2018年5月25日 (金)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1997)

実はCHEAP TRICKには同じタイトルのアルバムが2枚存在していることをご存知でしょうか。それが意外にもセルフタイトルの『CHEAP TRICK』という点が非常に興味深く、しかも2作目のほうはデビュー作発売の20年後、1997年2月にここ日本で先行リリースされているという(海外では2ヶ月遅れの同年4月に発売されました)。

当時のCHEAP TRICKは、80年代後半のHR/HMブームに乗って本格的な再浮上を果たしたもののそれも長く続かず、90年代に入るとダークなグランジがもてはやされるタームに突入。が、本来なら毛嫌いされるはずのHR/HMシーンに括られてきたCHEAP TRICKは、グランジシーンから“オリジネーター”や“ルーツ”としてリスペクトされることになるのです。不思議なものです。

本作は彼らにとって通算13枚目のスタジオアルバム。前作『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)は長年在籍したEpic Recordsから離れ、新たにWaner Brothersと契約して発表したものの、以前ほどの大きなヒットにつながらず、結局バンドはこれ1枚でWarnerから離れることに。結果、彼らはインディーズに活動の場を移し活動を継続します。

そうして彼らがまず最初に取り組んだのが、かのスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎えてEPを制作すること。ここで制作した「Baby Talk」と「Brontosaurus」はグランジシーンでその名が知れ渡ったSub Pop Recordsから7インチシングルとしてリリースされています。

そのままアルビニを迎えてアルバムを作るかと思いきや、彼らは『ONE ON ONE』(1982年)などでエンジニアを務めたイアン・テイラーを迎えて完成させた作品を発表するわけです(実際にはアルビニとのコラボ以前から進められていたようですが)。

「Anytime」から始まる本作は、「You Let A Lotta People Down」などをはじめ全体的にダーク……というわけではなく、確かに重々しい空気もありつつ、基本的には彼ららしいポップさとロック感、ヘヴィさが混在したクールなロックアルバムに仕上げられています。

確かにサウンドの質感は90年代的な生々しさを伴っていますが、それがかえって70年代の彼らを彷彿とさせ、20年という長い時間を感じさせないフレッシュさすら散見されます。ポップな曲はとことんポップに、ヘヴィな曲はとことんヘヴィに。このメリハリの効き具合が前数作と比べるとかなり強まっており、そこは80年代の彼らとは大きな違いではないかと思います。

もちろん、彼らが時代に影響されている部分も少なからず存在し、「Anytime」や「You Let A Lotta People Down」「Baby No More」あたりはグランジからの影響がモロに出ています。けど、それが特に嫌味には感じられないのは、当時のグランジバンドがリスペクトを口にしたように、CHEAP TRICKというバンドのサウンドがいかに当時のバンドマンに影響を与えてきたかということを証明しているのではないでしょうか。

ややこしいタイトルやジャケット(1stアルバムをパロッたモノクロ感)、そして全キャリア中もっともグランジの影響が強いことなど、従来のファンからは評価がそこまで高くない1枚かもしれませんが、個人的には前作『WOKE UP WITH A MONSTER』以上に好きな作品です。

なお、日本盤には先のアルビニプロデュース曲2曲を追加収録。とはいえ、現在は廃盤状態にあり、デジタル配信&サブスクリプションサービスでも全オリジナルアルバム中本作のみ未配信のまま。ぜひなんらかの形で復活させてほしい1枚です。


▼CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』
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投稿: 2018 05 25 12:00 午前 [1997年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2018年5月24日 (木)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1977)

1977年2月に海外でリリースされた、CHEAP TRICKの記念すべきデビューアルバム。当時はBillboardのアルバムチャート200位内にも入らない程度のセールスでしたが、現在においては彼らの歴史を振り返る上で非常に重要な1枚であると同時に、70年代後半のUSハードロック、およびパワーポップシーンにおいて大切なアルバムでもあります。

僕がこのアルバムを初めて聴いたのは、彼らが「The Flame」(1988年)で初の全米No.1を獲得して、しばらくしてから。すでにほとんどのアルバムがCD化され、その流れで手にしました。当時のCDは「Hot Love」から勢いよく始まり、中盤に「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」と重めの曲が並び、ラストは「Oh, Candy」で軽やかに終わる。そんなイメージのアルバムでした。もちろん、この曲順が正しいと思い込んでいたのです。

が、実はこのアルバム、アナログ盤の各面表記が「A面/B面」ではなく、「Side 1 / Side A」となっており、初CD化の際にレーベル側が間違えて「Side A」のほう(本来のB面)のほうから始まる構成に変わってしまっていたのでした。アナログ時代に触れていなかったぶん、このCDでの曲順がすべてだと思っていた僕は、そんな事情をもっとあとになってから知ることになるのでした。

ちなみに1998年のリマスター化に際し、もとの曲順……「Elo Kiddies」から始まり「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わる構成に戻っており、サブスクリプションサービスで聴けるバージョンもこちらに準拠。ですが、昨年9月にデビュー40周年を記念して発売された日本限定の紙ジャケ版では初CD化の「Hot Love」始まりが再現されており、ややこしいことになっております(笑)。ここ20年くらいで、正しく修正された曲順にようやく慣れ親しんできたところに、自分にとってオリジナルなこの曲順で聴くと……「もう、やめてー!」と思ってしまうわけです(笑)。

ですが、曲順が入れ替わろうとこのアルバムに対する印象や評価って、意外と変わらないんですよね。不思議です。

10代の頃は疾走感の強い「Hot Love」や「He's a Whore」のような楽曲を好んでいましたが、聴き込むうちに本作の魅力はミディアム&ヘヴィな楽曲こそがキモなんじゃないかと思うようになりました。なので、初CD化バージョン(オリジナルじゃないほう……ってややこしい。笑)の中盤、「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」の流れは本当に好きなんですよね。もちろん、「Elo Kiddies」で始まって「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わるバージョンも気に入ってますけど。

1stアルバムの時点で捨て曲なし、どの曲もメロウで個性的。ここまで完成されていたのに、当時まったくヒットしなかったのが不思議でなりません。まあ、早すぎたって言えば早すぎたのかもしれませんが。そんな彼らが本国より先に、ここ日本でヒットするわけですから世の中捨てたもんじゃないですね。



▼CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』
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投稿: 2018 05 24 12:00 午前 [1977年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作る理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れるので。



▼JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』
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投稿: 2018 01 23 12:00 午前 [2018年の作品, Aerosmith, Cheap Trick, Joe Perry, New York Dolls] | 固定リンク

2017年12月24日 (日)

CHEAP TRICK『CHRISTMAS CHRISTMAS』(2017)

今年6月に発売されたオリジナルアルバム『WE'RE ALL ALRIGHT!』からたった4ヶ月というハイペースで届けられた本作は、CHEAP TRICK初の全曲クリスマスソングで構成されたアルバム。全12曲中オリジナル曲は3曲(M-1「Merry Christmas Darlings」、M-11「Our Father Of Life」、M-12「Christmas Christmas」)と、その内容はカバーアルバムと呼んでも差し支えないものですが、だからといってスルーするには勿体ないほどの完成度。これ、季節を問わず聴いておきたい強力なパワーポップアルバムですよ。

カバーで取り上げられているのは「Silent Night(きよしこの夜)」といったトラディショナルナンバーもありますが、それ以外はRAMONESやTHE KINKS、WIZZARD、SLADE、チャック・ベリー、ハリー・ニルソン、チャールズ・ブラウンなどその筋の人なら知らない者はいない大物ばかり。どれもポップでパワフルな「CHEAP TRICKらしい」アレンジに仕上げられており、本当に“企画モノ”で終わらせるには惜しい、いや、贅沢すぎる内容なんです。

1曲目「Merry Christmas Darlings」のアレンジなんて“いかにも”ですし、「I Wish It Was Christmas Today」「Run Rudolph Run」の疾走感あふれるロッキンぶり、「Merry Xmas Everybody」での力強いビートとパワフルなボーカル、「Please Come Home For Christmas」での渋みを増したスタイル、あのスタンダードをCHEAP TRICKスタイルでカバーするとこうなるんだと思わずニヤリ笑ってしまう「Silent Night」、そしてパンキッシュに突っ走る「Christmas Christmas」……うん、捨て曲なし(当たり前ですが)。

原曲は知らなくても、例えばキース・リチャーズのカバーでおなじみの「Run Rudolph Run」、BON JOVIも取り上げた「Please Come Home For Christmas」など、他アーティストのカバーで耳にしたことがある曲がひとつはあるはず。そういったカバーとの比較も面白いけど、ここは……昨年の『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』から多作ぶりの目立つCHEAP TRICKの何度目かの絶頂期を素直に楽しみたいと思います。このアルバムを聴きながら街に繰り出せば、きっとひとりでも寂しくないはず!(笑)

最後に余談ですが……季節モノというのもあるけど、本作が国内リリースされないこのご時世……悲しいものがありますね。こういうアルバムほど、原曲がこうで、とかライナーノーツで専門家の方が解説してくれるのが楽しいのに。



▼CHEAP TRICK『CHRISTMAS CHRISTMAS』
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投稿: 2017 12 24 12:00 午後 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017年11月 9日 (木)

CHEAP TRICK『LAP OF LUXURY』(1988)

1988年春に発表された、CHEAP TRICK通算10作目のスタジオアルバム。70年代末の大ヒット以降、チャート的にもセールス的にも恵まれてこなかった彼ら。オリジナルベーシストのトム・ピーターソン脱退などのメンバーチェンジなどを経て、再びロビン・ザンダー(Vo, G)、リック・ニールセン(G)、バーニー・カルロス(Dr)、そしてトムというオリジナル編成にて制作されたのが本作『LAP OF LUXURY』です。

80年代中盤以降、彼らはいくつかのヒット映画のサウンドトラックに楽曲を提供しており(『トップ・ガン』での「Mighty Wings」や、ロビンがソロで楽曲提供した『オーバー・ザ・トップ』の「In This Country」など)、それらの楽曲では非常に“産業ハードロック”的なカラーを見せ従来のファンをがっかりさせていました。実は、本作『LAP OF LUXURY』はその延長線上にある作風で、初期の彼らをイメージして触れるとがっかりするかもしれません。

しかし、作品の完成度はなかなかのもので、THE BEATLESの影響下にあるアメリカンハードロックアルバムとしては非常に高水準といえるでしょう。それもそのはず、大半の楽曲に職業ソングライターが携わっており、全米No.1を記録した「The Flame」なんてメンバーが作詞作曲に関わっていないんですから。他にもチャーリー・セクストンがデビューアルバムに収録した「Space」や、エルヴィル・プレスリーの名曲「Don't Be Cruel」(邦題「冷たくしないで」)のカバーまで収録。レーベル側の「とにかく(当時の)HR/HMブームに直接ぶつけて、彼らのルーツであるCHEAP TRICKを復活させる!」という意思が強く感じられる内容なわけです。

ちなみに全10曲中バンドメンバーのみで書かれた楽曲は、シングルカットもされた「Never Had A Lot To Lose」のみ(ロビン&トムによるもの)。この曲が今でもひんぱんにライブで披露されるのは、そういった意図も含まれているんでしょうか。

でもね、上にも書いたようにひとつのハードロックアルバムとしてはどの曲も優れているし、濃いファン目線でも「こういうCHEAP TRICKも悪くないかな」と思える楽曲がいくつか含まれているので、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。実際、当時は繰り返し聴きまくりましたし。逆に、この時代があったからこそ90年代に入ってから『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)で“らしさ”を取り戻せたわけですしね。

ちなみに本作、アルバムとしても『DREAM POLICE』(1979年)以来のチャートTOP20入り(全米16位)、ミリオンセールスを達成。シングルでも「The Flame」(全米1位)のほか、「Don't Be Cruel」(全米4位)、「Ghost Town」(全米33位)、「Never Had A Lot To Lose」(全米75位)と複数のヒット曲を生み出しており、レーベル側の思惑は見事達成しました。



▼CHEAP TRICK『LAP OF LUXURY』
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投稿: 2017 11 09 12:00 午前 [1988年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017年6月25日 (日)

CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』(2017)

昨年春に発表された前作『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLOW』が7年ぶりの新作ということでびっくりしたわけですが、続く本作『WE'RE ALL ALRIGHT!』はなんと前作から1年2ヶ月という短いスパンで制作〜リリースされたことで、さらに驚かされたわけです。だって、昨年11月には来日公演までしてさ、またしばらく見納め(聴き納め)かなと思っていたのに……特に大御所クラスになると新作のスパンが5年前後になっても不思議じゃないので、この予想外の新作にはただただ嬉しい限りです。

本作は新曲に加え、過去に制作されたものの未発表だった楽曲を新たにレコーディングしたもので、見方によっては「2017年のCHEAP TRICKによる、純然たる新作」とは言い難いかもしれません。が、ファンにとってはそういう細かいことはどうでもよく、今のCHEAP TRICKが本作で鳴らされているような音/楽曲に再び挑戦してくれている事実が単純に嬉しいし、素敵だと思うわけです。

比較的落ち着いたイメージの強かった前作とは相反し、今作は終始アグレッシブ。初期の「元気よく、勢いのあるパワーポップ/ロック」路線に寄った作風。アップテンポの楽曲がズラリと並び、ロビン・ザンダー(Vo)もがなるように歌っています。ポップな作風の楽曲にしても“枯れ”よりも“若々しさ”が前面に打ち出されており、そこに「ああ、自分は今CHEAP TRICKの新作を聴いているんだ」と強く実感できることでしょう(と、前作のレビューと同じことを書いてしまいますが)。

大半の曲が2分台〜3分台半ばというのも、初期の彼ららしく、アルバム本編10曲で33分程度というランニングタイムも納得。ちなみに本作には3曲追加したデラックスエディション(日本盤の通常仕様はこちら)も用意されていますが、それでも全13曲で44分程度(さらに日本盤はボーナストラックでライブテイク2曲を追加。これは正直蛇足かな)。最近のロックアルバムが少しずつではありますが、こういう40分前後という昔ながらの作風に戻りつつあるのはちょっと興味深い話ですね。

個人的にはデラックス盤に追加された3曲(THE MOVEのカバー「Blackberry Way」、『DREAM POLICE』を思わせる「Like A Fly」、メロウでサイケなミディアムバラード「If You Still Want My Love」)も本編10曲に負けず劣らずの出来だと思うので、ぜひこちらの仕様をオススメしたいと思います。



▼CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』
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投稿: 2017 06 25 12:00 午前 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017年3月20日 (月)

RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』(2013)

HAREM SCAREM、オジー・オズボーンと続いたので(『TRIBUTE』は3月19日に紹介しようとは決めていましたが、その前にHAREM SCAREMを取り上げるというこの流れは意図的ではありませんでした)、今回はその2つが絶妙な形で合体したRED DRAGON CARTELを紹介したいと思います。

RED DRAGON CARTELはオジー・バンドの二代目ギタリスト、ジェイク・E・リーがBADLANDSの2ndアルバム『VOODOO HIGHWAY』(1991年)以来22年ぶりに本格始動させたバンドRED DRAGON CARTELの1stアルバム。日本では2013年12月、海外では2014年1月にリリースされています。アルバムではHAREM SCAREMのドラマー、ダレン・スミスが大半の楽曲でボーカルを務めていますが、4曲でゲストボーカルも採用。「Feeder」にはロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、「Wasted」にはポール・ディアーノ(元IRON MAIDEN)、「Big Mouth」にはマリア・ブリンク(IN THIS MOMENT)、「Redeem Me」にはサス・ジョーダンと男女/ジャンル問わずさまざまなシンガーがジェイクの楽曲を歌っています。

1曲目「Deceive」の冒頭、オジーの「Bark At The Moon」を彷彿とさせるカミソリギターリフに歓喜したHR/HMリスナーは非常に多いのではないでしょうか。僕も間違いなくそのひとりで、それにつづくダレンのハスキーなボーカル含め非常にカッコよくて「これは期待できる!」とすぐに確信。もちろんその確信に間違いはなく、曲によってはインダストリアル調のアレンジを含むものもありますが、基本的にはジェイクのキャリアを知っている人なら納得できるものばかりでした。しかもBADLANDSで傾倒したブルースロックではなく、オジー・バンド在籍時を思わせる楽曲やプレイも豊富で、「ようやくこっちの畑に戻ってきてくれた!」とアルバムを聴き進めるうちに頰が緩んでいったものです。

「Wasted」でのモダンなアレンジはどことなく最近のオジーにも通ずるものがあるし、「War Machine」なんて完全にBLACK SABBATHリスペクトなアレンジだし。そりゃそうだ、本作のエグゼクティヴ・プロデューサー&ミキサーはオジーの近作を手がけるケヴィン・チャーコなんだから。それにザックはオジーの代表作『BARK AT THE MOON』(1983年)、『THE ULTIMATE SIN』(1986年)のメインソングライターでもあるわけで、“オジーっぽさ”がゼロなわけない。ダレンがライブでもボーカルを務めていることから、この形態がバンドとしては正しいんだろうけど、アルバム制作時はそこまでパーマネントなものとしては考えてなかったから、こういう作品になったのかもしれないですね(そのダレンも一時、バンドを脱退していますし。ますますバンド感が薄いような)。

オジーやサバスが好き、特にジェイク時代が好きという人なら間違いなく気に入る1枚。オジーっぽい曲を女性ボーカルが歌うと……という興味深い試みも楽しめますし。バンドっぽさは本当に希薄だけど、HR/HMファンならジェイク・E・リーというアーティストの実験の場として素直に受け入れられるはずです。



▼RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』
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投稿: 2017 03 20 12:00 午前 [2013年の作品, Badlands, Cheap Trick, Harem Scarem, Ozzy Osbourne, Red Dragon Cartel] | 固定リンク

2016年12月14日 (水)

CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』(2016)

オリジナル作品としては2009年の『THE LATEST』以来、実に7年ぶりのニューアルバム。しかもオリジナルドラマーのバン・E・カルロスがツアーやレコーディングから離れ、リック・ニールセンの息子ダックス・ニールセンが参加した編成による初のアルバムでもあります。さらに言えば、ここ数作(かれこれ10年くらい)ずっと自主レーベルからのリリースだったのが、今作はBig Machine Recordsというユニバーサル傘下のインディペンデントレーベルからのリリース。それもあってか、1988年のヒット作『LAP OF LUXURY』(最高16位)以来28年ぶりのトップ40ヒット(ビルボード最高31位)という成績を残しています。

肝心の内容ですが、王道のCHEAP TRICKサウンド満載といったところでしょうか。オープニングの「Heart On The Line」から勢い良くスタートし、先行で無料配信されたポップなロックナンバー「No Direction Home」、穏やかな印象の「When I Wake Up Tomorrow」、豪快なサウンドが気持ち良い「Do You Believe Me?」「Blood Red Lips」と、冒頭5曲だけでも「ああ、自分は今CHEAP TRICKのアルバムを聴いてるんだ」と強く実感できるはずです。それはもちろんアルバム後半でも引き続き感じられ、終始「安心安全のCHEAP TRICKサウンド」を心置きなく楽しめることでしょう。

こういうバンドの場合、下手に新しいことに挑戦するよりも、いかに従来のスタイルの中で「聴いたことあるようで、でも初めて聴く」新曲を量産していくことに意味があるような気がします。それってどれも一緒なんじゃない?と思われるでしょうが、CHEAP TRICKの場合はその「従来のスタイル」の幅が他のバンドと比べても広いので、毎回聴き手を飽きさせないアルバムを作ることができるわけです。今回のアルバムも前作『THE LATEST』とも、その前の『ROCKFORD』(2006年)とも、さらにその前の『SPECIAL ONE』(2003年)とも、90年代に発表された『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)とも『CHEAP TRICK』(1997年)とも異なる作風&魅力ですし、間違いなく今後も上記の作品同様、長きにわたり愛聴しつつけることでしょう。

11月に行われた、今作を携えた来日公演も最高に楽しかったです。生で聴く「Long Time No See Ya」や「Blood Red Lips」は想像以上にカッコよかったですよ。



▼CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』
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【CHEAP TRICK ディスクレビュー一覧】
『SPECIAL ONE』(2003)
『ROCKFORD』(2006)

【CHEAP TRICK ライブレポート一覧】
1999年10月11日@横浜ベイホール


投稿: 2016 12 14 12:00 午前 [2016年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2015年5月 8日 (金)

Cheap Trickの私的ベスト10

最近思い出したかのようにCheap Trickを聴く日々が続いています(ただしYouTubeにて)。それで考えてみたんですけど、このバンドの場合オールタイムで個人的10曲を選んだらどうなるんだろうと……実際やってみたんですが、やはり10曲に絞ることは難しく、すでに70年代の時点で10曲を軽くオーバーしていました。

ということで、そこからオールタイムで20曲前後にまで厳選し、さらに絞り込まれた10曲をご紹介したいと思います。いやー、本当に難しかった!

1. He's A Whore

2. I Want You to Want Me

3. Surrender

4. Heaven Tonight

5. Dream Police

6. Just Got Back

7. I Can't Take It

8. Woke Up with a Monster

9. Anytime

10. Welcome to the World


以上ですが、結局似通った曲が並んでますね。そうでもないか。メジャーコードのバラードを意識的に外してしまったせいかも(が、「Woke Up with a Monster」「Anytime」に強いこだわりを出してみました。好きなんですよ、この時期のCheap Trick)。

ちなみに選外となったのは「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Downed」「On Top of the World」「Voices」「Stop This Game」「If You Want My Love」「Never Had a Lot to Lose」「Can't Stop Fallin' Into Love」「You're All I Wanna Do」「Wrong All Along」「Perfect Stranger」「Sick Man of Europe」。多い。リアルタイムだと「The Flame」世代ですが、最初に聴いた曲は映画「トップガン」のサントラに収録されていた「Mighty Wings」でした。Cheap Trickっぽくはないけど、この曲も好きだなあ。

オリジナルアルバム1枚選ぶのは本当に難しいので、なんだかんだでよく聴くこのベスト盤を。1990年までのヒットシングルはほぼここで楽しめますので(個人的には「Magical Mystery Tour」のカバーがオススメ)。



▼Cheap Trick「The Greatest Hits」
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投稿: 2015 05 08 04:35 午前 [Cheap Trick, 「私的ベスト10」] | 固定リンク

2006年6月26日 (月)

CHEAP TRICK『ROCKFORD』(2006)

 そうそう、こういうチートリを待ってたんだよ!!!!!1

CHEAP TRICKの約3年ぶりのアルバム『ROCKFORD』は、誰もが納得するようなハードドライビング・パワーポップアルバム。ここ20年近くの不振が嘘みたいな完成度なのね。正直な話、この20年近く(トム・ピーターソン復帰後の完全復活以降)の間にリリースされたアルバムの中で、頭からケツまで通して最高だった!ってアルバムは殆どないわけでして。辛うじて『WOKE UP WITH A MONSTER』や前作『SPECIAL ONE』はいい線いってたけど、やはり全盛期であるところの70年代末〜80年代初頭には敵わなかったよな、と。そりゃ、比較するのはよくないことくらいわかってるんですけどね。でも……今の若い子たちに「チートリは過去の遺物じゃねーぞ!」って言い張りたいじゃないですか。

やっと、20年経ってやっと、そう自慢できるようなアルバムが出来たなぁという気がして、聴き終えた後は嬉しさより先にホッとしたっていうのが本音です。

何だろうねぇ……正直、基本ラインはここ数作と何ら変わってないと思うんだけど。その音の鳴り方だったり鳴らせ方がより過去の名作での方法に近かっただけというか。ホント、それだけな気もする。でも、なぜかそれが今までは出来ていなかった。それも不思議なんだけど。曲自体は本当にここ数作というか、過去の集大成と言っても過言ではない内容。だけど、頭2曲の直球パワーポップ路線にみんなやられちゃってるんじゃないかな。いや、それ正しい。これまでそういう掴みの曲が少なかったから。リンダ・ペリーやらスティーヴ・アルビニやらジャック・ダグラスやらとにかく凄い面々が制作に参加して出来上がったこのアルバム。個人的には今年のトップ5に入れたい。そして‥‥当然ライブでこれらの曲を早く生で聴きたいね。過去の曲はもちろんだけどさ、やっぱり今はこのアルバムの曲をどうやってライブで表現してくれるかが気になる。いやー、夏フェスで来てくれるのが一番嬉しかったんだけどね。

とにかく大傑作。パワーポップファンもロックファンも、みんな必聴!



▼CHEAP TRICK『ROCKFORD』
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投稿: 2006 06 26 01:27 午前 [2006年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク | トラックバック

2004年10月14日 (木)

とみぃ洋楽100番勝負(56)

●第56回:「DREAM POLICE」 CHEAP TRICK ('79)

 '70年代に大ヒットを飛ばして、その後'80年代突入と共に泣かず飛ばすの状態に陥り、挙げ句の果てにメンバーチェンジ、更に下火に‥‥なんていうケース、結構あるんだよね。エアロがそうだったし、KISSもある意味そうかもしれない。そして‥‥このCHEAP TRICKも。ベーシスト以外のメンバーチェンジはなかったものの、やはり「オリジナルの四人」はBEATLESやKISS同様、キャラがハッキリしてた分、痛かったと思うのね。

 そんな彼等が再びオリジナルの4人で復活し、大ヒットを飛ばした'88年。初めてまともに彼等と接することになって。勿論それまでにもMTVでその時その時にリリースされてきたPVと向き合ってきたし、「トップガン」や「オーバー・ザ・トップ」といった映画のサントラに彼等やソロ等での楽曲が収録されていたので、何となく「チートリ」というものを理解していたはずだけど‥‥

 けど。本質は全然違ったんだよね。

 「ベストヒットUSA」の『Star of the week』っていう、ひとつのアーティストにスポットを当てる特集コーナーに、当時全米ナンバ−1ヒットを飛ばし勢いに乗っていたチートリが取り上げられて。プレスリーのカバーだった新曲 "Don't Be Cruel" の後に、往年の大ヒット曲だという "Dream Police" のPV(というか、当時はまだプロモーション・フィルムだな)が流れて‥‥

 何だこれ、全然違うじゃん。むしろこっちの方が全然カッコいいじゃんか!

 その後、雑誌等で復活作の大半の楽曲が、ヒットを飛ばすために用意された外部ライターによる楽曲であることを知るわけですよ。成る程ね、あれは彼等にとって、いろんな意味での『切り札』だったんだな、と後になって思うわけです。全ては『そこ』に戻るために必要な手段だったんだな、と。エアロと一緒だよ、って。

 チートリはホント奥が深いバンドだよ。KISS同様、BEATLESからの影響が強いバンドであると同時に、ロイ・ウッドやE.L.O.等、ありとあらゆるロック/ポップ・アーティストからの影響が垣間みれて、それを彼等なりにしっかり消化してひとつの「CHEAP TRICK」というブランドを作っているんだから‥‥だから、未だにビリー・コーガン等といった今を代表するアーティスト達から支持されてるんだろうね、KISS同様。キャラだけでなく、芯がしっかりしてるから忘れ去られることがないんだな、と。ホント素晴らしいバンドですよ。



▼CHEAP TRICK「DREAM POLICE」 (amazon

投稿: 2004 10 14 12:00 午前 [1979年の作品, Cheap Trick, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003年8月19日 (火)

CHEAP TRICK『SPECIAL ONE』(2003)

正直に申します。最初このアルバムを聴いた時「あちゃーっ、6年待たされてこれかよ。俺‥‥ダメだ‥‥緩すぎる‥‥」……期待が大きかっただけに、凄く大きなショックを受けたのね。こんなの俺が思い描いた、俺が望んだCHEAP TRICKの新作じゃない、って。そりゃね、確かに聴けばそれがチートリのものだって判るのよ。けどね、違うのよ。俺が待ってたのは、「6年分の穴を埋め合わせるどころか、そんな穴無視して猪突猛進してくようなサウンド」だったはずなのよ。

俺、誰が何と言おうが、世間的には駄作呼ばわりされてる前作『CHEAP TRICK』(1997年)が、凄く好きなのね。何故なら、守りに入ってなかったから。恐らく多くの人達が待ち望む「70年代全盛期の、古き良き時代のチートリ・サウンド」を再現するでもなく、あくまで「90年代のバンドとしてのCHEAP TRICK」を体現していて、彼等から影響を受けたであろう若手バンドと対峙してこうという意気込みと、20年以上に渡って活動してきたバンドの貫禄が同居する、非常に印象深いアルバムだと思ったのね。確かに懐メロツアーみたいなのもいいよ。けどさ、今の状況でそれやっちゃダメでしょ。VENTURESと変わらなくなっちゃうでしょ? KISSくらい派手に割り切ってやるならまだしも、今のチートリはそういう環境にないわけだし‥‥

だからこそ、この新作『SPECIAL ONE』を聴いた時、あまりに落ち着き過ぎてて、思いっきり拒否反応を示しちゃったのさ。ハッキリ言って、全部聴かないで、全曲の頭出し数十秒聴いて判断してそれっきり。1回も通しで聴かないまま、1ヶ月以上放置していたのでした。

ところがね。時間が経って気持ちも落ち着き、改めて通しで聴く時間が取れたんですよ。で、じっくりと腰を据えて耳を傾けたわけですよ、ネガな感情を抱えつつ。

これがね、悪くないのよ。いや、むしろアルバムの出来としてはこの10数年の中では一番良いんじゃないか?って断言できる程、トータル的に優れてると思ったのね。最初、全てが全てまったりしたバラード調、あるいは肩の力を抜いた埃っぽいアメリカンロックばかりといった印象だった各楽曲も、実はかなり考えられて作り込まれているな、という風に印象が変わったり、確かに落ち着いているんだけど、その中にもちゃんと「チートリらしい奔放さ」は封じ込まれているのね。そりゃさ、確かに10~20年前の作品と比べればその奔放さのレベルも格段と落ちますよ。正直、前作よりも年取った感は拭えないし。でも、いいんだわ。今なら素直に言えるもん。これいいよ!って。

大体さ、ここ数作(といっても彼等、この10年でオリジナル・アルバムってこの『SPECIAL ONE』を含めて3枚しか発表していないわけですが)必ずトップは勢いのいいのか、あるいはヘヴィでガッツのあるナンバーだったんだけど、今回の「Scent Of A Woman」ってちょっとタイプが違うよね。静かに始まって、一瞬「バラード!?」と思わせるものの、曲が進むにつれてテンションが高くなっていって、最終的にはチートリ以外の何者でもない楽曲になってるわけで。おいおい、BON JOVIじゃないんだから‥‥って思ったものの、確かにこれもチートリ。曲が良いんだもん、これ以上悪く言いようがないし。

そこからミディアム~スロウな曲が続くんだけど、確かに1曲1曲のクオリティは過去数作の中でも一番優れてるんだわ。ま、70年代に拘る方々には少々厳しいのかもしれないけど、80年代から入っていった人達(俺を含む)はむしろこういった方向性、有り難いんじゃない? ま、俺はどちらの路線も好きなんだけど、ちょっと頭からこういった曲調が続くと‥‥ねぇ?

ところがね、このアルバム。中盤から後半にかけて、徐々にテンションが高くなってくのよ。決して初期のアッパーな曲みたいなのがあるわけじゃないんだけど、何ていうか、こう‥‥静かに熱が高まってくような、台風がゆっくりと、徐々に、徐々にと近づいてくるような、そんな雰囲気なのね。特に4曲目「Pop Drone」でチートリ流「LED ZEPPELINの "Kashmir"」を体現し、5曲目「My Obsession」でサイケなポップロック、6曲目「Words」で甘くとろけるようなポップソングで小休止し、7曲目「Sorry Boy」と8曲目「Best Friend」で「ヘヴィ&ダークサイド of CHEAP TRICK」の決定版を至極自然体に表現してみせるという。完全にこの辺がアルバムのハイライトといっていいでしょう。更にアルバム本編のラストとなる2曲(「Low Life In High Heels」「Hummer」)は、同じ曲を違うプロデューサーに預け、それぞれの持ち味を活かした形へと成長した2曲を並べることによって組曲のようになっているという、非常に面白い仕組みになってるんですね。前者をかのスティーヴ・アルビニに、そして後者をGORILLAZ等でお馴染みのDan The Automatorに任せることで、シンプルで地味なこの曲もいろんな意味でカラフルになっています。それでいてチートリらしさは損なわれていないんだから、さすがというか(ま、この場合はチートリの個性がそれだけ強いんだ、と解釈しておきましょう)。

あ、日本盤ボーナストラックの「Special One」日本語バージョンはこの際無視。蛇足だと思ってます、個人的には。こんなの入れるくらいだったら、ボーナストラックなんていらなかったのに‥‥。

と、最初はかなり否定的な感情が付きまとったこのアルバム。最終的には「非常に良いアルバム」という結論に落ち着いています。ただ、それでもこれは俺が思い描いたチートリの姿ではないし、残念ながらそういった姿はもう二度と観られないのかもしれませんね‥‥そこは割り切るべきなのか、それとも諦めずに夢を追い求めるべきなのか悩むところですが。まぁこの6年、散々ベスト盤だのライヴ盤だのでそういった溌剌とした面は散々味わってきたので(実際に観たライヴでもそういった面を堪能できたし)、これはこれで楽しむことにしましょう。だってこれ‥‥決して名盤とは言わないけど、忘れた頃に聴きたくなる、恐らく付き合いが長くなりそうな1枚になると思うからさ。



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投稿: 2003 08 19 11:37 午前 [2003年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

1999年12月 2日 (木)

CHEAP TRICK JAPAN TOUR 1999@横浜ベイホール(1999年10月11日)

最後に彼等を観たのが3年前の年末で、それだって新譜(「CHEAP TRICK」)発売前で、ボックスセットのプロモーションの為のツアーだった。つまり'94年春から純粋な新作の為のツアーでは来日してない事になる。では今回はどうだったかというと‥‥実はこれも微妙なタイミングだったりする。何せこの春に発売されたのは、オリジナル作品ではなくライヴ盤(「MUSIC FOR HANGOVERS」)、しかも収録曲の殆どが復活前の、いわば全盛期の曲なのである。このアルバムでの来日という事になるのだが、う~ん、どういう内容になるのだろうか?

最近の彼らはツイてない。'97年春に「CHEAP TRICK」アルバムをリリースしたと思えば、海外での配給元が倒産。結局まともにプロモーションされることもなく、ただひたすらツアーするのみの毎日。今日はクラブで、明日はMOTLEY CRUEの前座、次はまたクラブ‥‥演奏される曲は時間が経つにつれて'70年代の曲が増えていき、最後には新譜からの曲は皆無。そこへファースト~サードアルバムがボーナストラック付きでリマスター盤として再リリース。それに伴い3日間の日替わりライヴ。(1日目が1st、2日目が2nd、3日目が3rdといった具合に再現されるライヴ)その模様を収録したのが、先のライヴ盤のようだ。ここ10年の間、彼らは多くの新人アーティスト達からリスペクトを受け続けてきた。NIRVANAだったりSMASHING PUMPKINSだったり‥‥状況は整っていたにも関わらず、セールス的な成功を手にすることが出来ずにいた。AEROSMITHは更に高い頂点へと向かい、KISSは(それが人工的であれ)全盛期の輝きを再び得て、VAN HALENは再びそこへ向かおうとしている。なのに何故、彼らだけこういう苦境を味わい続けるのだろう?

今回のジャパンツアーで一番小さいハコが、今回の横浜ベイホールだ。渋谷のクアトロを一回り小さくした感じで、柱が邪魔なとこまで似てる。(爆)それにしても‥‥不便な所だ!(笑)駅から遠いの何のって! バスに乗らなきゃならないって‥‥東京周辺の会場では、こことNKホールくらいじゃねぇか? 冗談じゃない!(怒)それにしても、(俺や同行したトルーパー佐藤氏にとって)こんな大物が、こんなに小さなハコで演奏してしまっていいのだろうか!?って位にステージから近い。しかもステージの低いのなんのって‥‥アマチュアじゃねぇんだから。(苦笑)

ステージに登場したメンバーは‥‥やはり3年前より確実に老けていた。(苦笑)まぁ仕方ねぇや、それは。ヴォーカルのロビン・ザンダーも一時期の輝きが感じられなかった‥‥歌は相変わらず上手いのだけど。それよりも、ベースのトム・ピーターソンが更にかっこよくなっていたのには驚いた。やっぱりベーシストはかっこよくなければいけない! ベースがかっこよくないバンドはダメである。これは俺の持論だけど。(笑)それにしても、いきなり「甘い罠」からスタートっていうのはどうなの??‥‥反則だよ、反則!!(爆)これでノるな!って言われたら俺、発狂するね? それに続く「カモン、カモン」だ「今夜は帰さない」だの‥‥おいおい、頭からこれかい!?(笑)もうこの時点で、今夜が最高のモノになることは確定だ!

ライヴは終始、ギターのリック・ニールセンとのやり取りで和やかな雰囲気に包まれていた。いつもそうなのだけど、今回は特にバンドと客の間が殆どないからいつも以上だ。なんだか、アメリカの小さいクラブではいつもこんな感じでライヴやってるんだろうな、と思わせるに十分な内容だったと思う。選曲も正にグレイテスト・ヒッツって感じ‥‥勿論、普段やらないような曲も数多く聴けた。最後にセットリストを載せてるけど、今回の驚きはメンバーがあれだけ毛嫌いしていた復帰作「LAPS OF LUXUALY」('88)からの曲が3曲も演奏された事だろう。選曲は毎日変わっていたらしいけど、特にこの日は'90年代の作品は1曲もプレイせずに、'80年代もこの3曲と"I Can't Take It"だけだった。あとはファースト~4作目「DREAM POLICE」までが中心。まぁ多くのファンがそれを望んでいるのだから、いいか? 演奏する方からも「俺達も楽しんでます♪」って空気が伝わってきたし。よくバンドがデカくなると「初期の曲はもうやらない」だの「古い曲ばかり演奏するのは後ろ向き。もっと新曲を聴いて欲しい」って言う奴等が多い中、やっぱり本当の意味での大物は違う。単に「ファンがこれやれば喜ぶの、知ってるし」ってだけかもしれない。「客寄せにはこうするしかない」のかもしれない。でも、それをやってのけてしまう今のCHEAP TRICKやAEROSMITHってのは、やっぱり別格だな。もし‥‥なんて言い方はしたくないけど‥‥QUEENが今もライヴ活動をしていたなら、どういうライヴをやってたのだろう? 「QUEEN II」完全再現とか、そんな凄い事やってたのかなぁ‥‥やめよう、こういう不毛な事考えるのは。

ライヴ自体は90分前後と、最近のライヴにしては短い方だったが、それでも十分にお腹いっぱいになったし、感動の嵐だった。細かいことを言えば「もっと最近の曲も聴きたかったね?」とか「『AT BUDOKAN』完全再現ライヴでもよかったかな?」だのいっぱい出てくるけど、それは贅沢というものか?(笑)前回の来日は東京公演全て網羅したが、今回は1日だけだったこともあって、そういう物足りなさはあったが‥‥内容はもう、文句なし! ギターポップやパワーポップ好きを自称する方で、まだ彼らを体験した事ない人‥‥後悔しなさい!(爆)次はいつになるか判らないよ!? こんなにエンターテイメント性に溢れたクラブでのライヴは久し振りだわ。けど‥‥海外での現状を考えると、ちょっと切なくなってくる。アメリカではこのベイホールと同じクラスの会場で、毎日ドサ回り的興行をやってるとなると‥‥複雑な心境だわ。この日本でだって、10年前は武道館だったんだから。それがある意味伝統となってしまっているため、'94年以降の会場(渋公だのサンプラだのといったホールクラス)を知るたびにブルーになっていた。そして今回はとうとう、ライヴハウスが含まれている‥‥プロモーターの目論見なのだろうけど、やっぱり切ない。最近、ライヴから客足が遠のいているらしい。大物がソールドアウトにならない事が多いのだから、中堅以下なんて、もう‥‥その苦肉の策としてウドーが打ち出したのが、この「横浜ベイホール公演」。最近のハードロック系アーティストがウドーで来日すると、必ずベイホール公演が含まれている。何故にベイホール? リキッドルームやクアトロじゃだめなのか? だって‥‥遠すぎるって!平日だったら絶対に無理だよ、時間までに到着するって。そりゃプロモーターにもいろいろ事情があるだろうけど、やっぱり考えて欲しいね、会場までのアクセスの問題。

最後にはライヴ本編と関係ない話題で熱くなってしまったけど、まぁZEPPやNKホール同様、首都圏の土地事情の負の部分が大きく影響しているわけ。こういうのを、他の地方の方々はどう思うのかな? いや、同じ首都圏に住む人でも、俺みたいな東京から離れた地区に住んでる人間にも問いたいですな、こういう問題は。てなわけで、最後に会場についての問題提議をして、終わります。


CHEAP TRICK @ Yokohama Bay Hall. 10/11/1999
 01. I Want You To Want me
 02. Come On, Come On
 03. I Can't Take It
 04. Clock Strikes Ten
 05. He's A Whore
 06. I Know What I Want
 07. Hot Love
 08. If You Want My Love
 09. Taxman, Mr.Thief
 10. Ghost Town
 11. Oh Caroline
 12. Oh Candy
 13. The Flame
 14. Southern Girls
 15. Surrender
[encore]
 16. Voices
 17. Dream Police
 18. Never Had A Lot To Lose
19. Goodnight Now



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投稿: 1999 12 02 03:23 午前 [1999年のライブ, Cheap Trick] | 固定リンク