MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)
MANIC STREET PREACHERSが1998年9月にリリースした、通算5作目のスタジオアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』。同作のリリース20周年を記念して、2018年12月にCD 3枚組ボックスエディションとアナログ2枚組エディションが発売されました。どちらも新たにリマスタリングが施されておりますが、もともとダイナミックなバンドサウンドを堪能できる良作だったので、音質的にはそこまで大きく変化していないような気がします。
さて、このアルバムに関しては非常に個人的思い入れが強く、当ブログの前身サイトが20年前にスタートしたとき、最初に書いたディスクレビューが本作に関してでした。あそこには書いていませんが……要は、長年付き合った彼女と別れ話をしてる間、ずっと車の中で流れていたのがこのアルバムなんですよ(苦笑)。
……重い。重いでしょ?(笑)
そんなわけで、好きなアルバムではあるものの、聴いていると必要以上に感傷的な気持ちになってしまう。なので、一時期まったく手をつけられない時期もありました。作品の良し悪しとは全然関係ない理由なんですけどね。
あれから20年。それ以上にいろんなヘヴィな出来事があったり、こうやって音楽について趣味で書き連ねていたことが、いつの間にか仕事になっていたり。本当にいろんなことがありました。そう思うと、このアルバムの背景にある個人的な出来事がいかにちっぽけなことか。おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(笑)。
さてさて。このリマスター盤について書いていきましょうか。
前作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)での成功を踏まえた上で制作された本作は、ミディアム〜スロウナンバーを軸とした極上のメロディックロックアルバムです。『EVERYTHING MUST GO』には若干の歪さが残っており、そこがまたマニックスらしくて良かったのですが、本作ではそういった要素が完全に払拭され、非常に完成度の高い内容に仕上げられています。スロウナンバーが多いせいか、全13曲で63分というトータルランニングには多少過剰さを感じたものの、ぶっちゃけ捨て曲がないので有無を言わせぬまま最後まで聴かされてしまう。そんな“静なる暴力性”すら感じさせる傑作だと、今でも信じています。
が……。
このリマスター盤、昨年発売された『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤同様に、収録曲が一部差し替えられるという改悪が加えられています。日本のファンにとっては思い入れの強いであろう12曲目「Nobody Loved You」が、シングル「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」のカップリング曲およびカップリング曲集『LIPSTICK TRACES』(2003年)収録曲「Prologue To History」に変更されているのですよ! この曲自体は特に嫌いではないし、むしろ好きな部類に入る1曲ですが、どうしても「Nobody Loved You」のインパクトが強かっただけに、また終盤をドラマチックに盛り立てる上で重要な役割を果たすだけに、「Prologue To History」がラス前に置かれてそこから「S.Y.M.M.」へと続く構成がどうにも馴染めないのです。
何度か聴き返しました。なんなら、M11「Black Dog On My Shoulder」からM13「S.Y.M.M.」の3曲だけを何度か続けて聴き返したりもしました。が、どうしても「Prologue To History」だけ軽く聴こえてしまう。ミディアム〜スロウのメロウな楽曲中心とはいえ重厚さが全体を支配する構成だけに、やっぱり「Prologue To History」は浮くんですよ。だからこの曲をカップリングに回したんじゃなかったの? そうしてそんな気の迷いを見せる? 本当にこの改悪、理解に苦しみます(しかも、ストリーミングバージョンだと「S.Y.M.M.」のあとに「Nobody Loved You」が置かれているという。なんなのまったく!)。
ジャケットのアートワーク変更は全然いいんですよ。同じフォトセッションの中から、別テイクを選んでいるわけですから。新しいアートワークも嫌いじゃありません。ただ、安っぽくなってしまったのも事実。ああ、勿体ない。こんな傑作が……。
せっかくなのでCDのディスク2、ディスク3にも触れておきましょう。ディスク2は改変されたディスク1『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』の収録曲のホームデモ音源/スタジオデモ音源/ライブリハーサルデモ音源/テイク違いが、本編と同じ曲順で並べられています。完成バージョンとは異なるアレンジやテンポ感、特に「The Everlasting」のライブリハデモは嫌いじゃないなあ。「Nobody Loved You」が原曲よりもテンポが遅く、ヘヴィさが際立っている印象なのも良いなあ。まあ、こちらは完全にマニア向けですね。
ディスク3は1998〜99年にリリースされた本作からのシングルに収められたカップリング曲を1枚にまとめたもの。MASSIVE ATTACKやデヴィッド・ホルムス、デーモン・バクスター、STEALTH SONIC ORCHESTRA(APOLLO 440)、MOGWAI、Cornelius、STEREOLABによるシングル表題曲のリミックス、アルバム未収録の「Montana/Autumn/78」「Black Holes For The Young」「Valley Boy」「Socialist Serenade」「Buildings For Dead People」といったオリジナル曲が楽しめます。THE CLASHのカバー「Train In Vain」などライブテイク以外のオリジナル曲とリミックスは網羅されているはずなので、当時シングルやカセットを集めるのに苦労した人にはありがたい1枚じゃないでしょうか。
僕にとっても、そして本サイトにとっても思い出の1枚なだけに、いろいろ厳しいことを連ねましたが、それでも本作の魅力は変わらない(と思いたい)。この20周年盤を聴いて興味を持った人は、ぜひオリジナルバージョンも聴いてみてください。もしかしたら、僕とまったく逆のリアクション(逆に「Nobody Loved You」が入っているほうを受け付けない)をするかもしれませんしね。
▼MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / 海外盤アナログ / MP3)
続きを読む "MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)" »