D-A-D『A PRAYER FOR THE LOUD』(2019)
2019年5月末にリリースされた、デンマークのD-A-Dによる通算12作目のオリジナルアルバム。
2014年に結成30周年を祝うベストアルバム『DISN30LAND AF30R D30K』を発表しているものの、彼らがオリジナル作品は2011年の『DIC・NII・LAN・DAFT・ERD・ARK』以来8年ぶりのこと。ここ数作は本国でのチャートアクションも良好で、今作は1位を獲得しています。
80年代から幾度にわたりコラボしてきたニック・フォス(DIZZY MIZZ LIZZY、ティム・クリステンセン、MICHAEL LEARNS TO ROCKなど)をプロデューサーに、ルーン・ニッセン・ペターソンをミキシングエンジニアに迎えた本作は、完成までに3年近い歳月を要したとのこと。もちろん、その間にはツアーが入ったことで何度か中断もしているのですが、ベストアルバムで30年の活動にひとつの区切りをつけ、新たな領域へと突入しようとするバンドの強い意思のもと、根を詰めて制作と向き合ったんだなってことが十分伝わってくる1枚です。
とにかく、終始隙のないオールドスタイルのハードロックが展開されていて、オープニングの「Burning Star」からラストの「If The World Just」までの全11曲、約44分があっという間に過ぎ去っていきます。「あっという間」と書きましたが、別に印象に残らないという意味ではありません。どの曲も一度聴いたらシンガロングできそうなキャッチーさと、初めて聴いてもノレてしまうシンプルなカッコよさとが相まって、気づいたら気持ちよくなってアルバムの世界に入り込んでしまっている。シンプルにそれだけなんです。
また、「隙のない」という表現もサウンドそのものを指したものではなく、ロックンロールアルバムとしての起承転結が完璧という意味で用いたもの。音やアンサンブルそのものは適度の隙間が用意されたもので、重すぎず軽すぎずの程よさ。AC/DCを彷彿とさせるドライブ感の強いハードロックからミドルテンポのロックンロール、アコースティックギターを用いた男臭いバラードなど、この手のハードロックとしてはかなりバラエティ豊かなほうなんじゃないでしょうか。
基本的には世界デビュー(および日本デビュー作)となった3rdアルバム『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』(1989年)での路線から大きな変化はありません。強いて挙げればパンキッシュさが減退したこと、楽曲のバラエティの幅が広がったこと、そして1曲1曲の“濃さ”が深まったこと。だけど、その小さな変化が実はこのアルバムに大きな影響を及ぼしていると思うんです。
『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』から数えても今年で30年。音楽シーンの変化と同じで、そりゃあバンドにもいろんな変遷がありましたもの。でも、そういった“実験”がすべてこのアルバムに集約されている……というのは言い過ぎでしょうか。だけど、そう口にしたくなるくらい説得力の強い音が詰め込まれているんですよね。いやあ、最高にカッコいくてデカイ音で鳴らしたい、問答無用にクールな1枚です。