TOM KEIFER『RISE』(2019)
2019年9月中旬にリリースされたトム・キーファーの2ndアルバム。日本盤未発売。
CINDERELLAのフロントマンが初のソロアルバム『THE WAY LIFE GOES』を発表したのが、2013年4月のこと。CINDERELLA時代最後のスタジオ作品が1994年の『STILL CLIMBING』だったので、実に19年ぶりのオリジナル新作だったわけです。このアルバムではバンド時代の3rdアルバム『HEARTBREAK STATION』(1990年)の延長線上にあるレイドバックしたスタイルが展開され、「ああ、トムはこの枯れた方向で音楽を続けるのか……」とちょっとばかし肩を落とした記憶があります。
しかし、その『THE WAY LIFE GOES』はリリース元が倒産したことで2017年にアートワーク変更&新録曲追加で別レーベルから再発売。こちらにはリジー・ヘイル(HALESTROM)をフィーチャーした名曲「Nobody's Fool」のセルフカバーなどが含まれており、ちょっとだけハードロック路線が復調したような気がしていました。
そこから2年。『THE WAY LIFE GOES』のオリジナルリリースからは6年半もの歳月を経て、ようやく2作目のソロ作品が届けられたわけですが、今回は男女7人編成による#KEIFERBAND名義でのリリースとなるようです。
さて、気になるサウンドですが……前作よりもハードロック色がかなり増しており、CINDERELLA時代の『LONG COLD WINTER』(1988年)を彷彿とさせるヘヴィ・ブルースが随所で展開されています。もちろん、前作で見せたレイドバック路線も健在で、バランス的にも(CINDERELLAでいったら)『LONG COLD WINTER』と『HEARTBREAK STATION』の中間といったところでしょうか。もはや『NIGHT SONGS』(1986年)で聴かせた硬質さは見る影もありませんが、多くのリスナーがイメージする“トム・キーファー像”はしっかりキープされている。うん、これは素直にカッコいいと思います。
サウンドの変化にあわせて、トムのボーカルもジャニス・ジョプリンばりにシャウトしまくっており、往年の輝きが復調し始めている印象を受けます。一時は喉の不調であの歌唱法を断念せざるを得ない時期もあったようですが、ここまで無理なく自然な形で“トム・キーファー節”を楽しめる日が再び訪れるなんて……感無量です。
HR/HMというよりは、THE BLACK CROWESあたりに近い印象も受けますが、そのへんのサウンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入るはず。レイドバックしたAC/DCなんて表現もできなくもないかな。とにかく、一度でもCINDERELLAにハマったことがある人にはオススメの1枚です。
▼TOM KEIFER『RISE』
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