カテゴリー「Converge」の18件の記事

2022年2月16日 (水)

CONVERGE『JANE DOE』(2001)

2001年9月4日にリリースされたCONVERGEの4thアルバム。日本盤は同年12月28日発売。

前作『WHEN FOREVER COMES CRASHING』(1998年)を経て、ジェイコブ・バノン(Vo)、カート・バルー(G)、アーロン・ダルベック(G)にネイト・ニュートン(B)、ベン・コラー(Dr)が加わり、現在まで続く布陣の4人がここで揃うことになるCONVERGE。本作は5人編成では最後のアルバムであると同時に、Equal Vision Recordsから最後の作品にもなりました。

前作からカートがエンジリアリング、ジェイコブがミキシングにまで携わるようになりましたが、今作もその布陣での制作が継続され、かつ関わる密度がより高くなったことからか、そのサウンド/音質もより生に近いダイナミックなものが収められることに。このクオリティの向上に伴い、バンドアンサンブルもより緻密で計算され尽くされたものへと進化。現在まで続くCONVERGEの歴史を語る上で、真の意味での原点と言える歴史的名盤を完成させることとなったわけです。なお、レコーディングにはメンバー5人のほか、CAVE INのケイラブ・スコフィールド(B, G, Vo)やTHE HOPE CONSPIRACYのケヴィン・ベイカー(Vo)が「The Broken Vow」のコーラスに参加しています。

アルバム冒頭の「Concubine」や「Phoenix In Flames」など1分前後のショートチューンから、ラストを盛大に飾る11分強の「Jane Doe」まで1曲の尺は幅広く感じられるものの、その大半が2〜3分台のコンパクトなもの。かつ曲間がほとんどないシームレスな状態であることから、ショートチューン数曲からなる組曲のようにも映り、息をつく間をまったく与えてくれません。無呼吸で全力疾走を始めたかと思うと、徐々にそのテンポを落としていき、ミディアム/スロー&カオティックでヘヴィな音像が自分の周りに壁となって立ちはだかり、気づくと全12曲/45分があっという間に終了している。聴いているだけで思考が停止する、いや、考えることを放棄させられる強烈な1枚なのです。

ジェイコブのボーカルは歌というよりも、ほぼ叫び(しかも何を叫んでいるか聴き取れない)。メタルバンド的な低音グロウルとは異なるハードコア特有の高音スクリームは、リフでぐいぐい引っ張るタイプではない、変幻自在でプログレッシヴな思考を持つアンサンブルとの相性も抜群で、ヘヴィメタルからはあまり感じられない狂気性が伝わってきます。ですが、ある種前衛的にすら思えてくる音の組み合わせも、聴けば聴くほどにどこかドラマチックにすら思えてくるから不思議。随所から溢れてくるエモさは、ほかの何にも例えようがないものであり、この感情はCONVERGE以外からは感じとることができないもののような気がします(これに近い感情は、ほかのカオティックハードコア、マスコアバンドからも体感することができるのですが、ちょっと別モノ感がありますしね)。

攻撃性やエモさ、カオティックさというさまざまな側面に特化した作品は、以降も数々制作されていますが、すべてのバランスが均等に揃ったという点ではこのアルバムがベストではないでしょうか。リスナーによっては「以降のアルバムは『JANE DOE』を超えられていない」と感じているかもしれませんが、ここを起点にアルバムごとに実験を重ねていると受け取れば、「すべて別の視点で制作された別モノであり、『JANE DOE』はその始まりにすぎない」と理解することができるはずです。じゃなきゃ、ここから20年後に『BLOODMOON: I』(2021年)のような深みのあるアルバムにまで到達できませんって。

 


▼CONVERGE『JANE DOE』
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2022年1月10日 (月)

祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さんおめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画も、今年で8回目。しかし、この春から成年年齢が18歳になることから、今回で最後かなと思っております(さすがに18年前って区切り悪いですしね)。この企画は「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に貴重な機会でもあり、同時に「どれを20枚に含めるか?」というセレクトにおいても非常に頭を悩ます良いタイミングとなっていたので、成人式抜きで続けてもいいんですけど……まあ、そのへんは1年後に考えます(笑)。

改めて趣旨説明を。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2001年4月〜2002年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちら、2019年度の新成人編はこちら、2020年度の新成人編はこちらです)

以下、サブスクを通して名盤20選をお楽しみください。

 

ANDREW W.K.『I GET WET』(2001年11月発売)(Spotify)(レビュー

 

ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(日本:2001年4月発売、海外:2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

ASH『FREE ALL ANGELS』(2001年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

BASEMENT JAXX『ROOTY』(2001年6月発売)(Spotify

 

BJORK『VESPERTINE』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE CHEMICAL BROTHERS『COME WITH US』(2002年1月発売)(Spotify)(レビュー

 

CONVERGE『JANE DOE』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

INCUBUS『MORNING VIEW』(2001年10月発売)(Spotify

 

JIMMY EAT WORLD『BLEED AMERICAN』(2001年7月発売)(Spotify

 

KYLIE MINOGUE『FEVER』(2001年10月発売)(Spotify

 

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

RYAN ADAMS『GOLD』(2001年9月発売)(Spotify

 

SLIPKNOT『IOWA』(2001年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE STROKES『IS THIS IT』(2001年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『ALL KILLER NO FILLER』(2001年5月発売)(Spotify

 

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

TOOL『LATERALUS』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

WEEZER『WEEZER (GREEN ALBUM)』(2001年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

残念ながらセレクトから漏れた作品も多く。以下に主だった作品をピックアップしておきました。

AIR『10000 HZ LEGEND』
ALICIA KEYS『SONGS IN A MINOR』
...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD『SOURCE TAGS & CODES』
AUTECHRE『CONFIELD』
THE BLACK CROWES『LIONS』
BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(レビュー
BLIND GUARDIAN『A NIGHT AT THE OPERA』
BLINK-182『TAKE OFF YOUR PANTS AND JACKET』
BRITNEY SPEARS『BRITNEY』
THE CHARLATANS『WONDERLAND』
!!!『!!!』
THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(レビュー
DEPECHE MODE『EXCITER』(レビュー
DREAM THEATER『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』
EMPEROR『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE & DEMISE』
FANTOMAS『THE DIRECTOR'S CUT』
FEAR FACTORY『DIGIMORTAL』
FEEDER『ECHO PACK』
GARBAGE『BEAUTIFULGARBAGE』
HATEBREED『PERSEVERANCE』
HOOBASTANK『HOOBASTANK』
THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』(レビュー
JAMIROQUAI『A FUNK ODYSSEY』
JOEY RAMONE『DON'T WORRY ABOUT ME』
KREATOR『VIOLENT REVOLUTION』
LENNY KRAVITZ『LENNY』
MACHINE HEAD『SUPERCHARGER』
MEGADETH『THE WORLD NEEDS A HERO』(レビュー
MERCURY REV『ALL IS DREAM』
MICHAEL JACKSON『INVINCBLE』
MICK JAGGER『GODDESS IN THE DOORWAY』(レビュー
MISSY ELLIOTT『MISS E... SO ADDICTIVE』
MOGWAI『ROCK ACTION』(レビュー
MOUSE ON MARS『IDIOLOGY』
MR. BIG『ACTUAL SIZE』(レビュー
N*E*R*D『IN SEARCH OF...』
NEW ORDER『GET READY』
NICKELBACK『SILVER SIDE UP』
OCEAN COLOUR SCENE『MECHANICAL WONDER』
OZZY OSBOURNE『DOWN TO EARTH』(レビュー
PUDDLE OF MUDD『COME CLEAN』
R.E.M.『REVEAL』
RAMMSTEIN『MUTTER』
ROB ZOMBIE『THE SINISTER URGE』
SLAYER『GOD HATES US ALL』(レビュー
SOILWORK『NATURAL BORN CHAOS』
SPIRITUALIZED『LET IT COME DOWN』
STAIND『BREAK THE CYCLE』
STATIC-X『MACHINE』
STEREOPHONICS『JUST ENOUGH EDUCATION TO PERFORM』
STONE TEMPLE PILOTS『SHANGRI-LA DEE DA』
SUGAR RAY『SUGAR RAY』
SUPER FURRY ANIMALS『RINGS AROUND THE WORLD』
TRAVIS『THE INVISIBLE BAND』
THE WHITE STRIPES『WHITE BLOOD CELLS』
YEAH YEAH YEAHS『YEAH YEAH YEAHS』

……多い(笑)。セレクトしまくったらこうなった。というか、2001〜2002年ってすでにこのサイトの前身「とみぃの宮殿」のアクセスがそこそこ増え始めた時期で(理由:ハロプロ)、更新意欲もかなり強くて新譜にも積極的に触れていたタイミングなんですよね。当然あの頃はサブスクなんてなかったので(海外にはNapsterがありましたけどね)、CDを闇雲に購入しまくっていたのですが(しかも、当時はライターになる前で、東京住まいではなかったこともあり、月に数度、週末にCD漁りったりクラブ遊びしたりライブ行ったりするために上京していたのでした)、今回選んだ20枚は完全に今の自分の趣味と、客観的に見て名盤として通用する作品を意識しています。

2001年というと、9月11日のアメリカ同時多発テロが忘れられない出来事でしたよね。当時は追悼イベントもいくつか開催されましたが、こうした事実が作品に反映されたのは2002年以降の作品だったので、今回ピックアップした作品の中には911について歌った曲は含まれていないんじゃないかな。

あと、ジョーイ・ラモーン(4月15日)やジョン・リー・フッカー(6月21日)、ジョージ・ハリスン(11月29日)が亡くなったのも2001年のことでした。

ちなみに、当時の日本の音楽シーンには以下のような出来事がありました。

■三波春夫、死去(2001年4月)
■中澤裕子がモーニング娘。を卒業(2001年4月)
■Coccoが音楽活動休止(2001年4月)
■野猿、撤収(2001年5月)
■三木道三、「Lifetime Respect」でオリコン1位獲得(2001年7月)
■サザンオールスターズから大森隆志(G)が脱退(2001年8月)
■EE JUMPのユウキ、活動自粛(2001年8月)
■モーニング娘。に5期生加入(2001年8月)
■SPEED、阪神淡路大震災復興イベントで一夜限りの再結成(2001年10月)
■access、7年ぶりに活動再開(2001年12月)
■第43回日本レコード大賞、浜崎あゆみ「Dearest」が大賞受賞。最優秀新人賞はw-inds.が受賞(2001年12月)
■SIAM SHADE解散(2002年3月)
■エイベックスがコピーコントロールCD(CCCD)発売(2002年3月)
■DREAMS COME TRUEから西川隆宏が脱退(2002年3月)

なお、2001年の年間アルバムランキング1位は宇多田ヒカル『Distance』、2位が浜崎あゆみ『A BEST』という時代。懐かしいですね……。

最後に、今回選出した20作品をまとめたプレイリストも用意しましたので、掲載しておきます。

 

2021年12月31日 (金)

2021年総括:HR/HM、ラウド編

2017年から2020年まで、「リアルサウンド」にて掲載してきたメタル/ラウド系年間ベストアルバム企画。2021年は同サイトにて同企画を実施されないので、場所をこちらに移して行うことにしました。ただ、無理な順位付けはせず、印象的なアルバム/EP 20枚をアルファベット順に紹介していくことにします。

 

ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(Apple Music)(レビュー

 

THE ARMED『ULTRAPOP』(Apple Music)(レビュー

 

CARCASS『TORN ARTERIES』(Apple Music)(レビュー

 

CONVERGE『BLOODMOON: I』(Apple Music)(レビュー

 

DEAFHEAVEN『INFINITE GRANITE』(Apple Music)(レビュー

 

DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(Apple Music)(レビュー

 

EVERY TIME I DIE『RADICAL』(Apple Music)(レビュー

 

EXODUS『PERSONA NON GRATA』(Apple Music)(レビュー

 

GATECREEPER『AN UNEXPECTED REALITY』(Apple Music)(レビュー

 

GOJIRA『FORTITUDE』(Apple Music)(レビュー

 

JINJER『WALLFLOWERS』(Apple Music)(レビュー

 

KHEMMIS『DECEIVER』(Apple Music)(レビュー

 

LEPROUS『APHELION』(Apple Music)(レビュー

 

MASTODON『HUSHED AND GRIM』(Apple Music)(レビュー

 

NEMOPHILA『REVIVE』(Apple Music)(レビュー

 

SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(Apple Music)(レビュー

 

SPIRITBOX『ETERNAL BLUE』(Apple Music)(レビュー

 

TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』(Apple Music)(レビュー

 

TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(Apple Music)(レビュー

 

TURNSTILE『GLOW ON』(Apple Music)(レビュー

 

年明け発売の某雑誌には、この20枚の中から10枚をセレクトして順位を付けて掲載予定です。

2020年初頭から流行拡大しだした新型コロナウイルスは、2021年も引き続き大きな影響を及ぼし続け、ロックダウンによるフィジカル(CD、アナログなど)製造遅延およびそれに伴うリリース順延、さらにはツアーやフェスの翌年以降への順延などが重なります。当然、ここ日本への海外メタル/ラウド勢の来日公演も2年近く実現しておらず(一部、小規模のライブハウス公演は行われたようですが、大規模なジャパンツアーやメジャーアーティストの来日公演に関しては皆無)。この年末にKING CRIMSONのジャパンツアーが行われたのは、奇跡に近いものがありました。

しかし、コロナが及ぼした影響は決して悪いことだけではありません。インターネットを使ったリモート作業が以前よりもやりやすい環境になったこともあり、バンドメンバーがバラバラな場所に住んでいても制作自体は行えるようになり、結果として思いがけずに新作が届けられるなんていうサプライズも多々ありました。今回挙げた20枚の中にも、TRIVIUMのように前作から2年経たずしてニューアルバムが到着するというケースも少なくありません。

日本では夏頃と比べて、若干の落ち着きを見せている昨今ですが、海外ではまだまだ予断を許さない状況。イギリスなどの様子に恐怖を覚える一方で、アメリカでは大規模なライブ/ツアーも再開されている。国によって対策や対応は異なるものの、2020年から続くこの生活はもう少し続くことになりそうです。おそらく2022年も国内での大規模野外フェス開催(特に海外アーティストを多数招聘して実施するケース)は現実的ではないのかもしれません。

僕自身、すべてが元通りに戻るとは思っておらず、むしろ少しずつ元の生活に近づけつつ、新たなスタンダードを確立・浸透させなければ、この文化はどんどん先細りしていくんじゃないかと感じています。送り手も受け手も、この新たなスタンダードを前向きに受け取りつつ、過去の日常生活と並列させていくことでこの文化を維持し、さらに成長・進化させていくはず……僕自身はそう信じています。

さて、明日はジャンル分け隔てなく総括した1年のまとめ記事を公開する予定です。この記事と併せてお楽しみいただけると幸いです。

 

2021年12月 5日 (日)

CONVERGE『BLOODMOON: I』(2021)

2021年11月19日にリリースされたCONVERGEの10thアルバム。

前作『THE DUSK IN US』(2017年)から4年ぶりのオリジナルアルバムは、チェルシー・ウルフと彼女のバンドメンバーでありソングライティングパートナーのベン・チザム、そしてCAVE INのステファン・ブロズキー(Vo, G)をコラボレーターに迎えた異色作。2019年末から制作がスタートしたものの、その後のパンデミックによるロックダウンを受け、一部リモートにて制作が進められたとのことです。

アルバム冒頭を飾るヘヴィな抒情的ナンバー「Blood Moon」が本作を象徴する1曲だと思うのですが、いかがでしょう。スピードや瞬発力を重視したカミソリの刃のような殺傷力を重視するのではなく、重さや陰鬱さを強調したハンマーでぶん殴るような破壊力にシフトすることで、油断した瞬間に叩き込まれる一撃の攻撃力がハンパない。かつ、その一撃を喰らうまで/食らったあとの余韻作りも非常に考えられており、死が迫る中で目の前に陽炎のように浮かぶ走馬灯を思わせる世界観が展開されている(自分で書いていてちょっと意味がわかりませんが、でもこれ以外に表現のしようがないのです)。

「Viscera Of Men」などのようにスピード感の強い曲もあるにはあるけど、曲全体をその勢いで通すのではなく、途中から重苦しくドゥーミーなスタイルへとシフトしていく。また、アコースティック色を強めた「Coil」のようなスタイルは、前作『THE DUSK IN US』でも試みた方向性のひとつでもあり、あの時点でのトライが次作で(コラボレーションという形を取りながら)開花しているのも興味深いところ。個人的にはこのスタイルへのシフト、大歓迎です。

随所でチェルシー・ウルフが加わった強み、ステファンが参加した強みも感じられるものの、全体を通して思うのは「やっぱり、どこからどう聴いてもCONVERGE」だということ。もちろん、過去のアルバムとの違いを至るところに見つけられ、聴いていて驚きの連発なのですが、1枚聴き終えて思うのはバンドとしての個性が確立された結果、軸にある“らしさ”はまったくブレることがない。10作目にしてこういう挑戦を試みること自体、非常に勇気のいることだと思うのですが、このバンドに関しては勇気とかプライドとかつまらないことにこだわることなく、常に革新的なことに挑み続けたい。それだけのことなのかもしれません。

数あるカードの中からひとつを選んで、そこに特化させた作品を気心知れた外部の友人たちと作り上げる。その結果、新鮮味を強めつつも軸足はまったくブレない自分たちらしいアルバムを完成させた。気づけば傑作『JANE DOE』(2001年)から20年、そりゃCONVERGEも同じ場所にとどまってはいられないわけです。

CONVERGEやCAVE INのファンはもちろんのこと、個人的にはチェルシー・ウルフのリスナーにこそ届いてほしい1枚だと感じています。いやあ、すごいアルバムを完成させたもんだ。

 


▼CONVERGE『BLOODMOON: I』
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2021年4月24日 (土)

THE ARMED『ULTRAPOP』(2021)

2021年4月16日にリリースされたTHE ARMEDの4thアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

THE ARMEDは2009年から活動をスタートさせた、デトロイト出身の実験的ハードコア/メタルコア/マスコア・プロジェクト。メンバーの名前など一切明かされておらず、構成員も流動的とのことで、デビュー作からCONVERGEのカート・バルー(G)がエンジニアとして全面的に携わっていたり、また過去の作品では同じくCONVERGEのベン・コラー(Dr)やSUMACのニック・ヤキシン(Dr)、元THE DILLINGER ESCAPE PLANのクリス・ペニー(Dr)といったエクストリーム・シーンで名の知れたドラマーたちが参加するなど、その界隈では注目の存在でした。

とはいっても、僕自身このアルバムで初めて彼らに触れたわけでして。そもそもTHE ARMEDというバンドの存在を知らないわけですから、このアートワークにアルバムタイトルで、最初は「イマドキのEDM寄りのR&B」アルバムかと思い込んでいたわけです(笑)。ところが、このアートワークを目にする場所が『Kerrang!』をはじめとする、海外のメタル/エクストリーム・ミュージック専門サイトばかり。そりゃ気になりますよね。

これまでデジタルリリース中心だったとのことで、CDでのフィジカルリリースは本作が初めて(アナログ盤の発売は過去もあり)。日本リリースも本作が初めてとのことで、改めて日本盤にて購入したわけですが……ある意味『ULTRAPOP』というタイトルに相応しい内容だな、こりゃ最高だ……と思ったわけです。そうそう、自分は今、こういう音を求めていたんだよ、待っていたんだよ……と。

アルバム内のクレジットを目にする限りでは、カート・バルーがエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされており、レコーディングにはカートやベンのCONVERGE組のほか、マーク・ラネガン、トロイ・ヴァン・リーウウェン(QUEENS OF THE STONE AGE)、ユライアン・ハックニー(ROUGH FRANCIS)、エヴァ・スペンス(ROLO TOMASSI)などが連ねておりますが、この際そういった事実は置いておいて。いやはや、とにかく楽曲やサウンド、アレンジなどすべてがカッコいいんです。

感覚的には、昨年のCODE ORANGEの新作『UNDERNEATH』(2020年)に触れたときと似たものがあるんですが、こちらはメタリックさが若干薄く、よりハードコア色が強い印象を受けました。そこに現代的なエレクトロニックな味付けが施されることで、耳や脳に刺激的なサウンドへと昇華。こう書くと、アバンギャルドな作品なのかなと思いきや、随所にキャッチーなメロディやポップな要素も見え隠れし、それが非常に気持ちよく響く。突き刺すような攻撃性と、聴き手を優しく包み込むポップさが融合することで、文字通り『ULTRAPOP』な作品が完成するわけです。このとぼけたアートワークからは想像できないような、ビビッドな内容はまさに2021年という時代を象徴する1枚と言えるでしょう。

「All Futures」のMVではメンバーが姿を現しライブパフォーマンスを披露していますが、それすらも本当に彼らなのかわかりません。アートワークやタイトルと内容との乖離/対比含め、どこまでが狙いでどこまでが素なのか。そういう匿名性も、2010年代以降ならではだなと思います。純粋なHR/HMとは異なりますが、エクストリーム・ミュージックという大きな枠で括れば間違いなく今年のベストアルバム候補だと、断言させてください。

 


▼THE ARMED『ULTRAPOP』
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2020年12月14日 (月)

GREG PUCIATO『CHILD SOLDIER: CREATOR OF GOD』(2020)

2020年10月1日にリリースされたグレッグ・プチアートの1stソロアルバム。日本盤未発売。

THE DILLINGER ESCAPE PLANのフロントマンで、現在はTHE BLACK QUEENやKILLER BE KILLEDの一員としても活動するグレッグが、ドラム以外の楽器をすべて自身で演奏した、文字通りの“ソロ”アルバム。当初はTHE BLACK QUEENの3rdアルバム用に新曲を作り始めたところ、バンドのカラーに合わないと判断。さらにはKILLER BE KILLEDのテイストとも異なることから、ソロEPとして発表しようと計画。ところが、これを機に創作意欲がさらに増していき、過去THE DILLINGER ESCAPE PLANで制作した断片まで引っ張り出して、1枚のアルバムとしてまとめてしまったのです。

ドラマーにはPOISON THE WELLのメンバーで初期のTHE BLACK QUEENに携わった経験を持つクリス・ホーンブルック、過去THE DILLINGER ESCAPE PLANのメンバーでもあったクリス・ペニー、そしてCONVERGEの一員でKILLER BE KILLEDでの盟友ベン・コラーという馴染みの3人が参加。プロデューサーにはLAMB OF GODからVAMPIRE WEEKEND、マドンナまで幅広く手がけるニック・ロウが携わり、グレッグの多彩さに満ちた音楽性を見事にひとつの作品として表現しております。

オープニングトラック「Heaven Of Stone」の内省的なフォーキーさに、いきなり度肝を抜かれる本作。そうか、ソロではそういう方向性なのか……と思いきや、続く本作のタイトルトラック「Creator Of God」ではエレクトロ/インダストリアルサウンドとタイトなリズムが重なる唯一無二の世界観が飛び込んできて、さらに3曲目「Fire For Water」ではTHE DILLINGER ESCAPE PLAN時代を思わせるエクストリームメタルが展開される。ああ、そうか。ソロアルバムなんだもん、ひとつのジャンルに固執しなくてもいいんだよな。これが本作の楽曲をTHE BLACK QUEENやKILLER BE KILLEDで使用しなかった理由なわけですもんね。

とにかく、グレッグというアーティストのいろいろな才能が凝縮された1枚で、統一感はそこまで強いものではないのですが、不思議と破綻はしていない。全体的にエクスペリメンタルメタルの色は強いものの、中には「Down When I'm Not」のようなニューウェイヴチックなオルタナティヴロックがあったり、「Throught The Walls」にはR&Bの香りも感じられるし、「A Pair Of Questions」からは80年代エレポップからの影響も伝わってくる。さらに「Evacuation」なんてNINE INCH NAILS以降のインダストリアルメタルそのものですし、最初から最後までまったく楽しめるんですよ、これが。

当初は別名義でのプロジェクトとして発表しようとした本作ですが、友人であるALICE IN CHAINSのジェリー・カントレル(Vo, G)の助言によりソロアルバムとして発表されたとのこと。アルバム収録曲のリークにより発売日が3週間前倒しになるなど災難もありましたが、思ったより話題になっていないのがちょっと寂しいなど。聴き手を選ぶ内容かもしれませんが、ひとつでも引っかかるポイントがあれば生涯楽しめる1枚ではないでしょうか。

 


▼GREG PUCIATO『CHILD SOLDIER: CREATOR OF GOD』
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2020年11月28日 (土)

KILLER BE KILLED『RELUCTANT HERO』(2020)

2020年11月20日にリリースされたKILLER BE KILLEDの2ndアルバム。日本盤未発売(あれ、予定なかったでしたっけ?)。

マックス・カヴァレラ(Vo, G/SOULFLYCAVALERA CONSPIRACYNAILBOMB)、グレッグ・プチアート(Vo, G/THE BLACK QUEEN、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLAN)、トロイ・サンダース(Vo, B/MASTODON)、デイヴ・エリッチ(Dr/ex. THE MARS VOLTA)の4人で結成され、2014年5月に1stアルバム『KILLER BE KILLED』を発表した彼ら。当初はアルバム1枚のみのスーパープロジェクトかと思いきや、翌2015年にドラマーがベン・コラー(CONVERGE、MUTOID MAN)に交代し、不定期ながらも活動を続けていくことを宣言。前作から6年半を経てついに2作目が届けられました。

ベンを含む編成では初のアルバムとなりますが、基本的な路線は前作を継承したもの。エクストリームメタル/ハードコア界の重鎮たちが一堂に会したバンドながらも、それぞれのエゴをむき出しにすることなく、ヘヴィながらもエモーショナルなメロディを前面に押し出した聴き応えのある良作に仕上げられています。

とにかく4人(というかフロントの3人)のカラーの配分が前作以上に明確になっており、役割分担もはっきりしてきた印象。1曲の中で複数のボーカリストが交わる曲構成は前作よりも増えているし、それが間違いなくこのバンドの個性につながっている。グレッグとトロイの個性の違いを存分に味わいつつ、要所要所で飛び込んでくるマックスのグロウルが大きな武器(フック)として効果を発揮しており、ようやくプロジェクトからバンドにまで進化したんだなと実感させられます。

どの曲も聴き応えのある良作ばかりなのですが、個人的に印象に残ったのが「Filthy Vagabond」かな。楽曲の作りといい、各シンガーの色分けといい、見事なまでに作り込まれている印象を受けました。この曲が本作を代表する1曲とまでは言わないものの、間違いなく彼らが目指したもの、やりたいことがここに凝縮されていると感じます。

かと思えば、続く「From A Crowded Wound」ではベンが加わったことによってなのか、どこかCONVERGEを彷彿とさせる色合いが増している。それをTHE DILLINGER ESCAPEのグレッグが歌うというところにも、個人的にはグッとくるものがあります。いやあ、すげえバンドです。

前作から引き続きプロデュースを担当したジョシュ・ウィルバーによるサウンドプロダクションも文句なし。HR/HMやラウド系リスナーのみならず幅広い層に受け取ってもらいたい、“エクストリームシーンの今”が凝縮されたKILLER BE KILLEDという“バンド”の本格的なスタート作だと断言させてください。

年末にこんな良作が飛び込んでくると、本当に年間ベスト作選びに苦労しそうです……(苦笑)。

 


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2020年10月22日 (木)

UMBRA VITAE『SHADOW OF LIFE』(2020)

2020年10月23日リリースの、UMBRA VITAEの1stアルバム。日本盤は海外に先駆け、10月21日に発売されました。

本作はすでに今年5月初旬にデジタルリリース/ストリーミング配信がスタートしていましたが、約半年という期間を経てついにフィジカルリリース。当初は6月頃にフィジカル/デジタルでのリリースが予定されていましたが、コロナ禍の影響でプレス工場が閉鎖され、先にデジタル配信、追ってフィジカルリリースという形が取られました。

UMBRA VITAEはCONVERGEWEAR YOUR WOUNDS(以下、WYW)のフロントマンであるジェイコブ・バノン(Vo)が新たに立ち上げた新バンド。メンバーはジェコブのほか、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUE、ex. HATEBREED)、グレッグ・ウィークス(B/THE RED CHORD、LABOR HEXなど)、ジョン・ライス(Dr/UNCLE ACID & THE DEADBEATS、ex. JOB FOR A COWBOY)というUSハードコア/エクストリームミュージック界のスーパースターばかり。

このうち、ジェイコブとマイク、ショーンはWYWのメンバー。実はWEAR YOUR WOUNDSの2ndアルバム『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019年)の制作中に、アグレッシヴではない音楽への反動としてジェイコブのルーツであるデスメタルにスポットを当てたプロジェクト案が浮上。WYWのツアー終了後に、マイク経由でグレッグ、ジョンというリズム隊を招聘し、CONVERGEのカート・バルー(G)をレコーディングエンジニアに迎えてレコーディングに突入するわけです。

ジェイコブがここまでメタル色の強い楽曲で、アグレッシヴにグロウルしたりホイッスルボイスを響かせたりするのも随分と久しぶりのこと。CONVERGEの近作もヘヴィではあるものの、こういった直接的なアグレッシヴさはどんどん薄れているので、非常に懐かしい気持ちと新鮮さを当時に味わうことができるはずです。

大半が2〜3分台の楽曲群は、伝統的なデスメタルをベースにシリアスで叙情的な歌詞を乗せた形に仕上げられており、グラインドコアからデスメタルへとスタイルチェンジした90年代初頭のNAPALM DEATHを髣髴とさせるものがあります。つまり、そここそがジェイコブのルーツであり、今回目指した場所だったのでしょう。全10曲(ボーナストラック除く)で26分というトータルランニング含め、古き良き時代のデスメタル(あるいはハードコア/グラインドコア)を2020年によみがえらせた良質な1枚と断言できます。

なお、日本盤にはボーナストラックとしてホラー映画のエンドロールに流れていそうなインストナンバー「Decadence Descends」を追加収録。この曲が加わることで、アルバムのエンディングにより深遠さが増すことになります。ここはぜひ、日本盤CDを購入してみてはどうでしょう?

あと、これは完全なる宣伝ですが、アルバムのライナーを筆者が執筆しております。バンドの成り立ちやより詳細な解説はそちらにすべて載っているので、ここではこの程度に収めておきますね(笑)。

 


▼UMBRA VITAE『SHADOW OF LIFE』
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2020年9月24日 (木)

WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019)

CONVERGEのフロントマン、ジェイコブ・バノン(Vo)による別バンドWEAR YOUR WOUNDSが2019年7月12日にリリースした2ndアルバム。日本盤は2日先行の同年7月10日に発売されています。

アートブックなどミックスメディア・プロジェクトの一環として発表された『DUNEDEVIL』(2017年)を含めれば3作目のアルバムとなる今作(アルバム『DUNEDEVIL』は1stアルバム『WYW』日本盤にボーナスディスクとして付属。サブスクなどでも手軽に聴くことができます)。過去2作はあくまでジェイコブのソロ/サイドプロジェクトとして制作されたものでしたが、『WYW』制作に参加したメンバーを軸にバンド形態として始動。ジェイコブがベースやピアノなどを兼任しつつ、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUES、ex. HATEBREED)、アダム・マッグラス(G/CAVE IN、NOMAD STONES)、クリス・マッジオ(Dr/ex. TRAP THEM、ex. SLEIGH BELLS)というUSハードコア界の重鎮たちが一堂に会するスーパーバンドへと進化したわけです。

ですが、ここで展開されているのは現代的なハードコアとは一線を画する、シューゲイザーやスラッジの影響下にあるアートロックのようなサウンド。アッパーなサウンドで攻めたり叫んだりすることはなく、ダウナーなボーカル&サウンドで悲しみや絶望など負の感情が時にメランコリックに、時にエモーショナルに表現されていく……そういった意味では、CONVERGEの最新作『THE DUSK IN US』(2017年)の中で芽生え始めた方向性を一歩推し進めたものと言えるかもしれません。

トリプルギターを用いた音の厚み、ピアノやエレクトロニクスを効果的に用いた叙情性、ボーカルラインやギターが奏でるメロディの多彩さはCONVERGEでは表現できなかった世界観でしょうか。そのサウンドをエンジニアリング&プロデュースするのが当のCONVERGEの一員であるカート・バルーというのも、また興味深いところです。

『WYW』が良くも悪くも実験性の強い1枚であったことを考えると、本作で展開されているのは紛れもなく“バンドのアルバム”だということ。この違いは非常に大きく、特にCONVERGEからの流れでジェイコブのソロに触れるというリスナーには今作のほうがとっつきやすいと言えるでしょう。もちろん、CONVERGEそのものを求めると痛い目を見ることになりますが……。ただ、『THE DUSK IN US』という作品を好意的に受け入れることができたファンには間違いなく響く良作であり、ある意味では『THE DUSK IN US』と表裏一体の1枚と断言できます。

楽曲の良さや世界観、演奏面など、どれを取っても高品質な1枚。今みたいな季節に、深夜に適度な音量で楽しみたいアルバムです。

 


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2020年8月12日 (水)

YEAR OF THE KNIFE『INTERNAL INCARCERATION』(2020)

2020年8月7日にリリースされたYEAR OF THE KNIFEの1stフルアルバム。日本盤未発売。

YEAR OF THE KNIFEはアメリカ・デラウェア州出身の5人組ハードコアバンド。2015年結成とまだ活動歴は浅いほうですが、2019年にPure Noise Recordsと契約すると、それまでに発表した2枚のEPに新曲を加えたコンピレーション・アルバム『ULTIMATE AGGRESSION』(2019年)をリリース。KNOCKED LOOSEやJESUS PIECE、BOSTON MANORなどを擁するレーベルからの注目新人ということで、大きな注目を集めることになります。

そのコンピから1年半という短いスパンで届けられたこのフルアルバムは、全13曲で32分という非常にコンパクトなのに強烈なインパクトが凝縮された1枚。プロデュースを手がけたのがCONVERGEのカート・バルー(CODE ORANGEKVELERTAKRUSSIAN CIRCLESなど)というのもあってか、非常に密度の高い超重量級ハードコアサウンドを楽しめる良作に仕上がっています。

大半の楽曲が1〜2分台で、最長でも「Eviction」の3分10秒。アルバム自体の曲間もかなり詰められているので、まるで組曲のように聴こえたり、複雑な変化(アレンジ)を持つ楽曲だなと思っていたら数曲過ぎていたとか、そんな錯覚も与えてくれます。もっと言えば、(この手のバンドにしては)超高音質のライブを30数分にわたり目の前で繰り広げているような、そんな生々しさを楽しむことができるのです。

この手のバンドではデスメタル以降のヘヴィメタルや、デスコア以降のヘヴィサウンドに影響を受けた者も少なくありませんが、本作を聴いて感じたのはこのYEAR OF THE KNIFEはメタリックな質感ではあるものの、モダンなヘヴィメタルのそれとは異なるカラーだなということ。カート・バルーが手がけていることもあってか、CONVERGE以降のハードコアといった印象も強く、中でもCODE ORANGEのような変態性が強くない、非常にストレートな音を鳴らすバンドなんだなと気づかされます。

この瞬発力と攻撃性、言葉を失うほどの衝動性……これがまだ1枚目のアルバムだという事実に気づくと、改めて圧倒させられるのではないでしょうか。各メンバーはそれぞれキャリアのある面々のようですが、これはとんでもない注目株が現れたなと。この手のサウンド/バンドが好きな人にはたまらないのではないでしょうか。特にCODE ORANGEが新作『UNDERNEATH』(2020年)で遂げた変貌についていけなくなった人たちが、このYEAR OF THE KNIFEに流れるなんてことになっても不思議じゃないくらい、有無を言わせぬカッコよさがある。2020年下半期最大の注目作です。

 


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