOR』、3rd『HEAVEN TONIGHT』)でバンドとしてのカラーを完全に固めた彼らは、『AT BUDOKAN』でライブバンドとしての強みをアピール(なおかつ、初期楽曲の良さも同時アピール)することに成功。続く4作目ではそこから一歩踏み込んで、スタジオ作品として優れたアルバム作りに取り組みます。

『IN COLOR』以降の作品を手がけるトム・ワーマン(MOTLEY CRUEPOISONKIXなど)が再度プロデュースを担当した本作は、曲によってオルガンやピアノ、ストリングスなどをフィーチャーし、1曲1曲の完成度を高めることに挑みます。

シングルカットされた「Dream Police」はストリングスを導入した、伸びやかかつスリリングなアレンジを堪能できますし、かと思えば「Gonna Raise Hell」では初期の彼らが持つヘヴィさを10分近いセッションの中に凝縮させることに成功。「Voices」のように美しいバラードもあれば、ビートルズの名フレーズまで登場するゴキゲンなロックンロール「The House Is Rockin' (With Domestic Problems)」も飛び出すし、トム・ピーターソン(B)がボーカルを務める「I Know What I Want」、サイケデリックなミディアムスローチューン「Need Your Love」もある。甘くとろけるようなキャッチーさの中に時折見え隠れする凶暴さ、狂気性にドキッとさせられる、一筋縄でいかない感じがいかにもCHEAP TRICKらしい1枚です。

初期3作と比較してバンドとしてのタフさが確実に増している。そこを良しとするか否かで本作の評価はガラリと変わりそうな気がします。1作目や2作目が好きというリスナーは、もしかしたら本作で展開されるハードロック寄りの世界観は気に入らないかもしれませんし。逆に、ハードロック寄りのリスナーは初期3作に対して持っていたチープさがこの『DREAM POLICE』で解消される。聴き手の立場によって、そのへんの捉え方は変わってくるのでしょうね。

パワーポップと呼ぶにはハードロックすぎるのは確かにあると思います。が、彼らの歴史を語るうえでは欠かせない1枚なのも間違いない事実。本作以前と本作以降でいろんな流れが変わるという意味でも、分岐点となる重要作と言えるでしょう。



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2019年1月20日 (日)

VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』(2010)

2010年6月リリースの、ヴィンス・ニール通算3作目のソロアルバム。過去2枚のソロアルバム(1993年の1st『EXPOSED』、1995年の2nd『CARVED IN STONE』)はMOTLEY CRUE脱退中に発表されたものなので、本作『TATTOOS & TEQUILA』はバンド在籍中に唯一発表したソロアルバムということになります。

過去2枚には“良き時代のMOTLEY CRUEの模倣”(『EXPOSED』)、“HR/HM冬の時代にヒップホップなど流行へ迎合した”(『CARVED IN STONE』)といったテーマがありましたが(ヴィンスが公言したわけではなく、ファン側が勝手に解釈したもの)、本作はズバリ“自身のルーツナンバーをストレートにカバーする”というもの。全11曲(日本盤のみボーナストラックを含む12曲)中、オリジナル曲は2曲のみで、ほかはCHEAP TRICK、SWEET、AEROSMITHSEX PISTOLS、THE HOLLIES、SCORPIONS、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョン、ZZ TOPの名曲の“カバーという名のコピー”となっています。

選曲は大半が70年代のもので、つまりヴィンスがMOTLEY CRUEを始める前まで聴きまくったナンバーばかりといったところでしょうか。実際にバンドでカバーしたものも少なくないと思います。CHEAP TRICKがデビューアルバムからの「He's A Whore」だったり、AEROSMITHが名盤『ROCKS』収録のヘヴィチューン「Nobody's Fault」というあたりには、ヴィンスなりのこだわりも感じられます。

また、モトリーでもカバーしたSEX PISTOLSを再びピックアップしていたり、かと思えばエルヴィス「Viva La Vegas」やエルトン「Bitch Is Back」を選曲するたりも、彼のポップセンスやフロントマンとしてのセンスみたいなものを感じたり。まあ、何の捻りもないんですけどね(笑)。

2曲のみ収録されたオリジナル曲のうち、タイトルトラックとなる「Tattoos & Tequila」はプロデューサーであるマーティ・フレデリクセン書き下ろしのミドルナンバー。もう1曲の「Another Bad Day」は盟友ニッキー・シックスとジェイムズ・マイケル、そしてトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)によるミディアムバラード。もともとはモトリー用(おそらくベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』かオリジナル作『SAINTS OF LOS ANGELES』向け)に書かれたそうですが、トミー・リーが気に入らなかったためお蔵となった1曲とのこと。まあ『SAINTS OF LOS ANGELES』には合わないポップな曲調なので、外れてよかったのかも。

全体を通して、ヴィンスが持つ陽のイメージがそのままパッケージされた、非常に聴きやすい1枚。『EXPOSED』ほどの派手さはないものの、あのアルバムとの共通項も多数見受けられるので、初期モトリーなどが好きな方なら素直に受け入れられる作品集だと思います。

なお、このアルバムでバックを務めるのは、ジェフ・ブランド(G)、ダナ・ストラム(B)、ゾルタン・チェイニー(Dr)という布陣。ご存知の方もいるかと思いますが、この3人はSLAUGHTERの現メンバーでもあるので、マーク・スローターとヴィンスを入れ替えただけなんですよね。LA界隈、狭いなあ。



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2018年5月25日 (金)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1997)

実はCHEAP TRICKには同じタイトルのアルバムが2枚存在していることをご存知でしょうか。それが意外にもセルフタイトルの『CHEAP TRICK』という点が非常に興味深く、しかも2作目のほうはデビュー作発売の20年後、1997年2月にここ日本で先行リリースされているという(海外では2ヶ月遅れの同年4月に発売されました)。

当時のCHEAP TRICKは、80年代後半のHR/HMブームに乗って本格的な再浮上を果たしたもののそれも長く続かず、90年代に入るとダークなグランジがもてはやされるタームに突入。が、本来なら毛嫌いされるはずのHR/HMシーンに括られてきたCHEAP TRICKは、グランジシーンから“オリジネーター”や“ルーツ”としてリスペクトされることになるのです。不思議なものです。

本作は彼らにとって通算13枚目のスタジオアルバム。前作『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)は長年在籍したEpic Recordsから離れ、新たにWaner Brothersと契約して発表したものの、以前ほどの大きなヒットにつながらず、結局バンドはこれ1枚でWarnerから離れることに。結果、彼らはインディーズに活動の場を移し活動を継続します。

そうして彼らがまず最初に取り組んだのが、かのスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎えてEPを制作すること。ここで制作した「Baby Talk」と「Brontosaurus」はグランジシーンでその名が知れ渡ったSub Pop Recordsから7インチシングルとしてリリースされています。

そのままアルビニを迎えてアルバムを作るかと思いきや、彼らは『ONE ON ONE』(1982年)などでエンジニアを務めたイアン・テイラーを迎えて完成させた作品を発表するわけです(実際にはアルビニとのコラボ以前から進められていたようですが)。

「Anytime」から始まる本作は、「You Let A Lotta People Down」などをはじめ全体的にダーク……というわけではなく、確かに重々しい空気もありつつ、基本的には彼ららしいポップさとロック感、ヘヴィさが混在したクールなロックアルバムに仕上げられています。

確かにサウンドの質感は90年代的な生々しさを伴っていますが、それがかえって70年代の彼らを彷彿とさせ、20年という長い時間を感じさせないフレッシュさすら散見されます。ポップな曲はとことんポップに、ヘヴィな曲はとことんヘヴィに。このメリハリの効き具合が前数作と比べるとかなり強まっており、そこは80年代の彼らとは大きな違いではないかと思います。

もちろん、彼らが時代に影響されている部分も少なからず存在し、「Anytime」や「You Let A Lotta People Down」「Baby No More」あたりはグランジからの影響がモロに出ています。けど、それが特に嫌味には感じられないのは、当時のグランジバンドがリスペクトを口にしたように、CHEAP TRICKというバンドのサウンドがいかに当時のバンドマンに影響を与えてきたかということを証明しているのではないでしょうか。

ややこしいタイトルやジャケット(1stアルバムをパロッたモノクロ感)、そして全キャリア中もっともグランジの影響が強いことなど、従来のファンからは評価がそこまで高くない1枚かもしれませんが、個人的には前作『WOKE UP WITH A MONSTER』以上に好きな作品です。

なお、日本盤には先のアルビニプロデュース曲2曲を追加収録。とはいえ、現在は廃盤状態にあり、デジタル配信&サブスクリプションサービスでも全オリジナルアルバム中本作のみ未配信のまま。ぜひなんらかの形で復活させてほしい1枚です。


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2018年5月24日 (木)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1977)

1977年2月に海外でリリースされた、CHEAP TRICKの記念すべきデビューアルバム。当時はBillboardのアルバムチャート200位内にも入らない程度のセールスでしたが、現在においては彼らの歴史を振り返る上で非常に重要な1枚であると同時に、70年代後半のUSハードロック、およびパワーポップシーンにおいて大切なアルバムでもあります。

僕がこのアルバムを初めて聴いたのは、彼らが「The Flame」(1988年)で初の全米No.1を獲得して、しばらくしてから。すでにほとんどのアルバムがCD化され、その流れで手にしました。当時のCDは「Hot Love」から勢いよく始まり、中盤に「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」と重めの曲が並び、ラストは「Oh, Candy」で軽やかに終わる。そんなイメージのアルバムでした。もちろん、この曲順が正しいと思い込んでいたのです。

が、実はこのアルバム、アナログ盤の各面表記が「A面/B面」ではなく、「Side 1 / Side A」となっており、初CD化の際にレーベル側が間違えて「Side A」のほう(本来のB面)のほうから始まる構成に変わってしまっていたのでした。アナログ時代に触れていなかったぶん、このCDでの曲順がすべてだと思っていた僕は、そんな事情をもっとあとになってから知ることになるのでした。

ちなみに1998年のリマスター化に際し、もとの曲順……「Elo Kiddies」から始まり「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わる構成に戻っており、サブスクリプションサービスで聴けるバージョンもこちらに準拠。ですが、昨年9月にデビュー40周年を記念して発売された日本限定の紙ジャケ版では初CD化の「Hot Love」始まりが再現されており、ややこしいことになっております(笑)。ここ20年くらいで、正しく修正された曲順にようやく慣れ親しんできたところに、自分にとってオリジナルなこの曲順で聴くと……「もう、やめてー!」と思ってしまうわけです(笑)。

ですが、曲順が入れ替わろうとこのアルバムに対する印象や評価って、意外と変わらないんですよね。不思議です。

10代の頃は疾走感の強い「Hot Love」や「He's a Whore」のような楽曲を好んでいましたが、聴き込むうちに本作の魅力はミディアム&ヘヴィな楽曲こそがキモなんじゃないかと思うようになりました。なので、初CD化バージョン(オリジナルじゃないほう……ってややこしい。笑)の中盤、「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」の流れは本当に好きなんですよね。もちろん、「Elo Kiddies」で始まって「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わるバージョンも気に入ってますけど。

1stアルバムの時点で捨て曲なし、どの曲もメロウで個性的。ここまで完成されていたのに、当時まったくヒットしなかったのが不思議でなりません。まあ、早すぎたって言えば早すぎたのかもしれませんが。そんな彼らが本国より先に、ここ日本でヒットするわけですから世の中捨てたもんじゃないですね。



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2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作る理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れるので。



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2017年12月24日 (日)

CHEAP TRICK『CHRISTMAS CHRISTMAS』(2017)

今年6月に発売されたオリジナルアルバム『WE'RE ALL ALRIGHT!』からたった4ヶ月というハイペースで届けられた本作は、CHEAP TRICK初の全曲クリスマスソングで構成されたアルバム。全12曲中オリジナル曲は3曲(M-1「Merry Christmas Darlings」、M-11「Our Father Of Life」、M-12「Christmas Christmas」)と、その内容はカバーアルバムと呼んでも差し支えないものですが、だからといってスルーするには勿体ないほどの完成度。これ、季節を問わず聴いておきたい強力なパワーポップアルバムですよ。

カバーで取り上げられているのは「Silent Night(きよしこの夜)」といったトラディショナルナンバーもありますが、それ以外はRAMONESやTHE KINKS、WIZZARD、SLADE、チャック・ベリー、ハリー・ニルソン、チャールズ・ブラウンなどその筋の人なら知らない者はいない大物ばかり。どれもポップでパワフルな「CHEAP TRICKらしい」アレンジに仕上げられており、本当に“企画モノ”で終わらせるには惜しい、いや、贅沢すぎる内容なんです。

1曲目「Merry Christmas Darlings」のアレンジなんて“いかにも”ですし、「I Wish It Was Christmas Today」「Run Rudolph Run」の疾走感あふれるロッキンぶり、「Merry Xmas Everybody」での力強いビートとパワフルなボーカル、「Please Come Home For Christmas」での渋みを増したスタイル、あのスタンダードをCHEAP TRICKスタイルでカバーするとこうなるんだと思わずニヤリ笑ってしまう「Silent Night」、そしてパンキッシュに突っ走る「Christmas Christmas」……うん、捨て曲なし(当たり前ですが)。

原曲は知らなくても、例えばキース・リチャーズのカバーでおなじみの「Run Rudolph Run」、BON JOVIも取り上げた「Please Come Home For Christmas」など、他アーティストのカバーで耳にしたことがある曲がひとつはあるはず。そういったカバーとの比較も面白いけど、ここは……昨年の『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』から多作ぶりの目立つCHEAP TRICKの何度目かの絶頂期を素直に楽しみたいと思います。このアルバムを聴きながら街に繰り出せば、きっとひとりでも寂しくないはず!(笑)

最後に余談ですが……季節モノというのもあるけど、本作が国内リリースされないこのご時世……悲しいものがありますね。こういうアルバムほど、原曲がこうで、とかライナーノーツで専門家の方が解説してくれるのが楽しいのに。



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2017年11月 9日 (木)

CHEAP TRICK『LAP OF LUXURY』(1988)

1988年春に発表された、CHEAP TRICK通算10作目のスタジオアルバム。70年代末の大ヒット以降、チャート的にもセールス的にも恵まれてこなかった彼ら。オリジナルベーシストのトム・ピーターソン脱退などのメンバーチェンジなどを経て、再びロビン・ザンダー(Vo, G)、リック・ニールセン(G)、バーニー・カルロス(Dr)、そしてトムというオリジナル編成にて制作されたのが本作『LAP OF LUXURY』です。

80年代中盤以降、彼らはいくつかのヒット映画のサウンドトラックに楽曲を提供しており(『トップ・ガン』での「Mighty Wings」や、ロビンがソロで楽曲提供した『オーバー・ザ・トップ』の「In This Country」など)、それらの楽曲では非常に“産業ハードロック”的なカラーを見せ従来のファンをがっかりさせていました。実は、本作『LAP OF LUXURY』はその延長線上にある作風で、初期の彼らをイメージして触れるとがっかりするかもしれません。

しかし、作品の完成度はなかなかのもので、THE BEATLESの影響下にあるアメリカンハードロックアルバムとしては非常に高水準といえるでしょう。それもそのはず、大半の楽曲に職業ソングライターが携わっており、全米No.1を記録した「The Flame」なんてメンバーが作詞作曲に関わっていないんですから。他にもチャーリー・セクストンがデビューアルバムに収録した「Space」や、エルヴィル・プレスリーの名曲「Don't Be Cruel」(邦題「冷たくしないで」)のカバーまで収録。レーベル側の「とにかく(当時の)HR/HMブームに直接ぶつけて、彼らのルーツであるCHEAP TRICKを復活させる!」という意思が強く感じられる内容なわけです。

ちなみに全10曲中バンドメンバーのみで書かれた楽曲は、シングルカットもされた「Never Had A Lot To Lose」のみ(ロビン&トムによるもの)。この曲が今でもひんぱんにライブで披露されるのは、そういった意図も含まれているんでしょうか。

でもね、上にも書いたようにひとつのハードロックアルバムとしてはどの曲も優れているし、濃いファン目線でも「こういうCHEAP TRICKも悪くないかな」と思える楽曲がいくつか含まれているので、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。実際、当時は繰り返し聴きまくりましたし。逆に、この時代があったからこそ90年代に入ってから『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)で“らしさ”を取り戻せたわけですしね。

ちなみに本作、アルバムとしても『DREAM POLICE』(1979年)以来のチャートTOP20入り(全米16位)、ミリオンセールスを達成。シングルでも「The Flame」(全米1位)のほか、「Don't Be Cruel」(全米4位)、「Ghost Town」(全米33位)、「Never Had A Lot To Lose」(全米75位)と複数のヒット曲を生み出しており、レーベル側の思惑は見事達成しました。



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2017年6月25日 (日)

CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』(2017)

昨年春に発表された前作『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLOW』が7年ぶりの新作ということでびっくりしたわけですが、続く本作『WE'RE ALL ALRIGHT!』はなんと前作から1年2ヶ月という短いスパンで制作〜リリースされたことで、さらに驚かされたわけです。だって、昨年11月には来日公演までしてさ、またしばらく見納め(聴き納め)かなと思っていたのに……特に大御所クラスになると新作のスパンが5年前後になっても不思議じゃないので、この予想外の新作にはただただ嬉しい限りです。

本作は新曲に加え、過去に制作されたものの未発表だった楽曲を新たにレコーディングしたもので、見方によっては「2017年のCHEAP TRICKによる、純然たる新作」とは言い難いかもしれません。が、ファンにとってはそういう細かいことはどうでもよく、今のCHEAP TRICKが本作で鳴らされているような音/楽曲に再び挑戦してくれている事実が単純に嬉しいし、素敵だと思うわけです。

比較的落ち着いたイメージの強かった前作とは相反し、今作は終始アグレッシブ。初期の「元気よく、勢いのあるパワーポップ/ロック」路線に寄った作風。アップテンポの楽曲がズラリと並び、ロビン・ザンダー(Vo)もがなるように歌っています。ポップな作風の楽曲にしても“枯れ”よりも“若々しさ”が前面に打ち出されており、そこに「ああ、自分は今CHEAP TRICKの新作を聴いているんだ」と強く実感できることでしょう(と、前作のレビューと同じことを書いてしまいますが)。

大半の曲が2分台〜3分台半ばというのも、初期の彼ららしく、アルバム本編10曲で33分程度というランニングタイムも納得。ちなみに本作には3曲追加したデラックスエディション(日本盤の通常仕様はこちら)も用意されていますが、それでも全13曲で44分程度(さらに日本盤はボーナストラックでライブテイク2曲を追加。これは正直蛇足かな)。最近のロックアルバムが少しずつではありますが、こういう40分前後という昔ながらの作風に戻りつつあるのはちょっと興味深い話ですね。

個人的にはデラックス盤に追加された3曲(THE MOVEのカバー「Blackberry Way」、『DREAM POLICE』を思わせる「Like A Fly」、メロウでサイケなミディアムバラード「If You Still Want My Love」)も本編10曲に負けず劣らずの出来だと思うので、ぜひこちらの仕様をオススメしたいと思います。



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2017年3月20日 (月)

RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』(2013)

HAREM SCAREM、オジー・オズボーンと続いたので(『TRIBUTE』は3月19日に紹介しようとは決めていましたが、その前にHAREM SCAREMを取り上げるというこの流れは意図的ではありませんでした)、今回はその2つが絶妙な形で合体したRED DRAGON CARTELを紹介したいと思います。

RED DRAGON CARTELはオジー・バンドの二代目ギタリスト、ジェイク・E・リーがBADLANDSの2ndアルバム『VOODOO HIGHWAY』(1991年)以来22年ぶりに本格始動させたバンドRED DRAGON CARTELの1stアルバム。日本では2013年12月、海外では2014年1月にリリースされています。アルバムではHAREM SCAREMのドラマー、ダレン・スミスが大半の楽曲でボーカルを務めていますが、4曲でゲストボーカルも採用。「Feeder」にはロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、「Wasted」にはポール・ディアーノ(元IRON MAIDEN)、「Big Mouth」にはマリア・ブリンク(IN THIS MOMENT)、「Redeem Me」にはサス・ジョーダンと男女/ジャンル問わずさまざまなシンガーがジェイクの楽曲を歌っています。

1曲目「Deceive」の冒頭、オジーの「Bark At The Moon」を彷彿とさせるカミソリギターリフに歓喜したHR/HMリスナーは非常に多いのではないでしょうか。僕も間違いなくそのひとりで、それにつづくダレンのハスキーなボーカル含め非常にカッコよくて「これは期待できる!」とすぐに確信。もちろんその確信に間違いはなく、曲によってはインダストリアル調のアレンジを含むものもありますが、基本的にはジェイクのキャリアを知っている人なら納得できるものばかりでした。しかもBADLANDSで傾倒したブルースロックではなく、オジー・バンド在籍時を思わせる楽曲やプレイも豊富で、「ようやくこっちの畑に戻ってきてくれた!」とアルバムを聴き進めるうちに頰が緩んでいったものです。

「Wasted」でのモダンなアレンジはどことなく最近のオジーにも通ずるものがあるし、「War Machine」なんて完全にBLACK SABBATHリスペクトなアレンジだし。そりゃそうだ、本作のエグゼクティヴ・プロデューサー&ミキサーはオジーの近作を手がけるケヴィン・チャーコなんだから。それにザックはオジーの代表作『BARK AT THE MOON』(1983年)、『THE ULTIMATE SIN』(1986年)のメインソングライターでもあるわけで、“オジーっぽさ”がゼロなわけない。ダレンがライブでもボーカルを務めていることから、この形態がバンドとしては正しいんだろうけど、アルバム制作時はそこまでパーマネントなものとしては考えてなかったから、こういう作品になったのかもしれないですね(そのダレンも一時、バンドを脱退していますし。ますますバンド感が薄いような)。

オジーやサバスが好き、特にジェイク時代が好きという人なら間違いなく気に入る1枚。オジーっぽい曲を女性ボーカルが歌うと……という興味深い試みも楽しめますし。バンドっぽさは本当に希薄だけど、HR/HMファンならジェイク・E・リーというアーティストの実験の場として素直に受け入れられるはずです。



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2016年12月14日 (水)

CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』(2016)

オリジナル作品としては2009年の『THE LATEST』以来、実に7年ぶりのニューアルバム。しかもオリジナルドラマーのバン・E・カルロスがツアーやレコーディングから離れ、リック・ニールセンの息子ダックス・ニールセンが参加した編成による初のアルバムでもあります。さらに言えば、ここ数作(かれこれ10年くらい)ずっと自主レーベルからのリリースだったのが、今作はBig Machine Recordsというユニバーサル傘下のインディペンデントレーベルからのリリース。それもあってか、1988年のヒット作『LAP OF LUXURY』(最高16位)以来28年ぶりのトップ40ヒット(ビルボード最高31位)という成績を残しています。

肝心の内容ですが、王道のCHEAP TRICKサウンド満載といったところでしょうか。オープニングの「Heart On The Line」から勢い良くスタートし、先行で無料配信されたポップなロックナンバー「No Direction Home」、穏やかな印象の「When I Wake Up Tomorrow」、豪快なサウンドが気持ち良い「Do You Believe Me?」「Blood Red Lips」と、冒頭5曲だけでも「ああ、自分は今CHEAP TRICKのアルバムを聴いてるんだ」と強く実感できるはずです。それはもちろんアルバム後半でも引き続き感じられ、終始「安心安全のCHEAP TRICKサウンド」を心置きなく楽しめることでしょう。

こういうバンドの場合、下手に新しいことに挑戦するよりも、いかに従来のスタイルの中で「聴いたことあるようで、でも初めて聴く」新曲を量産していくことに意味があるような気がします。それってどれも一緒なんじゃない?と思われるでしょうが、CHEAP TRICKの場合はその「従来のスタイル」の幅が他のバンドと比べても広いので、毎回聴き手を飽きさせないアルバムを作ることができるわけです。今回のアルバムも前作『THE LATEST』とも、その前の『ROCKFORD』(2006年)とも、さらにその前の『SPECIAL ONE』(2003年)とも、90年代に発表された『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)とも『CHEAP TRICK』(1997年)とも異なる作風&魅力ですし、間違いなく今後も上記の作品同様、長きにわたり愛聴しつつけることでしょう。

11月に行われた、今作を携えた来日公演も最高に楽しかったです。生で聴く「Long Time No See Ya」や「Blood Red Lips」は想像以上にカッコよかったですよ。



▼CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』
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【CHEAP TRICK ディスクレビュー一覧】
『SPECIAL ONE』(2003)
『ROCKFORD』(2006)

【CHEAP TRICK ライブレポート一覧】
1999年10月11日@横浜ベイホール


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