THE CURE『WISH』(1992)
1992年4月21日にリリースされたTHE CUREの9thアルバム。日本盤は同年4月22日発売。
全米2位の大ヒットを記録した「Lovesong」を含む前作アルバム『DISINTEGRATION』(1989年)が、全英3位/全米12位(200万枚以上の売り上げ)という好成績を残し、前々作『KISS ME, KISS ME, KISS ME』(1987年)からいい流れを築き上げてきたTHE CURE。その数字的な成績という点で、続く今作では初の全英1位、アメリカでも最高2位と過去最高記録を打ち立てます。
過去2作でゴシックロック路線よりもUSオルタナティヴロック寄りのサウンド/アレンジへとシフトしてきた彼らでしたが、今作ではその振り切り方がより強くなった印象を受けます。それは、世の中的にグランジのようなオルタナロックが受け入れられていたことも大きく作用したのでしょう。「Apart」のような楽曲では従来のゴシックテイストに、グランジ的なダークさが見事な形でミックスされており、いろんな意味でステージがひとつ上がった印象を受けます。
もちろん冒頭を飾る「Open」を筆頭に、「High」(全英8位/全米42位)や「Friday I'm In Love」(全英6位/全米18位)といったヒットシングルなど、キャッチーさも絶妙なバランスで保ち続けている。かつ、「From The Edge Of The Deep Gree Sea」ではダークなドリームポップ的な側面も見え隠れし、「Trust」では耽美さをより強調したスローアレンジが楽しめる。従来のらしさをよりモダンにシフトさせた「A Letter To Elise」、ダンサブルなビートにシューゲイズ的色合いを加えた「Cut」など、どの曲も非常にクセが強いのに親しみやすい。約66分と非常にボリューミーな内容ながらも最後まで飽きずに楽しめる、黄金期にふさわし1枚です。
THE CUREは以降も良質な作品を発表し続けていますが、個人的にもっとも興味を持って触れていた彼らの新譜はここまでかな。80年代後半から90年代初頭の、多感な時期に触れた3作品(『KISS ME, KISS ME, KISS ME』、『DISINTEGRATION』、そして本作)に対する思いは、今でもかなり強いものがあります(もちろん初期の作品も、後期の作品も好きという前提です)。
なお、2022年11月25日には本作のリリース30周年を記念した最新リマスター盤と、未発表音源集を付属した3枚組デラックスエディションが同時発売。2018年にはすでに編集作業は完了していたようですが、非常にクリアで音の分離が素晴らしいリマスター盤は必聴ですし、完成形へと至るまでの苦心が見えるアルバム収録曲のデモ音源や、1993年に発表されたインスト中心の『LOST WISHES EP』収録音源なども、『WISH』という傑作を振り返る上では非常に重要なアイテムと言えるでしょう。まずはリマスタリングされた本編をじっくり楽しんでから、その魅力を補強する形でボーナストラックに触れてみてください。
▼THE CURE『WISH』
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