COHEED AND CAMBRIA『VAXIS II: A WINDOW OF THE WAKING MIND』(2022)
2022年6月24日にリリースされたCOHEED AND CAMBRIAの10thアルバム。日本盤未発売。
前作『VAXIS I: THE UNHEAVENLY CREATURES』(2018年)から約3年8ヶ月ぶりの新作。そのタイトルからもおわかりのように、バンドがデビュー時から描き続けてきた壮大な物語“The Amory Wars”の新章が描かれた5部作の第2章にあたる1枚になります。
前作は約80分にもわたる超大作で、その内容をしっかり吟味するまでにかなりの時間を要しましたが(しかも1曲1曲も比較的長かったですし)、今作は全13曲で53分と彼らにしては比較的コンパクト。かつ、どの曲も3分前後と聴きやすい長さで、キャッチーさに満ち溢れた聴きやすい内容に仕上がっています。
これ、オープニングの序章「The Embers Of Fire」から「Beautiful Losers」の流れを聴くとコンセプトアルバムっぽいなと感じるものの、その後のシングル級のポップ路線ナンバーが立て続けに配置された構成を前に、そんな事実を一瞬忘れてしまうんですよね。それくらい曲単位でもクオリティが高い内容で、まるで80年代のRUSHがラジオ・フレンドリーな路線にシフトしたときと同じ錯覚に陥ります。
もちろん「Shoulders」のような若干ヘヴィ寄りの楽曲もあるにはあるものの、エレクトロ風味の4つ打ちロック「A Disappearing Act」や、リズムに遊び心が感じられる「Love Murder One」、穏やかなポップロック「Blood」など、変化球っぽい楽曲のほうが印象に残る。とにかく、序盤から後半にかけてのコンパクトな楽曲の並びは非常に聴きやすく、プログメタルとか変に意識せずに楽しめるはず。
その一方で、終盤には「Ladders Of Supremacy」「Rise, Naianasha (Cut The Cord)」「Window Of The Waking Mind」という王道のプログメタル路線ナンバーもしっかり用意。このラスト3曲の並びでバンド本来の姿を見せるというバランス感も最適です。ぶっちゃけ、初期〜中期の彼らを期待すると若干の肩透かしを喰らうかもしれませんが、前作に魅力を感じたリスナーなら真っ直ぐ受け入れられる内容ではないでしょうか。
ヘヴィメタルとかプログメタルという狭い枠で括るには、もはやサウンド的に拡散方向にある現在の彼ら。しっかり時代に呼応しながら進化しているその姿は素晴らしいものであり、個人的には非常に好印象を受けました。正直、ここ数作で一番好きな作品かもしれません。
この5部作、残り3章がどれくらいの期間で完結するのかわかりませんが、せっかくなら対訳もしっかり付いた日本盤を用意していただき、彼らの真の魅力に浸りたいものです(ワーナーさん、今からでも本作の日本盤リリース遅くないですよ!)。
▼COHEED AND CAMBRIA『VAXIS II: A WINDOW OF THE WAKING MIND』
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