MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)
2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。
1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。
20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。
ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。
名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。
で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。
ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。
DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。
DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。
『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。
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