2017/09/22

THE CULT『ELECTRIC』(1987)

ゴシックロックやポストパンクの流れにあった前作『LOVE』(1985年)が本国イギリスで最高4位まで上昇。アメリカでもTOP100内(87位)に入るヒット作となり、続く3rdアルバムで世界的な大ブレイクが期待されるわけです。ここでTHE CULTは前作同様にスティーヴ・ブラウンをプロデューサーに迎え次作『PEACE』の制作に突入するのですが、出来上がった作品はバンド側が満足するような内容ではありませんでした。

そしてバンドは新たにリック・ルービンをプロデューサーに迎え、アルバムを作り直します。そんな紆余曲折を経て完成したのが、1987年春に発表された『ELECTRIC』です。

SLAYERBEASTIE BOYSなどのプロデューサーとして知られていたリックですが、本作ではオールドスクールなハードロックサウンドを展開。どこかAC/DCみたいで、無駄をそぎ落とした隙間だらけのサウンドは、ビッグプロダクションが当たり前だった当時のHR/HMと比較するとチープに聞こえたかもしれません。しかし、本作発売から数ヶ月後にGUNS N' ROSESがデビューすることで、その印象は一変するわけです。時代がTHE CULTに追いつくわけですね。

ポストパンクとかニューウェイブ、ゴシックロックとは一体何だったのか?と、前作までのTHE CULTを好んでいたファンからすれば、ここで完全に別モノになってしまったわけですから、そりゃあショックですよね。だってオープニングの「Wild Flower」からして、ギターリフ一発ですべてが決まるような、シンプルなR&Rなわけですから。しかもLED ZEPPELIN的な展開を含む「Love Removal Machine」があったり、ツーバス全開のファストチューン「Bad Fun」があったり、挙げ句の果てにSTEPPENWOLFの名曲カバー「Born To Be Wild」まであるんだから。それ以前のファンからしたら「誰だよお前ら!」ってツッコミたくなりますわな。

とはいえ、当時高校生だった自分は『LOVE』以前の彼らを知らず、本作からTHE CULTに入っていったので、当然彼らは普通にハードロックをやってきたバンドだと思っていたし、そこから『LOVE』にさかのぼって唖然とするわけですが。今となってはそれもいい思い出ですけどね。

そんな一大革命を起こした本作、イギリスでは前作と同じく4位まで上昇し、アメリカでも最高38位にランクイン。100万枚を超えるヒット作となり、続く4thアルバム『SONIC TEMPLE』(1989年)と並ぶ代表作として現在まで多くのリスナーに愛され続けています。



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投稿: 2017 09 22 12:00 午前 [1987年の作品, Cult, The] | 固定リンク

2017/07/10

THE CULT『SONIC TEMPLE』(1989)

リック・ルービンをプロデューサーに迎えた1987年の3rdアルバム『ELECTRIC』で、ゴシックテイストのニューウェイブサウンドからハードロック路線へとシフトチェンジし、それなりに成功を収めたTHE CULT。続く1989年の4thアルバム『SONIC TEMPLE』では時代の寵児ボブ・ロックをプロデューサーに迎え、より硬質なサウンドへとビルドアップさせます。

初期の『DREAMTIME』(1984年)や『LOVE』(1985年)のイメージは完全に払拭され、音だけ聴けば同時期に制作されたBLUE MURDERの1枚目MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』、あるいはBON JOVI『NEW JERSEY』AEROSMITH『PERMANENT VACATION』にも通ずるものがあります。もちろんそこを狙っての起用なんでしょうけど、リック・ルービンらしさ満載のスカスカなハードロック(『ELECTRIC』)とはある種対局の作品を完成させたなという印象があります。

それは楽曲の構成にも端的に表れており、3分前後の楽曲が中心だった前作から一変、今作では4〜5分台の楽曲が中心で、オープニングの「Sun King」は仰々しいオープニングを含む6分超え、「Soul Asylum」に至っては7分半もあるのですから驚きです。

もちろん、ただ長くすればいいってわけじゃないい。そこはボブ・ロックが絡んでいるので問題なし。過剰なまでにドラマチックなアレンジが施されたことによって、THE CULTというバンドが本来持ち合わせていた“湿り気”が強調される結果となりました。むしろ前作のカラッとしたサウンドが異質なわけで、本作で聴ける音/アレンジのほうが実は本来の彼らに近いのでは……という錯覚に陥ってしまうのですから(笑)、さすがとしか言いようがない。

イアン・アストベリー(Vo)のボーカルも絶好調だし、なによりもビリー・ダフィー(G)のギターの暴れっぷりといったら。その後も印象的なギタープレイが聴ける作品はいくつかありますが、「American Horse」みたいにハードな曲ではグイグイ攻め、「Edie (Ciao Baby)」のような聴かせる曲では引きのプレイで印象づける、バランスの良いギタープレイを楽しむという点においては本作が随一ではないかと思います。

当時MTVや『PURE ROCK』(TBSで日曜深夜に放送されていた、HR/HM専門プログラム)で「Fire Woman」のMVが頻繁に流れていた印象があり、「ああ、THE CULT売れてるなぁ」なんて思ってましたが、実際に本作は全米10位という最大のヒット作になったんですよね。「Fire Woman」自体も全米46位とバンド史上最大のヒット曲になったし、他にも「Edie (Ciao Baby)」が全米93位まで上昇。後にも先にも、Billboard TOP100にランクインしたのはこの2曲のみ。

あ、本作のレコーディングではブライアン・アダムスのバンドでおなじみのミッキー・カリー(Dr)がドラムを叩いてますが、ツアーではのちにGUNS N' ROSESに加わるマット・ソーラムが参加していたのも、この時期の特筆すべきポイントです。



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投稿: 2017 07 10 12:00 午前 [1989年の作品, Cult, The] | 固定リンク

2004/03/18

THE CULT『BEYOND GOOD AND EVIL』(2001)

'80年代初頭にSOUTHERN DEATH CULTという名前でデビューし、何度か名前変更の後にTHE CULTとシンプルになり、'80年代中盤以降には「LOVE」、「ELECTRIC」、そして「SONIC TEMPLE」といった作品を連発、当初のゴス/ポジパン色が強いスタイルから徐々にタフでハードな路線へと移行していったこのバンド。'90年代に入ってからも「CEREMONY」、「THE CULT」と作品をリリースし続けたものの'80年代程の成功を得ることができず、残念ながら'90年代半ばに解散。各メンバーはその後それぞれソロ活動や新しいバンド/プロジェクトに専念するのでした。

しかし2000年。状況は一転します。いきなり再結成してしまうのです。ボーカルのイアン・アストベリーとギターのビリー・ダフィといったオリジナルメンバーの他に、レコーディングには参加したことがなかったものの、「SONIC TEMPLE」ツアーに参加した縁から声をかけられたドラムのマット・ソーラム(この時のツアーにGUNS N'ROSESが参加したことから、後にマットがGN'Rに加入することになるのです)という3人で(ベースは流動的だったようです)。まず彼らは同年夏に映画「60セカンズ」のサントラに "Painted On My Heart" という曲で参加します。これは彼らのオリジナルではなく、本来はAEROSMITHが歌う予定だった楽曲。オリジナルではないのですが、ちょっとノスタルジックなイメージが強い曲調が'80年代中盤以降の彼らを彷彿させ、まぁ復活の狼煙が上がるとまではいかなかったものの、ちょっとは話題になったように記憶してます。

そして翌'01年6月、解散前のラスト作となった'94年の「THE CULT」以来約7年振りの新作となる「BEYOND GOOD AND EVIL」を発表するのでした。同年8月には本当に久し振り、それこそ10数年振りとなる来日が「SUMMERSONIC」で実現、オールドファンを喜ばせ、新たなファンも(多少は?)開拓することになったのでした。

が、その後が続かなかった。アルバムはアメリカでもそこそこのヒットを記録、ビルボードのアルバムチャートでトップ40位入りする程で、ツアーも盛況だったようなのですが‥‥結局、再びバンドは分裂。現在イアンは元THE DOORSのメンバーらと共にTHE DOORS 21ST CENTURYというようなTHE DOORSのコピーバンド(だよな、これは)をやっていて、日本にも'03年夏の「SUMMERSONIC」で来日しています。ビリーは何やってるのかな‥‥ちょっと判りません。マットはご存じの通り(?)、古巣であるGN'Rの元メンバーらと元STONE TEMPLE PILOTSのシンガー、スコット・ウェイランドと共にVELVET REVOLVERというバンドを結成、昨年夏に映画サントラに "Set Me Free" という曲を提供、いよいよ'04年5月には待望のファーストアルバムをリリースするようです。各メンバーの活動が活発なのを知るに連れ、THE CULTはまた本当に終わっちゃったんだなぁ‥‥と寂しい気持ちになるのですが‥‥

さて、この「BEYOND GOOD AND EVIL」というアルバム。プロデュースを手掛けたのがかのボブ・ロックということもあり、大ヒット作「SONIC TEMPLE」以降の流れにある作品と呼ぶことができるでしょう。このアルバム以前/以降でバンドのスタイルもポジションも、かなり変わってしまいましたからねぇ。要するに『ビッグサウンドを伴うアメリカン・ハードロック』を基調とし、そこに本来の持ち味であるゴシックテイストを散りばめた、ある意味「やっと時代がTHE CULTに追いついた」かのようなアルバムに仕上がっています。と同時に、リリース当時は失敗作と呼ばれたラスト作「THE CULT」で実践した試みも登場し、そういう意味では『'80年代中盤‥‥「THE CULT」と改名して以降の集大成』と呼ぶこともできるでしょう。ビッグなドラムサウンドはバブリーな'80年代末~グランジ勃発前のHM/HR全盛期を彷彿させ、ザクザクしててダークな曲の上をのたうち回るギターは聴いてて気持ちいいし、そしてイアンのボーカルはこれまで以上に深みを増し、当時はまだ参加していなかったTHE DOORS‥‥そう、ジム・モリスンを彷彿させる歌唱で聴き手を驚かせます。時にVELVET UNDERGROUND、時にTHE DOORS、そして時に'80年代初頭のニューウェーブ/ゴスの流れを彷彿させながらも、基本にあるのはストレートなハードロック。ダークだけど昨今の流れとは一線を画するのは彼ら特有の個性であり、結局これを誰も真似できてないという事実。「THE CULTみたいな」バンドは沢山いるものの、「THE CULTの後継者」「ポストTHE CULT」は結局存在しない。やはりここがこのバンドの凄さといいましょうか。だからこそ再結成してこのアルバムで底力を見せつけられた時には、思わず唸ってしまったんじゃないでしょうか、世に腐るほどいる「なんちゃってTHE CULT」達は。

そう、だからこそさ‥‥この「続き」が観たかったし、聴きたかったんだよね‥‥世の中の流れが再びTHE CULTのようなバンドに対して好意的になってきてる気がするだけにさ。リリース当時は過小評価されていた'90年代の「CEREMONY」や「THE CULT」だって、2004年の今リリースしたら‥‥いや、「もし~なら」話はやめよう。とにかく。何時だって俺はウェルカムなので。何の将来性もないコピーバンドに早いところ見切りをつけて、またビリーと手を組んでくださいよ、イアンさんとかよぉ(マットはこの際いいや。GN'R組と仲良くやってください!)。



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投稿: 2004 03 18 12:00 午前 [2001年の作品, Cult, The] | 固定リンク