VOLBEAT『REWIND, REPLAY, REBOUND』(2019)
2019年8月初頭に発売されたVOLBEATの7thアルバム。日本では数週遅れて、同年8月末に3曲のボーナストラックを追加した形でリリースされています。
本国デンマークで1位、アメリカでも最高4位という好成績を残した前作『SEAL THE DEAL & LET'S BOOGIE』(2016年)からほぼ3年ぶりの新作に当たる今作は、デビューから一貫して制作に関わってきたヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZY、PRETTY MAIDS、AMARANTHEなど)がプロデュースを担当。それだけで、従来の彼ららしい“メタル+パンク+ロカビリー”なサウンドが期待できそうですが、今作ではバンドとして新境地を迎えています。
従来のロカビリー・メタル要素はそのまま維持されているものの、各曲ともスケール感が急激に大きくなっており、それに伴いメロディのキャッチーさも過去イチで親しみやすいものに進化しています。
それこそ、オープニングを飾る「Last Day Under The Sun」の“真っ当なロック”然としたスタイルに、従来の彼らを知る者なら誰もが驚くはず。続く「Pelvis On Fire」もその系統に含まれますし、特にアルバム序盤はそういう新境地が続くことから、人によっては拒絶反応を起こすかもれませんね。
とはいえ、そのポップさの中にはメタルの枠を飛び越えた普遍性が感じられ、全体的にルーツロック的な色合いがより強くなっている。いえ、もっと言ってしまえばゴスペルやソウルなど、ロック以前のルーツミュージックからの影響すら感じさせるものも多く、そういった挑戦はバンドが新たな周回に突入したことをうかがわせます。
とはいえ、USストーナーロックの雄CLUTCHのニール・ファーロン(Vo)をゲストに迎えつつ、ピアノやサックスをフィーチャーしたシンプルなロックンロール「Die To Live」や、EXODUSやSLAYERでおなじみのゲイリー・ホルト(G)がダークでメタリックなソロを披露する「Cheapside Sloggers」など、ヘヴィロックファンが唸りそうな共演も収録された本作。一見さんのみならず従来のリスナーもしっかり囲い込もうとする姿勢、さすがです。そりゃあ嫌いになれないわな。
もはやメタルの枠では語りきれない大きな存在となったVOLBEAT。だからこそ、本作はこれまで彼らに触れてこなかったリスナーにこそ届いてほしい、新たな入門編的1枚になるはずです。
日本には2013年8月の『SUMMER SONIC』、翌2014年2月の単独公演で二度来日している彼らですが、今のところそれっきりなんですよね。本作で久しぶりに日本盤もリリースされたことですし、ぜひ本作を携えた再来日を来春あたりに期待したいところです。お待ちしております。
▼VOLBEAT『REWIND, REPLAY, REBOUND』
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