COURTNEY LOVE『AMERICA'S SWEETHEART』(2004)
「CELEBRITY SKIN」から早5年半。女優としてでもなく、はたまたゴシップ・クイーンとしてでもなく、ミュージシャンとして戻って来たコートニー・ラヴ。その彼女のソロアルバム第一弾「AMERICA'S SWEETHEART」が先日、日米ほぼ同時期にリリースされました。コートニーのロックサイド、そしてポップサイドの両方がバランスよく同居した、非常によく出来た作品集に仕上がっています。5年半は確かに長かった。フジロックでの来日中止やHOLE解散もあった。裁判沙汰なんて日常茶飯事。NIRVANAのメンバーとも揉めた。けど、ようやくここまでたどり着けた。そして届けられた作品は納得出来るものだった、と(少なくとも自分にとってはね)。
今回のアルバム、ほぼ全曲を元4 NON BLONDSのリンダ・ペリー(ピンクやクリスティーナ・アギレラへの楽曲提供等でも有名)と共作していることもあり、どんなにハードでパンキッシュな曲でもメロディはポップで親しみやすいものばかり。オープニングのハードロックチューン "Mono" にしろ、続く "But Julian, I'm A Little Older Than You" といい、バックの演奏はHOLE時代とは違ったハードさ(オルタナ特有のそれ、というよりももっとオーソドックスなハードさ)を持ちながらも、しっかり口ずさめるようなメロディを持ってるのはさすがというか、とにかく聴いてて気持ちいい。その他の曲も「CELEBRITY SKIN」にもあったようなアーシーなアメリカンロック、メロウなポップチューン、旦那のバンドを彷彿させるヘヴィチューン、ロバート・プラントも真っ青なLED ZEPPELIN風ヘヴィブルーズ、スローナンバー等々。とにかく「ソロ」の利点を生かし、可能な限りいろんないろんなことに挑戦しようとしてるのが見受けられます。が、それらが1枚にまとめることで決してバラバラな印象を受けるはなく、コートニーの個性によって頭から最後まで一本芯が通ったかのようなトータル性さえ感じられます。
もはや「LIVE THROUGH THIS」の頃のようなコートニーはここにはいないのかもしれません。ある意味、あの頃のコートニーが最も嫌ったポジションに、今の彼女は居座っているのかもしれない。けど、あのアルバムを制作した10年前と今とでは比べ物にならないくらいの変化があった。だって、あのアルバムを作っていた時、まだカート・コバーンは生きていたんだから‥‥
とにかく無心で楽しめる、豪快なアメリカン・ハードロックアルバムだと思います。そう呼ばれることに、きっとコートニーは抵抗があると思いますが、俺は敢えてそう呼びたい。時代が時代だったら、ジョーン・ジェットやリタ・フォードといった女性ロッカーに肩を並べた、あるいは彼女達をも凌駕したアルバムになっていたかもしれない、そんなカッコいいアルバムだと思います。
蛇足ですが、今回のアルバム制作に携わったバンドメンバー。ドラムには末期HOLEにも参加し、その後MOTLEY CRUEのヘルプ・ドラマーとしての来日経験も持つサマンサ・マロニーやその前任だったパティ・シュメルといった元メンバーが名を連ねています。そんな中、個人的に気になった名前が‥‥ジェリー・ベストって名前があったんですよ。これって、'80年代に活躍したハードロックバンドに在籍してた人ですよね?(最初WARRANTの人かと思ったら、あれはジェリー・ディクソンだった。で、FASTER PUSSYCATのメンバーかと思ったけど違った。どのバンドだったっけ??)更に曲によっては元MC5のウェイン・クレイマー、先頃再結成したTHE PIXIESのキム・ディールなんかも参加してるようです。また、1曲だけ作詞で、エルトン・ジョンの創作パートナーであるバーニー・トーピンも参加してます。如何にコートニーがこのアルバムに情熱を注いだか、そしてどれだけ本気かが伺えるんじゃないでしょうか? ほぼ同時期に元メンバーであるメリッサ・オフ・ダ・マーもソロでアルバムをリリースします。対決ってわけじゃないですが、こうやっていろんなメンバーがいいアルバムを沢山作ってくれるのは嬉しいもんですね。