CLAM ABUSE『STOP THINKING』(1999)
さてさて、一体この作品をどう取り上げようかと悩み、早2年‥‥THE WiLDHEARTSのジンジャー作品として、どのように評価すればいいのか。ファンとして語るべきか、それとも「1枚の変態ポップアルバム」として評価すべきか、非常に悩むところだ。
というわけで、このCLAM ABUSEというユニットは1999年‥‥THE WiLDHEARTSが当時、たった1度だけの再結成を8月に行った後にリリースされた、謎の作品「STOP THINKING」1枚を残し、ライヴを何度か行った後に自然消滅している。最初っから1枚こっきりの限定ユニットだったのか、それとも2人のメンバー、クラム・サヴェージとクリント・アビューズ‥‥何のことはない、ジンジャーと現ANTI-PRODUCTSのアレックス・ケインのことなのだが(笑)‥‥がそれぞれの活動に忙しくなったから続かなくなったのか‥‥
一応、このアルバムの音楽性を語る時にジンジャーは「アコースティック・アルバム」と表現している‥‥え~っとですねぇ‥‥どこがですか?(苦笑)思わず「ブッ壊れた」って枕詞を付けたくなるくらい、壊れたポップソングが詰め込まれているのだ。基本的には打ち込みバックにオモチャみたいなシンセを被せたり、ギターノイズが乗ったり、たまにアコギが聞こえたり(笑)する中、時にヒステリックに、時にオペラチックに、時に愛を奏でるように(笑)唄うジンジャーとアレックス。どちらも天才肌。天才ふたりが揃えば‥‥歯止めが効かなくなる(苦笑)。そう、誰か、誰か止めなかったのかよ!?(爆)どこからがマジで、どこからが冗談なのかが非常に判りにくい、きっと天才にしか理解でき得ないであろう名作に違いと思うのだが‥‥残念なことに(苦笑)俺にはその良さを半分も理解できずにいる。勿論、悪いわけがない。如何にもジンジャーが書きそうなメロディーもちらほらと現れる。名曲"Be My Baby"をパクッた!?ような".Com Together"や、SILVER GINGER 5名義でやっても何ら違和感のない"She's So Taboo"みたいなポップソングもあるし、女性がリードボーカルを取る曲やマジなオペラまで登場する(苦笑)。
このおフザケ感覚というのは、イギリス人特有のブラックユーモア‥‥「モンティパイソン」辺りに共通するモノを感じる。絶対にアメリカ人には理解できないであろう感覚。いや、一部のアメリカ人アーティスト(MOTLEY CRUEのニッキー・シックスとかデヴィン・タウンゼントとか‥‥ってデヴィンは厳密にはカナダ人だっけ?)はきっと羨ましがるに違いない。そんなギャグセンス‥‥ってこれってやっぱりセンスある方なのかな?(苦笑)とにかく、これまでのジンジャーなら躊躇したであろうことを全部ここでやってしまった感があるのだが‥‥それを引き出したのが、もう一方の天才アレックス・ケインだった。その後もアレックスとジンジャーは再結成WiLDHEARTSとANTI-PRODUCTSとで2001年夏にイギリス~日本をツアーしてる程の仲だ。アレックスはワイハー時代のジンジャーをそれ程評価していなかったようだが、このツアーで「WiLDHEARTSの」ジンジャーを何度も目撃して、その考えを改めたそうだ。天才に見初められた天才。ジンジャーがデヴィン・タウンゼントに憧れたあの一件をふと思い出すが‥‥あのコラボレーションがマジな路線だったのと一転して、ここでは正反対な路線を繰り広げている。けど、決してそのふたつが全く繋がらないわけではない。双方に散りばめられた「溢れんばかりのポップ色」は間違いなくジンジャーにしか作り得ないものだ。
ワイハーのジンジャー、SG5のジンジャーを期待してこのアルバムに手を出すと、きっと聴き終えた時にCDを床に叩きつけたくなるか、盤をへし折りたくなるに違いない(笑)。それくらい聴き手を舐めきった、異色「壊れポップ」アルバムなのだから。
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