2004/02/24

COURTNEY LOVE『AMERICA'S SWEETHEART』(2004)

「CELEBRITY SKIN」から早5年半。女優としてでもなく、はたまたゴシップ・クイーンとしてでもなく、ミュージシャンとして戻って来たコートニー・ラヴ。その彼女のソロアルバム第一弾「AMERICA'S SWEETHEART」が先日、日米ほぼ同時期にリリースされました。コートニーのロックサイド、そしてポップサイドの両方がバランスよく同居した、非常によく出来た作品集に仕上がっています。5年半は確かに長かった。フジロックでの来日中止やHOLE解散もあった。裁判沙汰なんて日常茶飯事。NIRVANAのメンバーとも揉めた。けど、ようやくここまでたどり着けた。そして届けられた作品は納得出来るものだった、と(少なくとも自分にとってはね)。

今回のアルバム、ほぼ全曲を元4 NON BLONDSのリンダ・ペリー(ピンクやクリスティーナ・アギレラへの楽曲提供等でも有名)と共作していることもあり、どんなにハードでパンキッシュな曲でもメロディはポップで親しみやすいものばかり。オープニングのハードロックチューン "Mono" にしろ、続く "But Julian, I'm A Little Older Than You" といい、バックの演奏はHOLE時代とは違ったハードさ(オルタナ特有のそれ、というよりももっとオーソドックスなハードさ)を持ちながらも、しっかり口ずさめるようなメロディを持ってるのはさすがというか、とにかく聴いてて気持ちいい。その他の曲も「CELEBRITY SKIN」にもあったようなアーシーなアメリカンロック、メロウなポップチューン、旦那のバンドを彷彿させるヘヴィチューン、ロバート・プラントも真っ青なLED ZEPPELIN風ヘヴィブルーズ、スローナンバー等々。とにかく「ソロ」の利点を生かし、可能な限りいろんないろんなことに挑戦しようとしてるのが見受けられます。が、それらが1枚にまとめることで決してバラバラな印象を受けるはなく、コートニーの個性によって頭から最後まで一本芯が通ったかのようなトータル性さえ感じられます。

もはや「LIVE THROUGH THIS」の頃のようなコートニーはここにはいないのかもしれません。ある意味、あの頃のコートニーが最も嫌ったポジションに、今の彼女は居座っているのかもしれない。けど、あのアルバムを制作した10年前と今とでは比べ物にならないくらいの変化があった。だって、あのアルバムを作っていた時、まだカート・コバーンは生きていたんだから‥‥

とにかく無心で楽しめる、豪快なアメリカン・ハードロックアルバムだと思います。そう呼ばれることに、きっとコートニーは抵抗があると思いますが、俺は敢えてそう呼びたい。時代が時代だったら、ジョーン・ジェットやリタ・フォードといった女性ロッカーに肩を並べた、あるいは彼女達をも凌駕したアルバムになっていたかもしれない、そんなカッコいいアルバムだと思います。

蛇足ですが、今回のアルバム制作に携わったバンドメンバー。ドラムには末期HOLEにも参加し、その後MOTLEY CRUEのヘルプ・ドラマーとしての来日経験も持つサマンサ・マロニーやその前任だったパティ・シュメルといった元メンバーが名を連ねています。そんな中、個人的に気になった名前が‥‥ジェリー・ベストって名前があったんですよ。これって、'80年代に活躍したハードロックバンドに在籍してた人ですよね?(最初WARRANTの人かと思ったら、あれはジェリー・ディクソンだった。で、FASTER PUSSYCATのメンバーかと思ったけど違った。どのバンドだったっけ??)更に曲によっては元MC5のウェイン・クレイマー、先頃再結成したTHE PIXIESのキム・ディールなんかも参加してるようです。また、1曲だけ作詞で、エルトン・ジョンの創作パートナーであるバーニー・トーピンも参加してます。如何にコートニーがこのアルバムに情熱を注いだか、そしてどれだけ本気かが伺えるんじゃないでしょうか? ほぼ同時期に元メンバーであるメリッサ・オフ・ダ・マーもソロでアルバムをリリースします。対決ってわけじゃないですが、こうやっていろんなメンバーがいいアルバムを沢山作ってくれるのは嬉しいもんですね。



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投稿: 2004 02 24 12:00 午前 [2004年の作品, Courtney Love] | 固定リンク

2004/02/07

HOLE『CELEBRITY SKIN』(1998)

コートニー・ラヴ率いるHOLEの、3作目にしてラストアルバムとなってしまった「CELEBRITY SKIN」。リリース当時(1998~9年頃)ロック系クラブイベントに行くと必ず耳にした名曲 "Celebrity Skin" を筆頭に、とにかく「ポップ」で前向きな楽曲が詰まった1枚で、俺もよく愛聴したものです。というか、HOLEのアルバムの中で一番好きなアルバムですね。

夫であるカート・コバーンの死後、このアルバムが完成するまでに4年半という月日を要したわけですが、ここには「影/陰」を感じることはできても、「悲壮感」みたいな要素はあまり感じられないんですよね。これが月日によるものなのか、それともミュージシャン・コートニーとしての成長なのか、はたまたバンドメンバーとのケミストリーなのか、それとも一時期恋仲とも噂されたビリー・コーガン(当時はSMASHING PUMPKINS)とのコラボレートがもたらしたものなのか‥‥とにかく、前作「LIVE THROUGH THIS」とは異なっていたのは確か(っていうか、HOLEって三者三様な感じなんですよね、同じアルバムが存在しないというか)。カートがプロデュースした前作はいろんな意味で「名盤」だったけど、時期が悪かっただけに(カートの自殺とリリース時期が重なってしまった)どうしても色眼鏡で見られがち。良い意味でも、そして悪い意味でも‥‥だからこそ、全てをフラットな状態に戻すには4年半もの月日が必要だった。いや、フラットになんか戻ってない、戻れっこないんだから。

思えばコートニーって人は、つくづく不幸な人だと思う。それに拍車を掛けたのがカートとの結婚でしょう。気づけば「グランジ/オルタナの女王」みたいに祭り上げられて‥‥どこまでが「素」で、どこからが「演技」なのか。ある意味リアルであり、そしてある意味エンターテイメント。最近のオジー・オズボーン程日和っておらず、かといってマドンナ程賢くもない。正直、何考えてるか判らない。その「行き当たりばったり」的なところがコートニーがコートニーたる所以なのでしょう。そして多くの人はそういったところに魅力を感じ、と同時にそういったところを嫌悪する。それがコートニー・ラヴという人。

このアルバムが出た時、多くの人が驚いたことでしょう。その「グランジ/オルタナの女王」がここまでストレートな「アメリカン・ロック」を嬉々として鳴らしたのだから。やれ「魂売った」とか「終わった」とか‥‥そんなのはどうでもいいよ。俺はこの音にこの歌詞だったからこそ、今までで一番「リアル」に感じられたんだから。

カートを失い、そして同時期にベーシストだったクリスティン・プファーフもドラッグが原因で死亡。クリスティンの穴埋めは、このアルバムでもベースを弾いているメリッサ・アウフ・デル・マール('99年にHOLE脱退後、スマパンに加入。この辺も因縁めいてますね)が加入することでことなきを得て、更にバンドとしてはパワーアップ。上にも書いたように、ビリー・コーガンがソングライティングで参加してるのは、当初このアルバムのプロデュースをビリーが担当していたから。が、途中で喧嘩別れ。結局SOUNDGARDENやSOUL ASYLUM、RED HOT CHILI PEPPERSで有名なマイケル・ベインホーンを起用、太くてゴージャスな装飾をまとい、メロディはきらびやか。そして歌詞も前進することを選んだコートニーらしさ満載。カリフォルニアの、どこまでも続いて行く青い空をイメージさせる広大さ。大味なようでかなり繊細なメロディ(これはビリーによるものが大きいのかな?)。どこがいけないの? こんなに力強い「肯定」のアルバムを、その「グランジ/オルタナの女王」が世に出したから? それによって全てのいざこざに終止符を打ったから? 俺には判らない‥‥グランジというムーブメントを愛してもいたし、同時に憎んでもいたから。けど、ここで鳴らされている音は否定できない。いや、むしろ俺は両手を広げて大歓迎したよ。

「ディーヴァ」っていうのが、もしソウルやR&B以外のジャンル‥‥ロックだとかポップスだとか、そういった「音楽」の世界全部をひっくるめての中から選べるとしたら‥‥本当の意味で、酸いも甘いも味わったコートニーこそ、真の意味でのディーヴァなんじゃないかな?と思うんだけど‥‥そしてディーヴァはいよいよ帰ってきますよ。最高にカッコいいロックナンバーが沢山詰まったアルバムと共に‥‥



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投稿: 2004 02 07 04:39 午前 [1998年の作品, Courtney Love, Hole] | 固定リンク