CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』(2018)
ノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンドDIMMU BORGIRのフロントマン、シャグラットがギタリストとして参加するプロジェクト、CHROME DIVISONの2018年11月発売の5thアルバムにしてラストアルバム。
ここ日本でも3rdアルバム『3RD ROUND KNOCKOUT』(2011年)が国内盤としてリリースされた経験がありますが、今作は今のところ国内盤リリース予定なし。3rdおよび4thアルバム『INFERNAL ROCK ETERNAL』(2014年)に参加した2代目シンガー、シェイディ・ブルーが昨年脱退し、今作では初代シンガーのエディ・ガス(爆走R&RバンドTHE CARBURETORSのフロントマン)が再参加。さらに、2代目ベーシストのオギーも昨年脱退しており、本作ではシャグラットがベースを兼任しております。
デビュー以来、一貫してMOTÖRHEAD直系のバイカーロックをプレイしてきた彼ら。その信念はラスト作でも突き通されており、哀愁味漂う(まるでカントリーウエスタンのオープニングのような)インスト「Return From The Wasteland」からヘヴィなロックンロール「So Fragile」へとなだれ込む構成はさすがの一言。以降もアップテンポでヘヴィさを伴う男臭いロックンロールが次々に繰り出されていきます。
THE HELLACOPTERSよりはヘヴィロック寄り、だけど泣きのメロディは共通するものがある。かつ、MOTÖRHEADほど速すぎず、適度なアップテンポ感がこのヘヴィさと相まって、本当に気持ち良い。「Walk Away In Shame」ではミドルテンポにシフトチェンジするパートがあったり、ギターのツインリードや女性ボーカル(Miss Selia)がフィーチャーされたりと、いろんなフックが仕掛けられています。「You Are Dead To Me」のアレンジも、なんとなくストーナーロック的なものが感じられるし、「The Call」あたりにはモダンメタルの色合いも見え隠れする。こういった要素が彼らの独自性確立につながっていることは間違いありません。
DIMMU BORGIRの白塗りメイク&シンフォニックなサウンドをイメージすると、この泥臭いバイカーロックにつながりにくいかもしれません。が、こうやってノーメイクで別の側面を見せてくれるところに人間味を感じるし、こうした生々しいロックでよりその温かみを見せて/聴かせてくれると「なんだ、めっちゃいい奴じゃん」と不思議と株が上がる……のは気のせいでしょうか(完全に偏見ですね)。
メタル耳にも十分に耐えうる重さが伴っているので、いわゆるガレージロックに物足りなさを感じるHR/HMリスナーにも打ってつけではないでしょうか。本作でその活動に幕を降ろすのは非常に勿体ない気がしますが、今は頭を空っぽにして本作を爆音で楽しみたいところです。