カテゴリー「Cinderella」の9件の記事

2022年11月19日 (土)

TOM KEIFER『THE WAY LIFE GOES』(2013)

2013年4月30日にリリースされた、元CINDERELLAトム・キーファー(Vo, G)による1stソロアルバム。日本盤は同年5月22日発売。

トムのスタジオ新作音源は、CINDERELLAのラスト作となった4thアルバム『STILL CLIMBING』(1994年)以来、実に19年ぶり。ちょうど『STILL CLIMBING』制作前後からトムの喉の不調もあり、何度か手術も経験。バンドはその間に不定期ながらもライブを行なっていますが、トム自身はこのソロアルバムに向けて2003年頃からゆっくりと準備を進めていたようです。

Warner Music傘下のインディーズレーベル・Merovee Recordsから発表された本作は、グレッグ・モロウ(Dr)、マイケル・ローズ(B)、トニー・ハーレル(Key)という手練の一流ミュージシャンたちをバックに迎えて制作。また、曲ごとに元バンドメイトのジェフ・ラバー(G/2021年没)、パット・ブキャナン(G,Harp)、ゲイリー・バーネット(G)、ロン・ウォレス(G)、エタ・ブリット(Cho)などゲストプレイヤーも多数参加しており、要所要所で適度な華やかさの感じられる音作りとなっています。

全体的な方向性としては、CINDERELLA時代の3rdアルバム『HEARTBREAK STATION』(1990年)でのアーシーかつレイドバックしたアメリカンロック、カントリーロックを下地に、オーソドックスな楽曲群を楽しむことができます。「Fool's Paraside」のような楽曲こそあるもののハードロック的側面は薄く、そういった点でも完全に“『HEARTBREAK STATION』のその先”と言えるような仕上がりです。

トムのボーカルは中音域の地声を中心にしつつも、キメるべきポイントではしっかりジャニス・ジョプリンばりのしゃがれたハイトーンも聞かせてくれる。初期のように終始ハイトーンでがなるのではなく、ナチュラルな地声で歌い通す中に時折ハイトーンが飛び込んでくるからこそ、良いアクセントになっている。喉のコンディションを維持するという点においても、このバランス感は大事なのかもしれません。もっとも、この穏やかな土着的サウンドの上では無理にシャウトする必要も感じられませんしね。

聴く人によっては地味で引っ掛かりのない1枚に感じられるかもしれない。しかし、『HEARTBREAK STATION』で展開されたR&Bを通過したロックンロールやアコースティック色の強いカントリー路線にも一定の理解を示したリスナーなら、本作は十分に理解してもらえるはず。これ!というキメの1曲が存在しないことだけは難点ですが、それでもリラックスしながら聴く分には文句なく楽しめる1枚だと思います。

なお、本作はリジー・ヘイル(HALESTORM)をフィーチャーしたCINDERELLA「Nobody's Fool」のセルフカバーやジョー・コッカーのカバーで知られるビートルズ「With A Little Help From My Friends」などボーナストラック3曲に、特典映像を収録したDVDを付け、アートワークを変更した形で2017年10月20日に再リリース。現在サブスクなどではこちらのバージョンが流通しています。アルバム本編14曲はそのまま変わらずなので安心ですが、終盤になって急に経路の違う名曲中の名曲「Nobody's Fool」が飛び込んでくるのでびっくりするかもしれません。

にしても、リジーは本当に良いシンガーですね。往年のトムに匹敵する、いや、彼とは違う魅力を兼ね備えたパワフルボーカルは本当に魅力的ですし、それに応えるトムも全盛期には及ばないものの、テクニックと味わい深さで本領発揮。サウンドこそハードロックですが、この世界観自体は非常にゴスペルチックなものも感じられ、改めて素晴らしい曲だなと実感させられます。一方の「With A Little Help From My Friends」はジョー・コッカー版アレンジで、THUNDERBON JOVIなど手垢が付いたカバー。こちらも原曲およびアレンジが最高すぎるので、最終的には先の「Nobody's Fool」とともにアルバム本編の印象を消してしまうのが難点。頑張れ、トム・キーファー。

 


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2022年11月 4日 (金)

ARCADE『ARCADE』(1993)

1993年4月8日にリリースされたARCADEの1stアルバム。日本盤は同年4月1日先行発売。

ARCADEは1991年、RATT解散後にスティーヴン・パーシー(Vo)が結成したハードロックバンド。メンバーは元CINDERELLA(当時)のフレッド・コウリー(Dr)、フランキー・ウィルセックス(G/ex. SEA HAGS)、ドニー・シラキュース(G/ex. GYPSY ROSE)、マイケル・アンドリュース(B/ex. 9.0)という布陣で、当時は「元RATTと元CINDERELLAのメンバーによる新バンド」という側面が強く打ち出されていたい印象が強いかな。

グランジ全盛の時代にメジャーのEpic Recordsと無事契約し、プロデューサーにデヴィッド・プラッター(DREAM THEATERFIREHOUSENIGHT RANGERなど)を迎えて制作。1993年という時代をまったく無視した(笑)、良くも悪くも開き直りの感じられるハードロックアルバムに仕上がっています。

オープニングの「Dancin' With The Angels」はアップテンポで攻めの姿勢が感じられる1曲。スライドギターのフレーズがどことなくAEROSMITH「Let The Music Do The Talking」に似ていますが(楽曲のテンポもね)、気にしないことにします。続くリード曲「Nothin' To Lose」はRATTの延長線上にあるミディアムテンポの地味なハードロック。このダークさは当時の時代を反映していると言えなくもないけど、根本にある方向性は80年代のヘアメタルそのもの。うん、何も変わってない(笑)。

いかにもなパワーバラード「Cry No More」、モロにRATTな「Screamin' S.O.S.」やブルージーな「Messed Up World」など、全体を通して似たようなテンポ感で攻める姿勢はRATTそのものですが、どの曲も似たり寄ったりで平均的な仕上がり。元CINDERELLAのメンバーが在籍するもののドラマーということもあり、ソングライティングや演奏面でそこまでCINDERELLAのカラーも見えないですし、そもそもギタリスト2人の色が薄味ということで、突出した個性が見受けられない。完全にスティーヴンの独り相撲といったところでしょうか。

アルバム後半に進むと、アグレッシヴなアップチューン「All Shook Up」、ピアノとアコギを用いたメロウなバラード「So Good... So Bad...」、初期RATTナンバーの焼き直し「Mother Blues」(のちにRATTのリメイクアルバム『COLLAGE』(1997年)で再録)など耳に残る曲もなくはないですが、前半の煮え切らなさが災いし、そこまで大きなインパクトを残すことなくアルバムは終了。リリース当時、数回聴いてCDラックの奥のほうにしまってしまったこと、今でも忘れません。

そういった印象は、リリースから30年近く経った今もそう大きく変わることはなく、やはり耳に残る曲はここに上げたようなものばかり。あとは「Calm Before The Storm」やラストの「Reckless」あたりかな。まあ全13曲の半分くらいは悪くないと思えるのですから、決して駄作ではないのでしょう。ただ、これがデビュー作と言われると……先が思いやられますよね?(苦笑)

RATTやらCINDERELLAでの功績があるからこそ、かろうじてここにつながったのでしょうけど、どうにも成功してやろうという野心が伝わってこないし、むしろ開き直って趣味全開にも受け取れる。HR/HM瀕死の1993年という時代において、まったく危機感のない本作はある意味では奇跡の1枚なのかもしれません。

 


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2019年12月16日 (月)

TOM KEIFER『RISE』(2019)

2019年9月中旬にリリースされたトム・キーファーの2ndアルバム。日本盤未発売。

CINDERELLAのフロントマンが初のソロアルバム『THE WAY LIFE GOES』を発表したのが、2013年4月のこと。CINDERELLA時代最後のスタジオ作品が1994年の『STILL CLIMBING』だったので、実に19年ぶりのオリジナル新作だったわけです。このアルバムではバンド時代の3rdアルバム『HEARTBREAK STATION』(1990年)の延長線上にあるレイドバックしたスタイルが展開され、「ああ、トムはこの枯れた方向で音楽を続けるのか……」とちょっとばかし肩を落とした記憶があります。

しかし、その『THE WAY LIFE GOES』はリリース元が倒産したことで2017年にアートワーク変更&新録曲追加で別レーベルから再発売。こちらにはリジー・ヘイル(HALESTROM)をフィーチャーした名曲「Nobody's Fool」のセルフカバーなどが含まれており、ちょっとだけハードロック路線が復調したような気がしていました。

そこから2年。『THE WAY LIFE GOES』のオリジナルリリースからは6年半もの歳月を経て、ようやく2作目のソロ作品が届けられたわけですが、今回は男女7人編成による#KEIFERBAND名義でのリリースとなるようです。

さて、気になるサウンドですが……前作よりもハードロック色がかなり増しており、CINDERELLA時代の『LONG COLD WINTER』(1988年)を彷彿とさせるヘヴィ・ブルースが随所で展開されています。もちろん、前作で見せたレイドバック路線も健在で、バランス的にも(CINDERELLAでいったら)『LONG COLD WINTER』と『HEARTBREAK STATION』の中間といったところでしょうか。もはや『NIGHT SONGS』(1986年)で聴かせた硬質さは見る影もありませんが、多くのリスナーがイメージする“トム・キーファー像”はしっかりキープされている。うん、これは素直にカッコいいと思います。

サウンドの変化にあわせて、トムのボーカルもジャニス・ジョプリンばりにシャウトしまくっており、往年の輝きが復調し始めている印象を受けます。一時は喉の不調であの歌唱法を断念せざるを得ない時期もあったようですが、ここまで無理なく自然な形で“トム・キーファー節”を楽しめる日が再び訪れるなんて……感無量です。

HR/HMというよりは、THE BLACK CROWESあたりに近い印象も受けますが、そのへんのサウンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入るはず。レイドバックしたAC/DCなんて表現もできなくもないかな。とにかく、一度でもCINDERELLAにハマったことがある人にはオススメの1枚です。

 


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2019年6月16日 (日)

CINDERELLA『STILL CLIMBING』(1994)

1994年11月にリリースされた、CINDERELLAの4作目にして最後のオリジナルアルバム。バンドはこのアルバム以降、活動を休止させたり再開させたりを繰り返しますが、結局新作が制作されることはなく2017年にその活動に終止符を打つことになります。

前作『HEARTBREAK STATION』(1990年)は湾岸戦争が発端となるワールドツアーの縮小、および以降の不況やHR/HMシーンの衰退なども要因となり、過去2作ほどの成功を収めることはできませんでした(それでも100万枚を超えるヒットとなりましたが)。また、音楽性的にも過去2作のハードロック色が後退し、よりブルージーでアーシーなサウンドへとシフト。その後のグランジ・ムーブメント勃発などもあり、この方向転換はうまく機能しませんでした。

1992年には映画『ウェインズ・ワールド』のサウンドトラックに新曲「Hot & Bothered」を提供。『HEARTBREAK STATION』の延長線上にある楽曲でしたが、バンドはこれを起点に4thアルバム制作へと着手し始めます。しかし、レコード会社からなかなかゴーサインが降りず、悶々とした日々が続きます。その結果、フレッド・コウリー(Dr)が脱退し、スティーヴン・パーシー(Vo/RATT)が結成したARCADEに加入。CINDERELLAはセッションドラマーとしてケニー・アロノフを迎えてスタジオすることとなりました。

聴いてもらえばわかるように、サウンド的には2ndアルバム『LONG COLD WINTER』(1988年)と前作『HEARTBREAK STATION』の中間といったところでしょうか。いや、若干『LONG COLD WINTER』でのタフでハードな色合いが強まっている気もします。それは勢いに満ちたオープニング曲「Bad Attitude Shuffle」を聴けばご理解いただけるかと。

この曲といい、続く「All Comes Down」や「Talk Is Cheap」といい、とにかく「そうそう、こういうCINDERELLAを待ってたのよ!」というハードな曲が満載。かと思えば、地声とハイトーンを駆使したバラード「Hard To Find The Words」もあるし、大音量で楽しみたいファストチューン「Freewheelin」もある。ピアノバラード「Through The Rain」やダークなブルースロック「Still Climbing」「The Road's Still Long」だってある。1作目『NIGHT SONGS』(1986年)でのメタリックな色もあれば、ブルースベースのハードロックを基盤にした『LONG COLD WINTER』の色も、レイドバックしたルーツロック路線の『HEARTBREAK STATION』色も存在する。そういった意味では、本作はCINDERELLAの集大成的作品と言えるのではないでしょうか。

時代も災いして、本作は全米178位とまったくヒットにはつながりませんでした。つい最近まで廃盤状態でしたし、配信すらされていませんでした。しかし、作品の完成度としては初期の傑作にも匹敵するバランスの1枚だと思っています。ストリーミングサービスでもようやく聴けるようになりましたので、ぜひこの機会に本作の放つ熱量に触れてみてください。

 


▼CINDERELLA『STILL CLIMBING』
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2019年3月17日 (日)

HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』(2004)

アクセル・ローズやイジー・ストラドリンが在籍していたGUNS N' ROSESの前身バンド、HOLLYWOOD ROSE。そのバンドのデモ音源を軸にしたコンピレーションアルバムが、2004年にリリースされています。『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』と身も蓋もないタイトルのこのアルバム、当然アクセルは怒り狂い訴えるわけですが、最終的にその訴えを棄却。結果、現在もこうやってストリーミングサービスで手軽に聴くことができるわけです。便利な世の中になったもんだ。

というわけで本作。そのHOLLYWOOD ROSEのメンバーだったクリス・ウェバー(G)が持ち込んだデモテープがもとになっています。クリスといえば、ガンズの1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に収録された「Anything Goes」や、次作『GN'R LIES』(1988年)収録の「Reckless Life」のクレジットにてその名前を見つけることができる知る人ぞ知る存在。小金欲しさに過去の遺産を売ったわけだ。わかりやすいぞ。

そのデモテープに収録されていたのは「Killing Time」「Anything Goes」「Rocker」「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の5曲。そう、先に挙げたガンズの2作品に収録されている2曲に加え、昨年発売の『APPETITE FOR DESTRUCTION』デラックス盤にも収められた「Shadow Of Your Love」と計3曲のガンズクラシックのオリジナルバージョンが聴くことができるわけです。そりゃファンなら絶対に手を出したくなりますよね。

デモは1984年初頭に録音されたそうで、当時のメンバーはアクセル(Vo)、イジー(G)、クリス(G)、ジョニー・クリーズ(Dr)、スティーヴ・ダロウ(B)という布陣(のはず)。なぜかスティーヴの名前はクレジットに見当たりません。ベースの音はしっかり聴こえるので、もしかしたら別のメンバーが単発で弾いている可能性もありますが、ここでは特に大きな問題はないのでスルーします。

さすがに5曲だけだと商売にならんということで本作、かなりの水増しが施されております。実はCD自体は15曲入りなのですが、その内訳は「オリジナルデモ音源」「オリジナルデモ音源のギルビー・クラーク(ex. GUNS N' ROSES)によるリミックスバージョン」「オリジナルデモ音源のフレッド・コウリー(CINDERELLA)によるリミックスバージョン」というもの。おいおい……。

まず「オリジナルデモ音源」ですが、若々しいアクセルの歌声を聴けるというだけで満足。曲にもその後の片鱗が感じられるほか、「Anything Goes」や「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」のアレンジ違いでは若干拙さも感じられたりして興味深いものがあったりします。あれですね、リフワークがスラッシュが加わってからのものとは全然違っていて、ここにはその後の豪快さがまったくないんですね。こじんまりとしているといいますか。細かく刻むリフワークはクリスによるものなんでしょうかね(イジーっぽくもあるけど)。その違いでこうも雰囲気が変わるか、と。

で、リミックスですが……うん、確かにオリジナルデモより聴きやすく整理されてるわ。ギルビーのやつが一番クオリティ上がってる気がして聴きやすい。特に「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の2曲はトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)がギターを追加しちゃってますからね(笑)。邪道すぎ!

フレッドは自身がドラマーということもあってか、ドラムサウンドが心地よくエッジが効いたミックス。バスドラのペタペタ感が軽減されて、若干メタリックさが増している気も。あと、ボーカルも前に出ていて、一方でギターが少し後ろに下がっている。このへんは完全に趣味なんでしょうね。

というわけで、3者3様のミックス違いを楽しみつつ……1回聴いたら十分なこのアルバム(笑)。それでも数年に1回は引っ張り出したくなる、そんな罪作りな1枚です。



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2018年7月14日 (土)

CINDERELLA『HEARTBREAK STATION』(1990)

1990年11月に発表されたCINDERELLA通算3作目のスタジオアルバム。トム・キーファー(Vo, G)とジョン・ジャンセン(BANG TANGO、LOVE/HATE、BRITNY FOX、FASTER PUSSYCATなど)との共同プロデュースで制作された本作は、前作『LONG COLD WINTER』(1988年)で垣間見せたレイドバック路線をより推し進めた、ルーツミュージック色の強い作風に仕上がっています。

オープニングを飾る「The More Things Change」や「Love's Got Me Doin' Time」ではブラスをフィーチャーしており、ギタープレイもHR/HMのそれとは異なるアーシーなスタイル。ボーカルさえ違えば、例えばTHE BLACK CROWES周辺のバンドと言われても不思議じゃないくらい。もはやデビュー作『NIGHT SONGS』(1986年)とは別モノになってしまった印象すらあります。

さらにアルバムでは、シングルカットされた「Shelter Me」(全米36位)や「Heartbreak Station」(全米44位)などでサザンロックやブルースロック的な側面も提示。特に「Shelter Me」ではサックスがソロを取ったり女性コーラス隊をフィーチャーすることで、完全にハードロックの枠から飛び抜けることに成功しています。「Sick For The Cure」のオープニングなんて、完全にストーンズの「Honky Tonk Women」ですものね。

また、トム・キーファーも前作のオープニング曲「Bad Seamstress Blues」で少しだけ聴かせてくれた“地声”での歌唱を、本作中でも「Heartbreak Station」や「One For Rock & Roll」「Dead Man's Road」「Electric Love」「Winds Of Change」(名曲!)といった楽曲でフィーチャー。ジャニス・ジョプリン並みに暑苦しいハイトーンが減ったことで、また作風的にもアコースティックテイストが増したことで、過去2作以上にリラックスして楽しむことができます。トムの地声、僕は好きなんですけどね。

ちょうど本作リリースと前後して、先に名前を挙げたTHE BLACK CROWESがデビューアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)で大ブレイクしたり、イギリスからはTHE QUIREBOYSが登場したり、また音楽シーン的にも『MTV UNPLUGGED』がヒットしたりと、時代がより“生音”を求める方向にシフトしていたこともあり、チャート的には全米19位、100万枚のヒットと過去2作には及ばなかったものの、それでも好意的に受け入れられた印象が強い1枚なのです。

個人的ベストは、『NIGHT SONGS』と本作の中間に位置する2ndアルバム『LONG COLD WINTER』ですが、この『HEARTBREAK STATION』も非常に好みの作品です。

あ、最後に。過去2枚では散々な扱いを受けてきたドラマーのフレッド・コウリー、本作では初めてすべてのドラムパートを担当しております。おめでとう!(これが最初で最後でしたが。苦笑)



▼CINDERELLA『HEARTBREAK STATION』
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2017年3月 3日 (金)

CINDERELLA『NIGHT SONGS』(1986)

1986年8月にリリースされた、アメリカの4人組HRバンドCINDERELLAのデビューアルバム『NIGHT SONGS』。彼らはジョン・ボン・ジョヴィ(BON JOVI)の後押しがあってメジャー契約にこぎ着けたという話もあり、同じMercury Recordsからのデビュー、BON JOVIも同タイミングに3rdアルバム『SLIPPERY WHEN WET』をリリースしたことから、のちに彼らのサポートアクトとして全米ツアーに帯同したことで人気を高めていきます。

もちろんCINDERELLAが大成功したのは、BON JOVIの力だけではありません。適度にメタリックだけどメロディは非常にキャッチーという、しっかり作り込まれた楽曲の数々がラジオ受けしたことと、毎回趣向を凝らしたミュージックビデオがMTVでヘヴィローテーションされたことも大きな要因と言えるはずです。

今作で制作されたMVは3本。1作目の「Shake Me」、2作目の「Nobody's Fool」、3作目の「Somebody Save Me」は連作となっており、バンド名にちなんだシンデレラ・ストーリーが展開されていきます。MTV全盛の80年代半ば、HR/HMがMV制作にここまでこだわったという点においては、CINDERELLAの功績は非常に大きなものがあったと言えます(と同時に、BON JOVIも「You Give Love A Bad Name」や「Livin' On A Prayer」でひとつの型を作り上げるわけです)。ちなみに、「Somebody Save Me」のMVラストにはジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラもゲスト出演していますので、こちらにも注目です。

さて、改めて楽曲についても。2ndアルバム『LONG COLD WINTER』(1988年)を機にバンドはブルース志向を強めていきますが、このデビュー作にはまだそのカラーは微量。「Hell On Wheels」にはスライドギターが登場しますが、それも大々的といった印象はなく、全体的には当時活動の拠点だったLAのバンドにも通ずるメタリックなサウンド&アレンジが軸となっています。オープニングの「Night Songs」なんて、まるでAC/DCのアルバム『BACK IN BLACK』における「Hell's Bells」みたいですし。また、シングルヒットを記録した「Nobody's Fool」(全米13位)はその曲調とフロントマンのトム・キーファー(Vo, G)のルックスや歌い方から、AEROSMITH「Dream On」と比較する声もあったほど。

そういえばこの当時、CINDRELLAはPOISONとともに『LIGHTNING STRIKES』(1986年)を全米リリースしたLOUDNESSのUSツアーでオープニングを務めていたとのこと。のちに二井原実さんと山下昌良さんにインタビューした際、「どっちも全米チャートのトップ3に入ってたよね。なのに僕らは100位内から1週間ぐらいで消えてたから」(山下)、「ベスト10に入ってるバンドを従えてツアーを回るんやけど、あれは変な話やったな」(二井原)、「あの頃、CINDERELLAのベース(エリック・ブリッティンガム)はまだ全然お金を持ってなくて、毎晩俺がビールを奢ってたな。で、『お前売れてんねんから、次会ったら奢れよ?』って言ったけど、まだ奢ってもらってないわ(笑)。まあ曲が覚えやすかったもんね、CINDERELLAもPOISONも」(山下)なんて話題が挙がったのをよく覚えています。

山下さんがおっしゃるとおり、『NIGHT SONGS』は全米3位まで上昇。セールスも最終的に300万枚を超える大出世作となりました。「CINDERELLAといえば?」と質問されたときに、いまだに『NIGHT SONGS』派と『LONG COLD WINTER』派に分かれることがありますが、僕はどちらも好き。ぶっちゃけその日の気分で変わるし、なんなら3rアルバム『HEARTBREAK STATION』を選ぶ日すらあるくらい(苦笑)。その程度には大好きです、このバンド。



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2015年4月29日 (水)

CINDERELLA『LONG COLD WINTER』(1988)

HALESTORM's LZZY HALE And TOM KEIFER Perform CINDERELLA's 'Nobody's Fool' In Nashville (BLABBERMOUTH)

この記事を読んで、久しぶりにトム・キーファーのソロアルバム「The Way Life Goes」を引っ張り出して聴いていたんですが、もう発売から丸2年経つんですね。で、流れ的には漏れなくCinderellaへと向かうわけですが……iTunesにも、MP3ぶっ込んでるHDにもCINDERELLAのアルバムが1枚しか入ってなくて。しかも先のニュースでカバーされた「Nobody's Fool」が収められた1stではなく、2nd『LONG COLD WINTER』という。

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2004年12月 3日 (金)

CINDERELLA『ONCE UPON A...』(1997)

というコーナーが「RADIO TMQ」にはあるんですが、これは「洋楽初心者に向けて、初めて聴くアーティストはとりあえずまぁベスト盤から手軽に入門して、活動歴の長いアーティストだとベスト盤が複数出てるので、どれから聴けばいいのかの手解きをしつつ、そこから続いてどのオリジナルアルバムに手を出せばいいか等のアドバイスをする、お節介な」企画でして。最初の頃は月イチ企画でアルファベット順にアーティストを紹介してたんですが(「A」はAEROSMITH、「B」はボブ・マーリー、「C」はCHEAP TRICK、みたいな)、10月からは番組が90分化したことで、毎回やれるようになったんですね。

そこで、10月からはベスト盤の中から1曲と、続いてそのアーティストのその後(近況や、解散してるバンドの場合は解散後の各メンバーの動向)を紹介しながら最近の楽曲を流す等いろいろ工夫を加えて、どうにか「RADIO TMQ」の目玉コーナーのひとつにならないか?と試行錯誤を繰り返してる最中だったりします。

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