カテゴリー「Chemical Brothers, the」の17件の記事

2022年1月10日 (月)

祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さんおめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画も、今年で8回目。しかし、この春から成年年齢が18歳になることから、今回で最後かなと思っております(さすがに18年前って区切り悪いですしね)。この企画は「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に貴重な機会でもあり、同時に「どれを20枚に含めるか?」というセレクトにおいても非常に頭を悩ます良いタイミングとなっていたので、成人式抜きで続けてもいいんですけど……まあ、そのへんは1年後に考えます(笑)。

改めて趣旨説明を。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2001年4月〜2002年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちら、2019年度の新成人編はこちら、2020年度の新成人編はこちらです)

以下、サブスクを通して名盤20選をお楽しみください。

 

ANDREW W.K.『I GET WET』(2001年11月発売)(Spotify)(レビュー

 

ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(日本:2001年4月発売、海外:2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

ASH『FREE ALL ANGELS』(2001年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

BASEMENT JAXX『ROOTY』(2001年6月発売)(Spotify

 

BJORK『VESPERTINE』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』(2002年1月発売)(Spotify)(レビュー

 

CONVERGE『JANE DOE』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

INCUBUS『MORNING VIEW』(2001年10月発売)(Spotify

 

JIMMY EAT WORLD『BLEED AMERICAN』(2001年7月発売)(Spotify

 

KYLIE MINOGUE『FEVER』(2001年10月発売)(Spotify

 

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

RYAN ADAMS『GOLD』(2001年9月発売)(Spotify

 

SLIPKNOT『IOWA』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE STROKES『IS THIS IT』(2001年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『ALL KILLER NO FILLER』(2001年5月発売)(Spotify

 

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

TOOL『LATERALUS』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

WEEZER『WEEZER (GREEN ALBUM)』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

残念ながらセレクトから漏れた作品も多く。以下に主だった作品をピックアップしておきました。

AIR『10000 HZ LEGEND』
ALICIA KEYS『SONGS IN A MINOR』
...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD『SOURCE TAGS & CODES』
AUTECHRE『CONFIELD』
THE BLACK CROWES『LIONS』
BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(レビュー
BLIND GUARDIAN『A NIGHT AT THE OPERA』
BLINK-182『TAKE OFF YOUR PANTS AND JACKET』
BRITNEY SPEARS『BRITNEY』
THE CHARLATANS『WONDERLAND』
!!!『!!!』
THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(レビュー
DEPECHE MODE『EXCITER』(レビュー
DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
EMPEROR『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE & DEMISE』
FANTOMAS『THE DIRECTOR'S CUT』
FEAR FACTORY『DIGIMORTAL』
FEEDER『ECHO PACK』
GARBAGE『BEAUTIFULGARBAGE』
HATEBREED『PERSEVERANCE』
HOOBASTANK『HOOBASTANK』
THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』(レビュー
JAMIROQUAI『A FUNK ODYSSEY』
JOEY RAMONE『DON'T WORRY ABOUT ME』
KREATOR『VIOLENT REVOLUTION』
LENNY KRAVITZ『LENNY』
MACHINE HEAD『SUPERCHARGER』
MEGADETH『THE WORLD NEEDS A HERO』(レビュー
MERCURY REV『ALL IS DREAM』
MICHAEL JACKSON『INVINCBLE』
MICK JAGGER『GODDESS IN THE DOORWAY』(レビュー
MISSY ELLIOTT『MISS E... SO ADDICTIVE』
MOGWAI『ROCK ACTION』(レビュー
MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』
MR. BIG『ACTUAL SIZE』(レビュー
N*E*R*D『IN SEARCH OF...』
NEW ORDER『GET READY』
NICKELBACK『SILVER SIDE UP』
OCEAN COLOUR SCENE『MECHANICAL WONDER』
OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』(レビュー
PUDDLE OF MUDD『COME CLEAN』
R.E.M.『REVEAL』
RAMMSTEIN『MUTTER』
ROB ZOMBIE『THE SINISTER URGE』
SLAYER『GOD HATES US ALL』(レビュー
SOILWORK『NATURAL BORN CHAOS』
SPIRITUALIZED『LET IT COME DOWN』
STAIND『BREAK THE CYCLE』
STATIC-X『MACHINE』
STEREOPHONICS『JUST ENOUGH EDUCATION TO PERFORM』
STONE TEMPLE PILOTS『SHANGRI-LA DEE DA』
SUGAR RAY『SUGAR RAY』
SUPER FURRY ANIMALS『RINGS AROUND THE WORLD』
TRAVIS『THE INVISIBLE BAND』
THE WHITE STRIPES『WHITE BLOOD CELLS』
YEAH YEAH YEAHS『YEAH YEAH YEAHS』

……多い(笑)。セレクトしまくったらこうなった。というか、2001〜2002年ってすでにこのサイトの前身「とみぃの宮殿」のアクセスがそこそこ増え始めた時期で(理由:ハロプロ)、更新意欲もかなり強くて新譜にも積極的に触れていたタイミングなんですよね。当然あの頃はサブスクなんてなかったので(海外にはNapsterがありましたけどね)、CDを闇雲に購入しまくっていたのですが(しかも、当時はライターになる前で、東京住まいではなかったこともあり、月に数度、週末にCD漁りったりクラブ遊びしたりライブ行ったりするために上京していたのでした)、今回選んだ20枚は完全に今の自分の趣味と、客観的に見て名盤として通用する作品を意識しています。

2001年というと、9月11日のアメリカ同時多発テロが忘れられない出来事でしたよね。当時は追悼イベントもいくつか開催されましたが、こうした事実が作品に反映されたのは2002年以降の作品だったので、今回ピックアップした作品の中には911について歌った曲は含まれていないんじゃないかな。

あと、ジョーイ・ラモーン(4月15日)やジョン・リー・フッカー(6月21日)、ジョージ・ハリスン(11月29日)が亡くなったのも2001年のことでした。

ちなみに、当時の日本の音楽シーンには以下のような出来事がありました。

■三波春夫、死去(2001年4月)
■中澤裕子がモーニング娘。を卒業(2001年4月)
■Coccoが音楽活動休止(2001年4月)
■野猿、撤収(2001年5月)
■三木道三、「Lifetime Respect」でオリコン1位獲得(2001年7月)
■サザンオールスターズから大森隆志(G)が脱退(2001年8月)
■EE JUMPのユウキ、活動自粛(2001年8月)
■モーニング娘。に5期生加入(2001年8月)
■SPEED、阪神淡路大震災復興イベントで一夜限りの再結成(2001年10月)
■access、7年ぶりに活動再開(2001年12月)
■第43回日本レコード大賞、浜崎あゆみ「Dearest」が大賞受賞。最優秀新人賞はw-inds.が受賞(2001年12月)
■SIAM SHADE解散(2002年3月)
■エイベックスがコピーコントロールCD(CCCD)発売(2002年3月)
■DREAMS COME TRUEから西川隆宏が脱退(2002年3月)

なお、2001年の年間アルバムランキング1位は宇多田ヒカル『Distance』、2位が浜崎あゆみ『A BEST』という時代。懐かしいですね……。

最後に、今回選出した20作品をまとめたプレイリストも用意しましたので、掲載しておきます。

 

2020年6月14日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)

2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。

1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。

20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。

ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。

名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。

で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。

ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。

DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。

DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。

『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』
(amazon:海外盤4CD+アナログ / MP3

 

2020年6月13日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』(2020)

1993年6月にリリースされたMANIC STREET PREACHERSの2ndアルバム『GOLD AGAINST THE SOUL』。本作から発表されたシングルに収められたカップリング曲、アルバム収録曲の未発表デモトラックなどをCD2枚にまとめ、未公開写真からなる豪華なフォトブックレット形式のパッケージで2020年6月12日に発売されたのが本デラックス・エディションです(日本盤は1ヶ月少々遅れ、同年7月22日にリリース予定)。

現在のマニックスしか知らない方々のために説明しておくと、デビューアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)にて世界中で1位を獲得して解散、獲得できなくても解散と大口を叩いてデビューした彼らでしたが、アルバムは当初予定していた「30曲入り2枚組」には10数曲及ばない形で発表され(CDは1枚ものでしたが、アナログなら2枚組)、全英最高13位、当然ほかの国でも1位には程遠い結果のみを残して、このまま解散するのかと思われていました。しかし、複数枚のメジャーアルバム契約を残していた彼らは解散宣言を撤回し、素直にこの2ndアルバムを制作、リリースしたのでした(このへんの経緯については、過去に執筆した1stアルバムのレビューや、その前後の作品のレビューをご確認ください)。

そんな敗者の十字架を背負った中で完成させたこのアルバムですが、いろんな意味で自由奔放なデビューアルバムと、マニックスの過激さが創作面で最大限に発揮された3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の間に挟まれた今振り返ると、ちょっと優等生すぎる印象を受けます。いや、好意的に評価すれば「やっと肩肘張らずに、好きな音楽を表現できた」と捉えることもできるでしょう。

このアルバムはその後のマニックスにおけるひとつの基準になったのも事実でして、サウンド的にはハードにもポップにも寄せられる、だけど軸にあるメロディは常にわかりやすくて親しみやすいものでなければいけない、と。本作があったから『THE HOLY BIBLE』に振り切ることができたし、その後の『EVERYTHING MUST GO』(1996年)へとつなぐこともできた。『GENERATION TERRORISTS』が“可能性のおもちゃ箱”であり“真のデビューアルバムへの処女作”だとしたら、この『GOLD AGAINST THE SOUL』こそがバンドにとって真のデビューアルバムだった。リリースから27年を経て振り返ると、そう捉えることもできるのではないでしょうか。

さて、そんな本作の最新デラックス・エディション。アルバム本編には最新リマスタリングが施されており、楽器1つひとつの粒の際立ちが非常によい形で再現されており、各楽器の主張がオリジナル盤以上に感じられる仕上がりになっています。もともとエッジは効いてるけど全体のバランスがよかった本作でしたが、より今の時代に合った聴きやすい形に生まれ変わったのではないでしょうか。

カップリング曲にはハード&メロウなアルバム本編よりもパンキッシュなものが多く、続く『THE HOLY BIBLE』への布石が見え隠れするのも興味深い……なんていうのは言い尽くされていますよね。改めて捨て曲なしのカップリングも存分にお楽しみいただければと思います。

で、肝心のDISC 2=アルバムデモですね。音質は決して優れたものではありませんが、アルバムよりもラフな演奏で、かっちり作り込まれる前の楽曲群は「これはこれで悪くないじゃん」と思わされるものばかり。ドラムのモタる感じとか、その後のライブにも通ずるものがありますし、そこも含めてマニックスのグルーヴ感が存分に伝わってきます。

曲によってはデモ音源が存在しなかったのか、ライブテイクでお茶を濁している曲もありますが(「Yourself」のみですが)、大まかなアレンジは完成バージョンと大差がないのも興味深いところ。とはいえ、中には完成バージョンと異なるアレンジ(ストリングスの代わりにハミング)の「From Despair To Where」、異なるアレンジのデモが複数存在する「Drug Drug Druggy」や「Roses In The Hospital」など、新たな気づきを与えてくれるものも少なくありません。個人的には「Nostalgic Pushed」はデモのほうが好きだなとか、完成バージョンよりもダークさ、ダーティさが際立つ「Symphony Of Tourette」や生ドラムバージョンの「Gold Against The Soul」など完成版よりも好印象を与えてくれたりと、27年前に受け付けられた記憶やイメージを更新させてくれました。

デモ音源のあとに収められたTHE CHEMICAL BROTHERSらによる「Roses In The Hospital」「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」のリミックスも、久しぶりに聴いたら面白かったなあ。90年代前半から半ばにかけて、マニックスの輸入盤シングルを買い集めていた頃の自分をふと思い出し、懐かしくなりました。

90年代に発表されたアルバム5作についてはすべてデラックス・エディションが発売されたので、もうこれ以上新たな未発表音源が発掘されることはないかと思いますが、これを機に改めて『GENERATION TERRORISTS』から未発表音源集を振り返ってみようかと思います。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年1月12日 (日)

祝ご成人(1999年4月〜2000年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今年で6回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、前回(1998年4月〜1999年3月)から当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)と被っていることもあり、選出時いろいろ感慨深いものがあったりするのですから、長く続けてみるものですね。

さて、企画説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1999年4月〜2000年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちらです)

 

AC/DC『STIFF UPPER LIP』(2000年2月発売)(Spotify)(レビュー

ATARI TEENAGE RIOT『60 SECOND WIPE OUT』(1999年5月発売)(Spotify)(レビュー

BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999年6月発売)(Spotify)(レビュー

CIBO MATTO『STEREO☆TYPE A』(1999年6月発売)(Spotify

D'ANGELO『VOODOO』(2000年1月発売)(Spotify

THE DILLINGER ESCAPE PLAN『CALCULATING INFINITY』(1999年9月発売)(Spotify

DISTURBED『THE SICKNESS』(2000年3月発売/US)(Spotify)(レビュー

THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』(1999年5月発売)(Spotify

FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

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2019年12月31日 (火)

2019年総括:①洋楽アルバム編

2019年もあと半日で終わり。いわゆる「テン年代」が終わるわけですね。さて、毎年恒例となった1年の総括を今年もじっくり書いていこうと思います。

今年からちょっと趣向を変えてみました。まず、①洋楽アルバム編(ジャンルレスでその年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)、②邦楽アルバム編(同アルバム10枚+次点10枚)までは一緒、ここ数年続けてきた「その年の気になったアイドルソング10曲(+次点5曲)」をやめ、昨年から番外編として公開した③HR/HM、ラウドロック編(その年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)と、④楽曲編(洋楽邦楽/ジャンル/リリース年関係なく、その年よく聴いた楽曲20曲)を新たに公開することにしました。

①、②および④に関してはアルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けて、③には意図的に順位をつけております(③は別媒体で準備を発表しているので、それを転載します)。特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは①洋楽アルバム編です。

 

■洋楽10枚(アルファベット順)

上位10枚を紹介する前に、次点となった10枚をご紹介。

<次点>
・CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』(レビュー
・THE CHEMICAL BROTHERS『NO GEOGRAPHY』
・CIRCA WAVES『WHAT'S IT LIKE OVER THERE?』
・FAYE WEBSTER『ATLANTA MILLIONAIRES CLUB』
・RIDE『THIS IS NOT A SAFE PLACE』(レビュー
・RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(レビュー
・SHARON VAN ETTEN『REMIND ME TOMORROW』
・TEMPLES『HOT MOTION』
・TORO Y MOI『OUTER PEACE』
・TWO DOOR CHINEMA CLUB『FALSE ALARM』

昨年の年間企画にも書きましたが、自宅で音楽を聴くときってメタル/ラウド系以外はほぼ女性ボーカルのまったりした音楽が中心だったんですね。単に老いただけかもしれませんが(笑)、そういった類の音楽に心地よさ、気持ち良さを求めるようになったのは事実です。が、単にアコースティックでまったりしたものよりは、どこか尖っているほうが惹きつけられるし、何度も聴きたくなるのもまた事実。ここに挙げた次点10枚にはそういった作品が多く含まれている気がしてなりません。

さて、ここからが本編。僕が選んだ2019年洋楽アルバムTOP10です。

 

・BILLIE EILISH『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(Spotify

・BON IVER『i,i』(Spotify

・BRING ME THE HORIZON『amo』(Spotify)(レビュー

●BRING ME THE HORIZON『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(Spotify)(レビュー

・EX: RE『EX: RE』(Spotify)(レビュー

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2019年9月 4日 (水)

PRIMAL SCREAM『XTRMNTR』(2000)

2000年1月末にリリースされた、PRIMAL SCREAM通算6作目のオリジナルアルバム。日本では数週前倒しで発売されています。

前作『VANISHING POINT』(1997年)制作中にバンドへ加入した元THE STONE ROSESのマニ(B)が、本格的に全面参加した1枚で、レコーディングにはケヴィン・シールズ(MY BLOODY VALENTINE)やバーナード・サムナー(NEW ORDER)などがゲスト参加。ケヴィンは本作を携えたツアーからライブにも参加し、以降しばらくPRIMAL SCREAMに在籍することになります。

また、THE CHEMICAL BROTHERSやジャグズ・クーナー、アンドリュー・ウェザーオール、デヴィッド・ホルムズ、ダン・ジ・オートメーターなど豪華プロデューサー/リミキサーも加わり、前作でのダブ/サンプリング路線をさらに推し進めた、ヒップホップ以降のパンキッシュな1枚に仕上がっています。

とにかく、1枚の中にさまざまなジャンルが混在していながらも、不思議と統一感のある内容になっているのが不思議なアルバム。オープニングの「Kill All Hippies」(タイトルからして最高)は完全に前作の延長線上にある1曲ですが、続く「Accelerator」はパンキッシュなガレージロックだし、「Exterminator」はノイジーでゴリゴリのデジロック、ジャグズ・クーナー版「Swastika Eyes」はフロアで大盛り上がり必至のダンスミュージック、「Pills」は浮遊感漂うヒップホップ。ここまでてんでバラバラなのにすべてカッコいいんですから、恐れ入ります。

その後もジャジーなインスト「Blood Money」、ポップなトリップチューン「Keep Your Dreams」を筆頭に、無機質なエレクトロナンバー「Insect Royalty」、前作収録曲「If They Move Kill 'Em」をケヴィン・シールズがリミックスした「MBV Arkestra (If They Move Kill 'Em)」、THE CHEMICAL BROTHERSらしいドーピング感満載の「Swastika Eyes」別バージョン、そして眩いくらいにキラキラした「Shoot Speed / Kill Light」でエンディングを迎える。聴きどころ満載、いや、聴きどころしかない60分。これを傑作と呼ばずしてどうするよ、と。

歌詞に関しても、ボビー・ギレスピー(Vo)の政治的姿勢が強まったことで、より攻撃的になっており、これが続く『EVIL HEAT』(2002年)へとつながっていくわけです。

とにかく、この時期のライブは最高以外の何ものでもなかったなあ。ロックバンドがネクストレベルへ向かう過程でドロップした、異形の名盤。一般的に傑作と呼ばれる『SCREAMADELICA』(1991年)と双璧をなす、PRIMAL SCREAMの代表作だと思います(個人的にはこちらのほうが好みなんですが)。

なお、前年末にバンドが所属したCreation Recordsが閉鎖されることがアナウンスされており、本作が同レーベルからの最後のアルバムとなりました。チャート的には前作から全英3位という好成績を残していますが、シングルとしては「Swastika Eyes」(同22位)、「Kill All Hippies」(同24位)、「Accelerator」(34位)と大きなヒットは生まれませんでした。より政治色を強めた次作を機に本国でのセールスは下降線をたどることになり、バンドにとっては本作までがピークということになるようです。

 


▼PRIMAL SCREAM『XTRMNTR』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2019年7月 1日 (月)

2019年上半期総括(ベストアルバム10)

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトで順位など関係なし。ミニアルバムやEPは外し、フルアルバムのみをピックアップしました。

 

BRING ME THE HORIZON『AMO』(amazon)(レビュー

THE CHEMICAL BROTHERS『NO GEOGRAPHY』(amazon

FEVER 333『STRENGTH IN NUMB333RS』 (amazon)(レビュー

WEEZER『WEEZER (BLACK ALBUM)』(amazon)(レビュー

THE WiLDHEARTS『RENAISSANCE MEN』(amazon)(レビュー

AAAMYYY『BODY』(amazon

Eve『おとぎ』(amazon

THE NOVEMBERS『ANGELS』(amazon

THE YELLOW MONKEY『9999』(amazon

ドレスコーズ『ジャズ』(amazon

洋楽は候補が多くて最初こそ迷いましたが、「よく聴いた5枚」という当初のこの枠のコンセプトに基づいて選んだら、すんなり決まりました。逆に邦楽は最後までドレスコーズとサカナクションとMORRIEさんの新作を入れるか入れないか迷い、結果としてこういう5枚に。MORRIEさんの新作、HMV限定販売ですし配信もないんですよね。そのへんも考慮してということではないですが、やっぱりドレスコーズ『ジャズ』はいろんな意味で衝撃だったので、初志貫徹で。

2019年4月24日 (水)

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999)

本国イギリスで1位、アメリカでも最高14位という好記録を残した前作『DIG YOUR OWN HOLE』(1997年)に続いて、1999年6月にリリースされたTHE CHEMICAL BROTHERSの3rdアルバム。本国では引き続き1位、セールス的にも前作の倍近いダブルプラチナムを記録する大ヒット作となりました。

基本的には前作の延長線上にある作風といっていいかもしれません。が、いわゆる“デジロック”的なゴリっとしたテイスト(ビッグビート的スタイル)は後退し、より(広い意味での)テクノに接近した1枚なのかなと。それが1999年という世紀末感にフィットしたのでしょうかね、今振り返ると。

少ない音数とチープな電子音で構築されたオープニングトラック「Music:Response」は当時TV CMにも起用されたので覚えている方も少なくないかも。この曲からアッパーな「Under The Influence」、バーナード・サムナー(NEW ORDER)のボーカル(バックボーカルではPRIMAL SCREAMのボビー・ギレスピーも参加)をフィーチャーした「Out Of Control」へと切れ目なく続く3曲の流れは圧巻。これだけでも、本作は“勝った”と実感できる内容かもしれません。

そこからブレイクビーツ/ヒップホップ色濃厚な「Orange Wedge」を経て、ノエル・ギャラガー(当時OASIS)が前作の「Setting Sun」に続いて参加したキャッチーな「Let Forever Be」、8分半にも及ぶ一大抒情詩「The Sunshine Underground」とサイケデリックゾーンへ。前者は二匹目のドジョウを狙ったらより濃いものが生まれてしまったある種偶然の産物(?)でもあり、後者は「俺らが本気出せばこんなもんよ?」的な気合いが感じられる。オープニングからピークの連続みたいな作品ですが、間違いなくこの中盤はこのアルバムのクライマックスと言えるでしょう。

ホープ・サンドヴァル(MAZZY STAR)の気怠い歌声がチルな空気にぴったりな「Asleep From Day」、ブラックミュージックと同じくらいYMOからの影響も見え隠れする「Got Glint?」で少し落ち着いたところで、アゲアゲ(死語)のクラムアンセム「Hey Boy Hey Girl」で再び潮目が変わると、ポップさが際立つ「Surrender」、ジョナサン・ドナヒュー(MERCURY REV)のボーカル/アコギ/ピアノを前面に打ち出した“涅槃からのささやき”的エンドロールナンバー「Dream On」という豪華な構成でアルバムを締めくくります。

久しぶりに聴いても、やっぱりその内容/完成度は随一。ロックサイドからの入門編的には前作『DIG YOUR OWN HOLE』がとっつきやすいかもしれませんが、THE CHEMICAL BROTHERSの本質を知る上では本作から入るのがベストではないでしょうか。リリースから20年経った今も、最強のダンスミュージックアルバムです。

 


▼THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』
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2019年3月12日 (火)

THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(1997)

1997年4月にリリースされた、THE CHEMICAL BROTHERSの2ndアルバム。前年9月に発売された、ノエル・ギャラガーOASIS)をフィーチャーしたシングル「Setting Sun」が全英1位を獲得(アメリカでも80位まで上昇)。続くアルバムからのリードシングル「Block Rockin' Beats」も全英1位に輝いたことで、アルバム自体も初登場1位という大記録を達成。アメリカでも最高14位/50万枚を売り上げる好成績を残しています。

前作『EXIT PLANET DUST』(1995年)での路線を踏襲しつつ、よりロック色を強めたこと。そして、前作でのティム・バージェス(THE CHARLATANS)やベス・オートンをフィーチャーした歌モノを、“時のバンド”だったOASISのノエル・ギャラガーを(さらには引き続きベス・オートンも)起用することで作品自体のメジャー感を強めることに成功した結果が、この1位という数字に表れているのかなと思います。

とはいえ、昨日取り上げたTHE PRODIGYの『THE FAT OF THE LAND』(1997年)同様に、このアルバムもシンプルでわかりやすく、かつロックファンにも訴求する魅力的な内容なんですよね。

ただ、それはビート的なお話であり、楽曲の構成としてはテクノならではの1コードで延々引っ張るスタイルがベース。THE PRODIGY以上にそういう側面が強いことから、全体的にデジロックと括るのはちょっと違うかなという気がします。まあ「Block Rockin' Beats」はデジロックと言われたらそうかもしれないけど、「Elektorobank」や「The Private Psychedelic Reel」あたりは違いますしね。

あと、THE PRODIGYは1曲1曲がコンパクトなものが多く、そのへんもロック的と捉えることができるかもしれないけど、THE CHEMICAL BROTHERSは4〜5分台の曲もあるにはあるけど、先の「Elektorobank」は8分台、「The Private Psychedelic Reel」にいたっては9分半もありますから。そういった点においても、リスナーの嗜好が分かれそうな気がします。

このアルバムや続く『SURRENDER』(1999年)が素直に楽しめるなら、“こっち側”にもすんなりと入っていけるんじゃないかな。個人的にはこの人たちの持つサイケデリックテイストが本当に大好きで、アルコールを入れて爆音で聴く「The Private Psychedelic Reel」や「Piku」「Where Do I Begin」あたりは気持ちいいって言葉だけでは片付けられないくらいの魅力と効力があるので。

間もなく4年ぶりの新作『NO GEOGRAPHY』がリリースされ、夏にはフジロックで再来日。ライブではハズレが一度もない彼らのこと、きっと今回も最高な“あっち側”を見せてくれるはずです。



▼THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』
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2018年10月18日 (木)

THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』(1997)

1997年4月に発表された、THE CHARLATANSの5thアルバム。本作からメジャーレーベルのMCA / Universal Recordsからの流通となり(イギリス以外。本国イギリスでは本作まで古巣のBeggars Banquet Recordsからのリリース)、それも影響してか(また、折からのブリットポップムーブメントの影響もあってか)、バンドはこのアルバムで通算3度目の全英1位を獲得。前年に発売されたシングル「One To Another」(全英3位)を筆頭に、「North Country Boy」(同4位)、「How High」(同6位)、「Tellin' Stories」(同16位)と数々のヒットシングルが生まれます。

アルバムのミックス作業中だった1996年夏、メンバーのロブ・コリンズ(Key)が交通事故で死去。結果として、ロブを含む布陣での純粋な作品はシングル「One To Another」が最後となってしまいます。しかしバンドは PRIMAL SCREAMのキーボーディスト、マーティン・ダフィーをゲストに迎えて作業を継続。1997年初頭に無事本作が完成します。

90年代前半という時代性を反映させた初期のダンサブルな作風から徐々に変化を遂げ、この5作目では強いビート感はそのままに、ティム・バージェス(Vo)のボーカルの深みやマーク・コリンズ(G)のギタープレイの多彩さが増したこと、また残されたロブのプレイのみならず、ゲスト参加のマーティン・ダフィーの尽力もあって、ハモンドオルガンやピアノの存在感もより強いものとなり、バンドとしての表現力が急成長。ソングライティング面でも歌詞に具体性が増し、メロディやバンドアンサンブルも鉄壁と言わんばかりの仕上がり。文句なしの1枚なんですよね。

初期のサウンドが好きだというリスナーからは拒絶されたのかもしれませんが、逆に僕のような“好きな曲と嫌いな曲の差が激しかった”リスナーにはこの内容には当時かなり驚かされました。

ストーンズにおける60年代後半のサイケ期〜南部サウンド系統期の中間にあるようなサウンドといい、一見古臭いのに一周回って新しい(と感じてしまう)方向性といい、90年代後半の時代性と見事に一致したんでしょうね。そういえば、「One To Another」や「With No Shoes」「Tellin' Stories」のループを手がけたのが、THE CHEMICAL BROTHERSのトム・ローランズでしたし。なるほど、そりゃ売れるわ。

上に挙げたようなシングル曲はもちろんですが、個人的にはアルバム中盤の山場に置かれたインスト「Area 51」がお気に入り。「You're A Big Girl Now」のようなアコースティックチューンも本作ならではですし、パーカッションを強調した「Only Teethin'」も捨てがたい。ロブに捧げられたラストのインスト「Rob's Theme」含めて、1曲たりとも聴き逃せない、だけど肩の力を抜いて楽しめる名作です。



▼THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』
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