THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』(2020)/『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』(2021)
2020年7月31日にリリースされたTHUNDERMOTHERの4thアルバム。日本盤未発売。
THUNDERMOTHERはスウェーデン出身の4人組女性ロックバンド。AC/DCを思わせるシンプルなハードロックンロールが特徴で、これまでに3枚のアルバムを発表しています。2020年にはAFM Recordsとワールドワイド契約し、この『HEAT WAVE』で活動ベースを一気に広げることになる……予定でした(コロナ禍さえなければ、ね)。
ソロアーティストとしても活動するデンマーク出身のギタリスト、セーレン・アンデルセンをプロデューサーに迎えて制作された本作。一聴すればサウンドやギターリフそのものはAC/DCを彷彿とさせるハイエナジー・ハードロックですが、ハスキーな女性ボーカルが乗ることで新鮮さが伝わります。僕自身はこのアルバムで初めてTHUNDERMOTHERの作品に触れたのですが、うん、これは大好物です。
序盤こそAC/DC直系……というか、まんまな音なのですが、ハードロックバンドのパワーバラードと呼ぶにふさわしい「Sleep」あたりからその様子が変化し始めます。リフそのものはAC/DCそのものな「Free Ourselves」などはあるものの、北欧バンドらしい爆走ロックンロール「Driving In Style」に「Somebody Love Me」、ハードブギー「Mexico」、メロディアスなミディアムナンバー「Purple Sky」といったバラエティに富んだナンバーがアルバムに多彩さを与えています。
女性バンドに求められる繊細さは「Sleep」や「Purple Sky」などから少々感じられるものの、基本的には性別を超越したリアル・ロックンロールを堪能できる1枚。おそらく過去のアルバムをさかのぼっても、(「Sleep」や「Purple Sky」のような曲があるかどうかは別として)全体的な基本路線はさほど変わらない、いや、変わりようのないバンドだと思うので、基本的には最新作から入るのがベストかなと。特に本作は後半の彩り豊かさが印象に残るので、気になる方はぜひ本作から手に取ってみてください。
▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
なお、本作は2021年5月21日に10曲入りボーナスディスクを追加&アートワークを一新したデラックス・エディションを、CD&デジタルでリリース。ボーナスディスクにはアルバム未収録の新曲のほか、「Driving In Style」「Dog From Hell」のアコースティックバージョンのほか、D-A-Dのイェスパー・ビンザー(Vo)をフィーチャーした「Sleeps」アコースティックテイク、「Thunderous」「Hellevator」のライブテイク、そしてポンタス・スニッブ(BONAFIDE)、ドレゲン(BACKYARD BABIES)がゲスト参加した「Rock'n'Roll Heaven」といったレアトラックを楽しむことができます。特にアルバム未収録のスタジオ音源およびアコースティックバージョンは、アルバム本編同様に必聴の内容なので、もしフィジカルでの購入を計画している方はぜひこちらをご購入いただけると幸いです。僕もこっち買いましたから(ジャケもカッコいいし)。
今年の開催も延期となってしまった世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』。2022年開催予定の同フェスに、このTHUNDERMOTHERの出演も決定しております。それまでにもう1枚くらいスタジオアルバムが出ていそうな気がしないでもないですが、本作や次のアルバムを通じて一気に名が知れ渡りそうな、そんな北欧ガレージロック/ハードロックファン必聴のバンドです。
▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』
(amazon:海外盤CD / MP3)