THE CURE『DISINTEGRATION』(1989)
1989年5月にリリースされた、THE CURE通算8枚目のスタジオアルバム。
前作『KISS ME, KISS ME, KISS ME』(1987年)がアナログ2枚組という大作ながらも初めてアメリカでTOP40入り(35位)を記録したことを受け、さらにポップでわかりやすい方向へと突き進んでいくのかと思いきや、そこはひねくれ者ロバート・スミス(Vo, G)のこと。ポップはポップなんだけど、よりゴシック色の強いニューウェイヴサウンドへと回帰していくのです。
前作はトータル74分強ということで当時のCD収録容量を超えていたため(この頃のCDは74分がマックスと言われていました)、アナログ盤収録曲から1曲削っていたのですが、それを気にしたのか、今回の『DISINTEGRATION』は72分以内に収めています。いや、それでも長すぎだろ(笑)。
曲数的には本作は全12曲ということで、前作の18曲入りというのがいかにコンパクトな楽曲を多く揃えたかが伺えます。事実、本作はアメリカでバカ売れした「Lovesong」(全英18位/全米2位)がもっともコンパクトな3分半、5分超の楽曲が8曲と全体の3分の2を占め、5分台2曲、6分大曲、7分台2曲、8分台1曲、9分台1曲……と書けば、その作風がなんとなくご理解いただけるでしょうか。
ギター、ベース、ドラム、シンセを軸にしながらも、音で埋め尽くすのではなくいかに少ない音数で独特の世界観を構築していくかが本作のベースになっているかと思います。空間系のエフェクトがかかったギターサウンドと、そのギターを補足するようにかぶさるシンセ。ベースはボトムを支えるというよりは、メロディ楽器の一部としてうねりを上げており、ドラムもシンプルなリズムを刻むことなくグルーヴィーでパーカッシヴなプレイを繰り返す。
で、その上に乗っかるボーカルの主張の強さ。全体的なバランスを考えても、ボーカルはかなり前に押し出されているほうかと思います。しかし、そこまで歌モノって感じがしないのは、全体的にインストパートの占める割合が高いからでしょうか。
ダークなんだけど、そこまで暗いと感じない不思議なバランス感。ポップでメロディアスなんだけど、どこか耽美で切ない。突き抜けるようなポップチューンは皆無ですが、それこそシングルカットされた「Picutures Of You」(全英23位/全米71位)や「Lovesong」、「Lullaby」(全英5位/全米74位)、「Fascination Street」(全米46位)あたりはこのアルバムの中ではわりと突き抜け系なのかなと。いや、外に出したら全然そんなことないんですけどね。
クライマックスは9分半にもおよぶ「The Same Deep Water As You」からラストナンバー「Untitled」までの4曲でしょうか。9分半、8分半、7分、6分半と長尺曲立て続けですが、意外と飽きないから不思議です。
なお、本作はイギリス、アメリカともに過去最高となる全英3位、全米12位を記録。特にアメリカでは200万枚を超える過去最大のヒット作となりました。
この春には本作リリース30周年を祝してアルバム完全再現ライブを披露したようですが、まもなく開催される『FUJI ROCK FESTIVAL '19』では通常のフェス仕様セットリストのようですね。果たしてどんな選曲になるのか、『DISINTEGRATION』からはどれくらい披露されるのか。その目で確かめたいと思います。
▼THE CURE『DISINTEGRATION』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / 海外盤3CD / MP3)